バトルフロンティアが廃人の施設とか言った奴出てこい 作:麦わらぼうし
(確認中)
なんか評価に色が付いてる!? 何があった!?
さきほどバトルパレスに予約してきた私は、次の開催まで時間をつぶしていた。
今、私の目の前には控えの手持ちであるヒトカゲが、自身の手の中にある遺伝子のような模様を持つ石と同じようなモノを手に持ってはしゃいでいる。
先ほど、赤い帽子を被った無口な人から、もう使わないからと貰ったものだ。
不用心かもしれないが、ジムチャレンジの間も応援として色々な物を貰ってきたし、チャンピオンになってからはファンレターなど、知らない人からモノを貰うことに躊躇がなくなってしまったのだ。
私は改めて、自身が持っているモノを見てみる。
おそらく、カロス地方で発祥されたというメガシンカに必要とされている石、メガストーンとキーストーンだと思う。別の地方に旅行することが多いから、これくらいのことは知っている。
私のヒトカゲを見て、あげると言っていたから、おそらくリザードンをメガシンカさせるのに必要なモノなんじゃないかな? なんでリザードンにはメガストーンが2つあるのかは分からないけど。
ダンデさん曰く、このヒトカゲは特別なヒトカゲらしいから、見る人からすれば、その違いが分かるんだろうね。
こうされてみると、改めて自身がチャンピオンという称号を持つには未熟だと実感する。
チャンピオンと言うものは、その地方において最強のポケモントレーナーであることの証明と同時に、その地方の最終防衛ラインとされる者。即ち、守護者だ。
その地方の誰よりも強い存在。ではなく、もっともポケモンの扱いに長けた者。
実際のところ、どれだけバトルが強かろうと、それは手持ちのポケモンの強さを証明していることに他ならない。
ならば、なぜチャンピオンという存在が強大な発言力を持つのか?
それは、ポケモンを操り、危機に対処することができる可能性が最も高いから。
地震、台風、火事、雪崩、洪水、隕石。どれも人の命をたやすく奪う恐るべき災害である。
しかし、どんな災害であっても、それ以上の力を持つポケモンが、この世界のどこかに必ず存在する。故に、それを制御できる者は、人類を生かすも殺すも自由にできると言っても過言ではない。
どれだけ強力な兵器を作ったところで、それより強いポケモンが世界のどこかに存在する。
だからこそ、ポケモンの扱いに長けたものは、世界の危機にすら対処できる可能性を持っている。その頂点がチャンピオンという存在であり、それほどの価値があるからこそ、その地位は強大なのである。これは、どこの地方チャンピオンであっても変わらないこと。
そして、地方ごとにチャンピオンを決めるのはなぜか?
それは地方の特色により、求められるモノが若干異なるから。
私がチャンピオンになったガラル地方において求められていたものは『見栄え』だった。
他の地方とは違いジムのバトル、それも1つもバッジを所持していないにも関わらず、観客によってスタジアムが満員になるほど、ガラルではチャンピオンへの挑戦が注目されている。
それは私がチャンピオンになるまでの長い間、ダンデさんが無敗であったことも理由だろうが、それだけではない。
ダイマックス現象。ガラル地方に存在する特殊な粒子によってポケモンが巨大化し、大迫力のバトルを可能としたもの。
それこそ、バッジを所持していなくともダイマックスバンドがあれば、ジムのようなパワースポットで使用できるもの。
普通のポケモンバトルであっても大会中のテレビの視聴率は50%を軽く超える人気なのに、会場に行けば肉眼で、そのバトルを肌で感じるさせるような小細工なしのぶつかり合いを見ることができる。
そんなバトルが何度も繰り返されれば、人が求めるものは決まってくる。
新人ですら、こんな大迫力のバトルができるのなら、チャンピオンはどれほどのモノなのか?
きっと、もっと、すごいバトルができるに違いない!
戦略も、戦術も、何もかもが、きっと自分たちが想像するより遥かに上のハイレベルなバトルができる筈だ!
