「仕方ない、手を貸そう。」
手元の籠で暴れている鳥の姿をした真人を眺めながら、夏油もとい羂索は轟悟に手を貸すことに決めた。
と言っても帳の条件を『真人だけを外に出さない。』に変えただけだが。
羂索としても次の計画に進むためには真人の術式が欲しいが、真人そのものは要らないし、帳の変更で羂索が裏切った事を察した真人が百人来ようと今更問題ない。
本来の計画では虎杖悠仁への殺意を高め戦わせる事で弱体化させて取り込む算段だったが、轟悟という虎杖悠仁の上位互換と言っても良い存在のイレギュラーの出現で計画は破綻した。
(轟の進化を促して、真人を捉えやすい形にしたのは良いけど、まさか片目を預けていたとはね…。
五条悟の劣化とは言え、放置すれば計画に支障が出る。
いや、彼はまだ若い。
政治で縛り付けるか?)
現在の轟悟の状態は呪術師達にとっても、非常にイレギュラーな存在。
無下限と六眼が移植出来たという事実だけでなく、全く血筋が違う存在が使いこなす時点で古い存在程、面白くない反応を示すだろう。
(この騒動自体、五条悟に責任を負わせるし高専を人質に取れば派手な動きは見せられない。
仮に暴走した所で、所詮劣化な時点で方法はある。)
所詮、人間である轟悟と今なお増え続ける真人なら今すぐに対処すべきなのは真人である。
「それに術式そのものは確保済みだし。」
羂索は足元の小さな鳥籠に入ったツギハギの真人を見て微笑む。
増殖を成功させる前の真人の失敗策である、鳥の真人は術式を持っているが扱う知能が無い。
こういった失敗策は幾つか存在したが、真人が許さず処分した内の一体を密かに確保したのだ。
手のひらを向けて術式を行使すれば簡単に呑み込めた。
「取りこんで事を起こそうにも、真人が増えすぎて影響が出るかもしれないし早く処分したまえよ轟君。」
術式の確保という目的を果たした羂索にとって、現在の懸念は大量の真人のみ。
それと、羂索とは別に真人に対して行動を開始した者がもう一人。
『赤血操術 百歛』
圧縮された血液が真人の体を穿つ。
特級呪霊であり受肉体である腸相の呪血はまたたく間に真人の肉体を汚染し腐敗させた。
「ひどいなぁ。
俺達仲間だろ?」
別の真人がニヤニヤと煽るが激怒した長男は止まらない。
「黙れ…!
お前に弟は殺させんぞ!!」
腸相は虎杖との対決の後、虎杖を末弟と認識した。
加茂憲倫によって生み出された者、長男として新たに生まれた虎杖悠仁は守るべき存在。
故に、真人は敵である。
増殖している事は厄介だが、受肉してるのであれば腸相にとって殺すのは簡単である。
腸相の真骨頂は赤血操術ではなく『猛毒の血』と『呪力の血液変換』の二つであり、尽きる事無い猛毒と受肉した真人の相性は最悪である。
既に虎杖悠仁を守るべく気配を一直線に向かいながら、二十人の真人を殺している。
「お兄ちゃんが行くから待ってろよ!!
悠仁ィ!!」
「うわっ…
急に寒気が…」
「馬鹿な事言ってないで集中しろ!!
今だ釘崎!!」
釘崎と合流した虎杖と伏黒は連携して真人の対処に当たっていた。
最初は虎杖をサポートする形で立ち回っていたが、受肉体であると分かってからは伏黒も攻撃に参加していた。
触れられればアウトだが、式神を全面に出しつつ、影を手足に纏わせる事で対処していた。
「よっしゃあ、準備出来たぁ!
喰らえや十万円!」
伏黒が影で縛った真人に札束と釘が打ち付けられると周囲の真人が同時に崩れた。
釘崎野薔薇は3人の中で最も活躍していた。
釘崎の術式『皺霊呪法』は魂に関する術式であり、同一の魂を持つ真人の軍勢に対して同時にダメージを与えられる。
対象とする真人の数と金銭を捧げる縛りで、複数の真人を同時に殺していく。
(アイツの指摘で強くなったのがムカつくけど、一度にぶち殺せるのは気持ちいいわね!!)
ある日の授業で釘崎は轟から術式に関して指摘された。
『釘崎の術式が弱いのって、呪力だけで呪ってるからじゃね?』
指摘された瞬間、釘崎は自分の術式を弱いと言われて激怒しトンカチをフルスイングしたが、後々言われてみれば確かにそうだと思い色々試した結果、己の価値ある物を犠牲にする縛りとして、金をぶっこむ事にした。
お金は大事だが、呪霊をぶっ殺せば金は手に入るのだから。
『皺霊呪法 金色打法』
釘崎の新たな技は今回の戦場でこの上なく輝いていた。
感想欄の指摘通り、真人群団に対して一番相性が良いのは釘崎だけど数が多すぎて分散されるので数を絞って対処してます。