バフデバフ   作:ボリビア

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校外実習

 術式の内容を明文化した後、五条先生は昼飯のつもりとしてカステラと紅茶を置いて何処かに消えた。

 また何かしら企んでるのか単純に忙しいのか分からないが、気にせずカステラを食べる。

 その後、休憩を挟みつつ粗大ごみをふんだんに使って術式の意識的な使用方法や実践での活用を模索してながら日が落ちるまで過ごしていると、五条先生がニコニコしながら戻ってきた。

 あの顔は多分ろくでもない事を考えている気がする。

 

「実習行こっか。」

 

 厳密には校外実習と言いながら先生に連れられて車で学校から移動する。

 移動中、晩飯として渡された大福を食べながら運転席を見ると伊地知さんが此方をチラチラ見ながら青ざめた顔で運転してる。

 

「そういえば、伊地知さんって五条先生の付き人なんですか?」

 

「そうだよー。

 二年下の後輩だからパシってる。」

 

 五条は肯定してるが、伊地知さんは違う違うと必死に首を振っている。間違ってるだろうが、扱い的には多分合ってる気がする。

 

「後、伊地知さん顔真っ青ですけど大丈夫ですか?」

 

「あっ、そうそう今回の実習というか三月中に行った実習は全部他言無用ね。」

 

(あっ、察し。)

 

 俺の疑問を遮るように、告げた先生の今の言葉で俺の疑問と伊地知さんの顔色が悪い理由が一瞬で分かった。

 これ規則的にダメだ。

 それも伊地知さんの顔色からして相当にヤバイのだろう。

 対外的に見れば、三月のこの時期は厳密には中学生、呪術高専の生徒ではない。

 一般人の中学生に呪霊退治をさせるなんて誰がどう見てもアウトだろうけど伊地知さんも五条先生に逆らえないし五条先生も誰にも言うつもりはない。

 俺もしゃべる気は無いので実際、問題はない。

 つまり、伊地知さんは少し心配性な人間らしい。

 青から紫に変わりかけている伊地知さんを先生と二人でからかっていると、目的地に着いたのか車が止まった。

 ドアを開けて外を確認すると、目の前に元はホテルか何かであったと思われる廃墟があった。

 

「此処に肝試しに行った大学生四人が行方不明になってる。

 十中八九呪霊の仕業なので、轟君には僕の代わりに呪霊を祓って貰います!

 腕輪は外して良いから。

 じゃ、伊地知。帳降ろして。」

 

「…分かりました。」

 

 諦めたのだろう、真っ白に燃え尽きた伊地知さんが帳を降ろしていく。

 帳は呪力を持たない一般人から姿を遮断する為の結界術で誰でも使えるけど難しいらしい。

 廃墟を囲うように黒い結界が辺りを包み込む。

 

「それじゃあ、制限時間5分!

 ヨーイスタート!」

 

 先生はいつの間にか取り出したストップウォッチを持って車に寄っ掛かり完全に観戦ムード。

 一緒に付いてくるとかそういう気は一切無いらしい。

 俺が五分間で解決出来なければ一瞬で片付けるのだろう。

 教師としてどうなのと思ったが、これも一つの信頼だろうと自分に無理矢理言い聞かせて中に入ると、呪霊独特の気配を感じる。

 確実に黒だろう。

 

(さて、俺も試したくてウズウズしてたし。

 やりますか。)

 

 俺は術式の意識的な使い方について色々と模索してる時に一つ気付いた事がある。

 自分以外の対象については俺自身が対象のパラメーターの内、把握している部分しか強化出来ない。

 例えば、PC等の複雑な機能やパラメーターを持つ対象は、意識的に強化する時は一つ一つの小さな部品レベルまで知り尽くした上で強化する、あるいは引き出したい機能に合わせてパラメーターを調整する必要がある。

 唯一の例外として俺の体は俺が意識しなくても生まれた時から無意識に全てを把握している。

 腹の底から呪力を捻出して、先ずは体の表面に流す。

 

(そして、呪霊に触れる為に必要な体の表面を纏う呪力以外、全てを術式に回す。)

 

 術式への理解を深めてから初めての自己強化。

 全身に染み渡る様に、丁寧に本来知覚出来ない無意識に行っていた領域まで呪力による知覚で意識的に術式を施していく。

 骨、筋繊維、内臓、神経、大脳、小脳、細胞の一つ一つまでありとあらゆる俺を構成する全ての要素を戦闘に適したパラメーターに強化する。

 

