バトルフロンティアが廃人の施設とか言った奴出てこい 作:麦わらぼうし
『さてさて、それじゃあ話の続きをしようか?
と言っても、別にたいした話をする訳じゃないけどね……。
まず君は、アルセウスの話をどこまで理解できているかな?
ん? 考えていることが読めるんだから分かるだろ……って?
まぁ、分かるけど。こうやって口に出す方が、考えって意外と纏まるものなんだよ?
そうだねぇ……。
まず大前提だけど、このポケモン世界は1体の アルセウス が誕生して始まった。
これはゲームの記憶がある君なら知っているだろう?
そして ディアルガ パルキア ギラティナ が誕生して、そこから世界が広がって『僕』たちが今居る世界が誕生。
その後にアグノム ユクシー エムリットが誕生して、世界にポケモンと人間が満ちていった。
そして、アルセウスが創った世界を壊さないためのルールが機能して、何度か世界を滅ぼす災厄が発生すると同時に、人間とポケモンたちによって解決してきた。
そうして世界は平穏ではないけど、安定して回っていたんだ。
―――今までは、ね?
ある年に、世界は狂い始めた。
それは11年前、君が生まれた
その年に、本来は在り得る筈のない出来事が発生した。
それは『準伝説』『伝説』『幻』のポケモンによる大量発生。
だけど、コレは表面上で分かる異常な出来事だ。だが、実際にはもう1つ異常な出来事が起きている。
アルセウスの説明を聞いていて、君は気が付いたかな?
それは――
この世界の存在では、この異常は分からない。
でも、ゲームの知識を持っている君なら分かる筈だ。
この『優れたる操り人』とは、即ちゲームの主人公のことを指している。
でも、それって変じゃないかい?
通信機器であるポケナビや、スマホロトムは、どう考えても時代が違う代物だろう?
そもそも赤・緑と金・銀や、BWとBW2とか、2年間という
なのに、どうして各世代の主人公たちが
答えは、さっきからずっと言っているアルセウスが創ったルールにある。
…………………気づいたかい?
そう、主人公とは『優れたる操り人』のこと、それが生まれる条件は『世界を滅ぼす災厄』が発生すること。
つまりこれは―――
全世代の主人公たちが協力しなければ解決できない事象が発生したことを意味しているんだ。
そして、君はアルセウスに質問された時に言われたよね?
君の答えによって世界が滅ぶ、って。
君はね?
この世界のルールによって作られた、人間の形をした『災厄』なんだよ。
………………………………。
………………。
あれ? 思ったより慌てないね?
……いや、違うか。話の流れがいきなり過ぎて理解できてないだけだね。
じゃあ、順を追って説明していこうか……。
ただ、ちょっと此処からは ややこしい ことになっているから分かりにくくてもゴメンね?
まず君は、
覚えてる?
でも、一応確認の為に言っておくね?
ORASはメインストーリーの後にある「エピソードデルタ」で、並行世界のことが示唆されている。
もっとも、ゲーム内では「もしかしたら」あるかもしれないという「if」としてしか描写はないけどね?
―――でも。
今『僕』たちは、そのポケモン世界に居る。だから、その答えがこの世界では確認できるんだ。
まぁ……この世界の答えが、ゲームの答えと同じとは限らないけどね?
それで結論を言わせてもらうと――――並行世界は存在する、ソレは紛れもない事実なんだ。
まぁ
それと一緒でね。並行世界もしっかりと存在していたのさ、それもとんでもない数がね?
そして今、僕たちが居る世界はそんな無数に存在する並行世界の1つなんだよ。
では、そこで問題だ。
並行世界とは、どういう理由で分けられているのか、君は知っているかい?
………うん、なるほど。
そうだね。
さっき説明したエピソードデルタでは「メガシンカ」の有無が世界の分岐点であるようなことが示唆されていた。
実際「メガシンガ」が無い世界に隕石をワープさせたらどうなるかで、流星の民であるヒガナと問答があったから記憶に残りやすいね。
でも残念、ハズレだよ。
並行世界が分けられる理由……それはね?
