バトルフロンティアが廃人の施設とか言った奴出てこい 作:麦わらぼうし
いよいよバトルフロンティアの施設数も折り返し地点を過ぎ、残すところはバトルファクトリー、バトルアリーナ、バトルピラミッドの3つとなった。だからと言って気を抜くことはできないし、そもそも今の俺は余裕のある状態とはほど遠いだろう。
そんなことを、自分のことなのに、どこか他人事のような感覚で思う。
思えば、このように説明口調で現状を考えているのも、そのせいかもしれない。
未だに前世を引きずっている。それは比喩でも何でもなく、今の現実を受け入れられていない俺が誤魔化しようのない証拠だ。
『心』を試す施設、か。
確かに試された。というより、目をそらしていたという事実を突きつけられて、向き合わせたという方が正しいだろうか?
自身の手を見てみる。
小さい。
それこそ、身体は同年代の平均身長に比べても頭1つ分は小さいだろう。
どうしてこんなに小さいのか?
決まっている。
食事らしい食事なんて、生まれた時からほとんど摂っていなかったからだ。
この世界に生まれて、絶望の中にいた当時の俺は食事なんてほとんど喉を通さなかった。モーモーミルクのような栄養価の高い飲料があったとしても、流石にそれらだけでは限界がある。
故に今の自分が、この前のように子ども扱いされるのは仕方のないことだ。
だがこれでも、以前に比べれば今の俺の状態は良すぎるぐらい健康なのである。
今でも時々吐くが、当時は固形物なんて一切食べることなんてできなかったので常に栄養失調であり、何度も倒れて病院で点滴を打っていた。
病院で拒食症と診断されていたようなので、両親に虐待されているというようなことにはならなかったけど、他から見たら俺はガリガリで生気のない子供だ、きっと俺の知らないところで多大な迷惑をかけたのは想像に難しくない。
それでも俺を愛し、優しく育ててくれた両親。だというのに、俺は旅に出てから一度も連絡を取っていない。
俺が旅に出ると知った時、どれだけ彼らを心配させたのだろう?
申し訳ない気持ちしかない。いや、そんなことを思うことすら傲慢だな。
姿も声も、何もかも違う今の自分は、あの優しい2人の子供を奪ってしまった存在かもしれないのだ。
本来、あの優しさを受け取る相手は俺ではない。
だからこそ、あそこにいることに俺は耐えられなかった。
あの心配して話しかけてくる声が、疲れているだろうに俺を元気づけようと明るく振る舞う姿が、絶望している俺を不安にさせまいと抱きしめてくれた温もりが。
その全てが、前世の記憶にある家族と重なるのだ。
滑稽だな。
俺は死んでからようやく、自分がどれだけ愛されていたのかを自覚したのだ。
前世は捨てられない。だからと言って現実を見るには、俺は存在そのものが間違いだ。こんなことならいっそ、何も覚えていない状態で生まれたかった……。
そう考えれば、俺が旅に出てからの行動もそうだろう。
今の両親に迷惑をかけた分、大会で稼いだ賞金は殆ど仕送りとして、必要最低限の状態で旅を続けていた。
だがそれは、前世で親孝行できなかった俺が罪滅ぼしをしようとしていた訳ではなく、俺が無自覚に旅の途中で事故死しようとしていたからだ。
準備はしたけど不測の事態で死んだのなら仕方ない。そんなことを言い訳に、どんなに危険な場所であっても最低限の準備だけして、旅を続けていた。
この身体には傷1つ無いけれど、それはラティアスに『いやしのはどう』で治してもらっていたからだ。
今まであった傷が残っていたとすれば、俺の身体は怪我がないところなど見つからないほど火傷や凍傷や切り傷でボロボロのアザだらけだろう。
そして俺がバトルフロンティアにのめり込んだのも、おそらくここが前世と今世の知識を凌駕するほど非常識な場所だから、現実逃避していた俺に現実感を意識させなかっただけだ。
あぁ、またこの感覚だ。
きもちわるい。
漠然と、なんとなく、ただただ気持ち悪い。
何かに嫌悪感を抱いているのではなく、弱い吐き気がずっと残っているような感覚。
いい加減に、夢を見る時間は終わりだということだろうか。
生きるって、つらいなぁ……。
―――――――――――――――――
まぁ、いっか。
苦しいなんていつものこと、だったら何か行動しよう。
というか、なんで俺こんなに苦しい思いをしなくちゃいけないんだろう? 転生したのは俺の意思でもなければ、原因なんてわからない。唯一知っている可能性があるとすれば、この世界だとアルセウスぐらいかな?
……………流石に創造神がゲットされているなんてないよね?
今までの施設を振り返っても、ディアルガ、パルキア、ギラティナは見たことないし、シンオウの伝説は、そもそも会うことができないのだろう。
この前の主人公のように旅の途中でゲットして手持ちにしている場合はあるけど、時間や空間、反物質を司るポケモンはゲットして大丈夫なのだろうか?
