バトルフロンティアが廃人の施設とか言った奴出てこい 作:麦わらぼうし
ようやく戻ってきたというべきか。
それとも戻ってきてしまったというべきか。
現在、俺はバトルアリーナで2回目のコゴミさんとのバトルが始まるのを待っていた。
本当に、ようやく挑むことができる……。
というのも、少し前に施設が消し飛んでしまったせいで、バトルアリーナのシンボルが銀のままで他の施設に挑むことを余儀なくされていたからだ。
実際に俺がここに挑戦したのはバトルタワーの次だから2つ目だったんだけど、ようやく本気のコゴミさんと戦えると思って来た日にレッドさんと鉢合わせしちゃったからなぁ……。
当たり前のように負けて、世界最強と言われているレッドさんのバトルを見学しようとして死にかけたのは良い思い出……ではないな。
あの時は、バトルタワーの立ち位置を聞いて憂鬱になっていたから、見学させてほしいなんて我が儘を言ったんだっけ?
このバトルフロンティアでのバトルタワーは、トレーナーが最後の仕上げとして戦う施設だと聞かされて、気分は最悪だった。
バトルタワーで初めてバトルした相手のポケモンがLv100なのは当然だ。だって参加条件が『Lv100のポケモン3体を所持していること』なんだから。
そもそもポケモン世界のLvとは、簡単に言ってしまえば潜在能力を発現できるパーセンテージのことだ。
最大が100%だから、上限がLv100になっているのである。
そしてLv100のポケモンは、バトル中に潜在能力をすべて使うことができるように訓練されたか、もしくは天性の才能を持ったものだけ。
当然、ただ生活しているだけではLv100にポケモンを育てることなんてできないのだ。
人間で例えると分かりやすいだろうか?
人間の脳は、身体を破壊しないため無意識にリミッターを掛けており、命の危機が迫ると火事場の馬鹿力のようにリミッターが解除される。
それを意図的に出せるパーセンテージが、ポケモン世界のLvのことだ。
そんなことやっても大丈夫なのか? と思うかもしれないが、人間がスポーツや格闘技などで掛け声をして、少しだけリミッターを外しているのと変わらない。
まあ、人間が100%を出して身体がボロボロになるのに対して、ポケモンは疲れるだけという違いはあるが、それはポケモンと人間の差だろう。
もしくは、この世界の人間は100%の力を出しても疲れるだけなのかもしれない。アニメのサトシくんが、スーパーマサラ人とか言われることも、この辺が関係しているのかも?
というより、ポケモン世界は『エスパー』や『ゴースト』ポケモンが居るから、人間の異能者がいても、大きく騒がれることがない。それこそ、ポケモン図鑑には元人間のポケモンなんてのも居る。
世界の法則が違うのに、同じ人間と考えること自体が間違っているのかも……。
―――って、マズイッ
この考えは本当にしちゃダメッ!
周りにいる人間が、人のカタチをした別のナニカと思ったら、本当に俺は戻れなくなるッ!
ポケモンは人間の隣人ッ!
人間とポケモンは助け合って生きているッ!
ポケモンは不思議な生き物で、そんな生き物がいるから人間も少し変わっているだけッ!
世界中のみんなは友達ッ! 仲間はずれなんて誰もいないッ!
ただ、俺の頭が少しおかしいだけッ!
だから修正ッ!
俺はお気楽で、頭の中がカラッポな変な奴ッ!
ヘラヘラ、ニコニコ、笑って笑って……
子供は元気が一番ッ!
子どもは難しいことなんて分からないッ!
コドモは楽しいことバッカリして、つらいことなんて後回しッ!
ほらッ! 空だって、こんなに晴れているんだッ!
こんなに天気がいい日なら、こどもは元気に外で遊んでいればいいのッ!
ポケモンは、かわいいでしょ? かっこいいでしょ? 面白いでしょ?
良い人だって沢山いるでしょ?
こんな優しい世界に、怖がることなんて何もないよね?
大丈夫大丈夫。俺は、ぜーんぜん大丈夫。だから今までみたいに明るく明るく……
――――――――――――――
「なんの話だっけ?」
「……それはこちらのセリフなんだけど?」
なにやらアリーナキャプテンのコゴミさんが、少し苛立ったような声音で返事をしてくれた。
……まあ、これからバトルするっていうのに、対戦相手がうわの空だったら腹も立つか。
「以前でさえ憂鬱としていたのに、時間を置いたら絶望した状態で戻ってくるとか、これだったら前に会った時にバトルした方がマシだったよ……」
あぁ、そっち?
