次回も同じかは知らん。
虎杖が死んだことになって暫く、交流会の人数合わせの為に伏黒と釘崎出すから手伝えと真希先輩からお呼びがかかった。
繁忙期も終わりの時期なので、学生に回ってくる任務が減るし10月辺りまでは修業にはピッタリらしい。
伏黒と釘崎と言えば、虎杖が死んだ事になってから目付きが変わった。
虎杖の死に対しての責任という奴だろうか、親しい人間が死んだこと無い身としては良く分からない。
まあ、生まれてこの方人間関係よりも呪霊狩りの方が楽しかったし時間割いてたしで学校で喋る人間はいても遊ぶような友人はいなかったが。
というか、虎杖が生きてる事知ってる身としては少し申し訳ない。
全部、五条って奴が悪いんだ。
(あ、でも真希さんが死んだら少しは怒るかな?)
そんな事を考えながら、グラウンドに顔を出すと釘崎が宙を飛んでいた。
気分が良い。
「おせーぞ轟。」
「すいません。
てか、俺要ります?」
一年二人に対して二年の先輩三人というある意味贅沢な環境だと思うが。
俺が学ぶ側になったとして、正直真希先輩との組み手しかやること無いと思うし。
今も伏黒が真希先輩に遊ばれてるし。
余所見しながら捌ける辺り、絶対的な実力差を感じる。
「初日は団体戦だからな、お互いの実力とかスタイルを把握しとく必要あるだろ。」
(…あ、なるほど)
交流会は初日が団体戦で二日目が個人戦という伝統がある。
個人戦はともかく団体戦で勝利を目指す場合、連携や役割分担は重要である。
それに、他人からの視点による戦い方や術式の使い方の指摘は案外馬鹿にならない。
俺も、五条先生の指摘で術式把握出来た訳だし。
「ちょっと、何余裕かましてんのよ。
あんたも投げられなさいよ。」
休憩時間なのか、釘崎が絡んでくる。
どうやら、俺が同じ立場じゃない事に少し御立腹らしい。
「俺、準一級、お前三級。
お分かり?」
「…あ?対人には関係ねぇだろ?
表出ろよ。」
「もう表だよ。」
どうにもやはり釘崎とは反りが合わない。
プライドが高いとか、我が強いのは嫌いじゃない。
けど、何か致命的に合わないんだよな。
こう、無駄があるっていうか、何というか。
「ちょうどいい、お前ら戦ってみろよ。」
睨み合っている俺達を見てニヤリと笑いながら、真希先輩が喧嘩の許可を出した。
俺の実力を見たことあるのは、稽古している真希先輩と模擬戦をした事ある伏黒しかいない。
釘崎の術式を観察したかったし、丁度いい。
へし折ってやる。
向こうも隠していた釘と金槌を取り出して、投げられた鬱憤を晴らせると言わんばかりにやる気で既にグラウンドの真ん中へと移動している。
「気を付けろ、釘崎。
轟は強いぞ。」
伏黒がエールを送るがあの様子で届いているのだろうか。
釘崎は獰猛的な笑顔で此方を睨み付けている。
どうやら、反りが合わないのは向こうも同じらしい。
適当に距離を取って釘崎と相対する。
「頭カチ割ってやるよ。」
「出来ないことは言わない方が良いぞ。
恥ずかしいから。」
「あーもう、何でこうなったかな。
それじゃあ始め!」
いつの間にかレフェリーになったパンダ先輩の合図で模擬戦が始まる。
さて、どれくらいの強さで行くか。
真希さんレベルで様子見するか。
術式を発動して、身体能力を強化して釘崎が飛ばしてきた釘を手刀で弾く。
「ネイルガンの方が良いんじゃないか?」
「うる、せー!」
更に飛来する三発の釘、二本の狙いは顔で一本は僅かに遅れて右足に向かってくる。
顔にくる二本は囮で本命は足か。
(術式を見たいし、わざと食らうか。)
顔に迫る二本をかわして、敢えて右足の膝下に一本食らう。
