バフデバフ   作:ボリビア

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誤字修正や感想は助かってます。


溜息

 他者の魂を侵食することで自己増殖する新たなる業は真人の生存確率を格段に引き上げた。

 既に何十人かは両手を鋭くさせたり、足の形が草食動物の健脚になっている為、どうやら術式も使えるらしい。

 他者を喰らい増殖する呪いへと真人は化けた。

 

「だる。」

 

 そして、ノーモーションで放たれた無下限術式の順天「蒼」により発生した引力によって潰された。

 更に無下限術式の反転『赫』が数十の真人を吹き飛ばした結果、ビルに沢山の赤い染みが出来た。

 

「受肉したって事は普通に死ぬって事だよな?」

 

 轟は真人の群れに突撃、片手で眼の前の真人の頭を握り潰し、もう片方の手で隣の真人の首を刎ねた。

 蹴り潰したり胸を貫いたりしながら更に数十の真人が死んだ。

 真人もただ殺られる訳では無い、姿形を変えて徒党を組んで轟へと向かっていた。

 全てが真人であるから肉体を繋げて巨大な拳を放ったり、頭を潰されたら別の真人が自身の体の一部を頭にして繋げる事で復活させたり、欠損した真人がバラバラに砕けた真人で肉体を補う。

 地上にいる真人だけではない、地下にも大勢の人がまだ生存し轟が真人を殺すより早く新たな真人へと新生していく。

 全てが同じ魂を持つ異常の受肉体は幾ら殺しても数が増すばかりであった。

 

(キリがねぇ。)

 

「どうした轟ィ!?

 手を休めている暇があるのかい?

 どんどん俺は増えていくよ?」

 

 無下限術式と強化された肉体をフル稼働して真人を殲滅するが足りない。

 中途半端に殺しても効果はない為、存在を維持できない様に一片残らず殺さくてはならず、どのような場合でも丁寧な作業は時間がかかる。。

 

「砕けちった肉体も俺なんだよ?

 ほぉら!!」

 

 肉片を残す位に中途半端に殺すと、肉片に別の真人が触れて肉片に宿る魂でツギハギの生き物を作り出す。

 それは爬虫類や昆虫、小動物へと姿を成して渋谷中へ拡がっていく。

 

(渋谷から出したら不味いか…

 まて、何故まだ渋谷に留まってる?)

 

 真人が一人、あるいは一匹でも逃がせば明日は無い。

 微弱な呪力しか持たない一般人だけでなく二級クラス以下の術師すら怪しい。

 日本国民全てが真人と成れば日本は終わり次に世界も終わる。

 真人はもはや世界の危機である。

 だからこそ轟は分からなかった。

 轟の知覚と六眼で調べる限り真人の総体はまだ渋谷にいる。

 眼の前にいる数百の真人以外にも多くの真人が渋谷中に拡散されているが、一人も渋谷から外に出ていない。

 

(縛り…?

 違うな、真人にとって魂の汚染は難しい話じゃない。)

 

 宿儺の線も考えたが、六眼で視たかぎり虎杖達の周囲に真人は居ない。

 逆に最も真人が存在するのは轟の周りである。

 故に、目的は轟にある。

 轟はふ、と己の腕を見た。

 真人を潰している己の腕にはヒビ割れた古傷が幾つも走っている。

 本来の術式とは違う無下限術式を付与された呪力によるダメージによって出来た傷。

 

「なるほど、俺に無下限を使わせたいのか。」

 

 真人は轟の魂の状態を

 

「あ、ばれた?」

 

 轟が己の狙いを看破した事を理解した真人の九割は一斉に渋谷の外を目指した。

 真人は轟の魂の状況を轟以上に理解している。

 

(魂を強化して侵食を防いでるつもりだけど、完璧じゃない。

 術式を使用させてズレている間に肉体にダメージを与えるのは失敗、失敗。)

 

 無下限術式を帯びた呪力は轟の体にとってまだ異物である。

 現在、轟は術式を使用した際の全身へのダメージを魂を強化する事で肉体の強度を上げて対応している。

 

(術式の呪力で傷付いた体を治す際に六眼の呪力を取り込んでるから、上手く行けば肉体と魂が乖離して殺せると思ったんだけどな。)

 

 術式の呪力は六眼の呪力でもあり、傷つけられた肉体は六眼の呪力による汚染で少しずつ六眼に肉体の割合が阻まれていく。

 故に無下限術式を多く行使させる事でバランスの破綻を狙って断続的に攻撃を行っていた。

 

「あの感じだと2日くらい攻め続ければ暴走したのにな〜。」

 

 次のプランの為に1割の真人が轟を攻め続けて、残りの真人は渋谷から四方八方に逃走を図っていた。

 呪霊達の『呪霊が人類に取って代わる』という目的達成の為には、轟と無下限が邪魔なのは変わりない。

 故に不安定な状態の今の轟を崩すのがプラン1ならばプラン2は『延命と研究』である。

 方法はシンプル。

 全国で自分を増やして増やしまくるだけ。

 自己増殖と逃走を同時に行い、潜伏し自己増殖の研究を行う事がプラン2の目的である。

 真人自身、人を使った自己増殖方法自体は確立したが『数百人の真人なら何が出来るか。』については未知数である。

 

(俺が百人いたら何が出来るかな?

 轟みたいに術式を俺にしたら術式貰えるかな?

 真人同士で子供作ったらどうなるのかな?

 ああ、ありがとう轟!

 楽しくてしょうがないよ!!)

 

 真人は自己に対する新たな好奇心に興奮を隠せなかった。

 

「「いざ、全国へ!」」

 

 




受肉した結果物理的に殺す事が可能になったけど、肉体は質量保存の範囲内なら自在に変えられるし、触れられたら負けのクソゲーは変わらないというね。

ちなみに、増殖した真人はそれぞれ自我を持っでますが本質が呪霊のため善性に目覚めることはナイです。
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