バフデバフ   作:ボリビア

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前話は特に問題なさそうなので良かった


火山湖

 仲直りをしてから、釘崎とはたまに口喧嘩する程度になった。

 他に変わった事と言えば、釘崎の方からアドバイスを求めてくる事だろう。

 ただ、申し訳ないが俺は教師ではないので、ぼやっとした事しか言えない。

 

「釘崎に足りないのは実践経験と、後は呪力の質を磨けば?」

 

「質って何よ。」

 

「コントロールとか精度を上げて無駄を無くす。

 そうすれば、長時間戦えたり、より火力のある戦いが出来る。」

 

 後は縛りによる呪力の底上げとかあるけど、それは俺の領分ではないだろう。

 

「どうすれば良いの。」

 

「実践経験は先輩方に習って、呪力の質は俺が使ってたリングあげるよ。

 五条先生から借りたものだけど、多分大丈夫。」

 

 とか何とか言ったりする程度には仲間をやっている。

 そんな感じで任務も受けたり合同訓練したりして時間が流れて7月の終わり位の夜。

 一人で寮に居たら五条先生がやって来て、いつの間にか湖の上にいた。

 周囲を確認すると、俺を片手で掴んでいる五条先生が目に入った。

 もう片方には虎杖を掴んでいる。

 そして、目の前には特級呪霊と思わしき、頭に火山というか火山が頭になっている一つ目のヒトガタ。

 恐らく、大地への自然信仰とかで生まれたのだろう。

 

「どこ!?

 ねえ、ここどこ!?」

 

「よお、久しぶりだな虎杖。」

 

「え、あれ轟!?」

 

 五条先生から解放されて、水の上に立つ。

 沈まない、厳密にはゆっくりと沈んでるのだが。

 相変わらず五条先生の術式は反則だと思う。

 便利だな無下限術式。

 虎杖は良く分かってないみたいだが。

 

「え、先生どうやったの!?」

 

「うーん、飛んだ。」

 

「偶然ですか?」

 

「いや、襲われた。」

 

 長距離の瞬間移動は二度目だが、原理がマジでよく分からない。

 後、五条先生を襲撃するって余程の自信があるのだろうか?

 見た目的に、火属性だしテクニカルな事出来なそう。

 

「ということで、見学の虎杖悠仁君と轟悟君です。」

 

「ソイツは…!」

 

 呪霊は明らかに虎杖を見て驚いている。

 連れてきた事に驚いているというよりは、存在そのものに驚いている様に見える。

 

(虎杖が死んだと思っている感じか。

 って事は高専の情報は漏れているな。)

 

 呪霊の今の反応と五条先生への襲撃から、内通者がいるのは確定だろう。

 五条先生のスケジュールを把握出来る人間となると、やはり上層部か?

 まあ、今はどうでもいい。

 火山頭の呪霊はコミュニケーション取れそうな位に知能はあるし、内包する呪力が今まで一番多いというか桁違いだ。

 これが、本物の特級呪霊。

 今まで、見てきた呪霊とは格が違う。

 

(試してみたい。)

 

 今の俺のサンドバッグとして、満足出来る筈だ。

 

「今日は見学だよ。」

 

 術式を回して動こうとしたら、五条先生の無限で動きを止められた。

 正の呪力で打ち消して動いても良いが、見学と言うからには見せたい物があるはず。

 仕方ない、ここは引き下がるか。

 

「…何だそのガキども?

 盾か?」

 

「言ったでしょ、見学だって。

 ほら、僕教師だから。」

 

「足手纏いを二人も連れてくるとは、愚かだな。」

 

 やっぱり殺そうかな?

 虎杖と俺を同列に扱う辺り、無駄にでかい一つ目は飾りらしい。

 というか、シンプルに人間を舐めているのか。

 人間から生まれた糞の様な分際で良く吠える。

 

「大丈夫でしょ、君弱いもん。」

 

 五条先生に煽られた瞬間、噴火した。

 頭の火口以外にも両耳から吹き出しているから滑稽にしか見えない。

 というか、沸点低すぎだろ。

 だが、炎として溢れでる呪力は本物。

 感情的になって漏れだしている呪力だけで一級術師ですら燃やせる位には熱い。

 

「舐めるなよ、小童が!!!

 そのにやけ面ごと呑み込んでくれるわ!!!!」 

 

 気持ちは分かる。

 というか、五条先生を小童呼ばわりとか正気か?

