【悲報】ワイ、転生したら百合の間に挟まる仮面ライダーだった【ゆるして】   作:イナバの書き置き

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諸々の事情により死ぬほど更新が遅れました。
文章も後から直す可能性がございます。
大変申し訳ありません。


「>>■」/「Everybody jump」

30:ご機嫌よう名無し様 ID:5lcUfgGyj

 んで結局イッチは生きてんの?死んでんの?

 

31:荳?闊ャ霆「逕滓が諢 ID:?????????

 >>31

 死んでる寄りの生きてる

 多分だけど

 

32:ご機嫌よう名無し様 ID:sRibikaqD

 どっちだよ

 

33:ご機嫌よう名無し様 ID:6kXUu9YbB

 多分って何だよ……

 

34:ご機嫌よう名無し様 ID:xbl7GLJI7

 生きてるのか死んでるのかハッキリせんかい!

 

35:荳?闊ャ霆「逕滓が諢 ID:?????????

 いや何て言うかさ

 多分生きてはいるんだよ

 体の感覚はあるし

 

36:ご機嫌よう名無し様 ID:vJNbuA7zt

 じゃあ生きてるじゃん

 

37:荳?闊ャ霆「逕滓が諢 ID:?????????

 でも何も見えんし何も聞こえんし体動かんのは死んだも同然でしょ

 

38:ご機嫌よう名無し様 ID:MBzRP3dRe

 やっぱ死にかけなのね

 

39:ご機嫌よう名無し様 ID:3iwVXCX44

 まぁあんだけバカスカビーム撃たれまくってたら死んでてもおかしくはない

 

40:ご機嫌よう名無し様 ID:KrWGoZaFk

 フェイズトランセンデンスを信じて全速力かつノーガードで突っ込むのはカッコ良かったけどそのせいで初手からボロボロなのは素直に笑った

 

41:荳?闊ャ霆「逕滓が諢 ID:?????????

 んで

 唯一生きてる触覚が伝えるところによると俺は今水死体みたいな姿勢で海の中を漂っているっぽいんですわ

 兎に角すげぇ海流を感じる

 

42:ご機嫌よう名無し様 ID:ezy4ltiMb

 クラゲかな?

 

43:ご機嫌よう名無し様 ID:cyAcw28Jp

 申し訳ないけど海に遺体遺棄はNG

 

44:ご機嫌よう名無し様 ID:RggqMAlSV

 てかそうすると1ヶ月近くイッチは漂流してる事になるのか

 

45:ご機嫌よう名無し様 ID:bLr0P+AP8

 ふやけてるか腐ってるかしてるんじゃねえのそれ

 

46:ご機嫌よう名無し様 ID:imGwKrwDP

 くさそう

 

47:荳?闊ャ霆「逕滓が諢 ID:?????????

 え?

 そんなに?

 

48:ご機嫌よう名無し様 ID:+4M/I5eyS

 気付いてなかったのか……

 

49:ご機嫌よう名無し様 ID:iBcoCjgX3

 もうあの百合をぶち壊すクソヒュージ戦から1ヶ月は経ってるぞ

 

50:荳?闊ャ霆「逕滓が諢 ID:?????????

 マジか……

 新しいスレ立ててくれてありがとな

 

51:ご機嫌よう名無し様 ID:qAplW8y+H

 え?

 

52:ご機嫌よう名無し様 ID:/TtUS7wRI

 イッチが自分で立ててたじゃん

 

53:ご機嫌よう名無し様 ID:2s7N4vvFf

 んん?

 

54:荳?闊ャ霆「逕滓が諢 ID:?????????

 いやいやワイさっきまで意識無かったんやぞ

 スレ立てなんて出来る訳ないやろ

 

55:ご機嫌よう名無し様 ID:23girvQo+

 えぇ……

 

56:ご機嫌よう名無し様 ID:NYecbmuzw

 前スレ見直してみ?

