でもまあ、満足出来るものは書けたかな?
ビーチバレーで白熱する白露達を眺めながら少し休憩をしてから、昼食の準備に取りかかる。今日は浜辺でBBQをする予定だが、食材の下拵えは間宮がしてくれているので、火をおこしたら後は焼くだけだ。浜辺の防風林から松ぼっくりを拾って火種として炭に火を付けていく。火おこしなんて久し振りだが、孤児として生きていた時に散々やったので体が覚えているようだ。それにしても火おこしは良い。計画通りに炭を組み上げ酸素の通り道を確保して、酸素の供給と適宜追加の炭を投入すれば、火はちゃんと応えて大きくなってくれる。厄介な上層部の奴らもこれくらい素直なら苦労しないのだが・・・
「はぁ・・・あいつらもこれくらい良く燃えないだろうか?」
「て、提督?暗い顔で物騒な独り言はやめてくれるかな?凄く怖いんだけど・・・」
「ん?白露か。すまんな、気にするな。ただの思い出し殺意だ。」
「思い出し殺意って物騒過ぎて気になるよ!!やっぱり物凄くストレス抱えてるんだよ!!ちゃんとストレス発散しないとダメだよ!!」
「提督なんてストレスを抱えるものだからな。幸いこうやって火を眺めていると少し気分も良くなるぞ?」
「そ、そう?放火とかしちゃダメだからね?」
白露は自分の事をなんだと思っているのか?だが大本営に火を付ければクズ共を一斉に・・・しかしあいつらは可燃ゴミか?生ゴミは可燃ゴミで良かったはずだよな?じゃなかった・・・これは最後の手段だ・・・
「そんな事よりビーチバレーはもう良いのか?」
「うん!!ちゃんと勝ってお姉ちゃんの威厳を見せてきたよ♪」
「勝ち逃げはズルいっぽい・・・」
「だよね~白露姉さんいっちばんずる~い。」
「ふっ、それがお姉ちゃん特権です!!」
「まあまあ、夕立も村雨も落ち着いて。ほら、提督がお昼ごはんの準備整えてくれてるから、早く食べよう?僕はもうお腹がすいたよ。」
ふむ、こうして見るといつも姉妹のフォローに回っている時雨が一番お姉さんっぽいか?春雨も落ち着きがあるが、甘えたがりの末っ子気質のようだからな。
「むむっ!?なんだか長女の地位が危うい気がする!?時雨!!長女の地位は渡さないよ!!」
「ええ!?急になんなのさ!?」
「時雨のほうがお姉ちゃんっぽい?」
「時雨ちゃんのほうがいっちばん頼りになるかなぁ?」
「こらぁ!!わ・た・し・が長女だぁ!!あと村雨はいっちばん弄りをやめろぉ!!」
「や~ん♪白露姉さんが怒った~♪」
「村雨♪逃げるっぽい♪」
白露が村雨を追いかけてじゃれあっているようだ。隣で夕立が囃し立て、時雨がわたわたと止めに入って巻き込まれる。あれくらいなら微笑ましくて良いものだな。ちなみにさっきから静かな春雨は、隣で一生懸命ごはんを炊いている。普段はおとなしい春雨だが、炊飯に対しては並々ならぬ執念を感じたので任せている。白露達はまだ遊んでいるようだから、先に焼きそばを作ってしまうとしよう。
鉄板が充分に加熱されたのを確認して、豚肉・人参・玉ねぎ・キャベツを軽く炒め、麺を投入してソースを絡めていく。そうやって焼きそばを作っていると、良い匂いに釣られたのかじゃれあいをしていた白露達が集まってくる。
「え!?提督って料理出来たの!?」
「まあ、ある程度は出来る。それに間宮が下拵えを済ませてくれているから焼くだけだぞ。」
「でも僕は提督が料理してるところなんて初めて見たよ?」
「うちには料理のプロの間宮がいるし、何かあっても鳳翔とか他にも料理が上手い艦娘達がいるのだから、素人が作る必要はないだろ?」
「でも昔に料理は専門外って言ってたっぽい?」