ゲームデータの違いみたいなモノなんだ。
ん? 分からないかい?
そうだねぇ……もっと分かりやすく言おうか?
此処に「ポケットモンスターエメラルド」のカセットが2つあるとしよう、この2つは並行世界だ。
他にも「ポケットモンスター赤」「ポケットモンスター金」「ポケットモンスタープラチナ」
これらも全部並行世界なんだよ?
え? 全然ストーリーが違うじゃないか、って?
そうだよ。並行世界だけど、視点が違う別のストーリーだ。
でも、プレイヤーが移動できないだけで、そのゲームの世界にはちゃんと他の地方が存在するんだよ。
だから、これらは殆ど同じような構造をしている別の世界――すなわち並行世界なんだ。
なんでそんなことが分かるのか、って?
うん、コレはね。ゲームにおける大前提の話だ。
一人用のゲームにおいて主人公とは、プレイヤーのことでしょ?
そのルールが、このポケモン世界にも適応されているんだ。そしてそれは、視点が違う別の世界が存在することの証明になるのさ。
意味が分からない? コレのどこが視点の違う世界が存在する証明になるのか、って?
そうだね、1つずつ説明していこうか。
まず、同じタイトルの別データが並行世界に分類されるのは何となく分かるんじゃない?
プレイヤーという視点が違うせいで、大筋が同じでも主人公の行動が変わり、手持ちはそれぞれのデータによってバラバラだ。
主人公の名前、性別、御三家、チーム、使用ボール、ID、プレイ時間。
上げていけば切りがないけど、若干違うだけの別の歴史というのは、まさに並行世界と言えるんじゃないかい?
1つ目のBWでは、ツタージャを選んで遊んだけど、2つ目のBWではミジュマルで遊んだ。こんなちょっとした違いによる同じタイトルのゲームデータは、ゲームのキャラから見れば並行世界に違いないでしょ?
そしてもう一つ、違うタイトルのゲームデータ。
まぁ……こっちは並行世界と考えるのは少し難しいね。
さっきも言ったけど、BWとBW2なんかでは2年後という情報が示されており、同一の世界だというイメージが強い。
でも違うんだ。
BWとBW2という時間軸の違いを示されているタイトルでも、明確に違う世界であると言う証拠がある。
それこそがプレイヤーの存在なのさ。
いろいろなタイトルで過去作の主人公が登場することはあっても、その過去作主人公は、そのゲーム内だとプレイヤーではないでしょ?
主人公は沢山いたとしても、プレイヤーは世界に一人だけ。
過去作の主人公は、ポケモン世界の大筋を通ってきた主人公であって、プレイヤーとして行動していた訳ではないんだから。
そしてプレイヤーはストーリーをクリアするまで負けることは無い……なぜならプレイヤーが、敗北する未来の情報を使って主人公を勝利へ導くからね。
それを、この現実のポケモン世界に当て嵌めると、どういうことになるか分かるかい?
プレイヤーに選ばれた主人公は『運命』という名前の見えない操り糸に動かされていることになるのさ。
そして、これが過去作の主人公が登場しても、プレイヤーは現主人公しか操作できないことから『同じ存在』ではないという明らかな証拠でしょ?
だからタイトルが違ったとしても、プレイヤーによる視点が違った別の世界なんだよ。
そんな馬鹿な? ここは現実の世界で、ゲームじゃない?
逆だよ、ゲーム
納得いかない? でも事実だよ。
まぁ、納得するかしないかは置いておくとして「並行世界が存在する」って話自体は理解してくれたかな? それじゃあ話の続きだ。
なんで並行世界の話をしたのかというと、それはこの世界がバグった理由に関係があるからさ。
『僕』たちが生まれた11年前に起きた出来事。
それ自体は、ユウリさんから聞いたよね? 千年彗星が観測されていた、ってさ。
千年彗星とジラーチの関係は、映画「七夜の願い星 ジラーチ」でジラーチが目覚めることが関係していることが語られているね?
