バトルフロンティアが廃人の施設とか言った奴出てこい 作:麦わらぼうし
バトルピラミッドに関しては、何話かに分けるけどね。
バトルフロンティアにおいて、フロンティアブレーンとは各施設の頂点であり、どのブレーンもトレーナーとしての格は同じである。
全員が世界最高峰のトレーナーの1人であり、その気になれば四天王やチャンピオンを目指すことも十二分に可能な存在だ。
だが、ポケモンバトルと言うのは勝ち負けがハッキリと決まる世界であり、それはフロンティアブレーンも同じ。
矛盾という言葉がある。
これはかつて商人が矛と盾を売る際に、矛を「どんな盾であっても貫く矛」と、盾を「どんな矛であっても貫かない盾」という意味で宣伝して、その矛でこの盾を突くとどうなるのか? という質問に答えることができなかったことから、つじつまが合わないことを指すようになった言葉だ。
まぁ、教えられただけで実際はどうだったのかは知らないが……。
つまり何が言いたいのかというと、ポケモントレーナーという勝ち負けがある世界で、同格のトレーナー同士が実際に戦うと、どちらが勝つのか? そんな疑問を覚える者は少なくないのだ。
では、格が同じとされているフロンティアブレーンが戦うとどうなるのか?
という疑問が浮かぶのは、ごく自然な流れだろう。
このバトルフロンティアという場所は巨大な人工島であり、この土地においての最強のフロンティアブレーンは誰か? とやってきたトレーナーが聞くことは珍しいことではない。
それに答えられないことが、トレーナーをスカウトしているエニシダさんに、なんとも歯切れの悪さを感じさせた。
だから、定期的にフロンティアブレーンをバトルさせて、その戦績を記録することにしたのだ。そして、その結果。
まぁ、運などの要素によって勝ったり、負けたり、引き分けたりする。
だが、その戦績が同じという訳ではなかった。
そもそもバトルフロンティアのバトル形式は施設ごとに違うので、公平なバトルだとスタンダードなシングルバトルを主とするフロンティアブレーンの勝ち数が多くなる。
つまり、フロンティアブレーン同士がバトルすると、タワータイクーンであるリラさんが最強である。
という訳ではない。
純粋に3体のシングルバトルをする施設は2つ、バトルタワーと俺が今いる場所であるバトルピラミッドだ。
その為か、戦績だけを見るとタワータイクーンであるリラさんと、ピラミッドキングであるジンダイさんは、フロンティアブレーンの中でも1つ格が上と思っている人も多いらしい。
もっとも、バトルしている本人たちが同格だと言っているので実際には同格なのだろうが。
バトルピラミッドは、どちらかと言うとピラミッドを攻略するのに重きを置いているらしいので、野生ポケモンとバトルする以外は中間地点と頂上で待っているジンダイさんとバトルするだけだ。
だが、攻略難度で言ってしまえば、おそらくこのバトルピラミッドが一番難しいだろう。
なんでか、って?
