「ふぅ・・・これで終わりですね。」
執務室で一人書類仕事をやり遂げると、人知れずため息を吐いてしまった。秘書艦としての仕事は私の存在意義でもあるので文句等ありはしないのだが、提督が不在なのがどうしても気になってしまう。今日は北条さんからの呼び出しなので、おそらく夕食を食べてから帰られると思われる。北条さんは本当によく分からない人なので、提督の事を男性として好きなのかは分からない。けれど提督をお慕いする者としては、要注意人物として警戒せざるを得ない。提督の性格ならば万が一の事態にはならないとは思いますが・・・
そうやって悶々とした気持ちを抱えながら片付けをしていると、大きな足音が執務室へと近づいて来る。
「Hey!!オーヨド!!お仕事は終わってマースか?」
「金剛さん、それに榛名さんですか。ええ、今終わって片付けをしているところです。何か御用事ですか?」
「Yes!!Girls talk partyのお誘いデース!!」
「ガールズトークパーティーですか?」
「えっと、金剛お姉さまは女子会を開きたいみたいです。」
「ああ、女子会ですか。」
「そういう事デース!!今日は提督がお出掛けしてマース・・・だから提督に内緒で提督に思いを寄せる娘達を集めて、腹をきっていっぱいお話したいデース!!」
「こ、金剛お姉さま!?腹を割ってお話するのですよね!?切腹しちゃダメです!!」
「Shit!?間違えてしまいましたネ・・・」
いや、女子会とは腹を割って話すような重いものなのでしょうか?ですが提督を男性としてお慕いしている娘達が集まれば、一触即発の雰囲気になるのでしょうか?一応仕事に影響が出るのを提督は許さないだろうとの考えで、足の引っ張り合いなどを禁じる協定があるので大丈夫だとは思いますが・・・
「あの・・・お誘いは嬉しいのですが、提督がご不在の時に私が羽目をはずす訳には・・・何か問題が起こった時に対応出来なければ困ります。」
「そこは心配Nothingネ。ボーノが秘書艦補佐として対応してくれる事になってマース。それに比叡と霧島も手伝う事になってマース。」
「その・・・女子会に曙さんを誘わなかったのですか?提督に好意を寄せている娘を誘っているのですよね?」
「Ah・・・もちろん誘ったネ・・・」
「えっと、曙さんも誘ったのですが『べ、別に私は提督がすす好きとかそ、そういうのじゃないから!!か、か、勘違いしないでよね!!』と断られてしまいました・・・」
ああ、曙さんならそう言いそうですね。あんな態度で誤魔化せる相手なんて、提督本人くらいだと思いますが・・・
「ボーノは素直じゃないデース・・・でもそこがボーノの可愛いとこネ♪」
「それから『私は行かないけど大淀さんを誘ってあげなさい。あの人が一番言いたい事を我慢してるはずだから。』って言ってましたよ。」
うっ・・・曙さんからそういう目で見られていましたか・・・やはり秘書艦補佐として一緒に仕事をする事が多いからですかね・・・少し恥ずかしいです・・・
「分かりました。そういう事なら曙さんのご厚意に甘えて、女子会に参加させて頂きます。」
「OK!!それじゃあホーショウのところに行きますヨ!!」
――――――――――――――――――
金剛さんに連れられて居酒屋鳳翔へとたどり着くと、そこにはすでに多くの艦娘達が集まっていました。改めてこれだけの娘達が提督へと好意を寄せているという事実を突き付けられると、少し頭が痛くなってきますね・・・これはこんなに多くの娘達に慕われても一切態度を変えない提督に大きな問題があると思いますが・・・ただ会場の雰囲気は悪くなく、皆さん楽しそうにお話をしています。加賀さんと瑞鶴さんが口喧嘩していますが、あれはいつもの事なので問題ないですね。本当はお互いの事を信頼してるのに、とっても不器用な人達ですね・・・
「皆さーん、飲み物の準備は大丈夫ですか?それでは金剛お姉さま、お願いします。」
「Hey皆さーん!!今日はGirls talk partyに集まってくれてThank Youネ!!今日は提督が外出中だから、安心していっぱい提督へのLoveを語り合いたいネ!!もちろん今日ここで話した内容は提督にはTop secretネ。絶対に話したらNoですからネ?ではカンパーイ!!」
「「「「乾杯!!」」」」
大人な艦娘達はビールを、お酒が苦手な娘達はオレンジジュースで乾杯をする。私もせっかくなので今日はちょっと羽目をはずして、お酒を楽しみたい気分です。席順としては艦種ごとに大まかに集まっていますね。なので私は巡洋艦のところにいますが・・・あっ、さっそく加賀さんと瑞鶴さんが一気飲みをして顔突き付けあってます。二人ともお酒はそんなに強く無いのに・・・
「はいはい、大淀~心配そうに余所見してないでさぁ~もうちょっと気楽に楽しみなよ~」
「北上さんの言うとおりですよ?今日は美味しいお料理もありますから、いっぱい楽しんでお話しましょう?」
「す、すみません・・・そうですね、せっかくの機会だから楽しまないとですね。」
さっそく北上さんと大井さんに心配をかけてしまいました。慣れない場で少し緊張してしまったでしょうか?
