【悲報】ワイ、転生したら百合の間に挟まる仮面ライダーだった【ゆるして】   作:イナバの書き置き

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来週更新出来ないかもとか抜かしてましたけど普通に更新です

※アルトが甲州市出身なのは以前の話で判明していたので内容を修正しました。


第3話【朗報】ワイ、身元が判明する【年上の幼馴染み】

 森は、得てして恐怖の対象や混迷の象徴として扱われる事がある。

 原因は熊などの動物や、其処に纏わる恐ろしい童話だとされるが──やはり、1番は「広さ」だろう。

 一見しただけでは見分けの付かない樹木が滅茶苦茶に林立するから自分の居場所が分からないし、そのせいで視界も狭い。

 ドイツ南西部のSchwarzwald(黒い森)に代表されるような「とてつもなく広いのに閉塞している」環境が、人に恐怖を味わわせるのだ。

 そしてそれは日本に於いても何ら変わりなく──鬱蒼と繁った木々は、ただでさえ混乱の極地にある千香瑠の精神を更なる迷宮に誘おうとしていた。

 

「千香瑠様、昔の()()()()()はどんな子だったんですか!?」

「昔の……?」

「はい!性格とか好みとか、とっても気になります!」

「……そうね。明るくて、ちょっとやんちゃで、でも曲がった事が嫌いで……将来はプロのサッカー選手になって、海外に行くんだってずっと言ってたわ」

 

 雨は止んだ。

 立ち込めていた霧は消えた。

 しかし隣を歩く二川二水が放つ太陽のような暖かさが、千香瑠の心に影を作る。

 

「百合ヶ丘でのアルトくんは、どうだったのしから」

「へ?百合ヶ丘ですか?」

「ええ、記憶を失ったアルトくんがどんな生活をしていたか気になるの。二水さんが面倒を見ていてくれたなら大丈夫でしょうけど……」

「いやぁ、そんな私なんて……」

 

 照れ臭そうに頬を掻く彼女の姿が眩しかった。

 そう、二川二水はその名字が示す通り11ヶ月に渡って記憶喪失のアルトを保護し、面倒を見た張本人である。

 つまりは「姉」だ。

 しかし千香瑠と同じで、しかしありとあらゆる意味で千香瑠と対照的な「姉」だった。

 千香瑠に二水のような快活さは無い。

 千香瑠に二水のような積極性は無い。

 思慮深いが故にどこまでも受け身で、アルトを後ろから見守るしか無いのだ。

 

 

 それが────苦しい。

 

 

 二水とアルトの会話はほんの数秒しか見ていないが、それで千香瑠には充分だった。

 だって、違う。

 そのやり取りが、その笑顔が、千香瑠の積み上げてきた8年間とはまるで違う。

 頭を小突いたりしたり手を繋いではしゃいだりなんて、そんな事1度だってありはしないのだ。

 千香瑠はそんな現実に耐えられない。

 表面上は穏やかなお姉さんを演じられているが、いつかは崩れ去るだろう。

 そしたら終わりだ。

 他人を慮る事を忘れ、己の事しか考えられなくなった人間の末路など当の昔に分かりきっていた。

 

 そして──記憶喪失。

 その4文字が無ければアルトを抱き締めてやる事も出来ただろうし、二水との会話に暗い感情を抱く事も無かっただろう。

 或いは本当に何もかもまっさらになって「アルトらしさ」が完全に抜け落ちていれば、別人として受け入れる事も出来た筈だ。

 

「正直……これからどうします?」

「取り敢えずは様子を見守りつついつでも動けるように備えます。しかし、備えたところでいざ事が起きたら一体どうなるのか……」

「発端は僕なのに、ホントすいません……」

「いえいえ、千香瑠様はヘルヴォルのメンバー──即ちレギオン全体の問題でもあります。この位何でもありませんよ」

「……一葉さんカッコいいです。イケメンです」

「イ、イケメン……?」

 

 だが、今ほんの数メートル先で一葉と何事か話している「彼」を二川アルトと呼ぶには、仕草が一文字アルトに近すぎた。

 同様に「彼」を一文字アルトと呼ぶには、気性が二川アルトに近すぎる。

 無論、過酷な人体実験によって人格を捻じ曲げられた可能性は考えられるが、それを加味した上でも中途半端なのだ。

 まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ような、得体の知れぬちぐはぐさが少しずつ千香瑠を苛む。

 

 けれど──まだ大丈夫。

 大丈夫な筈だ。

 そんな風に軽く頭を振っていると、二水が心配そうな表情で声を掛けてくる。

 

「……千香瑠様、どうかしたんですか?」

「ううん、何でもないわ。少し疲れただけよ」

「休みます?」

「いえ、今は特型の捜索を優先させましょう。危険なヒュージを野放しにはしておけないわ」

「……分かりました。でも、辛くなったら直ぐに言って下さい。梨璃さん達に進言すれば一旦休憩にしてくれる筈ですから」

「えぇ、ありがとう」

 

 華も無ければ複雑さも無い、シンプルな会話だが──どうかしたんですか?

