【悲報】ワイ、転生したら百合の間に挟まる仮面ライダーだった【ゆるして】   作:イナバの書き置き

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今年最後の更新になります。

沢山の評価、お気に入り登録、感想などありがとうございます。


「お前を止められるのはただ一人」

550:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

【朗報】結梨ちゃんの捕縛命令、撤回される

 

551:ご機嫌よう名無し様 ID:YbYUKlzaE

 やったぜ

 

552:ご機嫌よう名無し様 ID:JuGbxp8tB

 百合ヶ丘女学院大勝利!希望の未来へレディ・ゴーッ!!

 

553:ご機嫌よう名無し様 ID:hHvXiQmJx

 気になり過ぎて夜も眠れんかったけど良かった

 

554:ご機嫌よう名無し様 ID:3UtAHEEVe

 大変喜ばしい事だけど一度出した命令をこんなすぐ撤回するとか政府に主体性無さすぎない……?

 

555:ご機嫌よう名無し様 ID:PHmhwf1fK

 そもそもこんなクソみたいな命令出す方が問題だからセーフ

 

556:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 >>554

 百由様と聖人髭親爺が「結梨ちゃんがヒュージではない」証拠の物量で完全論破した挙げ句に煽り倒したらしい

 政府の人顔真っ赤だって

 〔添付:とてもイイ笑顔でピースしている百由と真顔の咬月のツーショット写真〕

 

557:ご機嫌よう名無し様 ID:qd6g+xopv

 草

 

558:ご機嫌よう名無し様 ID:4S82b7Zje

 凄ェ!流石百由様ァ!

 

559:ご機嫌よう名無し様 ID:c/RWaIdv1

 百由様ニッコニコやんけ

 

560:ご機嫌よう名無し様 ID:G2P2vPwjV

 仮にも為政者を相手にして煽るとか相当度胸ありますね……

 

561:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 つー訳で今一柳隊の皆が大磯辺りにいるらしい結梨ちゃんと梨璃ちゃんを迎えに行ってる

 

562:ご機嫌よう名無し様 ID:nRi8Rfs/W

 想像の3倍位地元なんだが?

 

563:ご機嫌よう名無し様 ID:kZvHG3tgE

 よし、これなら枕を高くして寝れるな!

 

564:ご機嫌よう名無し様 ID:0wO8AITcy

 いやぁ良かった(率直な感想)

 

565:ご機嫌よう名無し様 ID:1ZOhC8DfZ

 >>563

 お前この時間から二度寝かよ

 

566:ご機嫌よう名無し様 ID:/Vtc6movk

 ……で、イッチは?

 

567:ご機嫌よう名無し様 ID:tKyjwKpMU

 そう言えばそうだな

 イッチの処遇はどうなったんや

 

568:ご機嫌よう名無し様 ID:gz5rK3+HV

 ここまでの話し方からするとダメそうだが……

 

569:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 >>167

 んまぁ、実験されるのは確定っす

 

570:ご機嫌よう名無し様 ID:HH9RNlsVe

 そっかぁ……

 

571:ご機嫌よう名無し様 ID:Zh5fcty9W

 5ヶ月監禁の件といいイッチ囚われすぎ問題

 

572:ご機嫌よう名無し様 ID:aRKMLofcZ

 まぁ結梨ちゃんが助かっただけでも儲け物だししゃーない

 

573:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 でも百合ヶ丘からは出ていかなくても良いっぽいゾ!

 

574:ご機嫌よう名無し様 ID:tPWFvOeQy

 ?????

 

575:ご機嫌よう名無し様 ID:KwnbPKXKC

 どういう事なの……(レ)

 

576:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 と言うのもまず

 ①結梨ちゃんはゲヘナとグランギニョル社の共同研究による産物らしい

 

577:ご機嫌よう名無し様 ID:LMf/IggYz

 グランギニョルって言うと・J・の親が経営してる会社だっけ?