「あ、そうね~私、普段真面目な大淀さんの恋のお話気になるな~」
「た、龍田さん!?いきなり何を!?」
「ええ~だって今日はそういう趣旨の集まりなのよねぇ?」
「そ、そうですね。私もすごく気になります。」
「神通さんまで!?」
まずいですね・・・このままだと包囲網を形成されてしまいます!!どうやって脱出すれば良いのでしょう!?
「えぇ~真面目で言えば神通もじゃない?まさか神通がこんな催しに参加するなんてねぇ?」
「き、き、北上さん!?わ、私は金剛さんのお誘いを受けただけでそんな!!」
「いや、今さら隠すのは無理でしょ?ほらほら言ってみ?」
北上さん!!助けて下さってありがとうございます!!感謝の意味を込めて視線を送ると、北上さんがニヤリと笑みを見せてくる。このご恩はまたの機会に返させて貰いますね。
「いえ、その・・・わ、私は提督が提督として規律を守り、優秀な戦果を上げていますのでお慕いしているのであって、け、決して浮わついた気持ちではなくてですね!?艦娘として当然の好意と言いますか?その・・・あぅ・・・ね、姉さんも同様に提督を慕っていますから!!」
「お、おぉ・・・まさか姉妹艦まで巻き沿いにするとは・・・そういや川内は?」
「もう日が暮れる時間ですよ?姉さんがおとなしくしているとでも?」
「あぁ、そだね~」
「そ、そういう北上さんこそどうなんですか?」
「ん?私?もちろん好きだよ。大井っちもそうだよね?」
「ま、まぁ、北上さんの次にですけど?」
「大井っちは相変わらずだねぇ~龍田もここにいるって事はそういう事だよね?」
「うふふ、天龍ちゃんの次にだけどねぇ~」
「龍田も相変わらずだねぇ~んじゃ最後は大淀の番だよ?皆言ったんだからもう大丈夫でしょ?」
そう言って北上さんが私に話を振ってくる。一番最初だと気後れしてしまいますが、一番最後であればもう大丈夫でしょう。北上さんの心遣いに感謝します。景気付けにグラスに残っていたビールを飲み干してから顔を上げます。
「も、もちろん、わ、私も提督をお、お、お慕いしております!!」
「いや、どんだけ緊張してんのさ?」
――――――――――――――――――
お酒も進み賑やかな雰囲気になった所で、金剛さんの提案で一人ずつ皆の前に出て提督との惚気話をする事になりました・・・皆さん提督とお出掛けした時の話をされていて・・・正直とっても羨ましいです・・・
「Wow!!神通のお話とってもCuteネ!!」
「うぅ・・・恥ずかしいです・・・」
「Thank Youジンツゥ!!ではまだ話を聞いていないのは・・・オーヨド!!」
「ひっ!!」
「観念するネ!!ほら、恥ずかしがらずに前に出て来て下サーイ!!」
金剛さんに勧められて、あれよあれよと皆さんの前に立つ事になりました・・・お仕事で皆さんの前に立つ時は一切緊張しないのに・・・
「ではオーヨド、提督とのLoveなお話をお願いしマース♪」
「ら、ラブなお話・・・ですか・・・」
ラブなお話?提督とのラブな・・・お話?私は気がついてしまった事にショックを受けて膝から崩れ落ちてしまう・・・
「What!?オーヨド!?どうしましたカ!?」
「無いんです・・・」
「Wow!?無いってどういう事デース!?そんなに恥ずかしがらなくても・・・」
「無いんです!!」
「Why!?いつも一緒にいるのにですカ!?」
