バトルフロンティアが廃人の施設とか言った奴出てこい 作:麦わらぼうし
バトルを終えた俺はBPで購入したミックスオレを片手に選手の控え室で一息をついていた。
ここはバトルドーム。
戦略を試す施設であり、事前情報をもとに登録した3体のうち2体のポケモンを選択して戦うバトル形式が行われている場所である。
今まで戦ってきたバトル施設でも事前情報から技を考え、作戦を練ってきたのだが、今回は相手側も俺のポケモンを知っている状態でポケモンを選出してくるので一戦ごとに逆転されそうになり、集中力がほぼ常に極限状態になってしまう。
確か『ゾーン』とか言われる状態だったっけ? 脳内麻薬がドバドバ出ている気がするよ、こうして休憩時間に精神を落ち着けないとトーナメントが終わるまでに倒れてしまいそうだ。
次の対戦相手はドームスーパースターのヒースさんだけど、試合が開始されるまで少し時間があるので一度別のことを考えて精神を整えるべきかな?
そうだなぁ……。
すぐに思いつくことと言えば、この前に本気のアザミさんと戦ったことかな?
………まずい、考えごとをすると頭がポケモンバトルのことに直結させようとしてくる。
俺こんなに戦闘狂だったっけ?
まぁいいや、落ち着くのは確かだし……。
それでなんだっけ……。
……あぁ、そうそう。バトルチューブでのアザミさんとのバトルだ。
案の定だったよ……。
まずレックウザは予想通りメガシンカしてきたけど、特性で発生した『らんきりゅう』を身に纏ったことで特殊技が一切届かなくなり、物理技の威力が半減して攻撃するたびに此方がダメージを受けるようになった。
ジガルデは倒しても1つのフォルムごとにHPが全快するようになり、10%、50%、100%と連戦するようになった。だが、ここまではまだいい(よくない)。
問題は、デオキシスである。
やはり戦闘中にフォルムチェンジしてきたが、ジガルデのようにHPが回復するようなことはなかった。
しかし、倒すと同時にデオキシスは身体を消滅させてコアだけの状態となり、ジガルデに吸収されたのだ。
その結果『ジガルデ・デオキシスフォルム』とかいう訳の分からん形態となって、もう一戦するようになった。
いや、確かにお前ら『細胞』と『ウィルス』の要素があるから合体してもおかしくないけどさ……
だからって本当にする?
あれか? レシラム や ゼクロム が キュレム と合体するみたいな感じなのか?
アレは確か、もともと1つのポケモンが分離したという存在だから出来たことだと思うんだよ。完全に別のポケモンが合体とか……あぁ、ネクロズマが居たっけ? ならいいのかな?
とにかく、やっぱりフロンティアブレーンは一筋縄でいくような相手ではなかったのだ。そしてそれは、やはりヒースさんもである。
このバトルドームが戦略を試す場所と言われる理由は、情報を見せ合うからという訳だけではない。
ドームスーパースターであるヒースさんは、ポケモンの性質を活かした戦い方をするのだ。
アニメでヒースさんが戦った話を見たことがあるだろうか? ウィンディとラグラージでやった『炎と水のフュージョン』というものを知っているだろうか?