 今の文字化けしてるイッチのコテハンとIDでスレ立ってるから

 

57:荳?闊ャ霆「逕滓が諢 ID:?????????

 本当だ

 ワイが立ててる

 でも一切記憶に無いぞ……?

 

58:ご機嫌よう名無し様 ID:0ucDjVkfm

 どういう事なの……(レ)

 

59:ご機嫌よう名無し様 ID:7OXFRsxa7

 申レN

 

60:ご機嫌よう名無し様 ID:2DKAMOx0d

 前スレ立ったのがヒュージと戦った直後だから気付かんかったけどホントにスレ立てただけだなこれ

 テンプレとか何も無いじゃん

 

61:ご機嫌よう名無し様 ID:EB8e3x7IL

 そういやそうだな

 

62:ご機嫌よう名無し様 ID:g9woHpvV8

 事が事だから慌ててスレ立てだけしたのかと思ってたけど違うのか

 

63:ご機嫌よう名無し様 ID:R0dZ8Obag

 少なくともこの掲示板ではID=魂だから基本偽装出来ない筈だが何なんだろうなこれ

 

64:荳?闊ャ霆「逕滓が諢 ID:?????????

 まぁ実害は無さそうだしいいんじゃない

 

65:ご機嫌よう名無し様 ID:eUxASd6yU

 よくない

 

66:ご機嫌よう名無し様 ID:7Neb/5SRk

 自分の魂に関する事なのにイッチ無頓着過ぎませんかね

 

67:荳?闊ャ霆「逕滓が諢 ID:?????????

 そもそも転生者なんだから今更魂がどうとか言われてもなぁ

 神様が自動スレ立てする機能おまけにくれたって事で良くね?

 

68:ご機嫌よう名無し様 ID:dj3SvyZAz

 だからよくないって

 

69:ご機嫌よう名無し様 ID:HtcmBecIO

 用途が限定的過ぎる

 

70:荳?闊ャ霆「逕滓が諢 ID:?????????

 俺らが苦しんでる所を見たいのか無双してる所を見たいのかいまいちハッキリしない神様サイドにも問題があると言わざるを得ない。

 

71:ご機嫌よう名無し様 ID:xRCZjBC2a

 神様に責任転嫁するとかイッチ勇気あるな

 

72:ご機嫌よう名無し様 ID:XMSfYRgKJ

 折角貰った特典の使い方が全然分からなかったりするし言いたい事は分かるが……

 

73:荳?闊ャ霆「逕滓が諢 ID:?????????

 お?

 おお?

 

74:ご機嫌よう名無し様 ID:+UL5vbWyy

 どした

 

75:ご機嫌よう名無し様 ID:qSW36zQ1z

 この期に及んで何かやらかしたんか

 

 

105:荳?闊ャ霆「逕滓が諢 ID:?????????

 アカン

 

106:ご機嫌よう名無し様 ID:WJ+KLFkE6

 何や

 

107:荳?闊ャ霆「逕滓が諢 ID:?????????

 今大気圏に突入してる

 

108:ご機嫌よう名無し様 ID:C7ANb4NUx

 は?

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 所々苔むしたコンクリートをローファーで踏みしめる、そんな少女達の足音がひたすら鎌倉の郊外に連なっていた。

 

「────」

 

 ただ歩くと言う行為に対して、これ程までに悔しさを覚える事があっただろうか。

 ただ真っ直ぐに歩を進めると言う行為に対して、これ程苦しく感じる事があっただろうか。

 そう梨璃は自問した。

 

「────」

 

 黙々と隣を歩く結梨の表情も1ヶ月前に比べれば遥かにマシだが、決して明るいモノとは呼べない。

 瞳の中に隠しきれない悔しさを湛え、それでも少女は足を動かし続けている。

 

「────っ」

 

 どうにもならない現実に、思わず唇を噛み締めてしまう。

 そう、悔しいのだ。

 梨璃だけではなく一柳隊の皆も、百合ヶ丘のリリィも、誰もが悔しさを堪えながら愛すべき母校に背を向けて坂道を歩き続けている。

 

