バトルフロンティアが廃人の施設とか言った奴出てこい   作:麦わらぼうし

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自重? ナニソレ?


もうお前らが世界を救えよ

「グァァァァァ……」

 

 俺はバトルフロンティアの中にあるポケモンセンターの一室で苦悶の声を上げていた。

 

 体中が痛い……症状の名前は『筋肉痛』である。

 

 バトルフロンティアのポケモンセンターは、他と比べてかなり大きく設備の整い具合もまるで違う。これはオーナーであるエニシダさんから招待された人物しか来れないことが原因だろう。

 

 ぶっちゃけて言うが、ポケモンセンターの施設は悪くはないが「快適か?」と言われるとそうでもない。

 

 トレーナーの資格を持っていれば誰でも利用できる為、多くのトレーナーにサービスを行き届かせるためには、様々なものが不足してしまうのだ。

 人間の食事はもちろん、ポケモンにもポケモンフーズを与えることになっているが、カビゴンとピカチュウが同じ量で満足できるか? と聞かれれば無理だろう。

 

 だから、優先順位の低いものはできるだけ節約する。健康面を考慮して栄養重視の食事、病気にならない程度の寝具、待ち時間を我慢できる程度の共同パソコン台数。就寝するのに問題がない程度の防音性。

 そんな節約を重ねている中で限られた資金を使い、いつ誰が来るか分からない状況と隣り合わせで仕事を回していかなければならない。

 

 ポケモンセンターという職場は、想像以上にハードなところなのだ。

 

 だが、バトルフロンティアのポケモンセンターはエニシダの招待によってしか来られない場所であり、ポケモンセンターはその土地の顔のような面を併せ持つことから設備面にかなりの力を入れている。

 

 情報を漏らさないように防音性は高いし、パソコンも各部屋に一台ある。寝具もフカフカで寝やすいし、何より大きなポケモンを出せるようにしているので部屋自体がかなり大きい。BPを払えば様々なサービスを受けられるし、他にも完全なホテルなどがあるが、野宿することも多かった俺としては有難いことこの上ない場所である。

 

 そしてこんな快適な場所だからこそ、ここで俺が苦悶の声を上げたところで誰一人として気づくことはないだろう。

 

「ひゅああーん!」

 

 俺を心配そうに見つめながら、少女はそんな声を上げる。

 赤と白を基調とした同年代ほどの少女が目の前に居た。

 

「ひゅあん……」

 

 心配そうに、優しく俺の手を握ってくれている彼女を見ていると、少しだけ痛みが和らいだような気がした。

 

 同衾? 確かに一緒に寝ることは多いが、彼女とはそういう関係ではない。

 

 彼女はポケモンである。それも、俺が相棒として扱っている3体のうちの1体だ。

 

 人型のポケモンと聞いて連想する者はいるだろうか? 擬人化したポケモン、通称『萌えもん』と呼ばれるものがある。

 

 だが、彼女はそうではない。

 

 ゾロアークというポケモンを知っているだろうか? 幻影によって人にもポケモンにも道具にも化けることができる公式が出した擬人化できるポケモンだ。

 

 そして彼女も、光の屈折を利用して人の姿をしている歴としたポケモンである。

 

 彼女の名前は、ラティアス。映画を見ている人であれば、すぐに思いつくだろう。

 

 とは言ったところで、実際に身体が変化している訳ではなく見た目が人になっているだけなので、人間のように話すことはできない。なので正確には人に擬態したポケモンというべきだろうか?(アニメのニャースは考慮しない、あれは別の何かだ)

 

 生まれてからずっと、彼女は一緒に居てくれた大切な相棒だ。体調を崩したときは、サイコパワーを使ってよく看病してくれたことから、どうにも心配ばかりかけている気がして申し訳ない。

 

 それもコレも、昨日挑戦したバトルチューブの仕掛けが多すぎるのが悪い。

 

 バトルチューブは運を試す施設と言われるだけあり、チューブクイーンにたどり着けるかは運しだい、一体何時間チューブ内を往復したのだろうか?

 

 進んだと思ったら入り口に戻ってきたり、正解の道を選んだと思ったらバトルだ状態異常だと厄介極まりない。

 

 そして何とかチューブクイーンであるアザミさんに辿り着いたと思ったら、トリプルバトルで、しかもお互いにランダムで決まった1体のポケモン以外は解除されない混乱状態で戦うとか運の要素強すぎるだろ!

 

 それに使用ポケモンも狂ってる。ゲームでは蛇っぽいポケモンで固めていたから何を使ってくるのかと思ったら

 

―――レックウザが出てきた。

 

 それ蛇じゃなくて龍だろ!

 

 他のポケモン?