相反する力を組み合わせて強大なダメージを与える技術らしいのだが、どうもヒースさんはポケモンのタイプを活かした戦術を好むらしいのだ。
この世界でヒースさんが使うタイプは『ひこう』である。すなわち、制空権を奪われて戦うことを余儀なくされる。その様子は一方的なスカイバトルであり、飛ぶことのできないポケモンはただのマトに成り果てるのだ。
インチキ? 対策しない方が悪い。事前に情報は出ているのだから、準備を怠った者が戦いの場に立つ権利など無いだけである。
もしくはレッドさんのピカチュウのように、ボルテッカーで空を走って攻撃を当てればいい。
例外中の例外だしても意味ないな……。
簡単に想像できるだろうが、このバトルドームを手こずるチャレンジャーは多い。自身の育てたポケモンで戦えないこともそうだが、もっと根本的な理由が存在するのだ。
前に、ポケモンの技のように人間にも育てられるポケモンに限界があるという話を覚えているだろうか? それは事実であるが、さらに人間の限界を細分化すると、ある条件に当てはまらないトレーナーは、このバトルドームの攻略は絶望的になるのだ。
不思議に思ったことはないだろうか? なぜ強いはずのジムリーダーや四天王が特定のタイプばかりを育てているのか、と。
そのタイプのエキスパートであると言えば聞こえはいいが、1つのタイプに何種類のポケモンがいると思っているんだ。しかも、同じ種族でも個体ごとに違いがあるのに、そのタイプのエキスパート? 多少共通する面はあるだろうが、ほとんど別のポケモンだろ。
パーティーというのは、基本的にバランスよく育てるのが理想だ。熟練者だからと基本をおろそかにできる訳ではないし、そもそも重要なことだからこそ基本となっているのだ。
だが、それはあくまで理想。現実的には、とてつもなく難しい。
確かに育てる際に『みず』タイプと『ほのお』タイプでは手間が全く違うだろう。
だが、そういう問題ではないのだ。
実は、ポケモンにタイプがあるように、人間にもタイプが存在するのだ。
そしてジムリーダーや四天王が扱うのは、自身と同じタイプのポケモンなのである。
意味が分からない? 安心しろ、俺だって意味分からん。
ただ、これだけは覚えておけ。
ポケモンの世界は、俺が元いた世界とは物理どころか、世界そのモノの法則が違うのだ。俺の知っている常識なんて、参考程度にしかならない。
とにかく、この世界の人間にはタイプが存在し、自分と違うタイプのポケモンとなると、育てるのも、言うことを聞かせるのも難易度が段違いに上昇する。
そして、このような自身のタイプを自覚して、そのタイプのポケモンを極めようとするトレーナーは『タイプ・トレーナー』と言われている。
ジムリーダーや四天王は、このタイプ・トレーナーであることが多いのだ。
また、2つ以上のタイプを持っている人間は『デュアル・トレーナー』と言われ、こちらはチャンピオンの場合が多い。
具体例を出せば、カントー地方のワタルさんが『ドラゴン』と『ひこう』。ホウエン地方のダイゴさんが『はがね』と『いわ』のデュアル・トレーナーである。
他にも、主人公勢やシンオウ地方のシロナさんのような全てのタイプを複合したトレーナーは『マルチ・トレーナー』と呼ばれ、とんでもなく希少な存在とされている。
レッドさんのタイプ? 『ワイルド』じゃね? アレはもう別枠だ……。
話がだいぶ逸れたけど、とにかくトレーナーごとに得意不得意なタイプが存在するのだ。流石にバトルフロンティアに招待されるような人たちだけあって、最低でも全員がタイプ・トレーナーであり、一般人のように得意なタイプを持たないマルチ・トレーナーの劣化版のような者はいない。
だが、バトルドームは『ひこう』タイプを操るヒースさんの施設であり、不得意なタイプで戦ったところで敗北は必至なのだ。
なので得意なタイプと『ひこう』タイプを持っている複合タイプのポケモンや、宙に浮いているポケモンで戦わなければ勝負にならないのである。
そして、ここまでが『前提条件』である。
ヒースさんは決して弱くはない。フロンティアブレーンなので当たり前だが、まともに戦ったら地力の差だけで潰される。
ヒースさんはタイプを活かす戦いをするが、このバトルドームは『ダブルバトル』であり、ポケモン同士のコンビネーションも試されるのだ。
そして、初めて戦う相手には決まったポケモンを出してくる。3体のうちの2体ではなく、初めから2体しか登録していないのだ。
情報を集めただけで勝てるなどと思い上がるな、ということなのだろう。
そんなヒースさんが出してくるポケモンは
―――ファイヤー(通常) と ガラル ファイヤー(色違い)
である。
お前ら一緒にチーム組んでいいの? なんて無駄な疑問である。というか、ガラルのファイヤーの色違いって、俺が知っている限りでは未解禁だった筈なんだけど?
