バトルフロンティアが廃人の施設とか言った奴出てこい   作:麦わらぼうし

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モンボ入りのA抜け5Vラティアスが欲しくてASで厳選していたら、色違いが出た……。
初めての準伝説の色違いだから嬉しいけど、モンボに合わない……。
こうなったらUSでカミツルギとウツロイドの色違いを狙うべきだろうか……。


3つの願い

 何が起きたのかは分からない。

 

 どうしてここに居るのかは分からない。

 

 そもそも此処が一体どこなのかすら、今の自分には分からない。

 

 ただ漠然と……自分がもうすぐ死んでしまうというのは、なんとなく分かった。

 

 論理的な話じゃない……感覚的な話だ。

 

 家族でテレビを見ていた記憶を最後に、何かとてつもない衝撃を受けたような気がした。

 

 とても強く、恐ろしく……そして、悲しいような、寂しそうな……。

 

 そんな、自分でもよく分からないと思うような、不思議な衝撃だった。

 

 

 自分という存在が壊れてしまうような恐怖。

 

 自分という存在が消えてしまうような喪失感。

 

 

 現在進行形で、己が壊れていく……消えていく……。

 

 きっとこれが「死ぬ」ということなんだと。自分の事なのに、どこか他人事のように感じていた。

 

 だからだろうか?

 

 

 自分ではない誰かが……泣いているような声が聞こえた。

 

 助けて、と言っているような気がした……。

 

 

 今の自分が、どうなっているかなんて分からない。

 

 でも、なんとなく放っておけなくて……声を頼りに、泣いている誰かを探した。

 

 

《どうしてみんな、私達のことに気づいてくれないの?》

 

 

 ソレは案外、すぐに見つかった。

 

 探している間、ずっとずっと―――泣いている声が聞こえたから。

 

 

―――ねぇ?

 

―――俺は

 

―――僕は

 

―――私は

 

―――いったい、誰なの?

 

 

 ソレが一体何なのか、残念ながら自分には分からない。

 

 ただ、自分が受けた衝撃と同じ力を持っていることだけは分かった。

 

 認識するだけで恐ろしく、死にかけの自分では近づくだけで危険だというのは明らかだった。

 

 そしてたぶん。自分が今 死にそうになっているのは、ソレが原因だということも……なんとなく、分かった。

 

 

―――1人は、嫌だよ

 

―――死にたくない

 

―――だれか、たすけて

 

 

 それでも……その子が苦しんでいるのを、放っておけなくて……。

 

 たとえ助けることは出来なくても……せめて伸ばされた手を取ってあげたくて……。

 

 話しかけたら、自分が消えてしまうかもしれないと分かっていても。僕は声を掛けずにはいられなかった。

 

 

―――だいじょうぶ?

 

 そう言って

 

 

―――どうして、泣いているの?

 

 近づいて

 

 

―――恐いの?

 

 話しかけて

 

 

―――なら、僕が隣にいてあげるよ

 

 放っておけなくて

 

 

―――だから、君は1人じゃないよ

 

 助けようとした

 

 

 それは別に、なんでもない……。

 

 誰でもできることだけど、今の僕にできる精一杯の言葉だった。

 

 

《……気づいて、くれたの?》

 

《ありがとう……私たちに気づいてくれて……》

 

 

 震えるような声で、返事をしてくれた。

 

 

―――君が誰かは分からないけど、僕が消えるまでは隣に居てあげる

 

 だから、安心して

 

 

―――君はちゃんと、生きているから

 

 きっと自分は、もうすぐ死ぬ。

 

 でもそれまでは、この子の隣で、話し相手になってあげよう。守ってあげよう。

 

 

―――もう泣かなくても、僕は「君が居る」って分かっているから

 

 それでこの子を救えるのなら、きっと僕は何度同じ状況になっても声を掛ける筈だ。

 

 

―――だから、一緒に笑おう? 人生、楽しまなきゃ損だよ

 

 せめて自分が消える最後まで、この子と一緒に居てあげよう。

 

 

―――お兄ちゃんとの、約束だよ?

 

 

 それはきっと、人間なら誰にでもできることだから、僕にも出来たんだろう。

 

 困っている人を、苦しんでいる人を、悲しんでいる人を、助けようとする。

 

 

 誰にだってできる、簡単なことだ。

 

 

 

 

 

     ◆

 

 

 

 

 

 3つの願いを叶える『願い事』の力の正体は、眠っていた間に大地へ送り切れなかった残りのエネルギーでした。

 

 目を覚ました『願い事』は、この残ったエネルギーを使い切ることで、再び彗星からエネルギーを取り込めるようになり、眠りにつくという仕組みになっています。

 

 そして目覚めている間、自分を守ってくれる存在のもとに姿を現し、対価として「願い」を叶えるのが『願い事』の生態なのです。

 

 つまり『願い事』は、望まれた「願い」を善悪問わずに叶えなくてはならない。目覚めている7日間に必ず残りのエネルギーを消費しなければ、再び眠ることは出来ず、1000年間エネルギーを断たれた大地は荒れ果ててしまうのです。

 

 だが『願い事』も心を持つ存在。悪意に満ちた願いは、極力叶えたくありません。だからこそ『願い事』は、素直な心を持った少年の近くで目を覚ますようにしていました。

 

 本来、この世界でパートナーとなるのは『雨』との因果を持つ少年でした。

 

 しかし、実際に『願い事』が現れたのは『神様』すら含めた全ての『伝説』『幻』との因果を持ったソレらの集まる無人島だったのです。

 

 

 ソレらは―――――泣いていました。

 

 

 身体も持たず、自我も持たず、声を上げることもできないソレらは、泣いていたのでした。

 

 

―――どうして私じゃなかったの?