 

578:ご機嫌よう名無し様 ID:Bd/ZACb6W

 このご時世に見た目重視のチャーム作ってる面白企業って聞いてたけど

 そんな事してたんか

 

579:ご機嫌よう名無し様 ID:WFpCJ6xaq

 ヌーベルさんも大変な親を持ったな……

 

580:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 >>577

 せや

 ②んでグランギニョルの社長(ヌーベルのパッパ)がヌーベルに説教された結果相当反省したっぽくて百由様の論破を手伝ってくれたりしたんだが

 贖罪の一環でワイの身柄を引き受けてくれるらしい

 

581:ご機嫌よう名無し様 ID:kCHJHQcsD

 草草の草

 

582:ご機嫌よう名無し様 ID:+8IHcKLJd

 たった15歳の小娘に言い負かされる企業経営者の屑

 

583:ご機嫌よう名無し様 ID:2gNb9AuQ4

 社長さん娘に説教されるとか恥ずかしくないのかよ

 

584:ご機嫌よう名無し様 ID:7juQZaCxz

 てかヌーベルさんただの面白レズじゃなかったんだな……

 

585:ご機嫌よう名無し様 ID:oPllvm2oy

 >>584

 ホントな

 もうイッチはヌーベルさんに足向けて寝れんやろ

 

586:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 ヌーベル様々ですわ

 ③つー訳でグランギニョルの研究者がこっち来て研究成果をゲヘナに提出する形になりました

 勿論リリィの監視が付くからヘンな事は出来ないゾ!

 

587:ご機嫌よう名無し様 ID:fFVyYINQK

 おぉー

 

588:ご機嫌よう名無し様 ID:dJMQbj6Tv

 まま、ええんとちゃう?

 

589:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 何か結梨ちゃんに比べて反応薄すぎません?

 もっとないの?

 

590:ご機嫌よう名無し様 ID:QatsbI0bR

 まぁイッチだし……

 

591:ご機嫌よう名無し様 ID:suRydRZsB

 実際そこまで心配してなかった

 

592:ご機嫌よう名無し様 ID:FiiYDnODv

 百合の間に挟まる男とリリィは、どちらが「上」かな?

 

593:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 >>592

 ……リリィ?

 

594:ご機嫌よう名無し様 ID:IK8ogr7BN

 つまりそう言う事や

 

595:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 そんなぁ────あ、結梨ちゃん達見つかったって

 〔添付:一柳隊全員が結梨を囲んで笑っている写真〕

 

596:ご機嫌よう名無し様 ID:yfCMCzE0N

 あぁ^~

 

597:ご機嫌よう名無し様 ID:sF2qGizdJ

 美少女の笑顔が心地ええんじゃ

 

598:ご機嫌よう名無し様 ID:Xz+ZQmTFJ

 成仏するわこんなん見せられたら

 

599:ご機嫌よう名無し様 ID:dHaTF2KL6

 良かったな結梨ちゃん……

 

600:ご機嫌よう名無し様 ID:BNupJWBbh

 >>598

 幽霊ニキはこんな所見てないではよ成仏して……

 

601:ご機嫌よう名無し様 ID:bzsLPkSjU

 二水ちゃんもどうにか持ち直したみたいやな

 

602:ご機嫌よう名無し様 ID:YhU+XMcn7

 でも目元真っ赤だからめっちゃ泣いてるやろ多分

 イッチは反省しろよ

 

603:ご機嫌よう名無し様 ID:SON58dOg/

 ホントにな

 あんなん一生物のトラウマになるやろ

 

604:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 はい……反省します……

 

605:ご機嫌よう名無し様 ID:rau8m/AeI

 まぁ何はともあれめでたしめでたしだ

 

606:ご機嫌よう名無し様 ID:fUpZmzcMB

 や さ し い せ か い

 

607:ご機嫌よう名無し様 ID:BDLA3eViM

 や さ い せ い か つ

 

608:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 >>605

 そうね

 ワイも拘束解かれたし百合ヶ丘の校門まで出迎えに────

 

609:ご機嫌よう名無し様 ID:Aq2fqPQsj

 イッチ?

 

610:ご機嫌よう名無し様 ID:7NfwhiRAq

 どうした

 

611:ご機嫌よう名無し様 ID:owoM0jYB3

 また何かあったのかよ

 

612:ご機嫌よう名無し様 ID:QJxVssiXh

 コイツいつも横槍入れられてんな

 

613:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 これは──これはアカンかもしれん

 

614:ご機嫌よう名無し様 ID:bPGKx3M/g

 何よ

 

615:ご機嫌よう名無し様 ID:b2DMYCDql

 ゲヘナが実力行使してきたとか?