改造で出回ったのを見てなければ、ソレがガラルのファイヤーだって分からなかったよ? この世界、特殊個体(クリスタルのイワークなど)とか言うモノも居るんだから……。
しかし本当に、よく似てるわ。確かに同じファイヤーと思っても、おかしくないくらい似てる。
だが、そんな感想を抱けるのは最初だけだった。
ファイヤー(通常)と対峙した途端、対戦相手のポケモンが『こおり』ついたのだ。そして、その技を俺は知っている
『いてつくしせん』
である。
なんでアナタが、その技を持っているんですかねぇ……それはガラルのフリーザーが使う技だった筈なんだけど……。
その疑問に、ヒースさんはこう答えた。
「『にらみつける』を使っていたら、できるようになった」
と
ふざけんなっ!
しかも『にらみつける』の派生だからか知らんが、ビームが可視化しないのだ。
突然ポケモンが吹っ飛ばされて振り向いたら『こおり』で包まれているとか、初見殺しも大概にしろッ!
ちなみにこの世界、『こおり』状態は初代のポケモン仕様に近い。『ほのお』タイプの技を受けなければ、ほぼそのまま『ひんし』になる。
つまり、ファイヤー(通常)の前に立つと一定確率で『即死』するのだ。
そして、ファイヤー(ガラル)もひどい……。
ファイヤー(ガラル)の特性を知っているだろうか? 『ぎゃくじょう』と呼ばれる特性なのだが、相手の技のダメージでHPが半分以下になると『とくこう』が上昇するという特性だ。
しかし、ヒースさんのファイヤー(ガラル)はそんな受動的なポケモンではなかった。
なんと、このファイヤー(ガラル)は、ファイヤー(通常)が攻撃を当てると
『なにオレの偽物を活躍させてんだゴラァ!!!!!』
と言った具合に、ブチギレして
と言ったように、ヒースさんも他のフロンティアブレーンに劣らない実力者なのである。
というか、同じファイヤーだからって区別するためにニックネームで呼ぶのやめてくれませんかねぇ……使う技が違うから分かるけど、結構混乱するんだよ。
さて、そろそろ休憩を止めて、いい加減に次の試合に目を向けますか……。
次の試合は、2回目のヒースさんとのバトル。即ち、本気のヒースさんである。
本気のヒースさんは、手加減の時とポケモンを変えるらしいのだ。
実機の時は、むしろそちらが普通だったので意外には思わなかったが。これは、本来のバトルドームの形式である直前にポケモンを知って対応できるかを試すための措置らしい。
本気で戦うのでハンデは無しだ、ということだろう。
とはいうモノの、やはり登録しているポケモンは2体らしい。本気とはいっても、俺は挑戦者であり、向こうはソレを迎え撃つ立場なのだ。
戦略を試す施設だというのに変だと思うかもしれないが、小細工などせずに正面から立ちはだかってやるという気概なのだろう。
もっとも、ヒースさんはヌケニンが嫌いなのか。登録ポケモンにヌケニンが居ると、普段のパフォーマンスすら止めて問答無用で叩き潰しに来るが。
まあ、ヒースさんのファイヤー(通常)もファイアローを手持ちに入れていると『即死』させて来るっていうし、似た者主従なのだろう。
とりあえず俺は、手元の端末を操作してヒースさんの手持ちを確認する。
なるほど。
―――ホウオウ と イベルタル か
まあ、手加減していた時と同じタイプのポケモンだし、精々『準伝説』が『伝説』に変わっただけだよねぇ……。
そう考えて俺は、手に持っていたミックスオレを握り潰すと、どこぞのモデルをやっているジムリーダーのごとく片足を上げて、全力で空き缶をゴミ箱にシュゥゥゥーッ!! したのだった。
超! エキサイティン!! って、やかましいわッ!!
『ジガルデ・デオキシスフォルム』
簡単に説明すると
ジガルデ(パーフェクトフォルム)の『HP』
デオキシス(アタックフォルム)の『こうげき』と『とくこう』
デオキシス(ディフェンスフォルム)の『ぼうぎょ』と『とくぼう』
デオキシス(スピードフォルム)の『すばやさ』
になります。