疑心暗鬼提督 If   作:ライadgj1248

29 / 30
 すごく久し振りにifの更新です。
 なかなか書きたい物が思い浮かばなくて、こちらはしばらく休載してましたが、今回は秋刀魚イベントのお話を書いてみます。是非読んでみてください。


秋刀魚if(前編)

 その日北九州鎮守府はピリピリとした雰囲気に包まれていた。いや・・・ピリピリなどと言う可愛らしいものではなく、重苦しい雰囲気で張り詰めていた。通信で話をしている葛原提督の表情は硬い。

 

「・・・海原提督、もう一度ご要件を確認しても?」

 

「サンマ漁支援に人手が足りないんだ。だから北九州鎮守府にも協力して欲しい。大変なお願いだというのは理解してるけど、なんとかお願い出来ないかな?」

 

 発端は大本営から発せられたサンマ漁支援任務だ。何故わざわざ軍がそんな事を?と思うだろう。まず前提として深海棲艦の影響により、漁業は壊滅的な被害を受けている。近年瀬戸内海や沿岸部での漁業が開始されたのだが、沖合いに出るには艦娘の護衛が必須となる。もちろん各地の鎮守府も暇ではないので、そう頻繁に護衛など出せるわけもない。だが大本営が資金集めや大本営のイメージ向上の為に、各地から戦力を集めて大規模な護衛艦隊を組織して、大規模なサンマ漁を試みようと言うのだ。

 

「はぁ・・・あの馬鹿げた作戦に参加しろと言うのですか・・・あの作戦はあくまでも自由参加で、参加した鎮守府に特別報奨が出るという話でしたよね?正直に言って参加するメリットよりも、うちの戦力が拘束されるデメリットの方が大きいと考えているのですが?」

 

「葛原提督の懸念は分かるけれど、そこをなんとかお願い出来ないかな?ここ最近は北九州鎮守府の近海は安定してるし、今の北九州鎮守府の実力ならやれるだけの力はあると思うんだ。それにこのまま戦力が集まらない状態だと、久し振りのサンマ漁を期待してる漁業関係者やサンマを楽しみにしてる市民の方々が悲しむ事になってしまうんだ・・・もちろん横須賀鎮守府からも艦娘達を派遣するから、是非協力してくれないかな?」

 

 はぁ・・・・・・こうやって海原提督が下手に出て頼まれると断り難い・・・正直なところ戦力を割くことが可能かと問われれば、常日頃から周辺海域の哨戒をして敵の拠点を早目に潰して回っているので、大きな問題は無い。断る理由としては大本営のくだらない思い付きに振り回されるのが嫌なだけだ。そして海原提督は恩着せがましい事は言わないが、海原提督率いる横須賀鎮守府には今までかなりお世話になっている。多大な借りがある相手でそこまで無理の無い頼みを断るのも人としてどうかと思う・・・

 

「はぁ・・・分かりました。引き受けましょう。」

 

「ありがとう!!本当に助かるよ!!では詳しい話はまた書面で送るよ。」

 

「ええ、分かりました。それではこれで失礼します。」

 

 海原提督との通信を終えてついまた溜息が出る。海原提督は悪い人ではないのだが、どうにも苦手だ・・・

 

「提督、コーヒーをどうぞ。」

 

「ああ、助かる。」

 

「サンマ漁支援任務に参加するのですね。」

 

「ああ、面倒な話だがやると決めたならきちんとしなければならないな。以前大本営から送られて来たサンマ漁支援任務についての資料があったな。参加するつもりがなかったからきちんと読んでいなかったが・・・」

 

「はい、作戦の概要と有用な艦種や装備についての記載がありました。」

 

「ほう?大淀はきちんと目を通していたか。流石だな。」

 

「ありがとうございます。艦種は海防艦・駆逐艦・軽巡洋艦・練習巡洋艦・水上機母艦が推奨されています。」

 