術式反転による鎮静で痛みはないが、真希先輩レベルの強度で結構深くまで刺さってくる。
(にしても、この威力をフェイク込みで躊躇なく放ってくるのはどうなのよ。
普通ならこれだけで致命傷だよまじで。)
「は、吼えた割には大したこと事ねーな!」
「…一撃で勝ち誇るなよ。」
駆け出して、一発食らわせようと走りよるが刺さりどころが悪いのか右足の踏ん張りが良くない。
釘崎もそれに当然気付き、呪力の籠った金槌を手に接近戦を仕掛けてくる。
弱っているがまだ、俺の方が速いと思うが。
「…あれ?」
『芻霊呪法 簪』
仕掛けようとした瞬間、バランスが崩れる。
同時に、金槌によるこめかみへの攻撃で後ろに吹き飛ぶ。
(これが、芻霊呪法。
遠隔による呪力の衝撃か。)
術式反転によるデバフで痛みはない。
右足を見ると釘が刺さっていた所が抉れている。
釘崎の術式で吹き飛ばされたが、俺の今の強度で考えると、普通の術師なら右足がさよならしていると思うんだけど。
「ふん、私の勝ちね。」
釘崎は勝ち誇り動かない。
というか、俺じゃなきゃこめかみへの一撃で死んでると思うんだけど、死なないと信頼されているのだろうか。
もしくは、死んでも良いと思われているか。
けど、知りたい術式はこれだけじゃない。
勝ち誇ってる所悪いが、傷を治して真面目に術式を回して釘崎の後ろを取る。
「これが、芻霊呪法か。
悪くないんじゃないか。
当たればな。」
「…っ!?」
振り返った所で顎を一撫で。
人というのは面白いもので、顎を揺らすと脳が揺れる。
ボクシングの試合でもパンチが顎先にかすっただけで、崩れ落ちる。
人の鍛えられない弱点の一つである脳震盪を引き起こす。
脳震盪を起こした釘崎は崩れる様にその場で崩れ落ちる。
「手を抜いていた訳じゃない。
模擬戦だし、単純に釘崎の術式を体験してみたかったからな。
面白かったよ。」
言葉をかけて、余裕綽々に先輩達の元へと歩き出す。
全員がジト目を向けてくるが敢えて気にしない。
「…。」
釘崎は崩れ落ちたまま黙ってる。
(さて、どうする釘崎?
嘘は言ってないけど、あんな言い方されて黙ってる訳ないよな?
実力差があるからと折れる様なら田舎から出てくる訳ないよな?)
六本木の廃ビルでの姿を思い出せば、釘崎がここで折れるとは思わない。
釘崎の呪力が動き出す。
ジャージで作った即席の人形がこぼれ落ちる。
(そうだよな、こめかみぶん殴った時の、俺の血が付いてるもんな!
撃ってこいよ、共鳴り!)
共鳴りの条件は満たしてある。
人形と触媒。
既に、此方は正の呪力と術式による強化で脳と心臓は守っている。
これで釘崎の術式が何処に作用するか見極められる。
「…そんなに、味わいたかったらコレも喰らってけや!」
「よせ釘崎っ!!」
伏黒が式神で止めに入るがもう遅い。
釘崎の金槌は振り下ろされた。
『芻霊呪法 共鳴り』
「……ッ!?」
全身に爆ぜるような衝撃と共に駆け巡る釘崎の呪力が全身を内側から釘の様に貫く。
(両面の防御をしてこれか…!
いや、そもそも防御しきれてないのかっ…!?)
予想していた心臓や頭への直接的なダメージではない。
より深い、俺を構成する根元を叩いているのだ…!
故に呪力である程度防いでいるが、根本的な部分を理解してないから防ぎきれていない。
「だが…耐えたぞ!
…っ!?」
痛みと衝撃だけで、物理的なダメージはない。
釘崎の呪力を俺の強度が上回ったからだ。
振り返り、釘崎の方を向こうとすると全身に衝撃が走る。
(釘崎め、容赦なく二発目を打ち込みやがった…!)