 もう誰も学舎にはいない。

 百合ヶ丘の生徒達は各々チャームを背負いつつ、持ち場を離れて避難地域へと後退していた。

 何故そんな事をしなければならないのか────その理由はただ1つ。

 

「楓さん、ヒュージが着弾するまで後どれ位かかりそう?」

「まだ15分程度は余裕がありますけれど……どうしたんですの?」

「ううん、何でもない……ちょっと、寂しいなって」

 

 遡る事約一時間程前、ヒュージネストは3つの飛翔体を打ち上げた。

 それは本来他の地域にネストを移設、或いは増設する為に行う謂わばネストにとっての「移動手段」だが今回は、攻撃に用いられようとしている。

 

「確かに、そうですわね。この景色だって見納めになる可能性もありますし……」

「うん……」

 

 信じられない事だが、工廠科の計算によれば飛翔体の目標は百合ヶ丘を含む鎌倉全域と推定されているのだ。

 当然、相模湾に陣取っているネストが移動しようとしているのではない。

 たった10数kmを移動する為にこんな大仰な行為をする必要は無いし、態々そんな事をする労力があるならば直接ヒュージを送り込んで制圧する方が圧倒的に効率が良い。

 

「しっかしミサイル攻撃とは、ヒュージも随分と思い切った事をするもんですわね」

「う、うん……こんな事をしてくるなんて、教本にも載ってなかったよ」

 

 ────つまり、これは攻撃だ。

 ネストはヒュージをミサイルにして百合ヶ丘を直接破壊すると言う、恐るべき行為に出たのである。

 勿論、ヒュージには爆薬を搭載出来る個体やフレシェット弾を積載出来る個体は存在しない。

 遠距離攻撃が可能な個体も存在するがそれにしたって小さな「端末」を射出して体当たりさせるか、アークワンを撃墜したようにマギを操るかの二択しかなく、ネストに掛かる負担から考えてもミサイルとして運用する意義は薄い。

 

 だが。

 だが、ヒュージの大質量を宇宙から地上に叩き付けた場合の破壊力は凄まじいモノとなる。

 例え目標に直撃せずとも爆風や衝撃波が建造物を根こそぎ吹き飛ばし、無惨なクレーターに変貌させてしまうのは想像に難くない。

 また、リリィでは迎撃不可能な大気圏外から高速で突っ込んでくる性質も鑑みれば、「目標を破壊する」その一点に於いては極めて有効な兵器と言えるだろう。

 

「どうにかならないのかな……」

「高レベルの『天秤の計り手』を持つリリィがいても、流石にこれは無理でしょう。飛来するミサイルに銃弾を当てるなんて曲芸以外の何物でもありませんわ」

「そっか……」

 

 それを()()()()()ヒュージネストは打ち上げたのだ。

 仮に直撃した場合、間違いなく鎌倉は消し飛ぶ。

 文字通り跡形もなく、人類が其処にいた痕跡を一つ残らず消し去るだろう。

 それは百合ヶ丘女学院も例外ではない。

 何かしら手を打たなければ、リリィ達は学舎ごと木っ端微塵だ。

 だから()()()

 百合ヶ丘女学院を放棄し、避難区域に退避する事を理事長代行たる高松咬月は選択したのだ。

 彼とてその意味を理解していない訳ではないが、だからと言ってリリィを無駄死にさせる位ならば逃げた方がずっとマシだと考えたのである。

 

 ────そして、悔しさを堪えなければいけない理由がもう1つ。

 

「折角、ゼロツードライバーが完成したのに……」

「結梨ちゃん……」

 

 今までずっと黙りこくっていた結梨が、ぽつりと呟いた。

 そう、ゼロワンドライバーの基礎機能にアークワンの出力を掛け合わせて極限まで性能を高めたゼロツードライバー(急造品)は既に完成し、後は起動テストを待つのみとなっていたのだ。