 

616:ご機嫌よう名無し様 ID:oKsyxJDSL

 ハッピーエンドぶち壊しですか……

 

617:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 何かクソデカいヒュージがクソ遠くからクソみたいな威力のビーム撃ってきてる

 〔添付:あまりの熱量に引き裂かれた雲の写真〕

 

618:ご機嫌よう名無し様 ID:ap9EVzh7R

 は?

 

619:ご機嫌よう名無し様 ID:A2cXFzaty

 ヒュージくんさぁ……

 

620:ご機嫌よう名無し様 ID:64SlJH81H

 何でこのタイミングでヒュージなんだよ

 

621:ご機嫌よう名無し様 ID:k7nTQ3ZmY

 折角良い感じに終われそうだったのに何してくれんだ

 

622:ご機嫌よう名無し様 ID:BxPI7tPa6

 >>620

 今百合ヶ丘が手薄だからじゃない?

 まぁでもどっかのレギオンが展開してるだろうしすぐ終わるな(確信)

 

623:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 >>622

 いや無理だ

 相手が遠すぎて反撃出来ない

 〔添付:かなり小さく写った歪なオブジェ状のヒュージの写真〕

 

624:ご機嫌よう名無し様 ID:XX2Vv3ifR

 え、あれが撃ってきてんの

 

625:ご機嫌よう名無し様 ID:VRAqRODKi

 結構遠いな

 10kmとか離れてるんじゃない

 

626:ご機嫌よう名無し様 ID:9DJPSN7cD

(アカン)

 

627:ご機嫌よう名無し様 ID:4/ACrrQD4

 今から避難して間に合うんか?

 

628:ご機嫌よう名無し様 ID:uakYs6f4o

 イッチも実況してる場合じゃないだろ

 

629:ご機嫌よう名無し様 ID:UeQ334itC

 はよ逃げろ

 死ぬぞ

 

630:ご機嫌よう名無し様 ID:8pVc2UQ2H

 折角転生したのにビームで焼かれて死ぬとか嫌やろ

 

631:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 ……

 

632:ご機嫌よう名無し様 ID:rkcug6EM1

 イッチ?

 

633:ご機嫌よう名無し様 ID:sdR/6ugjr

 待て

 イッチまさか

 

634:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 そろそろ、覚悟を決める時かな

 

635:ご機嫌よう名無し様 ID:HxOvyqQy+

 やっぱり……

 

636:ご機嫌よう名無し様 ID:Y0EjeuxWc

 十中八九死ぬと思うが、ええんか?

 

637:ご機嫌よう名無し様 ID:Yde68qNS1

 命あっての物種だと俺は思うが

 

638:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 んまぁ、そうなんだけどさ

 何かこう……此処で百合ヶ丘を見捨てるのは違うじゃん

 

639:ご機嫌よう名無し様 ID:JZjuiyTfi

 確かにな

 

640:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 そりゃ楽しい事ばっかりじゃなかったけど皆優しくしてくれたし、ご飯美味いし、全然悪くなかった

 何より百合ヶ丘は二水ちゃんの学校だしな

 

641:ご機嫌よう名無し様 ID:ucIXKVTpa

 イッチ……

 

642:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 だから、やるなら今かなと

 

643:ご機嫌よう名無し様 ID:Q+aD1YH4C

 ……本当にそれでいいんだな?

 後悔しないな?

 まだ逃げられるし、そうしたって誰も責めないぞ?

 

644:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 良い

 逃げない

 

645:ご機嫌よう名無し様 ID:Q+aD1YH4C

 分かった

 ならサクっと倒してこい

 

646:ご機嫌よう名無し様 ID:KIVt1Jazl

 よう言うた!それでこそ漢や!

 

647:ご機嫌よう名無し様 ID:xik98vLmd

 さっさと片付けて皆で結梨ちゃん帰還祝いのラムネパーティーするんだよ、あくしろよ

 

648:ご機嫌よう名無し様 ID:DRhULhK4M

 寧ろこれで負けたら一生転生者の晒し者にしてやるから覚悟の準備をしておいて下さい!