『加点法 神級』

 

(ああ、上着は邪魔だな。)

 

 完全戦闘形態と成った俺は上着を全て脱いで上半身を曝して空気を感じる。

 知覚が鋭敏になる、目、耳、鼻、肌、全てがこの場、廃墟のありとあらゆる情報を捉えて、強化された神経は伝達された情報をダイレクトに送り、強化された俺の頭脳は全てを理解した。

 

(そこか。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わりました。」

 

「おつかれ、どうだった?」

 

「生存者は0、呪霊は祓いました。

 あと、遺品と骨の欠片が沢山あったので回収しときました。」

 

「OK、伊地知に渡しといて。」

 

 上着で包んだ骨を上着ごと、伊地知さんに渡すと伊地知さんはとんでもないようなものを見る目で此方を見てくる。

 

「そう言えばタイムは?」

 

 先生が此方に見せてくるタイマーは4分50秒で止まっていた。

 

「一皮剥けたね、ご感想は?」

 

「最高にスッキリした気分です。

 今までの使い方が馬鹿みたいでした。

 取り敢えず、服買ってください。」

 

 新しい上着を買ってもらい、帰りの車の中で五条先生と反省会を行う。

 

「…なるほど、単純な身体強化を超えて脳や神経の強化まで出来てあの呪力消費で済むのは反則だね。

 基本的な戦闘スタイルは今の感じで良いと思う。

 後、脳の強化は一部機能を特化する感じとか行ける?」

 

 込めた呪力は今までの時と同じだが、術式を意識して体に流すだけで過去の俺とは比べ物にもならないぐらいの差があった。

 術式100%の強化というのもあるが、強化する方向を意識的に調整出来たのがデカイ。

 細胞が耐えられる呪力まで術式で強化すれば更に上を行く事は可能だろうし、脳に関しては特定の機能に特化させる事も出来る筈。

 

「練習が必要ですが可能だと思います。

 あと、神経系以外の肉体の強化なら他の人でも行けます。」

 

 脳や神経と違って、筋肉や骨、内臓に関しては個人差は少ない。

 今の俺でも代謝機能や循環機能を弄らない、筋肉や骨のみにした場合なら他の人にも可能だろう。

 

「いいね、今の所轟君は僕の予想していたレベルより高い段階になってる。」

 

 先生は俺の加点法の新たな使い方『神級』について根掘り葉堀聞くと、物凄く楽しそうに笑っている。

 恐らく、既に幾つかの応用方法を思い付いてるのだろう。

 

「じゃあ暫くの方針は、戦闘スタイルの確立と精度を上げていこう。後、伊地知使って他者への強化が何処まで行けるのか試そうか。」

 

「了解です。」

 

「取り敢えず、これからは実践経験と術式の練習を兼ねてガンガン校外実習して貰うから。」

 

 五条先生の言葉に、伊地知さんが待ったをかける。

 

「さ、流石に何度もこんなことしたら、学長にバレますよ!

 あと、勝手に実験台にするの勘弁してください!」

 

 あ、実験台よりそっち優先なんだ。

 

「大丈夫、大丈夫。

 バレる頃には唸らせる位の実績積ませるから。

 あ、逃げようとしても書類とか色々弄って、手遅れなレベルで伊地知も共犯だから宜しくね♪

 それに、実験台と言っても僕の考えが正しければかなり安全だと思うし。」

 

「いや、あの、私の、立場…。」

 

 あ、折れた。

 こうやってパシられてるんだろうなぁ。

 此方に捨てられた犬の様な助けを求める顔を向けてるが、ボクコドモダカラオトナノハナシワカラナイ。

 そんなこんなで、初めての校外実習(非合法)の一回目が終わった。

 

 

 

 

 

 




加点法 神級

 加点法の基本的な運用方法。
 術者自身のすべての細胞のパラメーターをその場にあった状態に強化する。
 今回の場合戦闘特化。
 イメージとしては、今までの身体強化はネトゲとかの振り分けポイントを均等に降ってた感じで神級は役割に応じて配分してる。


Q戦闘描写は?

A廃墟の構造及び呪霊捕捉→瞬殺→骨・遺品回収の為、上着を取りに戻る→回収→以上。
 骨・遺品回収が一番時間かかってます。

Qどれくらい強くなったの?

A伏黒パパよりちょい下位。
 なお、限界まで呪力を込めれば余裕で伏黒パパ越える模様。
 
 
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