バトルフロンティアが廃人の施設とか言った奴出てこい   作:麦わらぼうし

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伝説のポケモンの恐ろしさを再認識するがいいッ!


起死回生?

「――ッ、もういいエースバーン! 早く戻ってッ! これ以上やったら、あなたが死んじゃうッ!!」

「―――――――――ッ!!!!!」

 

 私が必死に呼びかけるも、エースバーンは聞き取れないほどの大声を上げて戦いを止めない。

 

 だけどその身体は既にボロボロで『ひんし』と殆ど変わらない、それでもなおエースバーンが倒れないのはただの意地だ。

 

 私の横には、すでに『ひんし』状態となって倒れている手持ちの ドラパルト と ムゲンダイナ がいた。

 

 どういう理屈か分からないが、一度ラティアスを落ち着かせようとバトルするために皆を出してから、機械の類が一切機能しなくなったのだ。

 

 当然、ボールに戻すこともできない……。

 

 おそらく、エレキフィールドやサイコフィールドなどのように場の状態を変化させているのだと思う。

 

 あの子のラティアスを中心に形成されている、怒りと殺意が内包された漆黒の空間。

 

 それはまるで、精神にだけ『じゅうりょく』の影響を与えているように、己が存在を握り潰されるような圧迫感を与えてくる。

 

 立っているだけでも苦しく、今すぐにでも座り込んで意識を手放してしまいたい。だが、ボロボロになってもなお相棒が戦っているのに、私が膝をつく訳にはいかない!

 

 それに、目の前で泣いているあの子を放っておくことなんてできない!

 

 あの子の目は恐怖に染まっていたが、同時に助けを求めていた。今すぐにあの子を助けなければきっと、取り返しのつかないことになる気がする。

 

 だが、あの子のラティアスの攻撃が激し過ぎて、近づくことができない。

 

 バトルフロンティアに来る前に比べて、私はだいぶ強くなったと自覚できるぐらいには強くなれた。だから、正直あの子と出会った時のラティアスならば3体全員でバトルすれば勝てる自信があったのだ。

 

 

―――甘かった。

 

 

 私はダークポケモンという存在を甘く見過ぎていた。

 

 一撃一撃が、あのバトルアリーナで戦ったレジギガスのZワザを軽く超える威力で放たれる。どうやら攻撃するたびに反動を受けている様だけど、ラティアスが『じこさいせい』をするため何の気休めにもならない。

 

 おまけに、このフィールドも厄介過ぎる。

 

 どれだけポケモンに技を使わせようとしても、技を繰り出すことができないのだ。それはまるで、ムゲンダイマックスした ムゲンダイナと戦った時のように。

 

 あの時は、ザシアンたちの力を借りて技を使えるようになったけど、今回はムゲンダイナという強力な味方が居ても、この謎の現象を破ることができない。

 

 こんなことだったら、ガラルに残してきた ザシアン や ウーラオス、バトレックスたちもつれて来るべきだった。それでこの状況がどうにかなるとは思えないけど、居ないよりマシだ。

 

 こちらの技だけを一方的に封じ込めるフィールドで、ポケモンたちが唯一できることは『わるあがき』だけだった。

 

 そもそも、バトルと言う形にすら持っていくことができていない。

 

 なにがチャンピオンだ……泣いて助けを求める子供1人すら救うことができないなんて……。

 

 私はこれほど、チャンピオンになってから育成をサボっていたことを後悔したことは無い。

 

 奇跡でも、なんでもいい。あの子を助ける力が欲しい。

 

「―――――ッ」

「■■■■■■―――――!!!!!」

 

 そんな私の思いなど知らないとばかりのラティアスの一撃が、エースバーンの「きゅうしょ」を撃ち抜いた。

 

 すでに気力だけ持ちこたえていただけのエースバーンが、それに耐えられる訳もなく気を失う。だが、気を失ってなおエースバーンは立ち続けていた。

 

 死んではいない。だが、死んでも私のことを守ると言わんばかりにエースバーンは気を失ったまま決して倒れなかった。

 

 そんな相棒の姿を見て、あの子のラティアスから一切容赦することなく追撃が飛んでくる。

 

 アレを受けたら、今度こそ本当にエースバーンは死んでしまうッ!

 

 頭と本能の両方でソレを理解するも、この漆黒の空間が私の身体を一切動かしてくれない。

 

 身じろぎ一つするだけで、身体が破裂するのではないかと思うほどの激痛が走る。

 

 それでも、そんなことは知らないと私はエースバーンに駆けようとしたが、自分の身体が固まってしまったように動かない。

 

「――――――――」

 

 故に私は叫んだ……叫ぼうとした。

 

 みじめで、みっともなくとも、ただそうして叫ぶことしか私にはできなかった。

 

 だが、すでにその権利すらないと言わんばかりに、私は口を開いても声を発することができなかった。

 

 無力、無力、無力。あまりにも無力に過ぎる。

 

 世界の時間が遅くなったように感じる。それはまるで、エースバーンが、相棒が死んでしまうという事実を、より鮮明に理解しろと言わんばかりの絶望の刹那。

 

 やめてヤメテ止めてヤメテ止めてやめてやめて止めてヤメテやめて止めて。

 

―――やめてぇえええええええええええええええええ!!!!!

