バフデバフ   作:ボリビア

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前話「名前を付けよう」について一部加筆しました。
また、術式名を「加点法」に変更します。



先輩との交流

「今日の所はこんな感じで、明日からガンガン鍛えるからよろしく!

 あ、そうそう僕これから用事出来たから寮には一人で行って。

 はいこれ地図。

 あと荷物は既に運ばせてあるから。

 じゃーねー!」

 

 というわけで訓練所っぽい所を出て寮へと一人で向かっていた。

 寄り道で時間食ったとはいえ、本来は寮への案内が仕事なのに其を放棄するのはどうなんだろう。

 

(最強なのは分かったけど、いまいち教師としての尊敬を持てないよなあ。)

 

 五条先生の評価や自分の術式の可能性、呪力について等、今日学んだことを自分の中で整理しながら歩いていると前を見てなかったせいで人にぶつかった。

 

モフっ!

 

「おっと、ごめんなさい。(モフ?)」

 

 毛皮のような感触に首を傾げながら、前を見るとパンダの背中があった。

 一瞬、置物かと思ったが此方を振り替えってガッツリ見てくる。

 

「ん?

 誰だお前。」

 

(いや、こっちのセリフだよ。

 なんだよ二足歩行で喋るパンダって。)

 

「いくら?」

 

 パンダの向こうから更に小柄な少年が鮭の卵の名前を疑問系で呟きながら覗いてくる。

 

「おーい。

 何してんだよ、さっさと行こうぜー。」

 

 更に遠くから女性の声が聞こえてくる。

 ここで漸く俺は情報の整理が出来てきた。

 いや、整理することを諦めた。

 

「えっと今年から此方でお世話になる。

 轟悟です。」

 

「あー、お前がパンピーから入学してくる奴か!

 俺はパンダ、二年生だ。

 こっちは狗巻棘、呪言師でなおにぎりの具でしか喋らない。

 で、あっちに居るのは真希。

 よろしくな!」

 

「しゃけ。」

 

 先輩なのか。

 というか、パンダなのか。

 

「よろしくお願いします。

 パンダ先輩、狗巻先輩。」

 

 改めて先輩二人を眺めると、パンダ先輩は完全にパンダ。

 狗巻先輩は口元を隠している。

 呪言師というのは多分、言葉に呪力を乗せるからおにぎりの具しか喋れないのだろうか?

 

「なにお前らぼーっと立ってんだよ。

 誰だお前?」

 

 向こうから見たらパンダ先輩に俺が隠れてるせいで二人が長々と立ち止まってる様に見えたのか、もう一人の先輩、真希先輩と思われる人が戻ってきた。

 

(ポニテ、メガネ、おっぱい。

 最高か?)

 

「自分!

 今年から入学する、轟悟です!

 よろしくお願いします!」

 

「おー、お前がパンピーから入学するとかいう一年か。

 あたしは禪院真希。

 名字は嫌いだから名前で呼べ。」

 

「よろしくお願いします!

 真希先輩!」

 

(俺達の時とテンションちがくね?)

 

(たらこ。)

 

 パンダ先輩と狗巻先輩がヒソヒソしてるがスルーする。

 イロモノしかいないと思ってたけど美人な先輩いて良かったー。

 

「で、轟はここで何してんだよ?」

 

「五条先生に寮への地図渡されて、考え事しながら歩いてたらパンダ先輩にぶつかってしまって。」

 

「ふーん。」

 

 真希先輩は興味無さそうに地図を覗き込んでくる。

 あ、いい匂い。

 

「お前、これ女子寮だぞ。」

 

「は?」

 

「え、お前女なの?」

 

「高菜。」

 

 真希先輩に言われて慌てて地図を確認すると、丸印が有る所は確かに『女子寮』と書いてある。

 そして、丸印から一本の細い矢印が伸びておりその先に『こっちが男子寮』と記されてある。

 思わず地図を握りつぶしてしまった俺を誰が責める事が出来るだろうか。

 

「パンダ先輩、狗巻先輩、ちゃんと付いてますよ。

 そしてくたばれ、クソダサ目隠し野郎。」

 

「あっ、お察し(合掌)。」

 

「…たらこ(合掌)。」

 

「あー、ドンマイ。

 せっかくだから寮まで案内してやるか。」

 

 そのまま寮に着くまでの間、先輩達の事を聞いて、自分の術式の事、入学経緯やらをパンダ先輩が聞いてくるので話す事になった。

 追加で先輩達について分かったのはパンダ先輩は突然変異呪骸とかいうワケわかんない存在で実はパンダじゃないらしい。

 真希先輩は呪具という武器のスペシャリストで天与呪縛とかいうので、呪力や術式が無い代わりに身体能力が凄いらしい。

 確かに、歩いてるだけで何か違う気がする。

 後、乙骨先輩という凄い二年の先輩がいるらしいが今は海外らしい。

 

「なあ、轟の強化って他人にもいけるの?

 あ、俺基本名前呼びなんだけどアッチの悟と被るから轟って呼ぶな。」

 

「俺もさっき、まるで学長に自分が怒られてるみたいな錯覚食らったんで寧ろ名字呼びでお願いします。

 服とかバットとかには使った事有るんですけど、他人はやったこと無いから分かんないっす。」

 

(分かんないが、多分感覚的には出来る気がする。)

 

 ただ、今の俺だと呪力なのか術式なのか曖昧だから絶対やらないけど。

 

「そっかー、他人に使えれば棘とか超強化出来んのになー。」

 

「しゃけ。」

 

 狗巻先輩の呪言は言葉で相手を支配出来るらしいが、呪力の消費より肉体への負担がデカイらしい。

 確かに俺の術式が他人にも有効ならそこら辺はカバー出来るだろう。

 

「じゃあ、俺の術式が他人にも使えたらコンビ組みましょうよ。

 俺が背負って高速移動して、呪言ぶつけまくるとか。」

 

「しゃけ。」

 

「チートだろそれ。」

 

「おい、着いたぞ。」

 

 先頭を歩いていた真希先輩が立ち止まる。

 先輩の先には大きめのアパートぽい建物があった。

 ここが男子寮か。

 

「俺はここ住んでないけど、棘が住んでる。

 後、お前以外にも入学予定の一年が先に入っているぞ。」

 

「じゃ、私らはこれから用あるからまた今度な。」

 

「タラマヨ。」

 

「皆さんありがとうございます!」

 

 先輩達とは寮の前で別れて寮に入ろうとするとパンダ先輩だけ戻ってきた。

 俺の肩をポンと叩きつつ。

 

「ちなみに、真希と憂太はいい感じだから諦めろ。」

 

 そう言って戻っていった。

 俺は失恋した。

 

 


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