つまり、11年前に目覚めたジラーチが居たんだ。
そしてゲームの
そのことからポケモンの理想の世界を創ろうとアクア団を結成したとか考察されているけど、まぁそこはどうでもいい。
問題は『僕』たちが今いるこの世界では、アオギリとジラーチは
その所為かは不明だけど、この世界のアクア団は最初からポケモン保護団体になっているよ。
では、いったいジラーチは誰に出会ったのか?
いったい何が原因でそんなバグが発生したのか?
アルセウスの話を聞いて何となく分かっているんじゃないかな?
………そう。
プレイヤーだよ。
バグの始まりはプレイヤーによるモノだ。
プレイヤーが主人公を決めるとき、選ばなかった方の主人公は生まれないことになるよね?
まぁ
その選ばれなかった主人公たちが残留思念的なナニカになって集まった結果、アオギリに出会う筈だったジラーチがカレラのほうに出現した。
なんせカレラは、本来は主人公になることができる存在だったからね。出会える可能性があって、そんな存在が集まればジラーチの出現先が変わっても不思議なことではない、って理屈だよ。
これが、この世界がバグることになった始まりの部分だ。
理解できたかな?
………………………………………。
んんん?
なんで選ばれなかった主人公たちが残留思念になって集まったのか、って?
それと並行世界の話が関係ない?
あぁ~。
………うん。
『僕』が説明がややこしい、って言ったのはここが理由なんだ。
ややこしい。というより『僕』自身も納得がいかない、って話なんだけど……。
まぁ、起こった事実をそのまま言うよ。
集まった残留思念たちの願いをジラーチが叶えた結果、残留思念たちが集まることになったんだ……。
ほら、納得いかないだろ?
原因となるものが、結果から生まれているんだよ……。
もう一度言うけど……残留思念たちが集まることで ジラーチ がカレラのところに現れて願いを叶えた。
だけど、残留思念になって集まることが出来たのは、ジラーチがカレラの願いを叶えたからなんだ。
まぁ……要するにジラーチが世界の因果に干渉した、ってことなんだけどね?
そして、コレの厄介なところは…………その始まりが分からないんだよ。
なんせ因果に干渉した結果、実際には「始まりの出来事」が起こっていない。どの並行世界でもね? 起きてない出来事だからアルセウスですら分からないんだ。
だから質問は止めてね? 当然『僕』だって分からないんだから……。
ただ、実際にソレが起きたんだ……話を続けるには、それだけ理解していれば十分だよ。
さて、その因果関係に干渉したジラーチの叶えた願いとは何か?
アルセウスの話を理解できたなら答えは簡単だね。
「生まれたい」
「死にたくない」
「自分たちの代わりに、異世界からやってきた魂を入れてほしい」
この3つだ。
でも、この3つの願い……特にその最初の願い。
この願いこそが、本当の意味で、この世界にバグを引き起こした原因とも言える願いだ。
「生まれたい」
これがどれだけ無茶な願いか、君には分かるかい?
ジラーチが願いを叶える力は、眠りから覚めたときに残っている千年前に彗星から取り込んだエネルギーを使ったモノだ。
その残ったエネルギー程度で人間の肉体を創造する? 絶対に無理だね。
だってソレを実現するには、本体のアルセウスに等しい力が必要になるんだから。
「おや」のいない新たな生命の創造。
それはアルセウスが創ったルールから違反することになるんだから、そのルールの力を無視できるほどの力が無いと不可能だ。
………でもね。
ジラーチは…………願望機なんだ。
願いを叶える機能は、可能な範囲であれば過程がどのような方法であっても叶えることが、ジラーチとしての機能なんだ。
要するに、ジラーチ自身に願いの叶え方を指定することはできない。
それを指定できるのは、ジラーチに願う相手だけだからね。
だって、それができるならジラーチが素直な心を持った少年の近くで目覚める必要はだろう?