期待は無制限に高まり続け、どれだけバトルで魅せても『もっと』『もっと』と次を要求し始める。
故に求められるのは『見栄え』なんだ。
もっとすごいバトルを、もっと派手なバトルを、もっと激しいバトルを。
ガラルのチャンピオンに、小細工は求められない。他の地方でも、それは同じであるが、ガラルでは特に重視されているものだ。
その高まり続ける期待を、ダンデさんはチャンピオンになってからずっと応え続けた。
だからこそ、新しくチャンピオンになった私にも、同じような期待を向けられるのは当たり前のことだった。
あのダンデさんに勝つのなら、きっともっとすごい。実際、ムゲンダイナを打ち破ってガラルを救ったのだから、その期待度はきっとダンデさん以上だろう。
だが、チャンピオンの仕事というのは思いのほか多い。地方の最終防衛ラインとして、多くの人に認知されるためにとにかくメディアに引っ張り出される。
取材、ファンサービス、イベント出演etc。少し前まで、のほほんと暮らしていた私に、与えられた仕事全てをダンデさん以上に熟せる訳もないので、足りない分は自分の時間を削ってやっていくしかない。
だからこそ休みを取るときは、まとめて長期間の旅行をした。地方の守護者としては決して褒められたことではないけど、そうしないとドウニカなりそうだった。
1人になりたい。
そう思って、まだ自身の名が広まっていないだろうと、ヨロイ島というガラル本土と離れた場所や、カンムリ雪原という過疎化している地域に足を運んだ。
そして情報が広がるたびに、もっと遠くへと地方を跨いで旅行を繰り返していた。
そんなときだった。エニシダさんと出会ったのは。
他の地方にいるチャンピオンやジムリーダー、それ以外にも凄腕のトレーナーが通うというバトルフロンティアに招待された。
自身と同じチャンピオンが通う場所なら、同じような悩みを持つ人もいるかもしれない。少なくとも、見ず知らずの私に期待する人はまだいない筈だ。
そう思って、私はバトルフロンティアに足を運んだ。
そしてガラルでもあったバトルタワーがあったので、挑戦してみようとして
門前払いを食らった。
衝撃的だった。未熟であるとはいっても、一応私はチャンピオンである。それでも、バトルタワーに挑戦するには、既定のレベルに達して居ないと挑戦を断られたのだ。
そして気落ちした私は、少し焦り過ぎていたのかもしれないと思い。一度ポケモンセンターに戻ると、新しい土地に来たということで手持ちのポケモンを出して調子を確かめようとした。
ただ何かあった時の為にとムゲンダイナを連れてきていたので、流石に部屋の中で出すのは狭いと思い、ポケモンセンターにあるフリーのバトルフィールドでボールから出した。
バトルフロンティアのポケモンセンターは、設備の充実具合がすごいと思いました、まる。
そうしてキャンプをしていた時を思い出しながら過ごしていると、私よりも小さな子がやってきた。
その子は、あのオニオンくんよりも小さく、本当にトレーナーの資格を持てるのかと思うほどの低身長だった。
その子は私と目が合うと「ごめんなさい」と言って出ていこうとしたので、慌てて引き留めた。
ここはフリーのバトルフィールドであり、私が独占している場所ではない。その子に謝られる理由はない筈だ。
しかし、引き留めた私に、その子は逆に「不用心だ」と忠告してきた。
手持ちのポケモンを他者に見せるなんて『いくらでも対策してください』と言っているようなモノだと言われた。
だが、そう言われた私はその時、なんとも思っていなかった。
ガラルのチャンピオンとして挑戦者を迎え撃ってきた私は『見栄え』を良くするために、手持ちのポケモンを隠さないようにしてきたからだ。
そして、忠告してくれたその子に「だったら、戦ってみる?」といたずら半分に挑発したのである。
その挑発に乗ってくれたのか分からないけど、その子は変わらない声音でバトルを私に申し込んできた。そして
私は、その子の出してきたラティアス1体に、惨敗した。
何もできなかった。
一緒にジム巡りをしたメンバーが動く前に沈められ、大人げないと思いながらも最後のムゲンダイナの専用技である ダイマックスほう で倒そうとしたら「邪魔」の一言で、ラティアスに打ち返された。
それは ミラーコート じゃない、サイコキネシスだった。
