バフデバフ   作:ボリビア

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久しぶりの伏黒


同級生との語らい

「弾くな…。」

 

「ああ。」

 

 5月のある日、運動場にて互いのオフが被ったので伏黒と前々から話していた式神への術式付与を試してみたが結果はセリフの通り。

 俺が術式で干渉しようとすると、呪力を弾いてくる。

 

「多分だけど、この形と出力で固定されているんだと思う。」

 

 増減しない固定値、恐らく式神か術式を成立させている根本的な縛りが関わっていると思う。

 

「わりーな、付き合わせて。」

 

「構わないよこれくらい。

 むしろ最近は学生らしいことしてなくてあれだったし。」

 

「やっぱり、準一級だと大変なのか。」

 

「大変というか、強い呪霊が沸く所って由緒ある場所とかのパターンあって気を使ったり、呪詛師案件だと陰湿な事件ばかりでしんどい。

 あと、たまに五条先生が仕事押し付けてくるし。

 規模は違えど伏黒もそんな感じだろ?」

 

「呪詛師は無いけどまあ似た感じだ。」

 

 伏黒も二級だし、ソレなりの案件は扱ってるらしい。

 

「で、どうするよ。

 解散でも手合わせでも構わないぜ。

 あ、調伏手伝うか?」

 

 伏黒の術式は影を媒介に十種類の式神を使役するらしいが、始めから十種類使える訳ではなく調伏という儀式を行って一種類ずつ習得するらしい。

 

「いや、調伏で手札増やしても今は扱える自信が無い。」  

 

「なら、質を高めなくちゃな。

 俺も伏黒の戦い方知らないし手合わせやろうぜ。

 あ、勿論許可とってからな。」

 

「当たり前だろ。」

 

 サクッと五条先生に連絡して許可をもらい、伏黒と対峙する。

 

「最初は俺が受けるから来いよ。」

 

「玉犬、白、黒、行け!」

 

 ワンちゃんワンちゃん!

 黒犬が顔、白犬が右腕目掛けて飛び付こうとしてくる。

 その速さは普通の犬より速く、噛まれれば一溜まりも無いだろう。

 まだ、術式は使わない。

 呪力による強化で二体の犬を捌いていくが、噛みつかれてはいないが、容赦なく突き立てる爪による傷が出来ていく。

 

(強さとしては、二級下位って感じか…。

 で、伏黒は様子見か、とと。)

 

 二匹の犬の間から飛んでくる伏黒の拳。

 なるほど、術師自らも前衛に立つ感じらしい。

 伏黒は喧嘩殺法と言うべきか、実践的な動きで立ち回り、式神とのコンビネーションで俺に畳み掛けてくる。

 

(なるほど、鬱陶しい。

…だが!)

 

「…黒!」

 

 白犬に敢えて右腕を噛ませて、そのまま黒犬を殴り付け、注意が黒犬に一瞬逸れた伏黒に回し蹴りを放つが後ろに跳ぶ事でかわされた。

 だがこれで猛攻が止んだ。

 

加点法 神級 レベル真希先輩

 

 真希先輩レベルまで身体能力を引き上げて伏黒に迫る。

 白犬は主を守る為に更にきばを食い込ませようとするが、すでに右腕の筋肉を力ませて固定している為引き抜く事すら出来ない。 

 

「オロチ!」

 

 腹に衝撃。

 伏黒の影から伸びる大蛇が俺目掛けて突っ込んできたのだ。

 チラリと殴り飛ばした黒犬を探すが消えている。

 どうやら黒犬を引っ込めて大蛇を召喚したみたいだ。

 

(距離を取られたか。)

 

 大蛇によって伏黒との距離は15m程開いた。

 伏黒が式神を解除して右腕と腹に来る圧迫が消える。

 向こうも仕切り直しがしたいらしい。

 

「鵺!」

 

(速い…!)

 

 次に伏黒が呼び出した式神は鵺、巨大な怪鳥だ。

 まっすぐに向かってくる鵺を木刀和重で叩き落とそうとしたが、帯電している為横に避けた。

 帯電からみて、どう考えてもあれは麻痺攻撃。

 

(式神を使いこなしているけど、いるけどなぁ。)

 

 まあいい。

 接近戦に持ち込むために距離を詰める。

 

(伏黒の術式の欠点は影絵。)

 

 伏黒が次の式神を呼び出そうとするが咄嗟にガードをする。

 俺が地面を木刀和重で抉り飛ばす事で妨害したからだ。

 そのまま、近付き、ガードした腕の間を縫う様に木刀で突き飛ばす。

 

「ゲホ、ゲホッ…!」

 

 どうやらいい感じに胸を突いたらしく、呼吸が苦しそうだ。

 

「取り合えず、ここまでだな。

 あれ、肋骨逝った?」

 

 あ、血を吐いた。

 どうやら折れた肋骨が肺に刺さったらしい。

 自分の右腕を治して、伏黒を担ぐ。

 目指すは家入先生だ。

 

「模擬戦で肋骨が肺に刺さるって、君は馬鹿なのかい?」

 

「不慮の事故です。」

 

 頭おかしい人を見る目をする家入先生から目を逸らして安置台で気絶した伏黒を見る。

 いやでも手加減したんだけどなぁ?

 

(冷静に考えたら、俺の模擬戦て真希先輩と東堂しかやってないな…。)

 

 真希先輩は天与呪縛で身体能力が高いというか頑丈だし、東堂は東堂である。

 フィジカルに関しては伏黒は普通な事に今気付いた。 

 

「もう動かして平気だから、どっか行け。

 これから検死だ。」

 

 さてと、追い出されたので気絶した伏黒を背負って寮へと戻りますか。

 

「…ん。

 ああ、轟か。

 悪い、下ろしてくれ。」

 

「いやー、俺が手加減間違えたのもあるしもう少し楽にしてれば。」

 

「いや、おぶられている所を五条先生に見られたくない。」

 

「それもそっか。」

 

 暫く歩いていると伏黒が目を覚ましたので、もう少し寝とけと言ったが、理由を説明されて下ろした。

 二人で並んで歩いていると伏黒がポツリと話を切り出す。

 

「なあ、お前から見てさっきの動きどうだった?」

 

「悪く無いんじゃないか。

 状況に応じて式神を使いこなしてるし、式神使いが近接こなすのもセオリー無視で意表を突けるしな。」

  

 実際、伏黒の動きは悪くないと思う。

 喧嘩殺法による近接と式神との連携。

 式神を切り替える状況判断能力もある。

 

「ただ、まあ。

 一つ気になるとしたら、伏黒の術式って式神が目立つけど影が本質だろ?

 そっちを全然生かせてないから、勿体ないとは思う。」

 

「…影か。」

 

 式神も影絵を媒介に召喚する訳だし、伏黒の術式の本質は影ではないかと思うというのが俺の意見だ。

 伏黒からの説明や実際に使用している所を見ると、影を操る術式と式神の術式が合わさっている様に見える。

 

「…ありがとな、少し一人で試してみる。

 形になったら、また頼めるか。」

 

「構わんよ。

 あ、肺と肋骨ごめんな。」

 

 

 




模擬戦の過去の相手が頑丈過ぎて手加減出来ない主人公。
伏黒に関しては少しだけ強くなりましたが、原作より速く影に気付く位。

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