疑心暗鬼提督 If   作:ライadgj1248

25 / 30
 想定よりもかなり話が纏まらず、時間がかかってしまいました。でもまだ1月だからきっとセーフなはず。


新年祭if(後編)

 色々と準備を済ませてようやく新年祭の当日を向かえた。師走と言うだけあって、年末は本当に忙しい日々だった。特に金剛姉妹は急遽決まった公開演習に向けて、余裕の無い時間をやりくりして練習に励んでいた。やると決めた以上は無様な姿を晒すわけにはいかないからな。本人達もかなりやる気のようだったし、充分に見栄えする完成度になったので問題ないな。

 

コンコンコン

 

「提督、お待たせ致しました。大和です。」

 

「入れ。」

 

 執務室の扉をゆっくりと開けてから晴れ着姿の大和が入って来る。大和の晴れ着は縁起の良いとされる紅白を基調として、随所に梅の花が描かれている。帯は赤と金で華やかな雰囲気を感じさせて、花の髪飾りが彩りを加える。そして大和のトレードマークとも言うべき和傘を持っており、長身でスラッとした綺麗な立ち姿は見事なものだ。

 

「て、提督、どうでしょう?」

 

「うむ、見事だ。晴れ着のセンスも良いし、きちんと着こなしている。大和があれだけ自慢していたのも納得だ。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「それにしても袖に戦艦が描かれているのか。珍しいデザインだな。」

 

「あ!!そうなんですよ!!しかもこれって私を参考にして下さっていてですね!!着物屋のご主人が子供の頃に軍艦時代の大和を見てくれたそうでして、とても印象的だったって言ってくれたんですよ♪だからこのデザインの着物を作られたそうで、私に似合うから是非着て欲しいと言われたんですよ♪」

 

「ふむ、なるほどな。」

 

 大和をモチーフにした着物作っていて、たまたま大和が来店した時に勧めたのか?流石に話が出来すぎているな。この話から考えると大和を広告として使う為に準備していたものではないだろうか?普通の晴れ着であれば戦艦をモチーフにする事などまず無いだろうが、鎮守府の艦娘達が相手であれば評価が高くなるだろう。そしてこの着物屋の評判が鎮守府で広がって艦娘達が買いに行けば、かなりの利益が見込めると思う。着物屋もなかなか商売上手だな。

 

「提督、どうかされましたか?」

 

 大和はお人好しだから特に疑問を持たずに買ったのだろうなぁ・・・まあ、たとえ大和が騙されて勧められていたとしても、着物自体の品質が良いし大和が気に入っているのであれば、自分がとやかく言う話でもないか。これを見た他の艦娘達が自分の給料で着飾りたいと言うならば止める必要もない。

 

「いや、なんでもない。では会場に向かおう。では大淀、鎮守府の事は任せた。」

 

「はい、お任せ下さい。」

 

「あ、大淀さん。お土産はちゃんと買って来ますから、期待していて下さい。」

 

「お気遣いありがとうございます。ですがお仕事で行くのですから、そちらが優先ですからね?」

 

「分かりました。大和型戦艦大和!!推して参ります!!」

 

――――――――――――――――――

 

 提督と一緒に送迎の車に乗ってから15分くらいで会場の近くまで到着しました。既に会場付近には多くの人が集まっていて、とても活気のある様子でなんだかワクワクします。そんな人混みの中から警護の人が近づいて来ます。

 

「北九州鎮守府の葛原です。」

 

「お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」

 

 警護の方々が集まっていた皆さんを誘導して、私達が歩く道を作ってくれました。多くの人々がこちらを見て手を振ってくれたり、歓声をあげて歓迎して下さるので、とても暖かい気持ちになって私も提督について歩きながら、手を振り返して応えます。

 

「凄い数の人が集まっていますね♪皆さんに歓迎されてるみたいでとっても嬉しいです♪」

 

「そうだな。」

 

「提督は嬉しくないんですか?先程からにこりともされていないようですが・・・」

 

「これは市民への印象操作の一環だ。軍の指揮をする者として柔和な態度ではなめられる。気を張っているくらいでちょうど良い。」

 

「な、なるほど。」

 

 では大和ももうちょっとキリッとした表情をするべきですね。今日のお祭りはお仕事で来たのですから、役目は果たさなくてはいけません!!