ミラーコートによって跳ね返されたのなら、そういう性質の技だからと納得できる。
しかし、サイコキネシスで曲げられて返されたのであれば、それは純粋な出力の差によるものだ。
それを理解した時、私の中にあったチャンピオンとして積み上げてきたモノが音を立てて崩れ去ったような気がした。
そしてバトルを終えて意気消沈している私に、その子は「あなた、初めてなんだね」と言ってきた。
言葉の意味が分からず私が聞き返すと、その子は答えてくれた。
このバトルフロンティアに初めて来た人は、1人の例外を除いて、たとえチャンピオンであろうとも敗北を経験するのだとか。
その言葉は本当なのだろう。事実、目の前に居る私よりも年下であろう子に、私は負けた。でも、なんでだろう? 不思議とスッキリしている自分が居る。
その答えは、すぐに分かった。
ここでは、チャンピオンという称号には何の意味もない。
求められるのは、純粋な強さだけ。
メディアに向けて作り笑顔をする必要も、チャンピオンとして勝ち続ける必要もない。
ただ1人のポケモントレーナーで居られるのだ。
もしかしたら、他の地方のチャンピオンが通っているのも同じ理由かもしれない。
チャンピオンという重圧は、あまりにも大きい。それこそ、責任感が強ければ心が壊れてしまうほどに。
でも、ここではありのままで、思う存分にバトルすることができる。
ポケモンバトルは、楽しいモノなのだ。
特に、チャンピオンになってしまうような人物は、好きで好きでたまらない筈なのである。
だというのに、チャンピオンになればメディア出演に時間を取られ、大好きなバトルでさえも責任を押し付けられながら戦わなくてはならなくなる。
そんなしがらみが、ここにはないのだ。
そう思ってみると、今まで見えていた光景が違って見えるようになった。そして
目の前に居る子が、自身を一切見ていないことに気が付いた。
いや。顔は私の方に向けてはいるのだが、その瞳が私を捉えていなかった。
私にも、私のポケモンにも、その子のポケモンにさえも目を向けてはいない。
ただ空を見つめる虚ろな双眼が顔に付いているだけだった。
それを認識した私に、その子はやはり変わらない声音で話しかけてきた。
その子が教えてきたのは、このバトルフロンティアのセオリーだった。
ここで戦うのなら、今までの認識は一度捨てること。
どこから挑戦してもいいが、バトルタワーは最後に挑戦したほうが良いこと。
フロンティア内に居る人は全てライバルとして認識すること。
他にもBPの使い方や、細々としたことをいくつか教えてもらえた。
どうしてそんなに教えてくれたのかと聞くと、自分のようになって欲しくないということだった。
その子は最初にバトルタワーに挑戦したことで、とても後悔したらしい。
なんでも、バトルフロンティアのバトルタワーとは、トレーナーとして最後の仕上げに行う場所なのだそうだ。
バトルフロンティアでは、施設ごとにトレーナーが試されるものがあり、バトルタワーにおいて試されるのは『才能』
すなわち、どれだけポケモンを育てられるかということだ。
確かに、私はチャンピオンになってからメディア出演や旅行ばかりで積極的に手持ちを育てていなかった。だからバトルタワーで、ポケモンが育て切れていないからとNG判定を受けたのだろう。
バトルフロンティアで試されるのは、ポケモンではなくトレーナーなのだ。そんな腑抜けた状態の私が足を踏み入れようとしたのだから、追い返されるのは当たり前のことだった。
だからまずは別の施設。
その子が言うにはバトルアリーナ以外ならどこでもいいらしいが『心』を試す施設であるバトルパレスがおすすめだと言われて、現在私は開催まで時間をつぶしているのである。
ところで、どうしてバトルアリーナがダメなのか聞いたら、少し前にピカチュウを連れたトレーナーとフロンティアブレーンがバトルして施設を消し飛ばしてしまったらしいのだ。
もう少しすれば再建するらしいが、そんな恐ろしいトレーナーがいるなんて……。
見ず知らずの私のヒトカゲに貴重なメガシンカの石をくれる親切な人もいるのに……どうやらここには本当にいろんなトレーナーが居るようだ。
さて、そろそろ時間だし、初めてのバトルフロンティア挑戦、頑張りますかっ!
ストーリーをクリアして、バトルフロンティアでボコボコにされる。
エメラルドのプレイ経験のある方なら、あるあるだと思います。