バトルフロンティアが廃人の施設とか言った奴出てこい 作:麦わらぼうし
今日も今日とて稼いだ
どういう理由か不明だが、この世界に生まれて十数年。一体何のために転生したのか答えを求めて考えるも、最終的には『分かる訳がない』という結論と共に思考を止める。
確かなことは、自身が今いる世界とは違う世界で生きていた記憶と、自身が持っていた知識と現実との食い違いと、なぜか初めから前世で愛用していたポケモンたちが手持ちに居たことだけ。
そう、俺はどういう訳かポケモンの世界に転生したのだ。
ちなみに死んだときの記憶はない。どうやって死んだのかは分からないし、一番最後に残っている記憶は家族でテレビを見ている光景だった筈だ。
気が付いた時には、自身の身体が赤子になっており、3個のモンスターボールと共に見知らぬ部屋に居た。
最初は呆然とし、ポケモンが存在することを知って驚愕し、最後に絶望した。
それは、両親への罪悪感からだ。
今世の両親も、俺を深く愛してくれた素晴らしい人たちである。当時、もしかしたら自分は彼らの子供を奪ってしまったのではないかという罪悪感からとても暗かった。
そんな俺を見捨てずに育ててくれた。だというのに、俺は未だに前世のことを引きずっている。本当に申し訳ないと思っているが、俺にとって両親とは前世の2人だけなのだ。
割り切ってしまえば楽なのかもしれない。だが、自身の中の俺が叫んでいるのだ。
―――割り切れるかッ!
と。
故に俺は、10歳になってトレーナーの資格を得ると同時に逃げるように今世の家から飛び出した。
チャンピオンを目指すでもなく、図鑑を完成させるためでもない、目的のない流浪の旅。
それでようやく頭を冷やせたのか、自身がこれから先の為にやらなくてはならないことを考え始めた。
この世界はポケモンの世界であり、10歳になると誰もが一度ポケモントレーナーになることを考える。自身が持つポケモントレーナーとして才能でやっていけるか考えるのだ。エリートトレーナー、ジムトレーナー、ジムリーダー、果ては四天王やチャンピオンまで夢想するだろう。
その為に腕を磨くのがジム巡りであり、その為の旅である。
だが、俺はその少なくともチャンピオンになる夢は諦めた。どうしてか? それは簡単だ。前世から一緒に居る3体のポケモン。それは所謂ランクバトルと言われた通信対戦で使っていたメンバーなのだ。
察しのいい人物ならここで分かるかもしれないが、この3体のポケモンは所謂『準伝説』と呼ばれるポケモンである。王冠を使用する為にLvは100であり、努力値は当然として、性格や、めざパ厳選も行った個体だ。他の手持ちに入れていたポケモンは、彼らで戦いやすくするための見せポケモンであり、適当にクイックボールで捕まえたポケモンだった。
そんなメンバーで戦えばどうなるか、悪目立ちするのは火を見るより明らかだろう。しかも、そのメンバー自体も問題だった。3体のうちの2体が
故に、表向きに使えるポケモンは1体である。そんなのでチャンピオンになんてなれるかッ!