 

649:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 あーい

 んじゃ行ってくる

 もしもの時はよろしく頼むわ

 

650:ご機嫌よう名無し様 ID:Diaz5vtZB

 縁起でもない事言ってんじゃねぇよバァカ!

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 この時、この瞬間──誰が其処にいても結果は変わらなかっただろう。

 百合ヶ丘の最高戦力(LGアールヴヘイム)であっても、ガーデン防衛特務レギオン(LGシュヴェルトライテ)であっても、新人多めの個性派レギオン(一柳隊)でも、何も変えられなかった筈だ。

 

 

 

 故に、今この場────即ち旧鎌倉市街に展開していたLGレギンレイヴ(水夕会)でも、何も変わらない。

 突如沖合に出現し、此方の攻撃が及ばない場所から一方的に攻撃を加えるギガント級ヒュージに対して人間は等しく無力であった。

 

 彼我の距離は、およそ15km。

 本来的ならこの間合いは、ミサイルによる波状攻撃で小型ヒュージを撃破し、ラージ級以降の大型ヒュージを牽制するのがセオリーである。

 一般的な戦車の有効射程距離ですら3000m程度しかないのだから、個人が携行する武器であるチャームの射程圏内である筈もない。

 

 では、リリィの切り札であるノインヴェルト戦術は有効なのか──と聞かれれば、それもまた不適切だ。

 確かにノインヴェルト戦術の火力は絶大だ。

()()()()()()()()あらゆる障壁、装甲を無効化しギガント級だろうがアルトラ級だろうが十分に撃破可能だろう。

 だが、その為には9人がマギスフィアの「パス回し」をする必要があるのだ。

 当然「パス回し」の最中は隙を晒す事になり、手の空いているメンバーがヒュージに牽制を行う必要がある。

 ()()()()()()()

 海上から一方的に砲撃してくる相手に対して、悠長にマギスフィアを回している余裕など存在しないのだ。

 

 そして仮に「パス回し」が成功したとしても、再び距離の問題が付き纏う。

 チャームにかかる負荷から「2度目」が存在しないノインヴェルト戦術を()()迎撃されたらどうなるのか。

 ヒュージの砲撃間隔が分からない以上、発射したマギスフィアを撃ち落とされる可能性は極めて高い。

 ならば必中必殺の距離まで相手が接近するのを待つか────それも恐らくは無理だろう。

 ひっくり返した漏斗のような形状をしたそのヒュージは、ヒュージネストの付近から殆ど動く気配を見せない。

 砲撃精度が高くないのなら、安全な場所から当たるまで撃ち続ければ良い──そんな悪辣な意図が透けて見えた。

 

「くっ……!」

 

 つまり、今この時点で打てる手は誰にも何にもないのだ。

 水夕会の前衛(AZ)を担う、六角汐里(ろっかくしおり)もそうして歯噛みするしかないリリィの1人だった。

 

「打つ手無し、ですか……!?」

 

 今、彼女を含む水夕会の隊員は各々手頃な廃墟の裏に隠れる事を余儀無くされていた。

 無論、崩れかかったり放置されたりした建造物の1つや2つで砲撃を防げはしない。

 万が一直撃すれば、彼女達は跡形もなく蒸発するだろう。

 だが、砲撃の余波で撒き散らされる建物の破片や土煙からその身を守るには廃墟程度でも事足りる。

 そう言う訳で、歴戦の勇士達はノインヴェルト戦術の間合いまでヒュージが接近してくるのをただひたすらに待ち続けていた。

 いたのだが──────

 

「あれはまさか、ノインヴェルト戦術……?」

 

 汐里は、たった1度の砲撃でその正体を看破していた。

 そう、ギガント級ヒュージの砲撃は紛れもなくノインヴェルト戦術だ。

 周囲に浮遊させた9つの端末をリリィに見立て、ヒュージネストから供給されるほぼ無尽蔵のマギを光線として照射しているのである。

 