 そして予定よりずっと早くゼロワンドライバーを届けてくれた飛電製作所の誠意に、努力に報いるべきだと決意を新たにしたのに────その矢先にこれだ。

 希望を見せ付け、この手に掴む直前までちらつかせておきながら目の前でそれを奪い去る。

 これが「絶望」なのか、と少女達は唖然とした。

 

「ねぇ梨璃。ロケットになったヒュージのどれかがアルトとか、そんな事無いよね……?」

「それは……」

 

 縋るような結梨の問いかけに、しかし無いとは言い切れなかった。

 少年の魂が飛翔体の中に封じ込められ、百合ヶ丘を襲おうとしている可能性は否定できないのだ。

 唯一少年の安否──即ちネストに刻まれたルーンを確認可能な気象衛星も、こうなってしまえば役には立たない。

 

 それにもし仮にアルトの魂を収めたヒュージが百合ヶ丘に襲来したとして、この状況下でゼロツードライバーを装着させるのはあまりにも無謀過ぎるのだ。

 それだけならまだしも、万が一にも破壊されるような事があればそれはこれまでの全ての努力が水泡に帰すのと同意義である。

 だから退くしかない。

 

「────でも、アルトは()()()()()()

「分かるの?」

「ううん、勘。でもアルトの家はヒュージのいる所じゃない。だから百合ヶ丘に帰ってくる」

 

 そう、()()()()()()()()()

 ヒュージの行動原理に関する知識など1つたりとも持ち合わせていないが、それでも結梨の中には何処か確信めいた予感があった。

 

「もしアルトがロケットだったら、何処にベルトを巻いたら良いのか分からないから……」

「それはまぁ……そうだね。ただくっつければ良いって話じゃないもんね」

 

 ただ、その時に彼がミサイルだと結梨としては非常に困るのだ。

 着弾時に木っ端微塵になる可能性があるし、着弾しても地面に埋まってしまえばベルトは巻けないし、そもそもサイズ次第では「巻く」と言う行為が可能なのかすら分からない。

 

「て言うか、そもそも巻けるかな?楓はどう思う?」

「まぁ接近さえ出来れば巻けるでしょうが……相手の形状次第では長さが足りなくなるかもしれませんわ」

「そんな事、無いと思うけど……」

 

「ベルトの長さが足りなくて救出に失敗しました」なんて事態はほぼ有り得ないだろうが、3人は大真面目に討論していた。

 技術的な話にも、リリィとしての戦術に疎い結梨が彼女なりに考えて導き出した疑問がこれなのだ。

 そして今や少女は一方的に庇護されるだけの存在ではなく目の前の問題に対して自分の解答を模索する立派なリリィであり、故にこそ荒唐無稽な話だと知りつつ梨璃も楓も決して結梨の考えを尊重している。

 

 

 

 

 

「ぉぉぉぉぉぉい」

「?」

 

 ────だから、と言うべきか否か

 

「梨璃ちゃぁぁぁぁぁぁぁん!楓ちゃぁぁぁぁぁぁぁん!結梨ちゃぁぁぁぁぁぁぁん!」

『百由様!?』

「百由!?」

 

 避難するリリィ達の流れに逆らい、未だかつて見たことも無い位綺麗なフォームで此方に向かって全力疾走する真島百由の姿に3人は喫驚せざるを得なかった。

 先に避難した筈の彼女が何故──とか色々と思いもしたが、その短距離走選手かと見紛う程に洗練された姿勢が梨璃達から思考能力を奪い去ってしまうのだ。

 

「ど、どうしたん────」

「夢結は何処!?」

 

 しかし、続く一言が3人を正気に引き戻す。

 これ程までに焦った様子の百由を見た事が無いのだ。

 明朗かつオーバーリアクションな彼女が慌てるとすれば、それは「余程の事」に違いない。

 