自分で勝手に「目が覚めている7日間を安全に過ごせますように」って、願えばいい話だからね……。
ジラーチには、願いを叶える力はあっても、願う権利も手段を選ぶ権利も無いんだよ。
だからコレから起きたことは、ジラーチが意図したことじゃないってことを予め理解して置いてね?
さて、ジラーチはどのような方法で願いを叶えようとしたのか?
人間の肉体を作るには力が足りない。
ならばどうするか?
簡単な話さ。
足りないのなら、他から取ってきてしまえばいい。
でも、それはどこから?
アルセウスに等しい力が必要なのに、世界中の全エネルギーを手に入れたところで、本体のアルセウスに届くことは無い。
実際、今の世界が本体のアルセウスと釣り合っているのは、アルセウスの方が力を抑えてくれているからだしね?
じゃあどうするか?
世界の全部程度では、とてもエネルギーが足りない。
そのエネルギーの入手先…………ここまでくれば、なんとなく予想がつくんじゃない?
そう、ソレが並行世界さ。
この世界だけでは足りないなら、他の世界からエネルギーを収集する。とても分かりやすいだろう?
―――でもね
1つや2つ程度の世界のエネルギー量だとまるで足りないんだよ。なんせ比較対象は本体のアルセウスだからね。
だからさ、ジラーチの願いは無数の並行世界全てを―――
統合することにしたんだ。
その結果、この世界以外の並行世界は強大な力を持った『準伝説』『伝説』『幻』以外は、世界が重複したことに耐えることが出来ずに消滅し、エネルギーの塊となってジラーチに吸収されることになった。
コレでエネルギーを確保することが出来た。
まぁ、その所為で並行世界にいた『準伝説』『伝説』『幻』が行き場を失ってこの世界に溢れ返ることになったけどね?
そしてさ……並行世界があるってことは、その世界でも選ばれなかった主人公たちが居るのは予想がつくでしょ?
そして、さっき『僕』が言ったことを覚えているかな?
ゲームにおいて、主人公とはプレイヤーのこと。
1つの世界に置いて、プレイヤーの影響を受けている主人公は1人しかいない。
それは、この統合された世界でも同じことだ。
この世界でプレイヤーに干渉されているのは――レッドさんだね。
だけど他の世代の主人公勢は、この世界では主人公と同等の資質があっても、プレイヤーではない。
運命に愛されたプレイヤーの操り人形と違って、彼らは自分の意思で好き勝手に動ける。プレイヤーからの干渉が無いから、彼らもしくは彼女らの方には、対となる選ばれなかった主人公も存在しない。
なんせプレイヤーが干渉しなければ、最初から選択肢が存在しないからね? 別の性別の主人公は、プレイヤーが干渉することで初めて誕生する可能性が生まれるんだから当たり前の話だ。
でも、ここでもう一度思い出してくれるかな?
ジラーチを呼び寄せた残留思念は、
残留思念は、選ばれなかった主人公のことで。
選ばれなかった主人公は、プレイヤーが干渉することで初めて発生する。
そして、プレイヤーが干渉するのは世界で1人だけ。
だというのに、ジラーチが願いを叶えたことによって
この意味が分かる?
………………。
そう………。
ジラーチを呼び寄せた残留思念は、ジラーチが願いを叶える為に統合したことで、
そして……この世界でレッドさんが生まれたことで選ばれなかった、この世界の女主人公であるリーフ。
その……
さて、話はまだ続くんだけど、ここまで大丈夫かい?