振り返った時に見た釘崎の顔は女性がしちゃいけない表情をしている。
どうやら、煽りすぎたらしい。
既に三発目を行おうと金槌振りかぶってるし。
「何が耐えた、だよ、そんなに嬉しいならもっと喰らってけや……!」
呪力を消費したからか、最初の一撃よりも二発目は大分弱い。
これなら直ぐに動き出せる。
近付いて、三発目を打ち込もうとしている釘崎を気絶させて終わりだ。
走りよろうとした瞬間。
『動くな』
一瞬だけ強制的に体が止まる。
これは棘先輩の呪言か…。
一瞬だが立派な隙、目の前には真希先輩がおり鼻を摘ままれた。
「なに、ふんすか。
あのグリグリするの止めて下さい。
鼻の形変わっちゃう。
てか、縮地使えるんですね。」
「何はこっちのセリフだボケ。
仲間挑発して、誘ってんじゃねえよバカタレ。」
釘崎の方にはパンダ先輩と伏黒の式神が向かっており金槌を蛙に取られて、本人はパンダ先輩に首根っこ掴まれている。
「煽られたからって頭に血上りすぎだって。
呪術師は常に冷静にな。」
「…次は勝つ。
…オエッ。」
あ、吐いた。
脳震盪で無理矢理動いたら吐くわな。
というか、あれで次は勝つと言えるのか。
「いや、すみません。
釘崎の術式味わいたくてやりました。
二度としないんで、はい。
釘崎に水買ってきます!」
これは本音だ。
次から合意の元でしかやらん。
「ちっ、全員分買ってこい。
私、アクエリ」
「あ、俺コーラ。」
「昆布」
あ、緑茶ですね了解です。
「伏黒は何買ってくる?」
「一人じゃ持てないだろ、俺も付いていく。」
伏黒と自販機の元へと歩いていく。
高専は特殊な学校なので出入りする業者が制限されており自販機も少なく結構な距離がある。
「で、何か聞きたい事あるんじゃないの?」
親切心で動いたなら、伏黒は釘崎の介抱に向かうはずだ。
わざわざ荷物持ちについてくるって事は何かあるのだろう。
「…お前、何処から本気だった?」
「最初から本気だよ。
本気で術式知りたくて煽ったし。」
「そうじゃない。
呪術師としての本気だ。」
…うーん。
正直に話すかどうか。
いや、でも最近覚悟きめた伏黒なら大丈夫かな?
ま、いっか。
どうなろうと、俺が弱くなる訳じゃないし。
ここで折れても五条先生がケアするでしょ、うん。
俺は呪術師であって教師じゃないし。
「そういう意味なら、本気のホの字も出してない。
本気なら合図と共に心臓ぶち抜いてる。」
正直、それでも本気とは言えない。
今の俺が本気を出したらどうなるのだろうか。
伏黒に聞かれて、ふと考えたが分からない。
前に東堂に軽口言ったが、東京タワーへし折る位は多分出来るだろう。
(それでも真面目にやったらって感じだしなー。
本気とはまた違うか。)
一つ言えるのは今の俺では本気中の本気でも五条先生にかなわない。
そう考えると、本気とかは無意味な考えの気がする。
「…。」
俺の答えに伏黒は黙って考えている。
目が死んでないので心が折れてないと良いが。
「…なあ。
どうしたら強くなれると思う。」
強くなれるか。
呪術師は術式で強さが殆ど決まる。
俺の強さと伏黒の強さは違うしゴールも多分違う。
「俺の場合は半分以上、術式のおかげだけど。
うーん…あ、でも一番成長したのはあれだな東堂のバカと殺しあった時。
あれで、色々応用とか術式への理解広がったからな。」
東堂との縛りありの死闘。
あれで俺は術式の使い方を理解出来たと思う。
ゲームで例えるなら、理論値とか表に出ないマスクデータを考えて利用する戦い方を理解したというか。
東堂も死の淵で何か見出だしてたぽいし、結果だけ見るとお互いに実りあるものだった。
停学になったけど。
「伏黒もやるか?」
「…考えとく。」
これはやるな。
伏黒の術式は面白いと思うし、底が分からない。
式神も今扱える奴も強いし、御三家相伝の術式だ。
絶対、強い式神がいるはず。
「後、お前。
釘崎と喧嘩すんなよ。」
「嫌いじゃないけど、反りが合わないんだよ。」
この後、釘崎とは議論の末にジャージ弁償で一応仲直りした。
釘崎と合わない理由は多分主人公が悪い。
後、この世界線は釘崎は芋ジャージ持ってきてます。