「私の技術は自分が生きる為に食材を食べられる状態にするものだ。だから魚や鳥や獣を捌く事は出来るし、野草やキノコの食べ方も知っている。だが間宮の技術は誰かに美味しいものを食べさせる為の技術だ。献立の構成・仕入れと保存・調理と盛り付けなどだな。だから私の持っている技術とは全く異なるものだ。」
「あ~うん、とりあえず美味しそうだし早く食べたいなぁ♪」
村雨の奴は話が理解出来なかったからか露骨に話を逸らしてきたな。まあ、別に重要な話でも無いから構わないか。
「あ、あの、ごはん炊けました、はい♪」
春雨がにっこり笑顔で報告してきた。これで準備は整ったな。
「ああ、助かる。では食事を楽しもう。」
「焼きそば貰ったっぽい♪」
「ああ!?お姉ちゃんがいっちばんだぁ!!」
夕立が真っ先に焼きそばに飛び付くと、白露が夕立と張り合う。そうしてじゃれあっている隙に村雨がちゃっかり確保しているあたり、なかなかしたたかだな。
「もう・・・夕立も姉さんもはしたない真似はやめてよ・・・」
「ふ~ん、はしたないね~?」
「え?姉さん、その意味深な笑顔はなんだい?」
「時雨だって普段は優等生みたいな雰囲気出してるけど・・・ねぇ?」
「な、な、なにを言っているんだい!?」
「提督の上着・・・」
「わぁあああ!!わぁあああ!!」
白露が何かボソッと呟くと時雨が急に騒ぎ始めたがなんなのだろうか?いつも落ち着いている時雨が騒ぎ出すのは珍しいな。
「ふふん♪お姉ちゃんを敵に回すとこうなるのです♪」
「うぅ・・・なんで知ってるのさ・・・」
「お姉ちゃんだからね♪妹の事はなんでも知っているのだよ♪ちなみに夕立!!」
「ぽい?」
「夕立も同じ事してるの知ってるからね!!」
「それがどうかしたっぽい?美味しそうなお肉より大事っぽい?」
どうやら話の流れから考えると、白露が時雨と夕立の弱味を握っているようだが、時雨は恥ずかしがっているが夕立は一切気にせず肉を焼き始めたようだ。
「え・・・開き直られると困るけど・・・」
「でも村雨と春雨もこっそりやってるっぽい。」
「げぇ・・・」
「はぅ!?」
「・・・・・・帰ったら姉妹会議をします。」
白露の宣言にうなだれる時雨達。だが夕立だけはよくわかっていないようで、不思議そうな顔をしながら焼きそばを食べつつ、肉の焼け具合を見ている。
「よく分からんが今は食事の時間だ。遊ぶなとは言わないが、食材を無駄にするような真似はするな。」
「そ、そうだね。ほら、姉さん、そういう話は後にしよう。この取り皿とタレを使って。」
「はいは~い、ほら白露姉さん、いっちばん良いお肉焼けてるよ?」
「ごはんも準備してますのでどうぞ、はい。」
「おおぅ・・・露骨に態度を変えてきたね。でもまあ、今は誤魔化されておこっかな。せっかくのバーベキューだもんね♪」
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食事を楽しんだ後も白露達とつかの間の休暇を楽しんだ。海で水遊びをしたり、ビーチフラッグをしたり、浜辺で貝やヤドカリを探してみたりと様々な遊びを楽しんだ。変な遊びは自分が投げたフリスビーを取って来るのくらいか?特に夕立と時雨が気に入ったようだった。
そしてそろそろ日が暮れる頃になったので、小型船に乗り込んで鎮守府へと戻っている。運転は帰りも白露が担当しているのだが・・・
「白露以外は皆寝てしまったようだな。」
「あはは・・・今日は思いっきり遊んだから仕方ないかなぁ。」
「なんなら運転を代わろうか?白露も遊び疲れているのではないか?」
「大丈夫だよ。だって私はお姉ちゃんなんだからね♪」
「そうか?」
「そうなの。いつでもいっちばんのお姉ちゃんでいたいからね♪」