 ふむ、大型艦よりも小型艦を推奨か。確かに敵の大規模拠点を攻略しに行くわけではないのだから、戦艦や空母を出すのももったいないか。それに漁船団の護衛となると、臨機応変に対応出来る小型艦の方が便利だな。

 

「なるほど。装備の方はどうだ?」

 

「有用な装備は・・・アクティブソナーに熟練見張り員に探照灯と水上偵察機、あとは水上爆撃機に爆雷との事ですが?」

 

「おい待て、前半の装備は理解出来るが水上爆撃機と爆雷だと?大本営はサンマを轟沈でもさせるつもりか?」

 

「分かりません・・・敵潜水艦を警戒しているのでしょうか?」

 

 サンマ漁に関してはほとんど知識がないが、流石に爆雷や爆撃機が使えそうに無い事はわかる。いや?確か川で思いっ切り石を叩いて衝撃を伝え、魚が気絶して浮いてくるのを捕まえる漁があったな。あれを爆雷で大規模にやるつもりか?

 

「その資料を見せてくれ。」

 

 大本営から送られた資料によると、漁船団のすぐ近くで漁の支援をする部隊と、漁船団から離れて沖合を警戒をする部隊があるそうだ。そしてサンマ漁は夕方に港を出港して夜間に漁を行うらしい。夜戦となると護衛艦隊に空母は採用出来ないか・・・・・・ん?夜間に漁をするならば、水上偵察機も水上爆撃機も使えないのではないか?ならば水上機母艦は無力になるのでは?

 

「サンマ漁に関する資料は当たり前だが漁業関係者が作ったのだろう。だから夜間に艦載機を飛ばす事が出来ないのを知らなかったのか?」

 

「ですが大本営から資料が届いているので、大本営の関係者が必ず目を通しているはずですが・・・」

 

「それにしては意図が読めない。一応横須賀には夜間に行動出来る空母が居ると聞いたが、それはかなり例外的な話だろう?」

 

「そうですね・・・ではどうされますか?」

 

「漁船団から離れて沖合で警戒する部隊になれるよう海原を説得しよう。それならば相手にするのはいつも通り深海棲艦だ。」

 

「それが無難かもしれませんね。」

 

 そうなると送る部隊は夜戦に強い構成だな。そう考えているとドタドタという足音が近付いて来て、執務室の扉が勢い良く開かれる。

 

「提督!!呼んだ!?夜戦!?夜戦だよね!?」

 

「・・・まだ呼んでいないのだが?」

 

「まだって事は私を呼ぶつもりだったんだよね!?だから夜戦だよね!?」

 

「まあそうだな。短期間ではあるが別の鎮守府を拠点として、毎日夜戦に出て貰おうと考えている。」

 

「やったぁ!!毎日夜戦出来るんだ!!やっぱり夜戦だよね!!さっき提督が夜戦の事考えてるような気がしたから、急いで執務室に来たんだ!!これって以心伝心ってやつだね♪」

 

 昔から本当に謎なのだが、川内の夜戦に対する嗅覚はなんなんだ?しかも夜戦の事を考えるだけで察する事が出来るなんてどう考えてもおかしい。

 

「ん?そんなに私の事じっと見つめてどうしたの?」

 

「いや、川内は本当に夜戦が好きなのだなと思っただけだ。」

 

「うん!!もちろん大好きだよ♪夜戦は私の生きがいだからね♪」

 

「そうか・・・まあいい。今回の任務はサンマ漁の支援任務だ。」

 

「サンマ漁?へぇ?提督が護衛任務引き受けるとか珍しいね。」

 

「色々と事情があるんだ・・・まあ、お前達にやって貰うのは周辺海域の警戒と掃討だろうな。川内の感覚を頼りに深海棲艦を探して潰してまわる。安全の確保で言えばそれがうちとしては最も有効な手段だろう。」

 

「つまりいつも通りだね♪夜戦なら私に任せてよ♪」

 