 

「大和・・・お前は無理をして表情を作る必要は無い。ニコニコしていろ。」

 

「え?ですが・・・」

 

「私は軍人としての威厳を示す必要があるが、艦娘である大和は親しみ易さを演出した方が良いだろう。それに・・・」

 

「それに?」

 

「口元が緩んでいる。そんな中途半端な顔をするくらいなら、素直に笑ってろ。」

 

「す、すみません・・・」

 

 うぅ・・・自分では凛々しい表情が出来ていたと思っていたのですが、なかなか思ったみたいに出来ませんでしたか・・・恥ずかしいです。そんな事を考えながら歩いていると、お祭りの運営本部のテントまで案内して頂きました。

 

「おお、葛原提督。明けましておめでとうございます。今年も一年宜しくお願い致します。」

 

「綾瀬さん、おめでとうございます。こちらこそ宜しくお願いします。本日はこのようなお祭りにお招き頂きありがとうございます。」

 

「いえいえ、こちらこそ参加して頂けて光栄に思います。そちらの方が本日の随伴の方ですか?」

 

 確かこの方はこの街の市長の綾瀬さんでしたよね?なんだか人が良さそうな笑顔が素敵な人ですね。

 

「はい、大和型戦艦一番艦、大和です。宜しくお願い致します。」

 

「おお!!最強と名高いあの戦艦大和の艦娘でしたか!!これは頼もしい限りですなぁ!!」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「んんっ!!それで私達はこれからどうすれば良いのですか?」

 

「おっと、これは失礼しました。あの大和に出会えたと思い少し興奮してしまいました。それではさっそくお祭りを始めましょう。」

 

――――――――――――――――――

 

 ふぅ・・・とりあえず自分と大和の挨拶は問題なく終わり、金剛達の公開演習は大盛況で終わる事が出来た。金剛達は艤装を外す為に一度鎮守府へと帰還して、大急ぎでこちらに戻って来る予定だ。そして今自分と大和の目の前には・・・

 

「これうちの屋台の焼きそばだよ!!是非食べてくだせぇ!!」

 

「こっちはうちの屋台のお好み焼きです!!」

 

「これはあんこ餅だよ!!さっきついたばかりだから柔らかいよ!!」

 

「こいつはうちの店から持って来た羊羮です。是非地元の特産品を食べて下さい。」

 

「こいつぁ今日の為に用意した鯛でさぁ!!いつも世話になってる鎮守府の方に食べて貰いたくて用意しやした!!」

 

 祭りの運営本部に設置された机の上に、屋台の品やら地元で作られたものなどが次々に置かれていく。まあ確かにそろそろ食事をしても良い時間帯ではあるし、夏祭りの時も屋台の店主達が似たような事をしていたが・・・屋台だけではなくて商店街で店を開いている者達も商品を持ち寄っている為、かなりの量になっている。

 

「これは・・・凄い量ですね・・・」

 

「あはは・・・いやはや鎮守府の方々は大人気ですからなぁ・・・」

 

 若干非難の意味を込めて綾瀬さんに話を振ってみたが、綾瀬さんもここまで大事になるとは思っていなかったのだろうか?少し焦っているように見える。

 

「提督♪皆さんのご厚意ですし、さっそく頂きませんか?どれもとっても美味しそうですよ♪大和はとってもお腹がすいてしまったので、ご馳走に囲まれて嬉しいです♪」

 

 大和はこれだけの量を目の前にしても、とっても良い笑顔を絶やさない。今回連れてきたのが大和で良かったかも知れないな。この後金剛達も来る事を考えれば、この量でも問題ないか。

 

「・・・そうだな。せっかくだから頂こう。」

 

「はい♪頂きます♪」

 

 そこからは・・・大和の独壇場だった。晴れ着が汚れないように丁寧な所作ではあったが、次々と料理を口にしつつ、その一つ一つに対して感想を述べて店主達とコミュニケーションをとっている。そんな事をしても食べる速度は一向に落ちる気配を見せないし、かと言って下品な食べ方をしているわけでも無い。だが机の上の品は次々と消えてゆく。大和がかなりの健啖家であることは知っていたが・・・普段の鎮守府での食事はあれでもまだ抑えていたのだろうか?

 

「いやはや・・・夏祭りの陸奥さんの時も驚きましたが、大和さんはそれ以上の食べっぷりですなぁ。」

 

「そうですね。あれは私も少々想定外でした。」

 

「ですが街の皆もとても喜んでいます。大和さんはとても人当たりが良くて優しい方で、親しみ易いのでしょう。」

 

 確かに大和の周りに集まった人達は皆笑顔だ。これは当初考えていたよりもかなり良い印象を一般人に与える事が出来たのではないだろうか?存外人当たりの良さというのも馬鹿に出来ないものだな。

 

「これで艦娘達への理解が得られればなによりですね。」

 

 艦娘達は海を守ってくれる守護者として敬われる事が多い一方で、化け物と戦う力を持つ恐ろしいものだと考られてもいる。もちろん艦娘達が遊びに行くお店等では、艦娘の存在に理解を示してくれる者が多い。まあ、艦娘達のお金の使い道なんて居酒屋鳳翔か明石経由で物を買うくらいなので、基本的に艦娘達はそれなりにお金を持っている。しかも街に買い物に出るような艦娘達は好奇心旺盛だし、トラブルを起こすと外出許可に制限がかかるので迷惑行為はしない。つまりはとても良いお客さんなので、お店側から喜ばれているのだろう。

