疑心暗鬼提督 If   作:ライadgj1248

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 むっちゃんと夏祭りに行きたい。その衝動で書き始めたものの、想像以上に長くなってしまいそうなので、まずは前編の投稿です。後編も近日中には投稿するはずです。きっと・・・たぶん近日中です・・・


陸奥if (前編)

 最近とても暑くなってセミの賑やかな声が響き渡る快晴の日の昼食後。私は珍しく提督から一人で呼び出されていた。いつもは艦娘達のまとめ役をしている長門の補佐って事で一緒に呼ばれる事が多いから、なんだか少し不思議な感じね。

 

コンコンコン

 

「陸奥よ。入っても良いかしら?」

 

「入れ。」

 

 いつもの短い返事を聞いて執務室へと入ると、なんだか提督と大淀さんから少し不機嫌そうな雰囲気を感じてしまう。何か怒られるような事をしたかしら?特に思いつく事は無いのだけれど?

 

「提督、今日はどういった用かしら?なんだか不機嫌そうな感じだけど、私が何かしてしまったのかしら?」

 

「いや、そういう訳ではない。すまないが少し面倒な仕事があってな・・・その仕事に陸奥も同行して欲しい。」

 

「あら?同行って事は外回りのお仕事よね?外回りのお仕事に私が呼ばれるのは珍しいわね。どんなお仕事かしら?」

 

「夏祭りへの参加だ。」

 

 えぇ!?お祭りへの参加!?それも提督と二人でって事よね!?それって!?

 

「あ、あらあら?私をお祭りに誘ってくれるのかしら?もしかしてデートなの?」

 

「いや、仕事だ。」

 

 う、うん・・・まあ最初から仕事って言っていたものね・・・でもちょっとくらい期待させてくれても良いと思うのだけど?

 

「ふーん、それでどういうお仕事なの?」

 

「市長の綾瀬さんから、数日後にこの鎮守府の近くで『復興祭』という祭りを開催すると連絡があった。なんでも深海棲艦の襲撃で打撃を受けていた街が順調に復興しているので、街をさらに盛り上げ活性化する為にも、祭りをして更なる発展を祈願するららしい。そこで街の防衛に大きく貢献している鎮守府から私と艦娘の代表が出席して、ステージ上で挨拶をして欲しいとの依頼だ。市民達が安心して暮らせるように是非とも参加して欲しいと頼まれてしまってな・・・」

 

「ふーん、それは大変みたいね・・・でもどうして私なのかしら?艦娘の代表って事なら、いつもは長門の出番じゃないかしら?それか秘書艦として大淀さんでも良いんじゃないかしら?それか知名度が高い大和さんも適任だと思うけれど?」

 

 私ももちろんビッグセブンの一人だけど、私達の代表と言われれば長門のほうが適任だと思う。長門はちょっと不器用で以外と抜けているところがあったりするけれど、皆の頼れるリーダーとして慕われている。長門が上手くやれない部分は私がフォローしてあげれば良いし。

 

「市民を前にした挨拶だけならば、私も長門が適任だと思うのだがな・・・私達は来賓として招かれるのだが、もちろん他の来賓も来る。当然こちらに話しかけて来るはずなので、トラブルを避ける為にもある程度人当たりが良い必要があるだろう。」

 

「え、ええ。」

 

 確かに長門は硬派というか不器用で少し怖い印象を与えてしまうかも知れないけれど・・・提督ほどでは無いと思うわ・・・ああ、だからこそ人当たりが良い娘が必要なのかしら?

 

「大和ならば知名度が高く人当たりはかなり良いのだが・・・大和は優しすぎる。」

 

「確かにとっても優しい娘だけどそれが何か問題なのかしら?」

 

「多くの来賓が来て話しかけてくるのだ。当然なにかしら利益を得ようとして交渉してくる奴もいるだろう。大和だと私の知らないところで、ニコニコ笑顔で余計な言質を取られる危険性がある。私が了承した話では無いと突っぱねる事も出来るが、面倒事は避けるに越した事は無い。」

 

「そうね・・・」

 

 これは否定出来そうにないわね・・・性格が良い事は鎮守府の中では全く問題にならないどころかとても良い事だけど、悪い人達につけこまれ易いって事にもなるわね・・・

 

「大淀ならば上手くやれると思うが、大淀には私が不在の間の鎮守府を任せておきたい。それで人当たりは良いがすり寄る者達を上手くあしらえそうな陸奥を呼んだのだ。この仕事を受けて貰えるだろうか?」

 

 確かに最初に言ってたみたいに面倒なお仕事みたいだけど、提督は私なら上手くやれるって思ってくれてるのね。ふふっ、頼られるのは悪い気はしないわ。それにしてもさっきから大淀さんが複雑な表情でこっちを見ているわね。本当は提督と二人でお祭りに行きたいけれど、留守を任されるのは誇らしいってとこかしら?

