バフデバフ   作:ボリビア

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お久しぶりです。
最近、ワートリが個人的にあつい


無限と増殖

「カハッ…」

 

 血を吐いたのは轟だった。

 右腕は万力に絞られたかの如く潰されて、ひしゃげていた。

 反対に左腕は内側からいくつもの風船が詰め込まれたみたいにボコボコで歪んでいた。

 

(やっぱり、完全に掌握できた訳じゃないか。

 目もズキズキするし。)

 

 無下限術式を使用した代償が体全体に現れていた。

 肉体に術式が根付くより前に術式を運用した結果、全身に無限による拡散と収縮の反動が発生していたが、魂を強化した事による肉体の強度と治癒によって無理矢理抑え込みながら戦闘を行っていた。

 両腕がひしゃげているのは『茈』を放つ事を優先し、高純度の順天と反転を行使し治癒に呪力を廻せなかったのもある。

 

(しかも敵生きてるし。)

 

「いいぞ、退屈凌ぎと思っていたがここまでの強者とは。」

 

 右半身の欠損。

 轟が与えたダメージだが、宿儺は生きていた。

 片腕片足、顔の半分近くを無くしていても宿儺は焦りを見せず悠々と肉体を再生させていた。

 

(これが呪いの王か、かなり呪力減ってる筈なのに底が見えねぇな。)

 

 茈によって吹き飛ばされて奇麗になったビル群に月明かりが差し込み宿儺を照らす。

 

「で、ラウンド2と行くか?」

 

 宿儺と同じく全身の治癒を終えた轟の目は爛々と輝いていた。

 轟のダメージは自傷によるモノで宿儺は回避したといえ右半身を消し飛ばされた。

 宿儺の手札がこれだけなら、この場で祓える自信が轟にあった。

 

「いや、やめておこう。小僧もそろそろ目覚めるだろうしな。」

 

 宿儺は己の指が先程から意思とは無関係に僅かだが動き出しているのを感じた。

 

(右半身の欠損と修復でかなり呪力を使ったか…予想よりも戻ってくるのが早いな。)

 

「ならさっさと引っ込めよ、寄生虫。」

 

「貴様も似たような者だろうが。」

 

 互いに悪態を付いていると、宿儺が目を閉じた。

 

「轟…!

 ってあれ、何で半裸なの俺!?なにこのズボン!?」

 

 独特の紋様が無くなり、目を覚まして先ず己の姿に驚いた虎杖に思わず笑ってしまった轟。

 

「よお、おかえり。」

 

「あ、そうだ!

 状況は!?

 てか、目どうしたんだ轟!?

 それより皆は!?」

 

「あー、そういうのは後でにしろ。

 取敢えずお前は結界の外に出とけ邪魔だから。」

 

 自分が全裸に近い状態で有る事や、周囲の建物が壊れている事等の気絶してる間に起きた様々な事に驚いている虎杖をスルーし、轟は現状の把握を行おうとして諦めた。

 

(…だめだな。

 馴染む前に術式を使って眼そのものがショートしてる。

 眼の回復に数分、無下限術式はもうちょっとかかるな。

 宿儺相手にはしゃぎ過ぎたか…。)

 

 未だに血が流れる左眼を抑えながら、己の失策を恥じる。

 無下限術式と六眼の試運転のつもりで宿儺に挑んでいたが、思いの外、善戦できて真面目に戦ってしまった。

 

(まあ、術式が全身に走ったから完全に馴染むまでの時間が多分減った分オッケーとして後残ってるのはツギハギと寄生虫、後は受肉した呪霊一匹と呪詛師が数人といった所か。)

 

「虎杖!

 お前は高専の術師と合流して結界の外へ逃げとけ。

 いいか、高専以外の術師とは合流するなよ!」

 

(五条先生が封印された今、虎杖を生かす理由が術師界には無い。)

 

 己の上着を投げ付けて命令を下し残りの危険存在である、真人と夏油傑を祓う為に歩き出し、その背中に虎杖の声が届く。

 

「待て、俺も行く!

