「諸君、まずは先日の大規模戦闘を無事に乗りきれた事を感謝する。うちの鎮守府は求められた働き以上の戦果を上げただけでなく、一人の轟沈も出していない。これは諸君の日頃の鍛練の成果だと思っている。よって本日は間宮と鳳翔に協力して貰い、宴の準備をしている。存分に楽しんで英気を養い、明日への活力として欲しい。では諸君!乾杯!!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
そこから先はお祭り騒ぎだった。普段使う食堂には立食形式でご馳走が並び、艦娘達が我先にと手を付けていく。戦艦や空母達に食べ尽くされる前にと、テーブルの間を駆け回って料理を確保する駆逐艦達、駆け回る駆逐艦達に苦笑しながらも自分達の分を確保しようとする巡洋艦達、そして悠々と歩を進め自分のお皿に山を築く戦艦や空母達、さらには挨拶が終わった途端に居酒屋鳳翔へと駆け出した飲兵衛達と、それぞれ個性が出ているが、皆楽しめているようでなによりだ。命をかけた戦いを無事に乗り越えられたことを祝い、明日への活力とする。たまにはこういう派手な催しも悪く無いな。
「もう司令官ったら、ぼーっとしてたらお料理なくなっちゃうじゃない。私達が代わりにお料理取ってきたから一緒に食べましょう?」
周囲の様子を眺めていたら、雷が声をかけてきた。第六駆逐隊の皆がたくさんの料理を確保して来てくれたようだ。
「ありがとう。一緒に頂こう。」
「そうそう、もーっと私に頼って良いのよ!」
「ちょっと雷!暁が最初に言い出したんだからね!」
「はわわ!喧嘩はダメなのです!」
「ハラショー。美味しそうな料理だ。冷めたらもったいないから早く食べよう。」
わいわい騒ぎながら、席を確保して食事の準備を整える。暁と雷のじゃれ合いも今では慣れたものだ。
「それにしても、この短時間でよくこれだけの料理を確保してきたものだな。」
「当然よ!私達第六駆逐隊は資材集めのプリョフェショナルよ!」
「噛んだ。」
「噛んだわ。」
「難しい言葉を使おうとして噛んだのです。」
そこはスルーしてあげれば良いのに・・・
「う・・・とにかく、資材だけじゃなくてお料理だってちゃんと集めてこれるんだから!」
「ははは、いつも資材集め頑張ってくれているからな。頼りにしている。」
「と、当然よ!暁達は一人前のレディなんだから!」
暁がレディと言い張るのは微笑ましいものだが、実際に効率良く資材集めをしてくれるので、とても助かっている。今回の戦いで第六駆逐隊は前線に出た訳では無いが、普段から集めてくれた資材があってこそ乗りきれた戦いだ。それに中継拠点への資材の輸送など後方支援も担当してくれていた。戦いにおいて後方支援の重要性は言うまでも無いだろう。
「ではさっそく料理を頂こうか。響が言っていたように冷めてしまってはもったいないからな。」
「はーい司令官、じゃあ皆、いただきます。」
「あー、雷!そういうことはお姉ちゃんの暁の仕事よ!」
「「「いただきます。」」」
「うー!いただきます・・・」
――――――――――――――――――
その後しばらく第六駆逐隊と食事をしたが、あちこちから呼ばれて慌ただしい時間を過ごした。だが皆で勝利を喜んでくれているのが伝わって、悪く無い時間だった。まあ、一つ言うならば、飲兵衛達の相手が大変だった。自分ももうお酒が飲める歳になり、そこそこお酒に強い体質のようだが、うちの飲兵衛達のペースに付き合うのは勘弁願いたい。なので賑やかな雰囲気を背に、少し酔いざましの散歩をしているところだ。最近は暑さも和らいで夜は少し肌寒いくらいだが、酔いで火照った体には心地良い。しばらく歩いていると、海辺のベンチに誰かが座っているのが見えた。あれは・・・響か?
「響か?こんなところでどうしたんだ?」
「やあ、司令官、賑やかなのも嫌いじゃないけど、ゆっくり飲みたい時はここが良いのさ。」
そう言って響が見せてくるのはウォッカだ。たしか響はロシアに縁のある艦娘だったか・・・それにしても見た目小学生の響がウォッカを飲むのは、なんともアンバランスな感じのはずだが、存外様になっているのが不思議なものだ。
「だったら邪魔してしまったようだな。あまり遅くならないようにな。」
「司令官、せっかくだから少し付き合ってくれないかい?」
「酔いざましに散歩してたんだが・・・今の状態にウォッカは少しキツいな・・・」
「なら少し話をするだけでも構わないさ。」
「それくらいなら付き合おう。なかなか無い機会だからな。」
そう言って響の隣に腰を下ろすと、響がまた一口ウォッカに口をつける。海を眺めながら静かに飲む姿は、響の容姿もあって幻想的な雰囲気を醸し出す。
「それで何を思って飲んでいたんだ?」
「・・・昔の仲間を思ってだよ。沈んでいった仲間達に元気に過ごしてるよとか、今回も皆無事に帰ってこれたよとか、良い鎮守府になったよって報告してるのさ。今が楽しいからって昔の仲間を・・・沈んでしまった姉妹を忘れたくはないのさ・・・」
「・・・なるほどな。」
「だから昔からこうやって、海に向かって話をしてたんだ。その・・・前は泣きながらだったけど、今は幸せな話がいっぱい出来るようになったよ。これも司令官のおかげだね。」
「・・・そうか。そう言って貰えるなら良かったよ。」
果たして本当に自分は上手くやれているのだろうか?もっと上手くやれたのではないか?色々考え込んでしまうけれど、歩き出した以上は歩き続けなければならない。迷いながらも進むしか道はないのだから・・・
「なぁ、響、それ少し貰えるか?」
「良いのかい司令官?かなり強いお酒だよ?」
「だから少しだけさ。」
そう言うと響はグラスに少しだけウォッカを入れて渡してくれる。それを海に掲げた後に一気に飲み干す。
「くぅ・・・本当に強いお酒だな・・・」
「だから言ったじゃないか・・・それで、何を思って飲んだんだい?」
「誓いかな?沈んでいった英霊達に、この国を守ること、艦娘を出来る限り沈めないこと、響にもっと幸せな話をさせられるように努力することをな・・・」
「うぅ・・・それじゃあまるで・・・」
「ん?どうした?」
響が急に俯いてボソボソと呟いた。隣にいるとはいえ流石に聞き取れなかった。
「いや、何でもないさ。夜も遅いしそろそろ寝るとするよ。Ты мне нравишься.お休みなさい司令官。」
「ん?ああ、お休み。」
最後のはおそらくロシア語だろう。ハラショーとかスパシーバは分かるようになったが、今のは聞き覚えのない言葉だったな。さて、自分もそろそろ寝るとするか。
勢いで書いた響編でした。ちなみに最後のロシア語は「あなたのことが好きです」でした。愛してるほど重い表現ではないとのことで、この言葉を採用しました。
次回のタイトルは?
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青葉If
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曙If
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加賀If
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川内If
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瑞鶴After