 

 

「ヤァアアアアアア!!!!! タァアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!」

 

 

 その直後、漆黒の空間ごと、エースバーンに向けられた致命の一撃が、真っ二つに切り裂かれた。

 

「べのめのん!!!」

 

 次いで飛来するのは一条の流星。それは私のムゲンダイナの ダイマックスほうを軽く上回るエネルギーの本流であり、それを察知したラティアスはすぐさま回避する。

 

 そして、避けられた流星が床に着弾すると、その衝撃によって漆黒の空間が完全に取り払われた。

 

「ッ! 身体が、動くッ!」

 

 それと同時に私は体の自由を取り戻す。そしてすぐさまボールを起動してエースバーンたちを収納した。

 

 ひとまずこれで、エースバーンたちは大丈夫だ。目測だが、怪我が酷かっただけで命に別状はない。ボールの生命維持機能によって回復できる程度のダメージで良かった。

 

 私は一度安心すると、意識をようやく現実に戻す。

 

 するとそこには、折り紙のような小さなポケモンがラティアスと激しく交戦していた。そうとうそのポケモンが強いのか、ラティアスは完全に此方から意識を逸らしている。

 

 今なら、あの子のところまで行けるかもしれないが、私と戦っている最中でさえ、ラティアスはあの子の側から離れなかった。やはり一度、ラティアスに大人しくしてもらわないと事態を好転させられそうにない。

 

「じぇるるっぷ!」

 

 そうして動けないでいる私の前に、今度はクラゲのようなポケモンが上から降りてくる。それは、先ほどの漆黒を払う流星を放ったポケモンだ。

 

 そのポケモンは、バトルで飛び散った破片で手を切ったのか、チクッと痛むほど私の手を強く引くと、空いている触手をあの子の方に向ける。

 

「手伝ってくれるの?」

「べのめのん!」

 

 私の言葉に、そのポケモンは強く返事をするように鳴いた。なんとなく分かる、このポケモンも、あの折り紙のようなポケモンも、泣いているあの子のポケモンなのだろう。

 

「分かった! あの子は私に任せて、あなたたちはラティアスをお願い!」

「べのめのん!」

 

 私がそういうと、クラゲのポケモンはラティアスのほうに向かって折り紙のポケモンと共闘し始める。

 

 流石に2対1だとラティアスも厳しいらしく、徐々にあの子から離され始めた。

 

 その隙を狙って、私はあの子に全力で走る。先程まで身体に負荷が掛かっていた所為か、いつもより身体が軽く感じる。まるで、自分の力が数倍に跳ね上がったようだ。

 

 あっという間に私は、泣いているあの子のもとに辿り着いた。

 

「ヒィッ」

 

 だが、その子は私が近寄ってきたことを認識すると、小さな悲鳴を上げて、再び震えながら謝りだす。

 

 だが、今度は私は足を止めない。

 遠慮無用で近づいて、私は震えるその子を強く抱きしめた。

 

「ふぇっ?」

 

 突然に私の行動に、その子は間の抜けた声を漏らす。

 

 これは、私が小さい頃に夜泣きしていた時、私をあやしてくれたお母さんがやってくれたことだ。

 

 正直、泣いている子の慰め方なんて、これぐらいしか私は知らない。こんな事でしか、私はこの子を落ち着けさせようとすることができない。

 

「大丈夫、大丈夫だから。1人じゃない、私がここに居るから」

「………………」

 

 私が声を掛けても、その子は何も言わない。それでも私は、声を掛け続ける。

 

「痛いことも、怖いこともないから。そのままでいいから、そんなに自分を傷つけないで」

「………………」

 

 落ち着いた声音で、この子を怖がらせないように、私は優しくその子を抱きしめる。

 

「■■■■■■―――!!!!!」

 

「ヤー! ターン!!」

「べのめのん!」

「…………ひゅあ、ん」

 

 ようやくこちらに気づいたラティアスが、こちらに気を逸らしたことで、対峙していた2体に強力な一撃を入れられ、地に落ちた。

 

「もう、大丈夫。私たちが、君を守るから。だから、安心して」

 

 そう言って、もう一度強く抱きしめる。そこでようやく、その子は小さく声を漏らした。

 

「くるし……クビ、しま……」

 

 あぁ、良かった落ち着いてくれた。

 

 そのことが私は嬉しくて、さらに強く抱きしめる。

 

 なんて愛らしいんだ。華奢で、乱暴すれば折れてしまいそうで、このままずっとこの状態で抱きしめて、その傷ついた身体が早く治るように全身をくまなく嘗め回して、私のモノだって分かるように一生残る印を付けて、あぁでも泣く顔も可愛いから時々イジメて、私から一生離れないように首輪をつけて、誰にも取られないように地下室につないであげて、私専用の―――

 

 

―――バシンッ!!!

 

 

「あ痛ッ!?」

 

 唐突に受けた頭の衝撃に、私は思考の海に落ちていた意識を現実に取り戻す。

 

「べのめのん!」

 

 叩いてきたのは、あのクラゲみたいなポケモンだった。

 

 いったい何のつもりかと思って視線を向けたら、クラゲのポケモンは触手を私の腕の中に向ける。それにつられるように視線を動かすと

 

「………………………………………」

 

 私の腕の中で、あの子が白目をむいて意識を失っていた。

 

―――なんでッ!?




ウツロイド「やっちまったぜ♪」

ラティアス「その子から離れろ――ッ!!!」

ガラル主人公「かわいいな かわいいな かわいいな」(毒状態)
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