普段の白露型姉妹の言動を見ていると、夕立と張り合ったり村雨にからかわれたり時雨に嗜められたりと、あまり姉としての威厳は感じられないのだが・・・それでもやっぱりお姉ちゃんをやっているんだよなぁ。一番関連でよく暴走しているけれど。
「そうか。前から気になっていたが、どうして一番という事にそこまで拘るんだ?」
「う~ん?やっぱり私が白露型の一番艦だからかな?ほら、うちの妹達は結構優秀じゃん?特に時雨と夕立。」
ふむ、時雨は佐世保の幸運艦とも呼ばれる歴戦の駆逐艦。夕立はソロモンの悪夢とも呼ばれる武勲艦だ。その史実を反映してか時雨と夕立は他の白露型姉妹よりも頭一つ抜けていると思う。
「そうだな。夕立は攻撃面で優秀で特に接近戦に強かったな。時雨は生存能力が高く艦隊を守るような動きが得意だな。」
「うんうん♪優秀な妹達だよ♪でもね・・・」
白露は船の操縦をしているから表情が見えないが、上機嫌だった先程までとは違って深刻な雰囲気を感じる。
「夕立は戦う時はかなり攻撃的な性格だから、放っておいたら敵艦隊に無茶な突撃をして沈んでしまいそうなんだよ・・・」
確かに史実のソロモン海戦では、多数の敵艦隊に突撃を敢行して華々しい戦果を上げたが、そこで力尽きていたはずだ。
「時雨は西村艦隊の唯一の生き残りで幸運艦なんて呼ばれてる。だけどそれは時雨以外が全滅したって事でもあるんだ。だから時雨って実はすっごく寂しがりやで、また艦隊が全滅させられて独り生き残ってしまうのを怖がってるんだ・・・」
なるほど。時雨が仲間をサポートして生かすような動き方をするのは、そんな理由があったからなのか。
「村雨は・・・まあ、構ってちゃんなだけだから良いとして、うちの春雨は訳ありじゃん?」
訳ありどころか特大の爆弾を抱えているようなものだな。白露が言っているのは前任者の大森提督を殺害した件だと思うが、春雨は中途半端にではあるが深海棲艦化しており、二重人格のような悪雨を内包している。
「だからこそ私はお姉ちゃんとして、いざという時に頼れる存在として、普段から甘えられる心の拠り所としてありたいんだ。だから私はお姉ちゃんとしていっちばんを目指して頑張るの!!やっぱり頼りないお姉ちゃんだと困るからね!!」
なるほど。白露はそんな思いを隠し持っていたのか。若干空回りしている気がするが、その信念はきっと尊いものなのだろう。
「なるほど。なかなか良い話を聞けた。」
「へへっ♪あ!?この話は内緒だからね!?ちょっと照臭いし・・・」
「ああ、誰にも言わないと約束しよう。」
「ありがと♪あ、なんだったら提督も私に頼っても良いからね?」
白露がこっちに振り向いてニヤニヤしながらそんな事を言い出した。まるで雷のような事を言い出したな。
「ふっ。それこそ私はこの鎮守府で一番上の立場の人間だ。白露こそ何かあれば頼ると良い。」
「やっぱり提督はそう言うよね。でも本当に息抜きも大事だよ?今日だってすっごくストレス溜めてたみたいじゃん?」
「まあな。だが今日は久し振りの休暇で良い気晴らしになった。たまにはこうしてゆっくりするのも悪くないな。」
「へへっ♪それなら今日は大成功だね♪それじゃあ明日からも頑張ろう!!」
「ああ、お互いにな。」
鎮守府に戻ればまた大変な日々を過ごす事になるだろう。だがそれも自分で選んだ道だ。どんな障害があろうと突き進むのみだ。だがたまにはこうやって息抜きする事も重要かもしれない。疲労が溜まり過ぎれば冷静な判断が出来なくなるかもしれないからな。その時はまた付き合って貰おうかな?
ギャグ要員的な扱いだった白露。最後はちゃんとお姉ちゃんしてるとこを書けたかな?