 舐めているのは呪霊の方だろう。

 五条先生の真骨頂は規格外な超火力による広範囲攻撃。

 こんな人気の無い所で襲うとか、五条悟を知ってたら先ず取らない悪手だ。

 俺なら、都市部で襲う。

 釘崎以上に田舎者かつ、モノを知らない愚か者。

 知性があっても知能は無さそうだ。

 分析している間に、呪霊は両手で印を組んでいる。

 あのレベルの呪霊が印を組むとなると、恐らくあれが来る。

 まあ、五条先生いるから大丈夫でしょ。

 

「二人とも僕から離れないでね。

あ、やっぱ轟は一人で耐えてみて。」

 

 え。

 

「領域展開!!」

 

『蓋棺鉄囲山』

 

 膨大な呪力が周囲を包み込んだ瞬間、呪力は岩石に変わり俺達を包み囲み、そして溶岩が溢れだす。

 正に、火山としか言いようがない空間。

 灼熱地獄の様な空間があの火山頭の領域展開。

 

(これが領域展開か。)

 

 火山頭の呪力で満ちている、奴のホームグラウンド。

 術式を解けば、すぐさまに焼死するだろう。

 

「うん、轟は大丈夫みたいだね。」

 

 一人で頑張れと無茶ぶりされた瞬間に術式を体内で最大出力で回したから、少し暑い位にしか感じない。

 取り敢えず、最大出力で対応出来るので、耐熱にパラメーターを整えて無駄な部分の強化を減らして消費呪力を押さえる。

 うん、やはり領域の中和効果は空間そのものまでで、体内には及ばないらしい。

 にしても、空間を埋め尽くす呪力が濃い。

 流石は自然への畏れの化身と言った所か。

 入っただけでも普通は焼け死ぬだろう。

 

「さて、悠仁。

 これが、領域展開。

 呪力を凄く消費するけど、効果はでかいよ。」

 

「あ、解説してる間、殴っても良いですか?」

 

「ダメ。」

 

 さいですか。

 黙って虎杖への講義に耳を傾ける。

 話した内容はほぼ、聞いた事ある内容だ。

 一つは領域内でのステータスアップ

 もう一つは、術式の必中化。

 まあ、これは当たるだけなので術式次第では問題ない。

 というか、今さらっと特級の一撃を呪力で受けたなこの人。

 化け物か?  

 

「対処法としては呪力で受けるか、オススメしないけど領域外に逃げる。」

 

 …領域外への脱出か。

 異界である領域から脱出するには、外と接している結界の縁でなければならない。

 例えば、今みたいに領域展開されてから一歩も動いてない足元なんかも縁だ。  

 試しにしゃがみこんで地面に正の呪力を流す。

 すると、僅かだが外の湖が見えた。

 …結構呪力消費するが、逃げれるな。

 

「そして、「貴様の無限とやらもより濃い領域ならば中和出来、儂の術も通るのであろう?」

 

 おっ、話に入ってきた。

 というか、気付いて無いのか。

 

「うん、そうだよ。」

 

 軽い。

 仮にも生徒二人を死地に連れてきておいて、この軽さ。

 こういう所が尊敬は出来ないけど、信頼は出来る由縁だろう。

 

「灰すら残さんぞッ!!

 五条悟ぅ!!!」

 

 呪霊の本気の一撃が此方に迫ってくる。

 受けたら多分焼ける。

 俺一人なら問題ないが、全員となると正の呪力で打ち消すにも、込められた呪力量的に少し厳しい。

 が、白閃なら吹き飛ばせるだろう。

 対処案も思い付いたので実行しようと考えたが、隣の五条先生の呪力が昂ってるので止めた。

 

「領域展開への一番、有効な手段は何でしょう?

 はい、轟君。」

 

「此方も領域展開を行う。

 というか目の前来てますよ。」

 

「はい正解。

 じゃあ、領域展開。」

 

『無量空処』

 

 一瞬で塗り潰された。

 展開された五条先生の領域は例えるなら宇宙。

 無限とも思える星の光すら飲み込む無限の暗闇が支配する静寂な宇宙だ。

 これが、五条先生の領域展開。

 これが、洗練された領域……!