 マギによって変異した生物であり、マギを自ら操る事は無い筈のヒュージが何故ノインヴェルト戦術を使用出来るのか。

 そもそも何故このタイミングで──よりにもよって殆どのリリィが学院を離れた時にヒュージが現れたのか、汐里は知らない。

 知らないが、これが絶望的な状況なのは知っている。

 何しろ、1発だ。

 1発当たりさえすれば、それで百合ヶ丘は陥落する。

 圧倒的なエネルギーが校舎を焼き尽くし、非戦闘員は炎に巻かれて悉く灰へと変わるだろう。

 もちろん学院にも防御設備はあるが、大気を引き裂くレベルの火力に対して一体何の効果を発揮すると言うのか。

 

 ──それはほんの10年程前までの焼き直しだ。

 殆ど一方的に敗北を重ね、徐々に狭まりつつある生存圏に希望を託す「あの頃」が今、少女達の眼前で再現されようとしていた。

 

「また、失わなければいけないんですか……?」

 

 どうしようもない現実に汐里は呻いた。

 彼女もまた、この世界に腐る程いるヒュージとの戦いで家族を失った人間の一人なのだ。

 両親と妹を亡くし、自らも左手の感覚を喪失しそれでもなお戦い続けたと言うのに────これではあんまりだ。

 戦って死ぬのならまだしも、それすら許されない。

 ただひたすらに、一方的な暴虐によって百合ヶ丘女学院は打ちのめされようとしているのだ。

 悔しくて、哀しくて堪らなかった。

 

 

 

 

 

「────え?」

 

 そんな彼女の足元に、黒い沼が広がっていた。

 風にさざめく事もなく、ともすれば顔が映ってしまいそうな程に凪いだ水面が、少女達()()避けて大地を浸食しているのだ。

 そして────

 

「アルト、くん?」

 

 困惑しながら顔を上げた汐里の丁度真正面に「彼」はいた。

 目から、鼻から、口から、耳から、爪の間から、全身の至る所から鮮血を吹き溢しながら、それでも力強い足取りで二川アルトは前進していた。

 今や殆ど赤い雑巾と化した少年の瞳が見据えるのは、半ば朽ちた廃墟でなければリリィ達でもない。

 

「────守る」

「え?」

「百合ヶ丘は、絶対に守る」

 

 未だ海上で此方を嘲笑うヒュージだけを捉え、光を喪った目で譫言のように少年が呟く。

 最早、少年には視力を維持する為の血液すら残されていないのだ。

 

「────っ、あ」

「それは……っ、百由様の所にあるんじゃ……!?」

 

 それだけではない。

 ゆっくりと掲げられた少年の右手には、真島百由のラボで厳重に保管されていた筈のアークワンプログライズキーが握られていた。

 少年はこのタイミングで百合ヶ丘の全リリィに秘匿していた「切り札」──即ちアークワンとベルトを共有しながらも()()()()()()()()()()()()()()()()アークゼロを用いて、変身アイテムを奪取したのである。

 しかし────

 

 

「ご、ぉ────!?」

「ひっ……!」

 

 べしゃり、と吐き出された血の塊が黒い沼に溶けていく。

 

 目的は達成したものの、少年が払った対価はあまりにも大きかった。

 そもそも「仮面ライダーゼロワン」に於いて、()()()アークゼロの変身者というモノは存在しなかった。

 アークゼロは、暴走した人工知能「アーク」が人型ロボット「ヒューマギア」を乗っ取るという極めて特異な方式で変身するのだ。

 それ故、このライダーには生命維持機構の類いは一切備えられていない。

 人間が変身する事を想定していないのだから「余計な機能」は不要、と言う話である。

 

 それでも二川アルトは変身した。

 我が身を顧みずに変身してしまったのである。

 その結果が()()だ。

 今の彼は、「何もかもを搾りきった後の残りカス」──そう表現するしかない有り様だった。

 

「ぁ、が────!」

 

 ただ立ち竦むリリィ達の前で、震える指がライズスターターに掛けられる。

 これだけの状態になっても、残りカスの戦意は全く衰えていないのだ。

 少年は僅かに残った命の残りカスすら燃やし尽くして、最後の使命を果たそうと────百合ヶ丘を守ろうとしていた。

 

『アークワン』

 