 

「ええ、良いわよ。」

 

「助かる。はぁ・・・深海棲艦の襲撃でもあればそれを口実に断れるのだがなぁ・・・」

 

「あんまりそういう事言わないの。」

 

 提督はお祭りに行くのを嫌がっているみたいだけど、私はちょっと楽しみなんだから。お仕事でも役得くらいは良いわよね♪

 

――――――――――――――――――

 

 数日後、しっかりとお洒落をしてから執務室へと提督を迎えに行く。提督は今朝から最後の悪あがきとばかりに、哨戒部隊を出したものの結果は特に異常なし。執務室で不機嫌そうにしてるのが簡単に想像出来るわね。

 

コンコンコン

 

「提督、陸奥だけどそろそろ出発の時間よ。」

 

「分かった、すぐに行く。」

 

 そう言って執務室から出てきた提督が、私の姿を見て驚いている。

 

「どうかしら?」

 

「浴衣を来て来たのか?てっきり普段の制服で来るものかと思っていた。」

 

「うふふっ♪せっかくお祭りに行くのだから、こっちのほうが良いと思ったのよ。提督はいつもの軍服で行くのでしょう?なら威圧感のある提督と親しみ易さのある私でバランスを取るべきだと思うの。どうかしら?」

 

 そう尋ねると提督は私の姿を上から下までじっくりと観察する。ちゃんと見てくれるのは嬉しいけれど、これは少し恥ずかしいわね。

 

「なるほど・・・浴衣の色合いも派手ではなくて上品な雰囲気で、来賓が着るものとして恥ずかしくない。そして頭の花飾りが華やかな印象を与えて、堅苦しさを打ち消している。良い浴衣を選んだな。」

 

「ありがとう♪じゃあ行きましょう♪」

 

 提督が服装を褒めてくれるなんてとっても貴重な体験かもしれないわね。これだけでも大急ぎで浴衣を準備したかいがあったわ♪

 

――――――――――――――――――

 

 お祭りが始まる前にお祭りの会場である大きな公園へと着いたけれど、そこはすでに多くの人で賑わっていた。この街にはこんなにも人が多く住んでいたのね。会場の付近には出店が立ち並び、楽しそうな声が聞こえてくる。そんな人混みの中で私達を案内する係の人達が道を作ってくれて、お祭りの運営本部へと歩いていく。街の人達は私達が歩く為に道の端に追いやられてしまったにも関わらず、こちらに手を振ったり声援を送ってくれる。

 

「私達、ずいぶんと歓迎されてるわね♪」

 

「そうだな。私達は彼等の生活を守る存在だ。そして私が着任してからは深海棲艦に防衛網を抜かれた事は無い。ならば邪険にされる理由も無いだろう。」

 

 そう言って提督はにこりともしないで堂々と歩いて行く。こんなにたくさんの人達から歓迎されているのに、まだ不機嫌なのね・・・仕方ないから無愛想な提督の代わりに街の人達に手を振って応える。私達の戦いがこの笑顔を守る為だとすれば、絶対に負けられないわね。

 

「そろそろ運営本部だ。あまり気を抜くなよ。」

 

「ええ、分かったわ。」

 

 街の人達の歓声を抜けて、大きなステージといくつかのテントがある場所へと案内される。少し高い場所で会場となった公園が見渡せる良い場所ね。

 

「ようこそお越し下さいました。葛原提督が来て下さって、街の者達もとても喜んでおります。」

 

「こちらこそこのような祭りにお招き頂いて光栄です。」

 

 そう言ってたしか・・・市長の綾瀬さんだったかしら?綾瀬さんが挨拶に来て、提督と握手をしているのだけれど・・・綾瀬さんはニコニコ笑顔だけど、提督の表情は少しも崩れず、仲良くする気が全く無さそうな雰囲気ね・・・それだけこの綾瀬さんを警戒してるって事だと思うけど、警戒されてるのがはっきりと伝わってそうな綾瀬さんは、それでも一切気にせずに張り付けたような笑顔で対応している。

 

「そちらの方が艦娘の代表としていらっしゃった方ですか?」

 

「ええ、そうです。陸奥、自己紹介を。」

 

「長門型戦艦2番艦の陸奥よ。宜しくね。」

 

「ほほう、戦艦の方でしたか。凛々しくも美しい素晴らしい方ですなぁ。おっと失礼、申し遅れました。この北九州市の市長を務めております綾瀬と申します。本日はお忙しい中お越し頂きありがとうございます。」

 

「ふふっ、ご丁寧にありがとうございます。こちらこそこんな素敵なお祭りにご招待頂いてとっても嬉しいです。」

 

「いやはや、そう言って頂けるとありがたい。ではお二人が来られた事ですし、さっそく式典を始めましょう。」




 むっちゃんの浴衣は限定グラフィックを採用しております。これは読者の皆さんとイメージを共有する為であって、決して服装を考えるのが面倒だったとかではありませんよ?
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