お目当ての人物は直ぐに見つかった。
当てもなく各教室を見回り呪具を持ってる人間がいないか探したら、図書室の奥で眠ってる生徒を見つけた。
枕にしている右腕には件の呪具が握られている。
どうやら、使用中らしい。
隣に座って小突いて起こす。
「え、あ、すみません!」
飛び起きて、居眠りを注意されると思って立ち去ろうと椅子から立ち上がろうとしている所を肩を掴んで無理矢理座らせる。
「おっと居眠りを注意した訳じゃないんだ、座れよ。
君の握りこんでいる、ソレについて聞きたい事がある。」
「え、いや、これは別に。」
逃がさないという意思表示の為に、少し強く肩を掴むと抵抗が弱まった。
「隠さなくていい、というか素直に喋ってくれると話が楽でいい。
それと声を上げるなよ、図書室では静かにね。」
「な、何を聞きたいんですか。」
よしよし、貴方は誰とか詮索したりする図太い奴じゃなくて良かった。
「何処で手にいれたのか、そいつに何を言われたのか。」
初めは保身の為か弱気な性格だからか、モゾモゾとハッキリしなかったが、肩に力を入れてあげると素直に喋り始めた。
「なるほどね、街中で話しかけられて安かったから買ってみたと。
試してみて効果が本物なら、友達と一緒に神社に来てほしいと。」
「あ、あの、全部話したから、肩。」
「ああ、ごめんね。
後これは預かるから。
じゃ、行っていいよ。」
肩を放すと、一目散に逃げていった学生を尻目に割符の実物を眺める。
見た目は梵字の書かれた小さな木の札であり中心、札の中から呪力を感じる。
(見た目はそれっぽい感じにしてるけど、呪術的な意味は無い。
埋め込まれている中身が本体か。
中身を取り出して呪詛師に感づかれたら面倒だし、取り敢えず七海さんと合流しますか。)
学校を出て七海さんと高専が借りたレンタルオフィスで合流した。
「轟君が得た情報は此方でも確認出来ました。
呪詛師は街の神社を間借りしていると見て間違いないでしょう。
此方で調べた結果、呪詛師が潜んでいると思われる神社は大分前に放置されており、記録上呪物を納めているとはありません。」
「神社が雰囲気作りなのか、何かしら意図があるのか気になりますね。」
七海さん達との情報を共有した結果、廃棄された神社を拠点にしているのは間違いなさそうだ。
手口からしてこの呪詛師は大胆かつ慎重であると言えるだろう、呪具を広めてから短時間で巻き上げて撤収している。
「恐らく、我々に勘づかれた時の対策を用意しているでしょう。ですが、戦闘に関しては此方に分があります。
私と轟君で拠点に攻め込みます。
補助員は山全体に帳を降ろして、学生が入ろうとするかも知れないので立ち入りの阻止をお願いします。」
方針が決まり、拠点とされる神社のある山へと移動する。
「作戦としては私が前衛で轟君は後衛として援護をお願いします。」
「たまには先陣切らしてくれてもいいんですけどねー。」
「態々、君が先陣を切らなくても後衛として、援護をしてくれれば殆どの呪詛師に対処出来ます。
無駄に手の内を晒す必要は無いでしょう。」
車の中での簡単な作戦会議。
俺が索敵やバッファーとして活動し、敵に真正面から挑むのは七海さん。
七海さんと組むときは大体、この布陣になる。
別に学生だからとかではなく、近接戦闘メインの七海さんの足りない部分を俺が補う形だ。
「今回は余罪があると睨んでるので生け捕りの予定ですが、万が一があります。
それに、子供に人殺しをさせたくないという気持ちもあるのは否定しません。
何時か来る瞬間を先伸ばしにしたい私のエゴです。」
「…それを言われると何も言えませんわ。」
両手を上げて降参の意を示す。
七海さんの気持ちは分からなくもない。
無駄に誰かの手を汚したくないから既に汚れている自分が手を下す。
こういう所が人として尊敬出来る。
暫くすると車が目的地へと止まる。
小高い、雑草にまみれた山の中に目的の神社はある。
管理もされていないのだろう、草木が乱雑に生えているが、よく見ると獣道が出来ている。
更に術式で五感と脳を強化して中を探る。
音の反響や熱や電磁波を拾って脳内で立体的なマップを構築する。
「神社の中に一人でそれ以外は見当たらないですね。」
「分かりました、帳が下り次第侵入します。
では、帳の使用と一般人が登りに来ない様に監視をお願いします。」
電話で指示を受けた補助員が山全体に帳を下ろす。
これで、一般人には山の中で何が起こっても分からない。
「向こうも帳に気付いた筈です、こっからは時間との勝負です。
行きますよ。」
「了解です。」
今回も短くてすみません。
やっぱりオリジナルだと技術力が足りないですね。
人の肩握り潰しながら質問をするのは果たして聞き込みなのだろうか。