それは、俺が先程まで通ってきた道を見れば理解できるだろう……。
バトルピラミッドはバトルパレスと同じように空間拡張が行われており、その中身はとんでもなく巨大な迷路だ。その中で野生のポケモンが跋扈し、己が縄張りを主張するように徘徊している。
ここを攻略するには、彼らを倒すか、やり過ごすかして次の階層へと続く階段を探していかなければならない。
そこだけ見れば、野生ポケモンが住み着いた洞窟と大して変わらないように思えるかもしれないが、その野生ポケモンたちが問題だった。
何体見かけたのか分からなくなるほどの、無数のファイヤー、サンダー、フリーザー、エンテイ、ライコウ、スイクン、ラティアス、ラティオス、レジロック、レジアイス、レジスチル、レジエレキ、レジドラゴ、レジギガス、ヒードラン、クレセリア、アグノム、ユクシー、エムリット、トルネロス、ボルトロス、ランドロス、コバルオン、ビリジオン、テラキオン、カプ・コケコ、カプ・テテフ、カプ・レヒレ、カプ・ブルル、ウーラオス、ブリザポス、レイスポスなどの準伝説たち。
もう一度言うが、これら全部を倒すか、やり過ごすかしなければ進むことができないのだ。ちなみに回復アイテムを持ち込むことはできないし、迷路のどこかに落ちていることもない。
もはや伝説の言葉が、希少性を失っているような光景だったが、その原因は先ほどやり過ごしたポケモンを見て理解できた。
―――フーパ
おそらく、あのポケモンが様々な場所から野生の伝説のポケモンを連れてきていたのだろう。
だってあのフーパ。このバトルピラミッドの職員の人が付けていた腕章と同じものを着けていたんだから。
つまり、あのフーパは運営スタッフである可能性大。もしかしたらジンダイさんのポケモンかもしれない。
かもしれないというのは、実はここに来るまでにジンダイさんの情報を集めようとしたのに、手持ちのポケモンが1体も分からなかったからだ。
どうしてジンダイさんについての情報がほとんど無いのかと思ったけど、おそらくここを突破するのが難しすぎてジンダイさん本人に辿り着ける人が少ないんだろう。
というか、洞窟とは違って視界は明るいけど密閉された空間の迷路なのだ。歩いていたら十字路で準伝説とバッタリ遭遇するとか勘弁して……。
伝説のポケモンの攻撃の所為で、遺跡が侵入者を撃退する仕掛けよりも、はるかに危険で命懸けだ。なんで今まで死人が出てないのか不思議でならない……。
そんな曲がり角でゴッツンしたら「こんにちは死ね!」と言わんばかりの超危険地帯が、このバトルピラミッドだ。
どの伝説と遭遇しても危険だが、特にレジ系は無機質な見た目の所為で、もはやホラーである。
あれだ。殺人ロボットが自身を探して徘徊しているところにバッタリ出会ってしまった感じかな?
実際に、レジスチルに触れるほど近くで鉢合わせした実体験だから説得力はあると思う。
そうだね、正直に言おう。
出会って腰抜かして動けなくなりました……。
そんな俺の状態など関係ないと言うばかりに、出会ったレジスチルが『はかいこうせん』を撃つための溜めしている光景を見たときは、本当に死を覚悟しました。
ただ動けなかった俺の代わりに ラティアス がサイコパワーでボールから出てきてくれたおかげて九死に一生を得たので、今のところ危険はありません。
「だから離してくれない? ウツロイド」
「べのめのん!」
あっ、駄目ですか、そうですか……。
現在、俺は3体目の手持ちであるウツロイドに触手で両手両足を巻き取られて、全身を包まれた状態で浮遊している。
この子は俺が怖がっていたり不安だった時に、いつもこうして抱きしめてくれる優しい子だ。この時ばかりは、身体が小さくて良かったと思う。
このバトルピラミッドでは、ポケモンを連れ歩くことが認められているので、このようにポケモンに運んでもらうことは問題ない。できるだけ体力を温存させて進める必要があるので、やる人は少ないが。
そもそも俺は野生ポケモンはやり過ごす方針で進んでいたので、いざという時に出せるようにしておいて静かに移動していたのだ。だけど、野生の準伝説に触れるほど近くで遭遇したら、想像以上に怖くて動けなくなってしまったので、この方法を選んだのは失敗だった。
無理に1人で進むより、こうやって護衛してもらいながら進んだ方が良いのかもしれない。
