バフデバフ   作:ボリビア

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入学準備

 五条悟という胡散臭い自称教師と出会った次の日、早速呪術高専の関係者が我が家にやって来た。

 冴えないサラリーマンという印象が第一に来る男は混乱気味な両親と俺に呪術や呪いについての話をしてくれた。

 曰く、年間一万人の行方不明者や自殺者として扱われる人の大半は呪霊と呼ばれる人の負の感情や畏れから生まれるモンスターが原因である。

 呪術高専は呪霊に対抗出来る人間を呪術師に育てる育成機関であると同時に関東の呪術師の拠点であり、国の公的な機関である。

 大まかにこの二点の説明と証明、俺に呪力がある事を説明された両親は詐欺師を見る目で冴えないサラリーマン(伊地知と自己紹介していた。)を見て、俺が騙されているのではないかと疑っていたので、車が趣味である父の所有するバールを蝶結びにすると納得してくれた。

 

「それと、此方で勝手に調べた結果ですが轟君の御両親は御二人とも家系を遡ると呪術師の家系に当たったので才能は保証します。」

 

 両親の曾祖母位が地方のそこそこな呪術師一族の三男とか次女とかに当てはまるらしい。

 これには両親は別の意味で驚いていた。

 何でも二人とも子供時代に親が酒で酔っ払ったりボケ始めた本人から聞いた事があり、その話が切っ掛けで付き合ったらしい。

 

(いや、何で俺の話なのに親の馴れ初め聞かなきゃならんのだ?)

 

「母さん、これは運命だよ!」

 

「ええ、その通りよ貴方!」

 

 フフフ、アハハと両親のイチャイチャが始まった。

 何時もの事なのでスルーするが、多分独身童貞の伊地知さんにはとても辛いだろう。

 まあ、お陰で俺の呪術高専行きは上手く言った。

 後、学費は無料で寮完備、それとお給料くれるらしいやったね。

 

「では此方にサインをお願いします。

 寮の手配が出来次第、入寮となるので宜しくお願いします。

 後、轟君は一般からの入学なので三月中は担任の五条先生が基礎的な部分の指導を行いますので宜しくお願いします。」

 

 あの人マジで教師だったんだ。

 数日が経ち、入学予定の高校への入学辞退やら荷物の準備をしていると、入寮の準備が出来たと連絡があった。迎えが来るとの事で待っているとインターホンが鳴り、玄関を開けると五条悟がいた。

 

「やっほー。

 お迎えだよ。

 さっ、荷物は伊地知に任せて乗って乗って。

 じゃあ僕はちょっと君の両親に挨拶してくるから。」

 

 荷物をさっと奪われ、恐らく運転手をしていたであろう伊地知さんに投げ渡したと思ったら勝手に家に入っていった。

 

「…。」

 

「…はぁ、取り敢えず車の中で待ってましょう。」

 

 暫くすると両親を伴って五条悟が現れた。

 母が涙ぐんでる姿に眉を上げたが、恐らく呪術師になることのリスクやらを説明したのだろうか。

 ただ、正直言うと親に反対されても無理矢理入るつもりだから今更困る。

 五条悟に「息子をお願いします。」と頭を下げる両親に対して、五条悟も「任せてください。」と真面目に答えている姿は教師らしいと思った。

 

「さっ、行こーか。

伊地知出して。

 いやー、一般人を入学させる時って大体親が反対するけどスムーズに行って良かった良かった。」

 

 前言撤回、やっぱり尊敬とか無理だわ。

 

「取り敢えず今後の予定だけど、基本的にウチに入る生徒って代々呪術師の家の子供とかで最低限の呪力コントロールと自分の術式の把握は出来てるんだよね。

 君も何となく使いこなせているけど、春休みの間僕が暇な時にそこら辺の使い方を教えるから。

 何か質問ある?」

 

「呪力がMPぽい感じなのは分かるんですけど術式って何ですか。」

 

「簡単に言うと固有能力。

 呪力を持つ人間は体に術式が刻まれていて術式に呪力流すと術式が発動する。

 魔法使いより超能力の方が近いかな。」

 

 そういう事なら俺の術式は強化とかそんな感じになるのかな?

 

「呪力単体で出来る事って何ですか。」

 

「色々あるよ、力の塊みたいな物だからね。

 体を強くしたりとか、投げつけたりとか。

 でも効率悪いからおすすめしない。」

 

 呪力で体を強化出来るなら俺の術式は違うのか?