まぁ、要点をまとめると
「世界に1人だけ、主人公に干渉しているプレイヤーという『運命』が存在する」
「ジラーチが干渉できる並行世界が統合したことで『準伝説』『伝説』『幻』がこの世界に溢れ返った」
「ジラーチを呼び寄せたのは、この世界で選ばれなかった
まぁ、こんなところだね。
さて、ジラーチの意思ではないけどエネルギーを確保できた以上、ソレがどんな過程であっても願いは叶う。
でもさ。
ここでもう一度、考えてみてよ?
この段階でジラーチは、本体のアルセウスに匹敵するエネルギーを持っているけど。それで人間の肉体を創り始めたらエネルギーが減っちゃうよね?
減っちゃったら、またエネルギーが足りなくなっちゃう。なんせどれだけエネルギーを持ったとしても、ジラーチとアルセウスでは存在としての格が違い過ぎるからね。
集めたエネルギーでルールを一時的に無視できるのは、せいぜい1回が限度だ。
でもジラーチが叶える「生まれたい」って願いは、統合された世界で選ばれなかった主人公
だけど、創れる肉体は1つだけ。とても全員分の肉体を創ることはできない。
―――だからさ。
ジラーチの願いは一度、全部ぐちゃぐちゃに混ぜて、残留思念を1つに纏めることにしたんだよ。
そう、カレラが混ざったのは事故じゃない。
カレラが「生まれたい」って願った結果、その願いを叶える過程で一度カレラには死んで1つに纏まってもらう必要があったからなのさ。
そして、そのまま時間が進めば、願いが叶って最終的にカレラは全員がそれぞれ1人の人間として生まれることができるようになっていたんだ。
―――でもね?
カレラは死を認識した恐怖から、2つ目の願いを使ってしまった。
「死にたくない」
最終的には生まれることが出来るから、その過程で死んでもらう必要があったのに「死にたくない」って願ってしまった。
おかげでジラーチへの願いで起こる筈だった、カレラが生まれる為の計画が狂ってしまった。
それどころか、ポケモン世界の存在ですらない部外者を、この世界に呼び込んでしまうなんて異常事態まで発生して、もう滅茶苦茶だよ……。
そして君が、このポケモン世界へと誘われて、3つ目となる最後の願いによって、本来この世界の『運命』を進める為に必要だった創りかけの身体に入れられた。
君の身体が弱いのは、その所為だね。
ぶっちゃけその身体、しっかりと完成してないから、まともに機能しないんだ。
肺も心臓も殆ど動かないから生きているだけで苦しいし、消化器系も機能しないから飲み食いをしてもすぐに吐き出してしまう。
でも「死にたくない」って願いは叶えられているから、死ぬほど苦しいけど絶対に死ねないんだよ。治癒力が無いに等しいから、苦しい時間は普通よりもずっと長く続くけどね?
さて、こうしてジラーチは3つの願いを叶えたわけだ。
……………………………。
………………………………………………………。
………?
カレラが「生まれたい」って願いが叶っていない、って?
えぇ……。
コレ聞かされて、疑問に思うのがソコなの?
自分がこの世界で生まれた理由とか、苦しみながら生きることになった原因に対してより、知的好奇心の方が勝つの?
キミさぁ、ちょっとおかしいよ……。
いや、ゴメン。つい本音がでちゃった……。
それでカレラの「生まれたい」って願いが叶ってないことについてだったね?
叶ってるよ。
いや、正確に言うと、今は叶えてる途中だね?
君のその身体は、カレラを生まれさせる肉体の為に用意されたものだ。
そして、その方法というのが……アルセウスのルールと、プレイヤーを利用した。
アルセウスと同等の力を持つ存在を誕生させることにあったのさ。
ジラーチの願いは、いわゆるゲームのシナリオを書いていたんだ。どうしてもプレイヤーの力が必要だったからね?