あの時は、本来ありえないポケモンを所持していることを再認識していただけだから、こっちが俺のデフォルトなんだよ?
でも絶望しているとか酷くない? 俺、元気だし。
「あなた、ここが『闘志』を試す施設だってこと分かってる? 本気でやる以上、生半可な覚悟じゃ死ぬわよ?」
「……またアレをするんですか? ダツラさん、怒ってましたよ?」
いや、本当に……。
なんとか パルキア を倒して金のシンボルを手に入れられたけど、やっぱりシンオウの伝説は能力が純粋に強すぎる。
空間を捻じ曲げて、こっちの攻撃は届かないのに、向こうの攻撃は回避も防御もできないんだから。
というか『あくうせつだん』止めて? 空間ごとポケモンを切断するとか、当たったら即死なんだけど? あと攻撃の延長線上に俺も居るんだけど?
お願いだからポケモンバトルして? 伝説のポケモンとリアルファイトとか無理だから。
「私はいつも全力でやってるだけよ。だからこそ、半端な戦いじゃ許さないッ! ほらッ、審判! さっさと始めなさいッ!」
「勝抜チームバトル! 始め―――!」
コゴミさんの催促により審判が号令をかける。
それに応じて、お互いに最初のポケモンを繰り出した。
俺はいつも通りにラティアスを、コゴミさんは ケルディオ(かくごのすがた)を繰り出した。
特に驚くことではない。レッドさんが対戦したのを見ているのもあるけど、手加減していたコゴミさんが使ってきていたのは、コバルオン、テラキオン、ビリジオンの3闘だったのだ。
戦い方もとてもシンプルで、こちらのポケモンを『あく』タイプとしてバトルするだけ。特性である『せいぎのこころ』で『こうげき』を上昇させながら、『せいなるつるぎ』で攻撃してくる。それは、このケルディオも同じだ。
単純、故に対策らしい方法もなく純粋に強い。
だが、問題はこのあとのポケモンだ。
レッドさんと戦った時と同じだとすれば、残りのポケモンは
――― ザシアン と レジギガス だ。
おい、ガラルの英雄。お前ここに居ていいのか? なんてツッコミは今更か……。
この前に会ったガラル主人公も持っているらしいし、おそらく別個体なのだろう。
ザシアンの戦い方も単純だ。こちらをダイマックスしたポケモンとして扱って、『きょじゅうざん』で攻撃してくるだけ。フォルムが『けんのおう』の状態になっているけど、その『くちたけん』はどこから取ってきたのだろうか?
バトルアリーナは、3体のポケモンによる勝ち抜き戦であり、ポケモンの交代が禁止なだけのシンプルな施設というだけあって、このような戦い方になっているんだろう。
もっとも、最後のレジギガスが一番の問題だが……。
コゴミさんのレジギガスは、攻撃技を1つしか持っていない。だが、その攻撃技というのが
―――Zワザなのだ。
第7世代は分からないとは言ったけど、Zワザの存在自体はしっている。確かネクロズマが関係しているはずだけど、問題はそちらではなくて超高威力の技であるということ。
本来の技は『からげんき』らしいが、これは状態異常の時に威力が2倍になる特性を使えるようにするためとか言っていて、その見た目は『ノーマルZ』の『ウルトラダッシュアタック』ではなく、レジギガスが黄金に輝く巨人と化して殴ってくる。
そう。まんまカプ神たちが使ってくる『ガーディアン・デ・アローラ』なのだ。
なんで使えるの? レジギガスが神殿にいることが守護者として判断されて、ガーディアン繋がりでできるようになったってこと? あれは確か封印だった気がするんだけど?
それに対してレッドさんは「そんな技があるんだ」と言わんばかりに、コゴミさんでも使っている『Zリング』と『Zクリスタル』無しに、ピカチュウに『ひっさつのピカチュート』を使わせて迎え撃ったのだ。
もっとも、レッドさんに投げられて雲の上から攻撃してきたピカチュウは、在り得ないほどの『でんき』を身に纏って、さながら雷の太陽が流星となっているようだったが。
そんな2人のZワザが激突すれば、施設だって壊れるよ(ピカチュウが出した被害が9.5割)
その時は ラティアス に乗って離れたことで難を逃れたが、Zワザを使って動けなかったコゴミさんはどうやって生還したのだろうか?
さて、そろそろいつもの現実逃避もやめて、目の前の戦いに集中しますか……。
ちなみにレッドさんは、Zワザを使っても不動です。