ならば新しくポケモンを捕まえて育てればいいというかもしれないが、それは不可能だった。
ポケモンが覚えられる技の数に限界があるように、人間にも育てられるポケモンに限界があるのだ。それは当然金銭的な面もあるが、やはり才能の面が大きい。
俺のキャパシティは、手持ちの3体で限界だった。当然捕まえることはできるのだが、どれだけバトルしようともLvは1つも上がらないし、進化の石を使っても進化しないのだ。
だから新しい技を覚えさせることもできない。
技マシン? あれは教育ビデオみたいなもので、技の説明とポケモンが使っている映像が収められているだけのモノだ。アレを見て、実際に特訓して、上手くいった個体だけが覚えることができる。
しかもゲームのように種族ごとに覚えられることが決まってなどいなく、才能のないポケモンでは自身のタイプの技ですら覚えられない者も居れば、まったく関係のないタイプや専用技ですら覚えられるポケモンもいる。
ポケモントレーナーの世界とは、まさしく才能の世界なのだ。
さて、ここまで説明した通り俺は3体しかポケモンを所持していない。しかもバトルで使えるのは実質的には1体だ。だが、たとえ1体であったとしてもLv100であり王冠個体であり、技構成も整った個体である。リーグのような大型の大会ではなく中型の大会までなら何とかなった。
そして小さな大会を転々としながら日々を過ごしていると、ある日にサングラスをかけた人に声を掛けられたのだ。
最初は、大会を荒らし過ぎたかと思って恐怖したが、その人物の名前を知って驚愕した。
その人物の名は、エニシダ。
知っている人は知っているだろう。あの廃人の施設と名高い『バトルフロンティア』のオーナーである。どうやらポケモン1体で、数々の大会に優勝している自身に目を付けたらしく、俺はバトルフロンティアに招待された。
そして現在、バトルフロンティアの1トレーナーとして制覇を目指しているのだ。
ここに来てから、いかに自身が狭い世界で戦ってきたことがよく分かる。
このバトルフロンティアは施設ごとにバトル方法が異なるが、一律して決まっていることは、一度のバトルで使用できるのは3体までということだけの超ハイレベルのバトル施設だ。
どれほどハイレベルかというと、自身の実体験を言えば伝わるだろう。
俺が最初に来た時、自身のポケモンがどれほど通用するかと一番目立つ施設であるバトルタワーに挑戦した。
そして最初に当たった一般トレーナーが先発として出してきたポケモンは
―――ライコウ
それを見た瞬間、目が点になった。
もう一度言うが、最初のトレーナーの1体目のポケモンである。手持ちが準伝説3体である俺が言うのもブーメランであるが、頭おかしいんじゃないの?
Lv? 当たり前のように100でしたが何か?
ここまで驚いた理由は、この現実世界で準伝説の強さはゲームとは比べ物にならないほど強大だからだ。
まず、600族と呼ばれるゲームでも強力だったポケモンは1体だけで戦況をひっくり返せるほど強いのだが。準伝説は、その600族を6体使用してようやく追い払える強さを持っているのだ。それでも倒すのはほぼ不可能である。
おまけに、600族も準伝説も総じてプライドが高い個体が多く、トレーナーの命令なんて聞くことはほぼない。それを従えられるのなら、もうポケモントレーナーとして十分にやっていけるだろう。
だが、このバトルフロンティアでは600族クラスのポケモンは標準装備となる場所だった。どうやらこの世界には、準伝説は複数居るのが当たり前であり、一日のうちにすれ違った人たちの中で準伝説を持っている人物が必ず1人はいるほどである。
フロンティアブレーン?
そうだね、俺がタワータイクーンのリラさんに挑戦した時、初手で「スカーフしおふきカイオーガ」が出てきたとだけ言っておくよ……。
そんな廃人どころか魔境と呼んでもいい場所だが、そんな中でも600族も準伝説も伝説も幻も使用しないトレーナーもいる。
「………」
その一人が。今、俺の隣でヒウンアイスを食べている生きる伝説と呼ばれる人物、レッドさんである。
なんでシロガネ山ではなく、ここにいるんですかねぇ……。
「レッドさん、口の周りがアイスでベトベトですよ」
「………」
声を一切発することなく、ハンカチを使って口元を拭くと、そのまま俺の隣で一緒に日向ぼっこを始めるレッドさん。何か言ってくれませんかねぇ……。
というか、なんでまだここに居るんだろうか? もうレッドさんはシンボルを全部集めたと聞いたのだが。貴方がここに居ると、対戦相手として当たった場合敗北が確定するので別地方のバトル施設にいってくれませんかねぇ……。
この施設にはチャンピオンやジムリーダーや各世代の主人公が来るけど、貴方だけは別格過ぎて勝てる気が微塵もしないんですよ。
常時メガシンカしたリザードンって何ですか?
なんでプテラがゲンシカイキするんですか?
キズナヘンゲしたピカチュウとか意味が分かりません。
でんこうせっかで倒されるゲンシグラードンとか見たくなかった……。
こうなったらもうヤケ食いするしかない。俺は二つ目のヒウンアイスを求めてベンチを後にした。
禁止級伝説? 幻のポケモンの出場制限?
ここでのルールは『一回のバトルはポケモン3体まで』だけです。
国際警察? ここに来るような人物だと諦められているんじゃないですかね?