 しかしそういう例外を除けば艦娘達は未知の存在で、恐ろしいなにかだと思っている者達も少なくはない。艦娘新教なんてのが流行るのも艦娘に対する恐れがあるからだろう。逆にそれなりに情報が得られる権力者達は、艦娘の事を侮っている者が多い。私が着任するまで艦娘達を好き放題してた過去があるからな・・・

 

「・・・どうかされましたか?」

 

「いえ、少し考え事を・・・」

 

 まあ、今回の一件は艦娘達のイメージ向上に良い影響があったと言えるだろう。一般人が遠巻きにこちらを拝んでいるのは気になるが・・・

 

「Hey!!提督!!お待たせしましたネ!!」

 

「金剛達か。公開演習ご苦労だった。かなり好評だったぞ。」

 

「Thank you!!頑張ったかいがあったヨ!!」

 

「とりあえず今色々と料理を頂いているところたがら、金剛達も頂くと良い。」

 

「Wow!!とっても美味しそうなお料理ばかりデース!!あ、途中でツッキー達を見付けたから一緒に連れて来たヨ!!」

 

「・・・・・・は?」

 

 金剛が言うツッキーは確か暁の事だったか?ツッキー達と言うことは第六駆逐隊の事か?

 

「司令官、ごきげんようです。」

 

 金剛達の後ろから第六駆逐隊が出てきて、暁が礼儀正しく挨拶をしてくる。

 

「・・・・・・なぜここに第六駆逐隊が来ているのだ?」

 

「え?響がお祭りに行きたいからって外出許可を貰って来たからよ?ちゃんと第六駆逐隊4人分で司令官の印鑑もあったじゃない?ねぇ響?」

 

「ダー。念のために外出許可書は持って来ているよ。ほら。」

 

 響が取り出した外出許可書を見る。確かにそこには私の印鑑が押してあるし、最近許可書に印鑑を押した記憶もある。ちなみに許可書の内容は今日の日付で街に遊びに行きたいと書いてある。たしか日付を見て第六駆逐隊の哨戒や遠征のシフトの日では無い事は確認したはずだが、新年祭の事は考えていなかったな。

 

「確かに今日の日付の外出許可書だな・・・だがお祭りに行きたいなんて書いていないぞ。」

 

「それはそうだよ。私達はたまたま今日街に遊びに出掛けたら、たまたま面白そうなお祭りをやっていたから遊びに来たんだよ。」

 

 響はそう言い張るが・・・私にはたまたまだとは思えない。他の娘達はともかく響はわりとしたたかだ。これは計画的な行動だと考えるのが自然だ。

 

「たまたま新年祭の日に外出許可を取って、たまたま新年祭を開催しているのを知ったから遊びに来たと言い張るのか?」

 

「ダー。もし仮に私が新年祭の事を知っていたとしても、外出許可を出したのは司令官だよ?まさかとは思うけれど今さら外出許可を取り上げたりしないよね?私達は問題を起こしていないし、深海棲艦の襲撃もないんだよ?」

 

「う・・・そうだな・・・」

 

 確かに外出許可を出してしまったのは自分だ。正当な理由がなけば外出許可を取り上げる事は理不尽だ。第六駆逐隊がなにか問題を起こしたわけではないからな・・・響にしてやられたな。

 

「スパシーバ。分かってくれて嬉しいよ。」

 

「はぁ・・・上手くやったものだな。」

 

「そうだね。でもこれは司令官が仕事の事以外で私達にあまり興味を持たないからだよ。だからお祭りがある日に外出許可を申請しても気が付かないのさ。」

 

「・・・今後は気を付けるとしよう。」

 

 やってしまった事は仕方ない。こうなったら第六駆逐隊を自分の目の届く範囲に居させて、トラブルが起きないようにしたほうが良いだろう。

 

「綾瀬さん、すみませんが急に4人増えても構いませんか?」

 

「もちろんですとも!!しかし艦娘の方が4人増えるとなると、料理を追加しないと足りませんよね。すぐに手配を・・・」

 

「いえ、お構い無く。この娘達は駆逐艦なので少食ですから。残っている甘味で充分です。」

 

「そうですか?ですがあまり残っているようには見えませんが・・・」

 

 そう言われてみると、机の上の料理はかなり減っていた。どうやら私は大和の食欲を甘く考えていたようだ・・・




 Ifでの提督は艦娘に振り回されるくらいが丁度良いかなぁとか思ってます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。