いや、そんなこと言ったらウコンさんが持っていた
そういえば、あのガラル主人公にバトルパレスをすすめて良かったのだろうか?
主人公勢って、レッドさんが別格なだけで、他の主人公勢も大概おかしいからなぁ……。
勢いあまって ムゲンダイマックス とかしない? ガラル地方じゃないからとか『ねがいぼし』が無いから大丈夫なんて言えないからなぁ……バトルアリーナでのアレを思い出すと特に……。
いや、レッドさんが規格外なのは事実だけど、フロンティアブレーンだって滅茶苦茶だからね。
そういう意味では、ウコンさんだってトップレベルのトレーナーだ。
もはやポケモンバトルと言うべきかという精神干渉はともかく、本気のウコンさんもフロンティアブレーンと名乗るに相応しい実力者だ。
まずミュウツー。いや、こいつが一番ひどい……。
バトルパレスのルールを覚えているだろうか?
『ポケモンに指示を出してはいけない』というルール。
だが、正確には『
コレを言えば勘のいい奴なら気づくかもしれない。
ミュウツーが登場した映画『ミュウツーの逆襲』で、ミュウツーは自身を『最強のポケモントレーナー』として、フシギバナ、カメックス、リザードンのコピーポケモンたちをバトルさせていた。
そう、ウコンさんは指示を出さなかった。だが、ミュウツー が マギアナ と ゲノセクト に指示を送っていたのだ。
いや、手加減していたウコンさんとバトルした後、なんであの3体に出会ったのかをよく考えておくべきだった。
最初からボールに入っていないのは理由があったからだ。
ミュウツーは他のポケモンにバトルの指示をするため。
マギアナは特性の『ソウルハート』の『とくこう』を上げる効果を参加者の人数分発動させる為だった。
ちなみに、この世界の能力上昇はゲームの時と同じく6段階までだ。だが、どういう理屈か分からないが、ウコンさんのマギアナは6段階を超過した分の『とくこう』をストックできるようだった。
その所為で『とくこう』が6段階上昇した状態の『フルールカノン』を連打されたけどなッ!
そしてマギアナを倒すと、そのマギアナの身体から歯車が飛び出して、ソレをゲノセクトが掴んだ。
嫌な予感がしたと思ったら見事に的中したよ。
あとからウコンさんに聞いた話だが、アレは マギアナ と ゲノセクト が『ギアチェンジ』で使う歯車らしい。
戦う前に ゲノセクト が マギアナ に渡しておいて、マギアナの『バトンタッチ』の要領で『とくこう』の上昇をストック含めてゲノセクトに渡したのだ。
なんでこんな面倒な方法を使ったのかというと、この能力上昇はしっかりと『ギアチェンジ』の『すばやさ』と『こうげき』も上昇するらしい。
その動きは、まさに神速。いや『神速のゲノセクト』とは違って通常色だったけどね?
でも『ギアチェンジ』も『しんそく』も使ってきたし、もう訳分からん。
あぁ、あとゲノセクトの『ダウンロード』の上昇分もしっかりとストックされるとか言ってたっけ?
まあそれはいい(よくない)
マギアナ から歯車を渡されたからか、ゲノセクトも背中の砲台から『フルールカノン』を撃ってくるし、体の色からするに『アクアカセット』を持っているようだけど、もともと『10まんボルト』も『れいとうビーム』も『かえんほうしゃ』も覚えるからか5つ全タイプの『テクノバスター』を撃ってくるし、そしてコイツも倒すと歯車が飛び出してきた。
それを受け取るミュウツーを見て、今度はなんだと思いながら見ていると、絆を重んじているウコンさんのミュウツーは当たり前のようにメガシンカした、ちなみに『X』の方ね。
だが、ここからさらに変なことが起きた。ミュウツーが持っているメガストーンと歯車が突然共鳴して光に包まれると、次の瞬間には結晶体のようなものを胸から突き出して、耳や尻尾の先端を発光させているメガミュウツーXがいた。
何が起きたのか全く分からなかったが、間違いなくミュウツーが強化されているだろうことは理解できた。最低でも能力上昇は『とくこう』は最大で、『こうげき』も『すばやさ』も引き継がれているだろう。
そしてようやくバトルが始まったのだが、一撃が重すぎる上に技を出すのが早すぎる。
本来、ポケモンバトルは野生であると、お互いの状況を見極めながら最適な技を自ら考えて使うため少し遅くなる。その遅れる分をトレーナーという別視点から指示を送ることで、補うことがポケモンとトレーナーの理想形だ。
だが、それはバトル慣れしていないポケモンの場合である。フロンティアブレーンの手持ちがバトル慣れしていないなど在り得ず、そしてトレーナーと同等以上の知性と知識を持っているのならば、そのバトルはすさまじい早さで展開される。