 

 ジガルデとデオキシスだったよ……。

 

 なんだろうね。ジガルデはツチノコっぽいから、まだ分からなくはないけど(分かりたくない)。デオキシスは何だろう……腕が細長くて蛇っぽいから? そうだとしたらこじつけ過ぎる。

 

 タワータイクーンのリラさんだって、カイオーガ(海の創造主)マナフィ(海の王子)ルギア(海の神)という分かりやすいコンセプトだったのに……こっちも大概だったわ。

 

 しかも混乱しているので、お互いのポケモンだけでなくトレーナーにも攻撃が飛んでくることがある。誰が狙われるかという運も試されているんだそうだ。

 

 ふっざけんなッ!

 

 ポケモンのッ!

 

 それも伝説に攻撃されるとか、普通の人間にどうにかできる訳ねえだろッ!!!

 

―――レッドさんはできたって?

 

『レックウザ』の『りゅうせいぐん』を素手(・・)で砕けるような奴を人間とは言わんッ!

 

 対戦映像見たときは思考が止まったわッ! この世界での『伝説』の称号がどれだけ強大な意味を持つかを実感させられたよ!

 

 俺にできたのは、レックウザのガリョウテンセイを受けて、吹き飛ばされてくるラティアスを受け止めたことぐらいである。そのあと、壁に叩きつけられてしばらく動けなかったが……飛んでくる彼女を見たら、身体が勝手に動いたのだ。仕方ない。

 

 戦略としては最低であるが、ラティアスも『ひんし』にはならなかったし、俺も折れた肋骨が肺に刺さって血を吐いただけで、何の問題もなかった(バトルの後、ラティアスに『いやしのはどう』で治してもらった)。

 

 ただ、少し意識が朦朧としていたので、その後のバトルがどうなったのかよく覚えていない。どうやらアザミさんには勝ったらしいのだが、混乱していたデオキシスがカメラにサイコブーストを当ててしまったらしく、映像記録が残っていないのだ。

 

 むぅ……。

 

 とりあえずバトルチューブのシンボルをゲットしたのだが、納得いかない。

 

 そもそも、ゲームをプレイした人なら知っているだろうが、バトルフロンティアは各施設を2回(・・)クリアしなければならないのだ。つまり、今回の戦いでは、アザミさんは手を抜いていた(・・・・・・・)のである。

 

 おそらく本気になったアザミさんは、レックウザをメガシンカさせてくるだろう。

 

 タワータイクーンのリラさんだって、2回目の時は

 

「ゲンシカイオーガでスカーフしおふき」してきたし

「マナフィは2回行動になって毎ターンねむるでHPと状態異常回復」してきたし

「ルギアはHPが減ってもマルチスケイルが適用されてエアロブラストが確定急所」になったのだ。

 

 おそらくアザミさんもジガルデはパーフェクトフォルムになるだろうし、デオキシスも戦闘中にフォルムチェンジしてくるだろう。

 

 だが、この程度の予想では足りない。

 

 おそらく、まだ何かある。現実となったこの世界で、ポケモンの強化方法は多岐に渡る。常識的な思考と非常識な発想を組み合わせてようやく辿り着けるのがフロンティアブレーンという地位なのだ。

 

 リラさんも、アザミさんも、トレーナーとしては同格なのである。挑戦者である自身に、余裕など一切ない。

 

 どうすれば勝てる? 相手はどんな手を使ってくる? 選択した技は、それで本当に最善か? 不確定要素はないか? ポケモンの性質をバトルに利用できないか?

 

 考える考える考える考える考える。

 

「あぁ……クソ、楽しいな。おい……」

 

 なんて楽しいのだろう。

 

 勝って、負けて、勝って、負けて、また負けて、悔しくて、苦しくて、泣きたくなって、考えて、失敗して、成功して、挑戦して、また負けて、考えて、挑戦して、やっと勝って、嬉しくて、奮えて、笑って、楽しくて楽しくて楽しくて楽しくて楽しくて―――

 

 ポケモンバトルが、こんなに楽しいものだったなんて、知らなかった。

 

 こんなの無理だよ

 

 我慢なんてできる訳ない

 

 口角が勝手に上がっていく。体の痛みなんてどうでもいい。さっさと起きて特訓を始めなければ

 

―――起き上がろうとしたら、ラティアスにサイコキネシスでベッドに戻された。

 

 ぐすん……痛い……。

 

 




ゲンシカイキしてスカーフは不可能?
2回行動って、どこのボス?
映画のルギアのエアロブラストは、破壊光線にしか見えない。
ちなみに、この後ラティアスは主人公に付きっ切りで看病してました。
(大人しくしてなきゃダメ!)
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