ちなみに、ジラーチの願いが書いていたシナリオって言うのが――
1:世界のルールを利用して、本体のアルセウスと同等の力を持った存在を創り出す。
2:その存在を『世界を滅ぼす災厄』とすることで、世界のルールにより主人公を誕生させる。
3:主人公に倒されることによって『世界を滅ぼす災厄』としての役目を終わらせて、その残ったアルセウス クラスの力を使って、肉体に残った残留思念を全員復活させる。
――っていう。
大まかに言うと、こんな感じのシナリオになっているんだ。
分かるかな?
アルセウスが創ったルールの矛盾を利用して、ジラーチよりも遥かに格が高い存在を生み出す。そうすることで、ジラーチではできなかったカレラ全員に新しい肉体を用意することが出来るようになる。
でも、そんな強大な存在が居れば、本体のアルセウスが世界に入れない理由である容量オーバーの問題になってしまうんだ……。
この統合した世界でも、本体のアルセウスと同等の存在が居ると、そう遠くないうちに世界は耐えられなくなって破裂してしまう。
すなわち世界滅亡の危機だ。それは必然的に『世界を滅ぼす災厄』としての役割を担ってしまうのさ。
だから、何が何でも役割を終わらせるために、ストーリーで絶対に負けることのないプレイヤーに干渉された主人公を用意させる必要があった。
おかげで本来、生まれる年代が違う筈の各世代の主人公を、同じ年に生まれさせるなんていう、とんでもない事態になったけどね?
でも、アルセウスと同等の存在を倒させるには、絶対にプレイヤーが必要だった。だから、プレイヤーが干渉できる主人公候補は、この世界では全員が同い年になってしまったんだ。
さて。
本来は、その『世界を滅ぼす災厄』としての実行犯となる人格を、混ぜ合わさって闇落ちしたカレラが行うことになっていたんだけど、代わりにポケモン世界へ迷い込んだ君が入り込んでしまった。
おまけに、その身体は『災厄』となるために調整されているから、精神が汚染するように出来ている。
本人の意思とは関係なく、身体が勝手に死のうと行動して、怪我だらけの傷だらけになるようになって、常に悪夢や幻覚を見るようになり、思考がどんどんネガティブな方向に進むんだ。
ホント……。
なんでキミ、まだ精神が壊れてないの?
いや『僕』たちが壊れそうになるたびに記憶を消したり、改ざんしたりしてきたけどさ。
存在しないこの世界での君の両親との日々の幻覚を見せたり、旅をしてきて矛盾に気づくような不都合な記憶や稼いだ賞金を消したり、あえて元の世界の両親との悪夢を見せて「絶対に生きて帰る」っていう意思を途絶えさせないようにして頑張っていたけどさ。
その身体でいる時点で、普通は正気で居られる時間なんてない筈なんだよ。どんな精神力してんの?
それなのに、弱い吐き気がずっと残っているとか、普通はその程度の感想になるような苦痛じゃない筈なんだけど?
まぁ、そんな君が役割を代わったことで、混ざったカレラは正気に戻ったんだけど……君にしたことを理解したことでカレラは罪悪感で一杯になってしまった。
その結果、君の中にあるカレラが混ざって生まれた『俺』の人格と『私』の人格が過保護なぐらい、君を守ろうとしている現状が生まれてしまったのさ。
そして今、君の側に居るラティアスたちは、君の精神的負担を軽減しようと『俺』と『私』が創り出した触れる幻みたいな存在なんだ。
実際、その子たちが居なかったら、君の精神はとうに限界を迎えていただろうしね?
―――でも
その子たちは、君を守ることが存在理由だから『役割』が無くなれば、存在を維持できずに消滅してしまう。
アルセウスが、もとの世界に帰ったらラティアスたちが消滅する、って言ったのはコレが理由ね?
