疑心暗鬼提督 If   作:ライadgj1248

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 今回は基本的に提督視線で物語が進みます。本編の息抜きが必要なんだ!


夕立If

「・・・はぁ、新人提督との演習ですか?」

 

 舞鶴鎮守府からの電話がかかってきたので、ろくなことが無いと思っていたら案の定だった。合同演習をする事は問題無いのだが、その内容がとても面倒なものだ。曰く鶴野提督のお気に入りが提督となった為、箔をつける為に現役の提督に演習で勝たせたいらしい。つまり八百長で負ける潰れ役をしろとの事だ。そんな茶番に付き合いたくは無いものだが、大本営から正式な命令で合同演習を行うので、この合同演習に参加するしか無い。そして鶴野提督の要望を叶えなければ、あの手この手で悪質な妨害をしてくるのが目に見えているので面倒だ。しかし普通に潰れ役をするのは腹立たしい。本当に厄介な案件だ・・・

 

「提督、お疲れのようですが如何されましたか?」

 

「鶴野提督が新人との演習で八百長の負け試合をしろと言ってきたのだ・・・さて、どうしたものか?」

 

「不参加・・・はダメみたいですし、ただ負けるのも面白くないですね・・・」

 

 秘書艦の大淀も面倒な話にため息を吐く。

 

「いっそのことあからさまに手を抜くのはどうですか?負けて当然の編成で挑むとか?」

 

「ほう、悪くない考えだ?方針は決まったな。」

 

「あの、提督?とっても悪い顔してますよ?」

 

「なぁに、ちょっと鶴野提督のメンツを潰すだけだ。気にするな」

 

 さて、演習に向けて特訓をさせるか!

 

――――――――――――――――――

 

 鶴野提督の電話から2週間後、私は演習用のメンバーを引き連れて、見たくもない狐爺と嫌味ったらしい笑顔の新人提督と対面していた。こちらのメンバーを見た狐爺が、こめかみの辺りをひくひくさせていることに、笑いそうになるのを堪えつつ挨拶をする。

 

「北九州鎮守府の葛原です。本日は演習のお誘いありがとうございます。一応先達の提督として恥ずかしくない戦いをさせて頂こうと思います。」

 

「これはこれはご丁寧に、この度金沢鎮守府に着任した亀田です。本日はお手合わせ頂きありがとうございます。ところで演習のメンバーは本当にそのメンバーで挑まれるおつもりですかな?」

 

「ええ、もちろんです。鶴野提督が御覧になるとのことですし。こういう編成となりました。全力でやらせて頂きますので覚悟して下さいね?」

 

「はっはっは!分かりました。それでは駆逐艦6隻の本気を見させて貰いましょうか?」

 

 真面目な雰囲気に堪えきれなくなったのか、亀田提督は腹を抱えて笑い出した。その横でやり取りを見ていた鶴野提督が不機嫌そうに話し掛けてくる。

 

「貴様、いったいどいうつもりじゃ?ふざけるのも大概にせい!!」

 

「はて?この演習で手を抜くようにと仰ったのは鶴野提督ではないですか?もしかして戦力過剰でしたか?」

 

「馬鹿者!!手を抜くにしてもやり方と言うものがあるじゃろうが!?こんなあからさまな編成をしおってからに!!」

 

「そうは仰いますが、艦娘達にわざと負けろなんて腑抜けた指示は出せませんし、編成で手を抜くしか手段は無いでしょう?これなら全力で戦っても大丈夫ですよね?これでも負けるようなら亀田提督に非があると思いますが?」

 

「ええい!!もういいわ!!好きにせい!!」

 

 鶴野提督はぶつぶつと文句を言いつつ、お気に入りの亀田提督を連れて向こうの指令室へと入っていった。これでとりあえず好きにしろとの言質は得られたな。

 

「さて、私達も出撃の準備をしようか。」

 

「えっと提督さん?本当に夕立達勝てるっぽい?もしかして手加減して負ける為に呼ばれたっぽい?」

 