「ゆ、夢結様がどうかしたんですか?」

「ヤバいヤバいヤバい……!早く止めないと……!」

「一体どうしたと言うのです。先ずは落ち着いて下さいまし!」

「あぁ、うん……そうだね。落ち着かないと……」

 

 夢結が一体何なのか。

 何かあったのか、或いは何かしたのか。

 慣れない全力疾走に荒い息を吐く百由に肩を貸しつつ、梨璃と楓は言葉を待った。

 

「夢結が────」

 

 だが。

 この時、この一瞬に於いては返答を待つべきではなかった。

 寧ろ急かすべきであり、直ぐにでも行動を起こすべきですらあった。

 それだけ白井夢結が起こした行動は重大なモノで、同時に致命的なモノだったのだ。

 そう──────

 

 

 

 

 

「──夢結がゼロツードライバーを持ち出しちゃったのよ!早く連れ戻さないと!」

「そんな……!?」

 

 夢結はゼロツードライバーを奪取して、単身百合ヶ丘に戻った。

 勿論それが意味する所を理解出来ない梨璃ではない。

 

「お姉様は1人でヒュージを迎え撃つつもりなんですか!?」

「無謀にも程があるでしょう……!」

「夢結1人じゃ無理だよ……」

 

 夢結は()()に打って出たのだ。

 今回百合ヶ丘を襲撃するヒュージの中にアルトの魂を収めた個体が存在し、それを単独で撃破した上でゼロツードライバーを取り付ける──それは一目で判別出来る程分が悪い、僅かな可能性に全てを賭ける究極の悪手である。

 例え百合ヶ丘が消滅するとしてもゼロツードライバーさえ健在ならば救出の可能性は残るのに、彼女は自らの手でそれを放棄したのだ。

 

「お姉様、一体どうして……」

「そんな事を言っている場合ではありませんわ梨璃さん!早く夢結様を連れ戻しませんと……!」

「そ、そうだね……!」

 

 半ば呆然としつつも、楓の言葉で再起動した少女が走り出す。

 何事かと驚愕の表情を浮かべる同級生達の脇をすり抜け、眼下の百合ヶ丘へとひたすらに急ぐ。

 

(お姉様、何で……!)

 

 両足を絶えず動かしながらも、梨璃の混乱は続いている。

 何故思慮深い夢結がこれほど早計な判断を下したのか、彼女には全く分からなかったのだ。

 

「お姉様、今行きま──────」

 

 だから走る。

 会って話さねば、何も分からない。

 思いを思いのままにせずちゃんと言葉にして伝えられるのが人間なのだから、その特権を活かさずしてどうするのか。

 

「──────え?」

 

 そんな少女の決意を、世界そのものが嘲笑う。

 曇天の空を引き裂いて、3本の光が──即ちミサイルと化したヒュージが地上に突き刺さる。

 

 そう、()()()()

 この場の誰もが、全てに於いて遅すぎた。

 百由がもう少し早く気付けば、梨璃がもう少し早く動き出していれば、何か変わったのかもしれない。

 しかしそうはならなかったのだ。

 

「待っ──────」

 

 その後悔を感じる間も無く、思わず伸ばした手の先で視界を塗り潰す程の閃光が炸裂した。

 

 

 

■■■

 

 

 

「────」

 

 粉砕されたコンクリート片と捲り上げられた土が、土煙の中に佇む少女──白井夢結にバラバラと降り注ぐ。

 だが、彼女がそれを気に止める様子は無い。

 

「────何とか形は残ったようね」

 

 微笑む夢結の背後にそびえるのは、リリィ達にとって愛すべき家である私立百合ヶ丘女学院だ。

 その威容は最早見る影もなく窓ガラスと言う窓ガラスが根刮ぎ砕け散り、ありとあらゆる調度品が吹き飛んで────それでも原型は留めていた。

 

「良かった……」

 