その様子は、俺が出していたカミツルギが近接攻撃を主体とするポケモンである所為もあってか、もはやターン制のバトルというより格闘ゲームのようだった。
ポケモンに格闘ゲームって、あったっけ? 外伝作品はあまり知らないんだよなぁ……。
ところで、バトルパレスが自然豊かな森になっているからって『サイコキネシス』で『ハードプラント』もどきや『りゅうせいぐん』『じわれ』もどきを起こすの止めてくれませんかねぇ………映画で確かに嵐を起こしていたけどさぁ……。
あと戦っていると、ミュウツーがときどき暴走しそうになる。
ミュウツーは遺伝子操作によって戦闘力を高められた結果、優しい心は存在しないと言われるほど凶暴とされるポケモンだ。
アニメや映画を見ている俺からすれば、理性的に見えるが、初代でもグレン島のポケモン屋敷で「手に負えない」って日記があるぐらいだし、ミュウツーというポケモンは本来凶暴なのだ。
そんな暴走しそうになるミュウツーを、ウコンさんは声を掛けるだけで落ち着かせる。そこには確かな絆があり、ミュウツーは瞳に理性を取り戻すのだ。
これ、単なる呼びかけに見えるが、そうではない。
『なかよし度』による状態異常の自力回復だ。
ミュウツーに限らず、ウコンさんが呼びかけるたびに、攻撃に耐えたり避けたり急所に当ててきたりとやりたい放題。
でも、こんな場所であっても主人公勢は何回かすれば普通に突破していくんだよなぁ……。
結論、どっちも頭おかしい。
「そう思いませんか? ダツラさん」
「いや、いきなり何の話だ?」
現在、俺はバトルファクトリーでようやく奥から出てきてくれたファクトリーヘッドのダツラさんの前に居る。
忙しいのは分かるけど、もう少し早く出てきてほしい。
「まあ、待たせちまったのは悪いと思ってるがよ。お前さんだって、バトルアリーナが使えないままなのは困るだろう? 細かいことは気にすんな!」
「……直せたんですか?」
あのレッドさんとブレーンの激突で、更地どころか、島に穴を開けてしまったバトルアリーナを直すなんて、やはりポケモンの世界の技術力はオーバーテクノロジーだ。
「当然だ! まあ、いつも直しているから、こっちも慣れてんだよ。それより、さっさと俺に使わせるポケモンを選びなッ! ……お前は選ぶよな?」
「選びますよ、そうしないと勝ち目ないんですから」
俺がそういうと、ダツラさんが明らかにホッとした顔をする。
分かりますよ。あんなことがあれば、そうもなる。
バトルファクトリーは、ゲームとは違い、バトルドームのように手持ちの3体を登録したあと、お互いの対戦相手に使用するポケモンを1体選らばせて対戦するという形式で進められる場所なのだ。
ただしファクトリーヘッドであるダツラさんだけは、挑戦者が自由に手持ちを選び、ダツラさんの手持ちを挑戦者が選ぶことになっている。
ダツラさんのポケモンは毎回変わるが、ゲームほど運の要素は強くない。いや、ゲームのバトルファクトリーが、バトルチューブ以上に運を必要とする場所だった気がするだけだろうか?
多くの種類のポケモンを的確に扱うことができるダツラさんは、まさしく『知識』を試す施設のフロンティアブレーンとして相応しい知識を持っており、同時に世界に数少ない『マルチ・トレーナー』の1人だ。
当然、それ相応に自信がある。
だというのに、あんな反応をしたのは、少し前にレッドさんが挑戦者となってポケモンを選ばせるときに
『誰でもいい』
と、ダツラさんのポケモンを選ばないで、先にピカチュウを出したことがあったからだ。
そしてダツラさんは、容赦なく ゲンシグラードン を使って、敗北した訳だ。もうフロンティアブレーンとしてのプライドなどボロボロだろう。
もっとも、アレはレッドさんが規格外すぎるだけだ。気にするだけ無駄。
さて、そろそろ俺もダツラさんのポケモンを選びますか。
今回のポケモンは何だろう? アニメで フリーザー 使ってたから、他の3鳥だろうか?
―――ディアルガ、パルキア、ギラティナ
「……………」
お前ら、ここに居るのかよッ!? というか、ダツラさんどうやって出会ったッ!?
Q:なんでディアルガ持ってるの?
A:納期が短くても、時間を作れるなら問題なくなるだろ?
Q:なんでパルキア持ってるの?
A:場所を取る機材とか置けるようになって便利じゃねえか。
Q:なんでギラティナ持ってるの?
A:『反物質』を司ってるってことは、逆説的に何でも作れるってことじゃねえか。材料に困らなくて有難いぜ!
Q:なんでグラードン持ってるの?
A:他のフロンティアブレーンどもが本気でバトルすると頻繁に島の形が変わるからな、直すのに重宝してる。
Q:最後にダツラさんから一言
A:バトルするのは良いが、少しは周りに配慮しろバカどもがッ! 誰がいつも直してると思ってんだッ!?