 

―――どうして僕じゃなかったの?

 

―――どうして俺じゃなかったの?

 

―――どうしてみんな、私達のことに気づいてくれないの?

 

 

 そんなソレらの思いは、誰にも知覚することはできません。

 

 たとえ異能を持った『人間』であっても、この世界の理の外に居るソレらは、規格内でしかない『人間』の異能では干渉することができないのです。

 

 しかし、ソレらとの因果を持った『幻』である『願い事』は気づくことがきました。そして心を持っている『願い事』は思ったのです。

 

 

―――この子たちを、助けなくちゃッ!

 

 

 ソレらの正体なんて『願い事』には分かりません。それでも『願い事』は、泣いているソレらを無視することなんてできませんでした。

 

 しかし『願い事』にできるのは、願いを3つ叶えることだけです。だから『願い事』は、ソレらの「願い」を読み取り――叶えました。

 

 ソレらの願いは、ちゃんとこの世界で生まれることでした。

 

 しかし、どういう訳か、ソレらは生まれる為の「おや」に出来る存在が決まっていたのです。

 しかも、その「おや」からは、ソレらは生まれないようになっているという、あまりに酷い状態でした。

 

 

 だから『願い事』の力は、ソレらの身体を新しく創るように働きました。

 

 

 ソレらは全て『人間』になる存在だったらしく、創られていく身体は『人間』のモノ。

 

 

 そして最初の身体が5割まで創られたところで―――入れ物が壊れ始めました。

 

 

 それは『神様』が作った世界のルールとの矛盾が起きたからです。

 

 

《この世界では新たな命が生まれる為には、“おや”が必要である》

 

 

 ソレらの「おや」になれる者たちからは、ソレらは生まれることが出来ません。

 

 故に『願い事』が身体を創っていても「おや」としては判定されず、ソレらは何もない「無」から誕生しようとしています。ですがそれは―――

 

 

《『神様』は、何もない「無」から生まれて来る存在である》

 

 

 別のルールによって、存在が上書きされてしまう最悪の事態だったのです。

 

 ルールは矛盾を発生させないように、現状の「矛盾点」を修正していきました。

 

 その結果『願い事』が創っていた『人間』の身体は、急速に『神様』と同じモノに書き換わっていきます。

 

 しかもそれだけではありません。ルールによる影響は、その身体に入れようとしていたソレらにも及んでいきました。

 

 ソレらは『神様』と同等の存在へと変化していきます。ですがソレらでは『神様』への変化に耐えきることが出来ません。

 

 

 故に、ソレらが壊れていきました。

 

 

 ぐちゃぐちゃに……

 

 ボロボロに……

 

 バラバラに……

 

 己という存在が消えていく。

 

 それは想像を絶するほど恐ろしく、言葉では言い表せないような死の恐怖でした。

 

 だからこそ、自我すらないソレらは思ったのです

 

 

―――死にたくない

 

 

 生まれてすらいないソレらは、存在の消失という死を認識し―――死にたくない、と願ったのです。

 

 

 2つ目の願いでした。

 

 

 想定外の事態に『願い事』も、すぐさまソレらの「願い」を叶えます。

 

 バラバラになってしまったソレらを修復し、存在の強度を『神様』のレベルにまで引き上げたのです。

 

 ですが、複数だったソレらは――ぐちゃぐちゃに混ざり合って個になってしまっていました。

 

 その時、ソレらはソレになったのです。

 

 そして存在が安定したソレらは、一度「死」を感じたことで自分を認識し、自我を手に入れることが出来たのです。

 

 ですが、それは更に最悪の方向へ進みました。

 

 今まで自我を持たなかった存在が、急に意識を持ち始める。

 

 

 ……すると、どうなるか?

 

 

 ソレは―――絶叫しました。

 

 

 混ざり合い、ソレら全ての感情がぐちゃぐちゃに集まったことで制御することが出来ず、声を上げたのです。

 

 

―――だれか、たすけて

 

 

 と。

 

 それは「願い」ではなく、感情の暴走です。

 

 様々な感情が一度に流れ込み、『神様』と同じ力を持ったソレは、助けを求める叫びをあげたのです。

 

 

 そして、本来『人間』になる筈だったソレが助けを求めたのは『願い事』にではなく―――『人間』にでした。

 

 

 しかし、ソレは未だに世界の理の外に居ます。

 

 なのでその声は、この世界の『人間』には届きません。

 

 そして行き場を失った『神様』の力を持つソレの叫びは、この世界を飛び出し―――別の世界に居た『人間』に届いたのです―――届いて、しまったのです……。

 

 

 

 その結果―――その『人間』の魂は、粉々に砕け散ってしまいました。

 

 

 

 ですが――

 

 どういう奇跡でしょうか?