準伝説の群れになんて勝てる訳ないので、とにかくやり過ごす。先ほどまで頭の中で作っていた迷路の地図を何度も修正しながら、進む方向を指示して先に進んでいく。
そしてどれくらい時間が経ったのか、閉鎖空間なので時間が分からないけど、ようやく中間地点に繋がる階段の前にまで辿り着くことができた。
ジンダイさんは中間地点と頂上に居ることになっているが、実際には同じ場所にいるらしい。空間が拡張されている時点で今更かもしれないが、中間地点と頂上への階段が同じ場所に繋がっているのだ。つまり、今回ジンダイさんを倒したとしたら、まったく別の迷路を進まなくてはならない。断言しよう、絶対もっと酷くなってる……。
そう考えるも、いつまでも足を止めていては意味がないので、階段を上っていく。
ウツロイドに抱えられたまま……。
「……いや、ウツロイドさん? 流石にこの姿を見られるのは恥ずかしいから降ろしてほしいんだけど」
「……………」
「ねぇ? なんで無言なの? なんで無言で手足に巻き付いてる触手に力を込めるの? いや、痛くはないけどさ……」
「……………」
そんな俺の言葉を聞いても、ウツロイドは特に反応を示すことなく階段を上っていく。
もしかして、階段で奇襲されるかもしれないと思っているのだろうか? あり得なくはないので、バトルフィールドに着くまでは、このまま大人しくしていよう。
数分も経たないうちに、広い空間に出る。
そして目の前には腕を組んでいるジンダイさんが、こちらに背中を向けて立っていた。
俺が来たことに気づいたらしく、こちらに振り向くと口を開く。
「若き冒険者よ。冒険とは良いも――ブッ!?」
そして目を開いて俺の姿を見ると、ジンダイさんは噴き出した。
……うん、まぁ、はぃ。
今の俺の状態を考えたら滑稽の極みだし、笑われてもしかたないだろう。
とりあえず奇襲の危険は無さそうなので、いい加減にウツロイドに頼んで降ろしてもらう。こんどはちゃんと下ろしてもらえた。久しぶりの地面の感触に、少しだけ安心。
「あー。その子は、君のポケモンか?」
「? はい、そうですけど」
なんかジンダイさんがウツロイドを見ながら、そんなこと聞いてきた。
その視線には疑惑や警戒もあるが、それ以上にウツロイドを危険視しているように見える。
……そういえば、ウツロイドって他の生命体に神経毒を注入して寄生するんだった。UBの中でも危険度はかなり高い分類だということを忘れていたよ。
でも、ウツロイドを危険視しているってことは、もしかしてジンダイさんはウツロイドを知っているのだろうか?
まぁ、冒険が好きだって聞くし、こんな伝説のポケモンが複数いるような世界だったら、どこかで出会っていても変ではないけど。
「そうか、ならばいい。それは君たちなりのスキンシップなのだろう」
「そういう訳ではありませんが、珍しいことでもないです」
ラティアスもそうだけど、俺が旅をしていた時に無茶をすると、ウツロイドに手足を拘束されてベッドに寝かされることが多かった。ただ、食事の時ぐらいは拘束を解いて欲しかったけど。赤ちゃんじゃないんだから、口に無理矢理食べ物突っ込むのは止めて……。
「さて、改めて自己紹介しよう。私はジンダイ! ここの責任者であるピラミッドキングだが、皆には隊長と呼ばれているぞ! さあ、君の熱い勇気をぶつけてきたまえ!」
そう言ってジンダイさんはボールを投げてくる。
さて、事前に情報を集めることはできなかったが、ジンダイさんのポケモンは何だろうか?
アニメやゲームで使っているレジロック、レジアイス、レジスチルか、第3世代以降に追加された新レジたちか、ゲームでの金シンボル戦で使ってきた3鳥か、変化球でボルケニオンとか? 確かゲームの方で関係があったとか聞いた気がする、詳しく話知らないけど……。
まぁ、ここまでフロンティアブレーンがいろんな伝説や幻のポケモンを使って来たし、アルセウス以外ならどんなポケモンが出てきても驚くことは無いと思う。
そんなことを呆然と考えながら、ジンダイさんのボールが開き、中からポケモンが姿を現した。
それは黄金のような立派な たてがみ を纏わせた黒とオレンジ色の巨大な獅子のような四足獣のポケモンだった。
「久しぶりのチャレンジャーだ。頼むぞ、ウインディ!」
「ガウ!」
「………………………………………は?」
彼が出したポケモンを見て、そんな声を出してしまった俺は、悪くないと思う……。
おそらく一番ヤバい施設です。
それと誤字報告ありがとうございます!