 質問してきた夕立を筆頭に、今日のメンバーは不安そうな顔をしている。今回の編成は旗艦白露で時雨・夕立・春雨・島風・雪風の6人だ。

 

「バカを言うな。前にも言ったが、確かに駆逐艦6人で挑むのは思いっきり手加減した編成だ。おそらく相手は戦艦4・正規空母2の編成で来るだろう。だが私は負けるつもりなど無い。相手は出来たばかりの鎮守府で、鶴野提督からの資材の援助を受けて作った張りぼての艦隊だ。演習で多少練度を上げているだろうが、実戦経験は少なく亀田提督の指揮下で戦った事はほとんど無いはずだ。それに比べてお前達は私の指揮下で数々の修羅場を乗り越えて来た猛者だ。私から言わせたら、むしろ負ける要素が見当たらないくらいだな。」

 

 そう言い切って強気に笑うと、艦娘達も納得したのか自信を取り戻したようだ。

 

「では任せたぞ!お前達をたかが駆逐艦と侮った奴らに現実を教えて来い!!」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

 頼もしい返事と共に出撃港へと向かう艦娘達を見送った。さぁて、新人提督に駆逐艦の恐怖を叩き込んでやるとしようか?

 

――――――――――――――――――

 

『各艦初期位置に配置しました。これより合同演習を始めます。5 4 3 2 1 始め!!』

 

 会場にアナウンスの声が響き渡り、合同演習が開始した。今回の演習は一般公開されていて、会場の特設モニターを多くの観客が見ている。自分達の演習は5戦する中の3戦目だが、対戦する艦娘が発表された時には落胆ムードになった。相手は予想通りの戦艦4・正規空母2の編成だから、一方的な試合となって退屈だろうと思うのは仕方ない。だからこそこの試合には意味がある。派手な戦艦と空母の殴りあいしか見た事の無い一般人に、駆逐艦の凄さを見せ付ける目的もあるのだ。

 

「白露、聞こえるか?」

 

「はい!何ですか?」

 

「まずは敵の航空機部隊が来るはずだ、予定通り輪形陣にて迎撃、あらかた打ち落としたら散開して、島風・雪風を突っ込ませろ。敵を混乱させたらその隙に接近して、お前達駆逐艦の距離で戦うように。突撃のタイミングは白露に任せる。格の違いを見せてやれ!!」

 

「任せて提督!さーあ、張り切って行きましょーう!」

 

 迫り来る敵艦載機を次々と落とした辺りから観客の反応が変わっていった。最初は一方的な試合になると思っていたものが、想像以上に善戦しているではないか。艦載機だけでほとんど試合が終わると思っていたのか、悠々と進んでいた敵艦隊も慌てて速度を上げて、戦艦の射程圏内に入れようとするが遅すぎる。こちらはほとんどの敵艦載機を落としてしまったので、今更艦載機と砲撃の同時攻撃なんて意味が無い。戦艦の射程圏内に入る前に白露の指示で島風と雪風が飛び出す。一気に最高速度まで上げる二人に敵艦隊は対応出来ず、さらに白露型姉妹が砲撃で敵艦隊の前に水飛沫を上げる事で目眩ましまでするのだ。練度の低い戦艦の砲撃が当たる訳もない。

 

「みんな、おっそーい!五連装酸素魚雷いっちゃってぇ!!」

 

 敵艦隊に接近した島風と雪風が魚雷を叩き込んだ時には、派手な水飛沫が上がり観客も大盛り上がりだ。そして相手が建て直しをしようともたもたしている間に、白露型姉妹も駆逐艦の距離に入ってしまった。

 

「さあ!すてきなパーティーしましょう!!」

 

――――――――――――――――――

 