まぁ、ラティアスたちの存在を維持しているのは、その身体に秘められている力だから、君がその身体から居なくなれば、その身体を守る理由が無くなる訳さ。
帰還か、永住か。コレが、あの選択をする上での影響だよ。
まぁ、どちらを選択するかは君に任せるけど……それよりも、今は先に解決しなけばいけない問題がある。
それと言うのも……ジラーチが用意したシナリオが、
このまま行けば、君は『災厄』として『主人公』であるレッドさんに倒されて『災厄』の役目を終える、あとはその身体が創られたときの仕掛けが作動して、残留思念たちが大復活という流れになるんだ。
―――でもね?
そうなると、その肉体が残るよね? それも存在するだけで世界に負担を掛けるほど強大なアルセウスと同等の力を持った肉体がさ。
それだと『災厄』としての『役割』が終わらない。だから、その身体は敗北すると同時に、生命を維持する機能が停止するようになっているんだ。
そうすることでやっと『災厄』の『役割』が終わって自由になれる。ジラーチの願いは、敗北してから肉体が崩壊するまでの僅かな時間さえあれば叶えられるから、その身体は初めからそうなるよう創られているんだ。
でも、実際に入っているのは
その身体が『役割』を終えることはつまり、カレラだけは復活するけど、君という存在の消滅に繋がることになる。
なんせ『僕』たちは部外者だからね、この世界における君の痕跡は残らない。だから消滅させたら、アルセウスでも魂が同じ存在を創ることしかできない。
どうあっても『役割』を終えれば、
だからまぁ、向こうではシナリオを破綻させようと『準伝説』『伝説』『幻』がアルセウスを攻撃しているんだ。
あのままアルセウスの問答を続けていたら、君の身体は発狂するように仕込まれているからね。
そこから『なぞのばしょ』にレッドさんが駆けつけて、暴走している君を打倒してシナリオは完了することになっていた。
これにて1つ目の「生まれたい」という願いが叶って、世界から『災厄』が取り除かれて、大団円で終わるのさ。めでたし、めでたし。ってね?』
「………………………」
その話を聞いて俺は少しの間、沈黙する。
そして、しばらくしてから小さく息を吸うと――――――大声で叫んだ。
「長ぁああああああああああああああああいッ!!!!!!」
あらかじめ長い話になるとは言われていたとはいえ、いくらなんでも長過ぎである。
◆
「……なるほど、そんな理由があってシロちゃんを呼び寄せたんですね」
巨大な獄炎が、世界を赤に染め上げる。
《事の次第を理解したのならば、速やかに元の世界へ帰還するがいい。これは部外者であるお前が関わって良いことではない》
巨大な砲撃が、世界を水で押し流す。
「は? 私が部外者? ふざけないでよ、シロちゃんを放置して帰れる訳ないでしょッ!」
巨大な鞭撻が、世界を自然で満ち溢れさせる。
《これは世界の存続か滅亡かを決める大事である。力のないお前にできることなど、何一つとしてありはしない》
巨大な光の柱が空へ登り、とこからともなく落ちてくる木の実が敵を押し潰す。
「確かに私は弱いよ。あそこで戦っているレッドさんみたいに、手持ち6体を自力でキョダイマックスさせることなんてできないし、それこそシロちゃんにすら勝った試しがない……」
巨大な氷塊が降り注ぎ、鳴り響いた旋律がオーロラの壁を作り出す。
「でもそんなモノ、シロちゃんを助けに行かない理由になんてならないッ!」
巨大な黒雲から落ちる万雷の雨が、黒い世界を真っ白に塗り替える。
《行けば死ぬぞ?》
「死なないよ。私もシロちゃんも、絶対に死なないし、死なせない」
そう言って、女は男の方に歩いて行く。
「レッドさん! シロちゃんの場所は分かりましたか?」
「………」
男は何も言わなかった。
だが、まるで確信があるように、目に見えないナニカに導かれるように暗闇の奥へ歩み始める。
それを見て、女の方も男の後に続くのだった。
なんで私は、こんな説明の難しい設定にしてしまったんだろう……。