 ただ一言に、万感の思いが籠められていた。

 だって原型が残っているのだ。

 建物としての形が残っているのだから再建はそう遠くない筈だし、完全に壊れてはいないのだから希望はまだ残っている。

 夢結にとっては良い事尽くしで大変気分が良い。

 

「市街の方に落ちたからこの程度で済んだ……と言う事かしらね」

 

 と言うのも、夢結はヒュージの直撃によって百合ヶ丘は破片すら残らない位に破壊しつ尽くされる事態を当初想定していたのである。

 それがこれだけ()()済んだのだから、嬉しくもなるし微笑むのも当然だろう。

 

「さて────」

 

 しかし、このような感傷に浸っている場合ではない。

「百合ヶ丘の安全確認が重要ではない」などと冷酷な事を宣うつもりはないが、確かに夢結の目的は違うのだ。

 

「おかえりなさい、アルト」

「────」

 

 そう、挨拶には返事をするモノだ。

 故に夢結の言葉から1拍遅れて、徐々に薄れつつある土煙を引き裂き赤いアークワンが姿を現す。

 夢結の予想通り、ヒュージに搭載されると言う形で二川アルトは鎌倉の地に帰還を遂げたのだ。

 

「貴方────」

「────」

 

 自身の予想が当たった事に安堵しつつも、紫の瞳はアークワンから逸らさない。

 対するアークワンも、20m程の距離を空けてただじっと夢結を見据えるばかりだ。

 動かないし、動けない。

 これが2人の間合いなのだ。

 どちらかがこれより1歩でも踏み出せば、アークワンの拳が夢結を砕き、チャームの刃がアークワンを切り裂くだろう。

 

「──貴方、随分と変わってしまったのね。あまり変なグレ方をすると二水さんが泣くわよ」

「────」

 

 だからこそ、今が互いが間合いを窺う今こそアルトに対して語りかける最後のチャンスになる──と言うより、夢結は少年に対して呼び掛けなければならない。

 他の誰がどう言おうと、少年と2人きりで話す必要が夢結にはあった。

 

「最初から──脱走したヒュージを倒してくれたあの時から、ずっとそうよ。私は貴方を避けている」

「────」

「今更許しを請うなんて、遅すぎるかもしれないわね」

 

 そう、それは懺悔だ。

 はっきり言ってしまえば、夢結はアルトが苦手だったのだ。

 何処か掴み所の無い飄々とした性格が、口数は少ないながらもすぐに集団に溶け込める適応性の高さが、そして「あの言葉」が夢結の中に蟠りを作っていた。

 

『……アンタ、人間か』

『え……?』

『もし違うなら────殺す』

 

 それは、10ヶ月前の初接触の際に彼から投げ掛けられた言葉だ。

 白井夢結は人なのか、人ではない(ヒュージ)のか。

 勿論夢結は人間だし、その自覚もある。

 だが、あの時は違った。

 

「同じマギを使うリリィとヒュージを分け隔てるのは心の有無だって、美鈴様(お姉様)は言っていたわ。あの頃の私は、貴方からどう見えたかしら」

「────」

 

 今でこそ恥ずべき事と考えているが、かつての夢結は酷く思考が硬直していた。

 美鈴の死に囚われ、ヒュージへの憎悪に囚われ、その原因となったルナティックトランサーに囚われ、自分で自分の心を殺していたのだ。

 そんな中で、少年の問い掛けは深く突き刺さった。

 心が死んでしまったのなら、ヒュージと何も変わらないのではないか──そう諭されているような気がして、あの時夢結は逆上してしまったのである。

 それを彼女は今でも後悔している。

 

「彼処で貴方を保護出来ていたら、こんな事にはならなかったのかもしれない。命を削って戦う必要も、死んでしまう必要も無かったかもしれない」

「────」

「今更こんな事を言うなんて遅すぎるかもしれないけど……ごめんなさい。()()()謝罪するわ」

 