・・・そう言えば今日は腹を割って言いたい事を全て言う日でしたよね?ならば溜まりに溜まったものを吐き出させて貰いましょう・・・私は景気付けに近くにあった焼酎の瓶を掴みとり一気に煽る。
「ヒッ!?オ、オーヨド?」
「ぷはぁ!!良いですか!!皆さんとっても幸せなお話をされていましたけどねぇ!?皆さんが提督とデートする為に私はいつも鎮守府でお留守番なんですよ!?提督が出掛ける時はいつもそうなんです!!鎮守府の事を信頼して預けてくれるのは秘書艦として嬉しいですが!!私だってたまには提督とお出掛けしたいんですよ!!」
――――――――――――――――――
「でしゅから~こんご~さんはですね!!いつもいつもてーとくにだきちゅいて!!あにゃたはくちくかんじゃないんれすよ!!」
「Ah・・・オーヨド?ちょっと飲み過ぎネ?」
「のょみしゅぎでしゅか?これがのまずにいりゃれますか!!いちゅもいちゅもおいていかれるわたしのみにもなっれくだしゃい!!」
「Sorryオーヨド・・・今度私達が協力して、提督とお出掛け出来るようにするから落ち着いて欲しいデース・・・」
「んん~ほんとうれすか?」
「もちろんネ!!私は約束は必ず守りマース。」
「ではだれにるすをまかせりゅんですか!?ひしょかんのちいはわたしません!!」
「Oh!?じゃあどうすれば良いのデース!?」
「だかりゃ!!わらしも!!ていとくとおでかけしたいんれす!!」
「Noooooo!!誰か助けて下サーイ!!」
「こ、金剛お姉様!!大変です!!」
「比叡!?今度はなんですカ!?」
「て、提督が戻られて・・・騒ぎを聞きつけてこちらに来ています!!」
「Wow!!総員撤収!!撤収ネ!!」
――――――――――――――――――
北条の所から鎮守府に戻ってみると、なにやら鳳翔の所が騒がしい。まあ、宴会でもしているのだろうが、それなりに遅い時間だからあまり遅くなり過ぎないように一応釘を刺しておこう。そう思って居酒屋鳳翔へと足を運ぶと、蜘蛛の子を散らすように次々と艦娘達が逃げて行く・・・軽く注意するつもりだっただけで、別に怒っているわけでは無いのだが・・・
「Heyオーヨド!?もう飲むのをやめるネ!!急がないとまずいデース!!」
「なにをいっふぇるんれすか!?わらしのはなしをちゃんときいふぇるんれすか!?」
「ちゃんと聞いてマース!!でももうすぐ提督に見つかってしまいマース!!」
「ほう、何か私に見つかったらまずい事をしているのか?」
「て、提督!?NoNoNo!!別に悪い事はしてないネ!!その・・・ちょっとオーヨドが飲み過ぎてるだけデース!!乙女的にこんな姿を提督に見られるのは絶対Noネ!!」
ふむ、金剛が大慌てする姿は気になるが、実際に大淀が酔い潰れている以外に特に変わった事は無さそうだ。大淀が酔っている姿は何度か見た事はあるのだが・・・乙女的にNoと言うのはよくわからんが・・・
「そうか、もう夜も遅いからあまり長くならないようにな。」
「OK提督。わかってくれて嬉しいデース♪オーヨドは私がちゃんと部屋まで連れて行くから安心して下サーイ♪」
「んん!?てーとくですか!?てーとくがそこにいるんれすか!?」
「オーヨド!?」
「ちょっとおはなしがありましゅ!!すわってくらさい!!」
「ふむ、私に話があるのならば聞こうか?」
「Nooooooo!!」
――――――――――――――――――
「うぅ・・・頭が痛い・・・これは完全に二日酔いですね・・・」