 

 砕け散った『人間』の魂の欠片が、ソレのところにまでやってきたのです。

 

 まるで、その真っ白な魂が、泣いているソレを放っておけないと、心配して見に来てくれたように……。

 

 そしてソレは、異世界の魂がやってきてから、次第に安心したように落ち着きを取り戻していきました。

 

 そのまま少し時間が過ぎて、ソレが完全に落ち着くころには――『人間』としての部分が6割、『神様』として部分が4割の入れ物が完成しました。

 

 この身体に入れば、ソレはこの世界に生まれることが出来ます。

 

 しかし、ソレは――自分たちの代わりに、異世界からやってきた魂を入れてほしいと「願い」ました。

 

 

 3つ目の願いでした。

 

 

 このままでは、砕けてしまった魂が消えてしまうからです。

 

 ソレの誰もが、そんなことを望みませんでした。

 

 

―――この魂を……『人間』のままで、生まれ直させる。

 

―――『神様』になってしまった4割は、自分たちが引き受ける。

 

 

 そうして、3つ目の願いが叶えられました。

 

 

 真っ白な魂は、6割しかない『人間』として……。

 

 ソレは、残った4割である『神様』として……。

 

 

 この世界に生まれて―――呼吸を始めたのです。

 

 すると、どうでしょう?

 

 

『神様』が呼吸を始めたことで―――

 

『時間』のような神様が生まれます

 

『空間』のような神様が生まれます

 

『反骨』のような神様が生まれます

 

 

 その神様たちは、真っ白な魂にとって、もっとも大切にしていた3つの存在と似たような姿になりました。

 

 

『時間』の力を持った『寄生』が生まれました

 

『空間』の力を持った『折紙』が生まれました。

 

『反骨』の力を持った『夢幻』が生まれました。

 

 

 そうして、真っ白な『人間』と『神様』が生まれたことで―――世界に、小さな神様たちが溢れるようになったのです。

 

 

 

 

 

     ◆

 

 

 

 

 

《………大丈夫か?》

 

「――――――(ぷしゅ~)」

 

 アルセウスの説明を受けていた少年は、比喩表現ではなく本当に頭から湯気を出していた。

 

 アルセウスが『伝説』や『幻』を創ったというのは前世の知識から理解することは出来たが、魂だとか、世界のルールだとかのあたりから、すでに容量オーバーなのである。

 

 説明の仕方が悪いのかもしれないが、そもそもが『人間』に聞かせるような内容じゃない。

 

 

《ゆっくりでいい。理解できなければ、何度でも質問しろ》

 

 

―――そして、お前の半身たちの命か、もとの世界への帰還か……。

 

―――どちらを選ぶにしても、悔いのない選択をしてほしい。

 

 

 アルセウスは、少年が話を理解できるのを待つことにした。

 

 

―――時間はまだあるが、有限だ。

 

 

 もとの世界に帰るまでの制限時間までは、まだ余裕があった。

 

 それというのも、魂が砕けた少年の身体は、もとの世界で未だに昏睡している植物人間状態、つまり――まだ生きているのだ。

 

 

 だが

 

 

 肉体が完全に死んでしまえば、世界との繋がりが切れてしまう。そうなってしまえば、もうアルセウスはその世界を見つけることが出来ない。

 

 アルセウスにとって世界というのは、あまりにも小さく、見分けなんてつかないのだ。砂漠の中から、特定の砂粒を見つけろというようなものである。

 

 そして、この世界で生まれたラティアスたちは、この世界と同じ法則の世界でしか存在できない。

 

 “おや”となる少年が存在しなければ、半身となる少年が存在しなければ、ルールの矛盾によって消滅することになる。

 

 だが少年が帰還を望むのなら、ラティアスたちは自身の消滅なんて気にしないだろう。

 

 半身だとか“おや”だとか関係ない。ラティアスたちは、ただ大好きな少年が苦しんでいるのを放っておけなくて、守っているだけなのだ……。

 

 仮にアルセウスが少年の意思を無視して処分しようとすれば、『時間』と『空間』と『反骨』の力を行使して全力で抵抗することだろう。

 

 それはアルセウスの本体ならともかく、アバターのアルセウスでは世界に少なくない被害が発生する。

 

 それだけは、できるだけ避けなくてはならない。

 

 

 結局のところ、少年が選べる選択肢は2つだ。

 

 

 

 もとの世界で植物状態になっている少年が、今でも目覚めることを願っている両親か……。

 

 

 

 ただ少年の為だけに生まれてきて、大好きな少年を守ろうと11年間戦ってきたラティアスたちの命か……。

 

 

 

 そのどちらかしか、選べない。

 




すみません。リアルの関係で、次がいつ更新できるか分かりません。下手すると半年ぐらいできない……。
エタるつもりはありませんので、続きは必ず投稿します。
本当に、申し訳ありませんッ!
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