 ライズスターター(起動スイッチ)を押し込んだ事でロックが解除され、ライズキーブレード(接続用コネクタ)が展開される。

 それを虚ろな目で確認した少年は、真っ直ぐに──どこまでも真っ直ぐに、血に塗れた右腕を青空に向かって突き上げた。

 そして──────

 

 

 

 

 

「変身……!」

 

『シンギュライズ』

 

 ベルトにキーを叩き込んだ少年の姿が、悪意の沼に呑み込まれる。

 

『破壊』

 

 我に返ったリリィ達が慌てて飛び出すが──もう遅い。

 

『破滅』

 

 誰より速く動き出した汐里が、己のチャームを投げ捨てる──それでも遅い。

 

『絶望』

 

 手を伸ばす。

 ヒュージの事も、リリィとしての自分も忘れてただ「誰かが死ぬ」のを止める為に、必死になって手を伸ばす。

 

 

 

『滅亡せよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『コンクルージョン・ワン』

 

 そんな少女達の思いを踏みにじるかのように、()()()()()()アークワンが悪意の沼から浮上した。

 

 

 

■■■

 

 

 

「────」

 

 もう其処には、自分以外誰一人として立っていなかった。

 悪意の沼に触れてしまった少女達は押し並べて意識を刈り取られ、地面に倒れ伏している。

 だけど、決してそれを笑おうとは思わなかった。

 結局、己の身を顧みなかったのはリリィ達もまた同じ──ただそれだけの話なのだ。

 

「────」

 

 何とも無しに、空を見上げた。

 センサーから伝わる情報によれば、其処にあるのは真っ二つになった雲が漂っているのを除けば概ね綺麗な、清々しい青空だった。

 梅様だったら日向ぼっこに丁度良いとか言うんだろうな、と脈絡の無い思考が少年の脳裏を過るが──そんな場合ではない。

 

「────」

 

 洋上では無粋なギガント級ヒュージが二射目の準備を終えつつあるらしく、マギを充填された端末がチカチカと瞬くのをアークワンのセンサーは捉えている。

 本当はもう少し眺めていたかったが、どうもそうは問屋が卸さないらしい。

 

「────」

 

 少々の名残惜しさを覚えつつ、ヒュージが待ち構える海上へ飛翔しようとして────ふと、思い出す。

 

 ──そう言えば、仮面ライダーゼロワンにも決め台詞があるらしい

 

 確か、掲示板で誰かがそんな感じの事を言っていた気がするのだ。

 何故今更そんな事を思い出したのかは分からない。

 だけど最後の1回位やってみてもいいんじゃないのかな、と少年は心の中で呟いた。

 少々気恥ずかしくはあるが、その方がきっとカッコいい。

 

「お前を止められるのはただ一人────」

 

 そう、そうだ。

 確か甥っ子はこうしていた。

 僕らのヒーロー(飛電或人)は敵を前にしたら、こうやって宣言するのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺だ!」

 

 誰も聞いていないし、そうした所で何か意味がある訳でもない。

 だけど、誰かが背中を押してくれる──そんな気がした。




◯仮面ライダーアークワン/二川アルト
 この瞬間だけ、正真正銘「仮面ライダー」
 変身ポーズはシャイニングホッパー
 もう目も見えないので変身後はセンサーから取り込んだ情報を直接脳にぶちこむ事で視界を確保している

◯六角汐里
 今回初登場のアニメではちょくちょく出番がある人
 何なら主人公やれるんじゃない?って位過去が壮絶
 梨璃ちゃんや二水ちゃんのクラスメイトなのでアルトとは少しだけ話した事がある。
 実は変身が完了する直前のアークワンに触れていて…?

◯ギガント級ヒュージ
 ノインヴェルト戦術を学習した個体
 何ならBOUQUETで一番百合ヶ丘を窮地に追い込んだヒュージだと思う。
 アニメでは諸々の理由からかなりあっさり倒されていたが…?

正直に言って戦闘無しで考えたら誰との絡みが見たい?(あくまで参考である事をご了承下さい)

  • 二水
  • 結梨&梨璃&夢結
  • ぐろっぴ&百由様
  • 一葉
  • 恋花&瑶
  • 千香瑠&藍
  • 灯莉
  • ひめひめ&灯莉&紅巴
  • 叶星&高嶺
  • その他一柳隊メンバーなど
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