バフデバフ   作:ボリビア

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先輩からの可愛がり

 校外実習から次の日、五条先生は朝から用事があるから今日はお休みと言われて暇になった。

 荷解きも午前中で終わり、やることがなくなった為、高専内部を散歩する。

 一瞬、京都かと思う位には神社みたいな建物が多く、人気の無さもあって不思議な雰囲気を感じる。

 

(お休みって言われてもやること無いし、此処って入れる人限られてる関係で娯楽施設ないし。

 かといって東京で遊ぶ金もないしなー。)

 

 仕送りというか3月分の生活費は親から貰ってるが本来入学する高校が私立だった事もあり、仕方ないとはいえ高い入学金を無駄にした自覚がある。

 一応、高専が保証してくれたみたいだが気持ち的にはお金はあまり使いたくない。

 

(自主練習しかやることないな。)

 

 遊びに行く事をやめて自主練習という結論に至った俺は高専を探索がてら自主練習出来そうな場所を探して歩いていると前方から真希先輩が歩いてきたので反射的に駆け寄る。

 

「真希先輩こんにちは!」

 

「おう、轟。

 何ブラブラしてんだ?」

 

 真希先輩は肩に背丈程の棒を担いでいる。

 これから訓練だろうか。

 

「五条先生は用事あるとかで、今日1日暇なんですよ。

 先輩こそ一人ですか?」

 

「ああ、パンダと棘は任務で出かけてる。

 私は昨日任務あったから休みだけど暇だから体動かすとこ。」

 

 先輩も暇か。

 これは、デートチャンスでは?

 パンダ先輩はいい感じとは言っていたが付き合ってるとは言ってない。

 つまり、まだ俺にもチャンスはあるのではないだろうか。(名推理)

 金を使いたくないと言ったが、美人と遊ぶなら話は別だ。

 俺がデートに誘おうと考えていると真希先輩が思い出した様に話しかけてきた。

 

「そういえば、お前。

 小学生の頃から呪霊とやりあってるんだよな?」

 

「小3から金属バットでフルスイングしてましたね。」

 

「よし、ならちょっと付き合えよ。」

 

 というわけで、真希先輩と模擬戦になった。

 …これはデートじゃないな。

 真希先輩が借りた稽古場で、俺は棍棒を持って、真希先輩は棒術に使うような棒を槍に見立てて構えている

 

「強化の術式ありでこいよ。」

 

 先輩は俺の術式がどれ程のモノなのか知りたいらしい。

 取り敢えず、様子見として術式を知る前の俺の強化状態まで術式のみで強化する。

 

(うわ、呪力消費少なっ!)

 

 余りの消費の少なさに驚いていると、真希先輩から催促される。

 

「どうした、かかってこい。」

 

「なら遠慮なく!」

 

 掛け声と同時に、接近し両手に握った棍棒を真希先輩にむけてフルスイングするが、軽く下がってかわした先輩は横凪ぎに棒を振るい、俺の顎を狙ってくる。

 ギリギリ顔を上に反らしてかわすが、どうやら想定済みだったようで、先輩の追撃の回し蹴りが脇腹に直撃する。

 不意打ちだった事もあり、脇腹を押さえながら崩れ落ちる。

 

(エッッグイ…!)

 

「そんな大振り当たると思ってんのか?」

 

 どうやら、大振りの攻撃をされた事が不満らしい。

 

「対人の経験なんてないですよ…。

 呪霊なんて一気に近付いて死ぬまでバットでフルスイングしてれば勝てますし。」

 

「喧嘩くらいしたことあるだろ?」

 

「治安が良かったんですよ…!」

 

 呪霊は見た目が気持ち悪いだけで、知能低いし脆いからバットをフルスイングしてれば勝てたのだ。

 

(あ~痛い。

 まじで痛い、痛み自体は術式でもどうにもならないし、集中出来ない。)

 

 今、初めて知ったが既に起きている痛みを消す手段は俺にはない。

 筋肉や皮膚を強化してダメージそのものを少なくさせる事なら出来るが、防御を上回る今みたいな攻撃を食らうと普通に痛い。

 

「お前、そんなんだと呪詛師に殺されんぞ。」

 

 呪詛師というのは呪術を犯罪に使う連中の事らしい。

 昔は呪霊退治に追われる呪術師を尻目に好き勝手やってたらしいが今は五条先生のお陰でおとなしいとかなんとか。

 

「後、手抜いただろ。

 術式使ってあの程度な訳ねえよな?」

 

「術式を理解する前の強さはあんなんですよ。

 目茶苦茶呪力消費少なくて自分でも驚きました。」

 

「なら、そっちを見せてみろよ。」

 

 脇腹の痛みが収まって来たので、立ち上がり昨日と同じ位の神級を行って真希先輩の後ろに立つ。

 

「こんな感じです。」

 

 声をかけると先輩は驚いた顔をしながら一瞬で自身の得物が届くギリギリの距離まで飛び退いた。

 真希先輩から見てもこの速さは予想以上らしい。

 

「…まじか。」

 

「マジですよ。

 ちなみにこれは簡単に言えば筋肉強化してる感じなのでパワーもあります。」

 

「…何分位維持できる?」

 

「試して見たこと無いので分かりませんが、感覚的に半日位は持ちます。」

 

「ははっ、憂太といい東堂といい、どうなってんだよ一般人。」

 

 憂太とは恐らく乙骨憂太先輩だろうか、特級術師という五条先生と同じ階級にいる先輩だ。

 

「東堂って誰ですか?」

 

「ん、ああ。

 京都呪術高専って姉妹校にいる三年生で、ヤバいゴリラ。

 そいつも元一般人。」

 

 パンダの次はゴリラか。呪術師って人外多すぎない?

 

「…待てよ、お前を東堂にぶつけて後は他の一年鍛えれば今年も勝てるな。

 よし、轟、お前暇な時私に必ず連絡しろ。

 私も暇だったら稽古つけてやる。

 その身体能力なら必要ないかも知れんが、技を学んどいて損はねぇだろ。」

 

「寧ろ此方からお願いしたい位です!

 早速アドレス交換しましょう!

 あ、ラインでも良いです!」

 

「お、おう。」

 

 やったー、真希先輩のアドレスゲットー!

 

「そんじゃ、今日は受け身からやるか。

 術式解いて素の状態でかかってこい。

 ぶっ飛ばして受け身取らせるから。」

 

 何だか、遠回しにボコボコにすると言われた気がするが、有頂天の俺は気にしない事にした。

 後日、顔に出来た青タンを五条先生に爆笑された。

 




なお、チャンスは一切ない模様。

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