 真人なら俺が適任だろう!?」

 

「魂の知覚は俺でも出来るようになったから要らん。

 それより、直ぐに処刑されないように高専の人間と合流して終わった後の事を考えてろ。

 丁度よく伏黒も来たな。」

 

 二人の頭上を影が照らした。

 伏黒が鵺と共にやってきたのだ。

 

「コレをやったのは宿儺と轟か?」

 

 伏黒の指摘するコレとは渋谷の現在の惨状の事であった。

 ビルからビルに互いを叩きつけ合いながら争った結果、幾つかの建物が倒壊し最後に放った茈はいくつもの建築物に大穴を空けていた。

 破壊の中心に虎杖と轟が居る時点で伏黒は宿儺が暴れたと推測したのであった。

 

「ほとんど宿儺だ、抑えるのに苦労した。」

 

 轟は全てを宿儺のせいにした。

 虎杖は宿儺が舌打ちした気がしたが無視した。

 

「伏黒は取敢えず虎杖と釘崎も回収して逃げろ。

 いや、五条先生が封印された今だと結界の中が安全か。

 取敢えず釘崎はアッチの方向に居るから合流して3人で行動しろ。」

 

 轟は釘崎が居るであろう方向を指さして二人に対して背を向けた。

 虎杖と伏黒はまだ言いたい事や聞きたいことが有りそうだが、宿儺を抑えたという事実を前に一歩引いた。

 この非常事態で術師最強なのは轟であるからだ。

 

「…後で色々聞かせろよ。

 行くぞ虎杖。」

 

「…轟!

 サンキューな。」

 

 伏黒は事態の解決を優先し、虎杖は宿儺を止めてくれた事に感謝を残して鵺と共に飛び立った。

 轟は振り返らずに一点へと向かう。

 六眼が回復して直ぐに気付いた異常。

 

「どういう手品だおい?」

 

 轟が目指した地点、スクランブル交差点には大勢の真人が立っていた。

 

「「アンタのお陰だよ!!!」」

 

 轟の返答に対して数百の真人が興奮を隠せず返答し、轟の近くにいた数人が正の呪力によって吹っ飛ばされた。

 …吹っ飛ばされたのだ。

 呪霊である真人が。

 轟の眼の前には体がひしゃげて血が吹き出し倒れ込んだ複数の真人が映っている。

 六眼も眼の前の存在が真人である事を告げている。

 

「アンタが俺に教えてくれたんだ。」

 

 一人の真人が呟く。

 

「その目、五条悟から貰ったんだろ?」

 

 瓦礫に座った真人が呟く。

 

「その眼には魂が宿っている。」

 

「小さいとはいえ、2つの魂が人の体に入っているのに死なない。」

 

 ポツポツとニヤニヤと真人達が喋りだす。

 

「二つの術式を使いこなせる、その姿を観察したんだ。」

 

 魂の領域に関しては真人は轟の上を行く。

 

「気付いたんだ。」

 

 真人の嗤いが止まらない。

 

「眼の魂に呑まれないで抵抗出来るなら、逆も出来るよね?」

 

「…テメェ、やりやがったな。」

 

「「「そう、全部俺さ!」」」

 

 人を改造し続けた真人だから気付いた新たな可能性。

 やることは簡単だった。

 一般人の魂に自分を埋め込むだけ。

 埋め込む際に真人に適合する形にすれば、自然と魂は真人に染まる。

 呪霊の魂の質と一般人の質では話にならない。

 植え付けられた人間は魂が呑まれて真人になる。

 その結果がこれだ。

 地下に居た生き残りで試して成功してしまった数百の受肉した真人が轟の前にいる。




敵にもテコ入れ。
ちょっと今時系列確認できないけど、話の流れは多分大丈夫。

侵食を防げたり、虎杖みたいに魂が同居するなら魂を侵食してもよいよね?
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