 …ダメだ、他の人間の使い方知らないから意味ないな。

 向こうに着いてから考えよう。

 それから、呪霊の成り立ちやら何で、学校に呪具を置いてあったのやら色々と俺の経験を呪術師としての知識に置き換えていると唐突に五条先生はぶっ込んできた。

 

「あ、そうそう。

 着いたら先ず学長と面談だから。

 因みに面談に落ちると入学取り消しね。」

 

「は?」

 

 …入学取り消し?

 つまり、アレか。

 面接に落ちたら親の涙も本来の入学自体も全部無駄になると。

 落ちたら高校浪人生になるのか、とんぼ帰りで家に帰るのか。

 

「…それ、先に言うべきですよね。」

 

「大丈夫、大丈夫!

 君なら大丈夫だって!

 ほらほら落ち着いて、呪力漏れてるぞ★。」

 

 死ね。

 五条悟への殺意を高めながら到着を待つ。

 運転席の伊地知さんが震えているがどうでもいい。

 

「お、着いた着いた。

 荷物は車に預けてていいよ。

 じゃこっからは俺一人で案内するから。

 さ、降りた降りた!」

 

 殺意を高めながら深呼吸で昂る呪力を押さえていると、目的地に着いたらしい。

 学校というか辿り着いた場所に関する印象は、山の中に無理矢理神社仏閣を詰め込んだという感じ。

 呪術師だからやはりそっち系の宗教中心なのかと関心したが、五条悟曰くハリボテらしい。

 

「こっからは歩いて向かうから。」

 

 五条悟に付いていき、内部を進む。

 玉砂利の敷地を進み石畳みを歩くと、神社ぽい所に辿り着いた。

 

「こんなかに学長いるから。

 五条悟でーす!

 新入生連れてきました!」

 

 ノックもなく堂々と入る五条悟に続いて中に入ると、ザ・本堂と言った場所で灯りとして幾つもの蝋燭が照らすが暗い印象を覚える

 そして奥にファンシーなヌイグルミに囲まれたグラサンとアゴヒゲのおっさんがいた。

 手には制作中と思われるヌイグルミを持っているから恐らく手作りだろう。

 

(完成度は高いがデザインがダセェ。

つーか、呪術師って変人しか居ないのか。)

 

「遅い。

 十分の遅刻だ悟。」

 

「だってさ、悟君。」

 

「…轟ではなく五条の方だ。」

 

(うわ、めっちゃダンディな声。)

 

「さて、君が轟悟だな。

 俺はここ、都立呪術高専の学長夜蛾正道という。

 早速だが少年、君は何故呪術師を目指す?」

 

 グラサン越しに確実に此方を見ながらいきなりシリアストーンで問い掛けてくる。

 もう面接は始まってるらしい。

 

「この力を活かす為。」

 

 一歩前に出て答える。

 

「嘘だが嘘ではないな。

 もっと正確に言ってみろ。」

 

(ばれてーら。)

 

「力を全力で振るうため。

 堂々と、大手を振ってこの力を思いっきり使いたい。

 呪術師になれば国のお墨付き付きで力を振るえるんでしょ?

 十分な理由だと思いますけど。」

 

「…幼稚でイカれてる。

 だが他人や正義を理由にしない点は気に入った。

 轟悟、君を歓迎しよう。

 悟、轟君に寮を案内してやれ。」

 

(あれ?

 こんだけ?)

 

「合格おめでとう!

 じゃ、次は寮に案内するから。

 荷物は伊地知に後で届けさせるから。」

 

…大丈夫か、ここ?

 自分で言うのも何だけど結構危険思想だと思うんだけどなあ。

 

「面接ってアレだけって大丈夫なんですか?

というか、あの回答で合格って大分攻めてますね。」

 

「呪術師も人手不足だし、僕の推薦だから落ちることはまあ無いんだけどね。

 それに、別に君が呪詛師になっても僕がいるし?

 道を外れるつもりなら精々気をつけて。」

 

 呪詛師っていうのは多分、呪術を悪用する奴の事なんだろうけど…

 

「随分、先生は自信があるみたいですね。」

 

「あるよ?

 だって僕最強だから。

 なんなら、寮に案内する前に君の術式の把握も兼ねて少し遊んであげるよ。

 大丈夫、手加減するから。」

 

 …別に俺は力を思う存分振るいたいだけであって、最強とかそういう称号に興味はない。

 けど、さっきの面接の件も含めて色々とイラっと来てる訳だし?

 この人の面に一発ぶちこめれば、さぞスッキリするだろう…。

 

「是非、宜しくお願いします。」

 

 

 




早速のフラグ。
主人公の名前は轟悟です。
時系列どうしよ…

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