 明らかに、火山頭の領域とは違う絶対的な支配を感じる。

 

(これを越えねば、五条悟に勝てないのか。)

 

「ここは無下限の内側。

 知覚、伝達、生きるという行為そのものに無限回の作業を強制する。

 皮肉だよね、全てを与えられると何も出来ずに緩やかに死んでいくなんて。」

 

 いつの間にか、俺と虎杖を傍に置いて呪霊の頭を掴みながら、領域の情報開示を行っている。

 情報開示が正しいなら、呪霊は今何が起こっているのか理解出来ないのだろう。

 領域を展開されてからの情報が完結せずに続いている。

 このまま、展開し続ければ呪霊はこのまま何も理解出来ずに朽ちて行く。

 発動しただけで、必殺となる領域。

 知らなければ火山頭の様になるし、知っていても何時発動するか分からない為、常に警戒する必要がある。

 

(…厄介過ぎる。)

 

 俺と虎杖が無事なのは、五条先生に触れているからか、単純に対象を選択出来るのか。

 これが、最強の領域展開か。

 

(……まだ、遠いな。)

 

「聞きたい事があるから、これくらいで勘弁してあげる。」

 

 火山頭が千切られて胴とおさらばして文字通り火山頭になり、領域が解除された。

 首だけになって生きている事に虎杖が驚いているが、呪霊はその程度では死なない。

 いや、普通なら死ぬか。

 湖畔に降りて、五条先生の尋問が始まる。

 

「誰に言われてここに来た?」

 

 格の違いは見せた。

 もはや呪霊の命は五条先生の手の平の上であり、生殺与奪はこの人の気分次第。

 火山頭の方は見た感じ、プライドは高そうだし話すくらいならと自爆しそうなものだけど。

 五条先生もそれを分かっているのか、ふざけ始めている。

 

「…!」

 

 ボーッと眺めていると、上から飛来物。

 植物で作られた槍のような飛来物は丁度火山頭と五条先生の間に落ちて、一瞬でお花畑を作り出す。

 

(わー、癒される~。

 最近花とか見てないからな~。

 そういえば、釘崎は紅一点とほざいてたっけ?

 って違うだろ。)

 

 我に返ると、目の部分から枝が生えた片腕の呪霊が頭を抱えて逃げていった。

 どうやら、あれも特級呪霊。

 火山頭より弱いが、十分化け物クラスだろう。

 追おうとしたら、木が足に絡み付いている。

 虎杖も同様で、五条先生がそちらに気を取られている間に逃げられた。

 気配を消すのも上手いし、五条先生本人ではなく、生徒である虎杖と俺を狙う辺り火山頭より余程知能はあるらしい。

 にしても、特級呪霊が徒党を組むとは。

 五条悟を警戒してだと思うけど、それにしては火山頭が迂闊過ぎる。

 

(襲撃って事は五条先生のスケジュールを把握出来るレベルの内通者がいる。

 流石に、呪霊と組むとは思えないから仲介役の呪詛師がいると見るべきか。

 あの火山頭はプライド高そうだし、呪詛師の言い分を信用せずに五条悟を取りに来たのか?)

 

「あのレベルが徒党を組むなんて、面白くなってきたね轟。」

 

 ある意味呪術界の危機なのに楽しそうだなこの人。

 

「まあ、サンドバッグは多い方が良いですね。

 ……火山、森と来たら後は海かな。」

 

 五条先生と会話してると何か後ろで、虎杖が土下座でブツブツ呟いているがスルーしとく。

 そういうお年頃なのだろう。

 

「皆にはあれくらいは強くなって欲しいんだよね。」

 

(無茶苦茶な…。)

 

 虎杖も驚いている。

 今のままだと、あれをぶん殴るイメージは出来ないだろう。

 

「目標を設定したら、後は駆け上がるだけ。

 悠仁はこれから一月、引き続き映画見ながら、僕と轟と戦って貰うから。

 前半は僕が基礎を教えて、後半の実践は轟だから。」

 

 ようやく、仕事か。

 

「家入先生前提でやって良いですか?」

 

「交流戦までにバレなければ良いよ。」

 

 家入先生の治療アリなら、東堂式でいっか。

 頑丈らしいし大丈夫でしょ。

 虎杖がどれだけ強いか知らないけど、とても運動能力高いから、もしかしたら楽しめるかも知れない。 

 

「轟って強いの?」

 

 虎杖の分際で俺の実力を疑ってるらしい。

 

「丁度、湖だしお前の体で水切りしてやろうか?

 多分、向こう岸まで余裕だぞ。」

 

「疑ってすみませんでした!」

 

 適当な木を引っこ抜きながら、提案すると土下座しながら謝ってきた。

 分かればよい。

 虎杖の中で土下座が流行っているのだろうか。

 映画とか言ってたし、変な影響受けたんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 




轟の術式が中和されてないのは、術式を体内で実行してるからです。
 体表は正の呪力でガード。
人体の内側って生得領域見たいな感じだし。
色んなファンタジー系作品でも、人体内部は強力な結界という描写あるし。
似たような理屈で他人を反転術式で治すのが難しいと考えた。
日本三大既見感作品とか原作作者が自称してるし多分いける。

後、漏瑚の事ボロクソ言ってますが多分気が合う。
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