 大盛り上がりの会場に悠々と自分の艦隊が帰って来る事に、全ての作戦が成功した事を実感する。これで鶴野提督への意趣返しと、生意気な後輩の鼻を叩き折る事、さらには一般市民への駆逐艦のイメージ向上まで出来たのだ。戦果としては最大限の戦果を上げたと言って良い。鶴野提督は癇癪を起こして帰ったのか、終わりの挨拶には真っ青な顔の亀田提督だけが来た。最初の嫌味ったらしい態度は消え失せて、ボソボソ喋るので聞き取れなかったが、適当に挨拶を済ませて会場を出る。

 

「くっくっく、全員見事な戦果だった。これで私の気分も良いし、一般市民や提督達の駆逐艦への印象も変わるだろう。作戦は大成功だ。特に夕立の最後の大暴れは凄まじかったな。」

 

「夕立ったら結構頑張ったっぽい?提督さん褒めて褒めて!」

 

「ああ、よく頑張ったな。今日の一番は夕立だな。」

 

「ああ!また夕立がいっちばんじゃん!たまにはお姉ちゃんに譲りなさいよ!」

 

「提督さん!提督さん!もっと褒めて欲しいっぽい!頭撫でて欲しいっぽい!」

 

 白露の話を無視して夕立が頭を擦り付けてくる。今日は大戦果を上げたのだ。これくらい安いものだ。

 

「こらー!お姉ちゃんの話を聞きなさーい!!」

 

「まあまあ、姉さん落ち着いて。いつもの事じゃないか?」

 

「時雨!?いつもの事だから問題なのよ!?今日はお姉ちゃんも旗艦として頑張ったんだから!」

 

「そうだな、白露も旗艦として良くやってくれた。島風と雪風を突っ込ませる判断も的確だったしな。それに敵艦隊に突っ込んで混乱させた二人も良かったし、的確な援護をして周囲を動き易くさせていた時雨と春雨も見事な手腕だったな。今日は全員の力があってこその圧勝だ。全員誇って良いぞ。」

 

 そう伝えると全員大喜びだった。これだけ上手くいった今日くらいは、多少浮かれるくらいでちょうど良いだろう。

 

「それでそれで提督さん。今はどこに向かってるっぽい?」

 

 お店の前に到着する時に、タイミング良く夕立が聞いてきた。これは驚くだろうな。

 

「今日は大戦果を上げたご褒美だ。ここのスイーツバイキングのお店が目的地だ。」

 

「スイーツバイキングって何っぽい?」

 

「簡単に言えば甘いもの食べ放題の場所だ。存分に楽しめ。」

 

「やったー!!ケーキにクッキーにシュークリームなんでもありっぽい!?」

 

「今度こそお姉ちゃんがいっちばんだから!今日はいっちばん食べてみせるんだから!!」

 

「みんなおっそーい!!」

 

「あ、島風ちゃん待ってー!!」

 

 島風を筆頭にスイーツバイキングのお店に突入する雪風・夕立・白露を眺めながら苦笑する残された3人。

 

「もう・・・みんなはしゃぎすぎだよ・・・春雨を見習って欲しいくらいだよ。」

 

「で、でも私も楽しみです、はい。」

 

「そう言う時雨もそわそわしてるじゃないか。せっかくだから一緒に楽しんで来い。」

 

「・・・僕だって甘いものは好きだからね。じゃあお言葉に甘えて行ってくるよ。行こう春雨。」

 

「はい、私もいっぱい食べたいです、はい!」

 

 そう言って時雨と春雨も参戦し、それこそ店内は素敵なパーティー状態だった。これは店員さんに多めにお金を包んだほうが良いかもしれないが、せっかくのお祝いだ。この皆の笑顔のためならば、多少の出費と頭を下げる事になることは許容範囲内だな。




 夕立Ifと言うよりは白露型Ifっぽい出来になったかな?今回は恋愛絡みじゃないけれど、幸せそうならそれで良いんじゃないかと思って、こんな感じになりました。

次回のタイトルは?

  • 青葉If
  • 曙If
  • 加賀If
  • 川内If
  • 瑞鶴After
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