 夢結の苦手意識の根源は罪悪感だ。

 自分より遥かに幼く、過酷な人体実験を受けた少年に対してチャームを向けてしまった事。

 戦う度に何処かが可笑しくなっていく少年をただ見ているしか出来なかった事。

 何も悪くない少年に対して一方的に苦手意識を持っている事。

 それら全てを引っ括めた上で、罪滅ぼしとして夢結はアークワンに無謀な決闘を挑もうとしている。

 

「アルト、貴方は私が連れ戻すわ。例え刺し違えてでも必ずアークワンから救い出して、二水さんの所に届けてみせる」

「────」

「それが人間として、リリィとして成すべき使命。貴方のお陰で見付け出せた、私の戦う理由」

 

 夢結の独白に対して、アークワンが言葉を返す事はない。

 声帯が存在しないのか、はたまた単に喋るつもりがないだけなのか──ひたすら沈黙を守り続ける悪意の権化が戦闘態勢に移る。

 

「────」

 

 翳した手のひらから生成された9つの武器が、威嚇するかのように宙を舞う。

 アタッシュカリバー、ショットライザー、青いショットガン(アタッシュショットガン)紫の弓(アタッシュアロー)飛蝗が描かれた斧(オーソライズバスター)黄金の剣(サウザンドジャッカー)────そしてそれぞれ赤、青、ピンクに塗られた柄を持つ3本のグングニル。

 

「貴方、そこまで……」

 

 それは間違いなく梨璃達が振るうグングニルをコピーしたモノだ。

 アークワンの中で眠るアルトが、そうさせているのだ。

 間違いなく二川アルトは其処にいると、確信出来た。

 

「……そう、貴方そんなに皆の事が好きなの。なら────」

 

 その事実に夢結の心が奮い起つ。

 ()()()()()()と彼女の全細胞が一丸となって叫び、傍らに突き刺していたチャームを引き抜かせた。

 ただし、それは普段使用しているブリューナクではない。

 

 

 

 

 

「────2年振りね、()()()()()()

 

 その名はダインスレイフ。

 甲州撤退戦でヒュージに奪取され、5ヶ月前の戦闘で取り戻した黄金の大剣を夢結は正眼に構えた。

 

 

 

■■■

 

 

 

「ほ、本当にいいんですか?こんな物私に渡してしまって……」

 

「ああ、飛電或人と天津垓が態々お前を指名して渡せと言っているからな。つまりはそう言う事だ」

 

「そうですか……わ、分かりました!ありがたく使わせて頂きます!(ほろび)さんも、ありがとうございます!」

 

「よせ、俺はアイツらに代わって届けただけだ。礼なら弟を救出してから飛電或人に言え」

 

「いえ、それでも──本当にありがとうございます!」

 

「……そうか」

 

「はい!では、ごきげんよう!」




◯白井夢結
たった一人で決戦に赴く。
梨璃達はまだチャンスがあると思ってるけど実は夢結の考えの方が正しかったりする。(それはそれとして相談位しろという話ではある)
メンタルが死ぬほど安定してるのでお姉様の幻覚はあんまり見ないし験担ぎでダインスレイフを持ち出す位余裕がある。
実はアルトが苦手だった。

◯二川二水
滅から「何か」を受けとる。

◯滅
二水に「何か」を渡す。


・bouquet11話通りにマギ結界が展開されているので通常チャームは使えない。例外はヒュージ側に行ってたダインスレイフとカリスマ(?)持ちの梨璃だけ。
そこに二水が駆け付けるなら…?

正直に言って戦闘無しで考えたら誰との絡みが見たい?(あくまで参考である事をご了承下さい)

  • 二水
  • 結梨&梨璃&夢結
  • ぐろっぴ&百由様
  • 一葉
  • 恋花&瑶
  • 千香瑠&藍
  • 灯莉
  • ひめひめ&灯莉&紅巴
  • 叶星&高嶺
  • その他一柳隊メンバーなど
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