 本当に夜戦に関しては川内任せだ。色々とおかしな奴ではあるが、とても頼りになる奴だ。

 

―――――――――――――――――――――

 

 夕食を食べに食堂に来たが、今日はいつもよりざわついているな。サンマ漁支援についての通達をしたので、美味しいサンマが食べられる事に期待しているようだ。サンマ漁支援任務に協力した鎮守府には、漁獲されたサンマを優先的に貰える事になっている。大本営としてはそのサンマを使って各地で秋刀魚祭りを開催する事を推奨している。人気集めと資金集めの為のイベントだな。うちの鎮守府ではわざわざ人気取りに勤しむ必要もないだろうから、うちで消費する分以外は漁業組合に卸してしまえば良い。それだけでも鎮守府としての評判は上がるだろう。

 

「提督、少しよろしいでしょうか?」

 

「赤城に加賀か。どうした?」

 

「今度サンマ漁支援任務に北九州鎮守府も協力されるとお聞きしました。美味しいサンマが食べられそうで今からとっても期待してます。」

 

「ふむ、それで?」

 

「せっかくなので私達にもなにか出来ることが無いかと考えていまして。」

 

「無い。サンマ漁支援任務の概要は説明されただろ?今回は小型艦を中心とした編成で行く。それに夜間での活動になるから、お前達空母は連れていけない。」

 

「いえ、私も赤城さんもそれは理解しています。ですからサンマ漁支援任務が終わったあとのサンマ祭りでの協力を検討しています。そこならば我々空母でも力になれると思います。」

 

 ・・・・・・は?サンマ祭りだと?

 

「そうです。我々空母は鳳翔さんを始めお料理上手な方が多いですし、大和さんや駆逐艦の娘達も協力してくれるそうなんです。私達を応援して下さる地域の方々とも交流出来て、皆笑顔で美味しいサンマを頂ける素晴らしいイベントですよね♪」

 

「ええ、今から気分が高揚します。」

 

「いや、待て。私はサンマ祭りなどするつもりは無いのだが?」

 

 その瞬間食堂が一瞬で静まり返った。それはもう先程まで楽しそうにお喋りに興じていたはずの艦娘達が、誰一人として声を発さないくらいに静まり返った。

 

「・・・・・・え?ど、ど、どういう事ですか?私達サンマを食べられないのですか?」

 

「・・・・・・提督、それは流石にあんまりではないですか?これには断固抗議させて頂きます。」

 

「別にサンマが食べられない訳では無い。うちで消費する分を除いて、残りは漁業組合にでも卸そうかと考えている。」

 

「その・・・理由を伺っても?」

 

「やるメリットに魅力を感じないだけだ。」

 

「そ、そんなぁ・・・」

 

 ガックリと項垂れる赤城とは対照的に、加賀は真剣な表情で考え込む。

 

「・・・つまり提督にサンマ祭りを開催するメリットに魅力を感じて頂ければ、サンマ祭りの開催に許可を頂けると解釈しても宜しいですか?」

 

「まあ、そうだな。」

 

「分かりました。ならば艦娘の有志を集めて企画書を提出しましょう。一航戦の誇りにかけて必ず提督を納得させてみせます。」

 

「そ、そうか?そんなにサンマ祭りをやりたいのか?」

 

「ええ、ここは譲れません。」

 

「そうか、では企画書が出来たら持ってくると良い。」

 

 そう伝えると一気に食堂が活気に包まれる。多くの艦娘達が食事をしながらも真剣にサンマ祭りについて話をしだす。なにが艦娘達をそこまで駆り立てるのだろう?普通に鎮守府でサンマを焼いて食べるだけではダメなのだろうか?とはいえこの熱意があればきっと良い企画書が出来上がるだろう。また仕事が増えるな・・・




 よくよく考えるとツッコミどころの多い秋刀魚イベント・・・うん、深く考えたらダメだ。これはゲームのイベントなんだから・・・
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。