どうやら昨日はつい飲みすぎてしまったようですね・・・これはちょっと秘書艦として失敗してしまいましたか・・・
「あら?目が覚めたのね?」
「っ!?あ、曙さん!?」
「そうよ、良いからまずは水を飲みなさい。」
そう言って曙さんが差し出す水を飲むと、少しだけ気分が良くなった気がする。
「あ、ありがとうございます。でもどうして曙さんがここに?」
「はぁ・・・その説明はするけど、その前に昨日の事はどこまで覚えているの?」
「えっと・・・昨日は金剛さんにお呼ばれして女子会に行って・・・そこで飲み過ぎてしまいました・・・皆さんに大変な迷惑をかけてしまいましたね・・・」
「そこは気にしなくて良いわ。大淀さんだってストレスが溜まっていたんでしょ?問題はそのあとよ?」
「そのあと?金剛さんが私の愚痴に付き合って下さって・・・それから・・・提督が来て・・・提督が来て!?」
「そう、思い出したのね。」
一気に血の気が失せるのを感じる!!昨日の私は提督に何をしたんですか!?
「わわわ私は昨日何を口走ったのですか!?」
「金剛さんから聞いた話だけど、提督を相手に女心が分かっていないと、お説教をしていたらしいわよ?」
「ひぃぃぃいいい!!」
き、昨日の私はなんて事をしでかしてくれたのですか!?いくら酔っていたとは言え、提督に女心についてのお説教ですか!?
「そそそ、それで・・・提督はなんと?」
「別に怒ってはいなかったわよ?逆にそこまで大淀に抱え込ませていたのかと、かなり重く受け止めたみたいよ?」
「そ・・・そうですか・・・」
提督を怒らせてしまったかと思いましたが、ひとまず安心ですね・・・とにかく今から提督にちゃんとお詫びをしましょう。
「安心するのはまだ早いわよ?」
「え?どういう事ですか!?」
「提督がかなり重く受け止めたのよ?あの提督が浮上した問題をそのまま放置すると思う?」
「い、いえ・・・それでも提督が女心を理解するとは思えませんが・・・」
「それはそうね。でも大淀さんが提督と一緒にお出掛けしたいって言ったのよね?だから今日は大淀さんと提督が出掛けられるように、皆で段取りをしているところよ。私は大淀さんと引き継ぎとかをするために来たのよ。」
「ええ!?私が提督とお出掛けですか!?ですが鎮守府の事は!?」
「だからその為の段取りをしているのよ。良いから心配しないで提督と出掛けてきなさい。」
ま、まさか・・・提督とお出掛け出来る時が来るだなんて・・・皆さんに散々迷惑をかけてしまいまった次の日に、こんな良い事があって本当に良いのでしょうか?
「その・・・ありがとうございます。このご恩は忘れません。」
「良いわよそんな事・・・なんか感動しているみたいだけどそんな暇あるのかしら?」
「え?どういう事ですか?」
「はぁ・・・良いかしら?『今日』提督と出掛けるのよ?そんな女として大破した状態で行くつもりかしら?」
曙さんに言われて改めて自分の状態を確認してみるが・・・酔ってそのまま寝たようで・・・服はしわくちゃ、髪はボサボサ、お風呂にも入れていないし、まだアルコールが抜けきっていない。
「出掛ける予定の時間まであと2時間無いわ。せいぜい頑張りなさい。」
そう言い残して曙さんは私の部屋から去って行く・・・
「いゃぁぁぁぁあああ!!」
提督!!女性には準備が必要なんです!!もっと女心に配慮して下さい!!
今までで一番長かった。でも書きたい事は全て書けたので満足です。