 なるほど、当人は気付いていないだろうが今の千香瑠に対する質問としてはあまりにも適格だ。

 

 

 

 

 

 だって芹沢千香瑠は、今すぐにでも「どうにか」なりそうだったのだから。

 

 

 

■■■

 

 

 

1:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 どうもアルトくん(本物)には美人の幼馴染みがいたらしい

 

 事の発端→【悲報】ワイ、転生したら百合の間に挟まる仮面ライダーだった【ゆるして】

 

【悲報】ワイ、転生したら百合の間に挟まる改造人間だった【どうして】

 

【悲報】ワイ、転生したら百合の園に監禁される仮面ライダーだった【何故】

 

 

【上位互換】ワイ、転生したら百合の園で入院生活を送る仮面ライダーだった【爆誕】

 

「>>■」

 

【速報】ワイ、転生したら百合の隣で戦う仮面ライダーだった【変身】

 

【悲報】ワイ、百合の間に挟まる仮面ライダーではなくなったかもしれない【朗報】

 

2:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 人物紹介

 

 ・ワイ(現二川アルト/元一文字アルト)

 仮面ライダーに変身出来る以外特徴の無い記憶喪失ショタ(にinした転生者)

 ヘルヴォルのおねーさんが昔の知り合いだったらしく遂に身バレする

 けどアルトくんはなぁ……

 

 ・一柳隊

 身元が判明した事を素直に喜んでくれてる

 けど一文字くんはもう戻らないから申し訳ない気持ちでいっぱい

 

 ・相澤一葉(あいざわかずは)さん

 エレンスゲ女学園のトップレギオン「ヘルヴォル」のリーダー、1年生

 理想の上司感満載の生真面目なイケメン美少女

 前会った時は雰囲気悪かったけど今回はめっちゃフレンドリーだった

 

 ・飯島恋花(いいじまれんか)

 ヘルヴォルのメンバー、2年生

 めっちゃ距離感が近くて正直ドキドキした

 近すぎて男女両方を勘違いさせる素質があると思うよ(偏見)

 

 ・初鹿野瑶(はつかのよう)

 ヘルヴォルのメンバー、2年生。

 寡黙だけど恋花様と仲が良くて大変あら^~な雰囲気を醸し出している

 

 ・佐々木藍(ささきらん)ちゃん

 ヘルヴォルのメンバー、1年生

 可愛くて寝るのと食べるのと戦うのが大好きな女の子

 喋り方とかめっちゃ幼いしキミ本当に高校生?

 

 ・芹沢千香瑠(せりざわちかる)

 ワイの素性を知っていた姉っぽい人で年上の幼馴染み(らしい)

 ヘルヴォルのメンバー、2年生

 凄いお姉さん感満載なお方だけど此方を見る目がヤバい

 何がとは言い辛いけど兎に角ヤバい

 

3:ご機嫌よう名無し様 ID:pVaLN/zes

 はえー、アルトくん(本物)幼馴染みがいたんすね

 うらやま

 

4:ご機嫌よう名無し様 ID:bPwuKRJXH

 そんで名字が一文字?

 仮面ライダーで一文字って言うと、2号だよなぁ……

 

5:ご機嫌よう名無し様 ID:chxQwEfCN

 何か関連性あるんやろか

 

6:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 分からんね

 千香瑠様に聞いてみた感じ普通のサラリーマン夫婦だったみたいだけど、それを隠れ蓑にしたりするのが仮面ライダーやろ?

 

7:ご機嫌よう名無し様 ID:U4n/QPSPv

 それもそうだな

 

8:ご機嫌よう名無し様 ID:WK1twQSLo

 転生者が「其処にいる理由」を作る為に過去が捏造される場合と普通にポップする場合と2種類あるのは判明してるけど、これじゃあどっちか分からんな

 

9:ご機嫌よう名無し様 ID:0VwS3skym

 所謂中世的な多少の戸籍ガバが許される世界ならそのまんま放り出される傾向が強いっぽいが

 

10:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 それもそうなんだが

 一文字夫妻は甲州撤退戦の時に死亡したってアルトくん本人から聞いてるし

 やっぱ普通の人だったと思う

 

11:ご機嫌よう名無し様 ID:2iyEkO+Pl

 そっか

 イッチはアルトくん(本物)と話したんだっけか

 

12:ご機嫌よう名無し様 ID:9aGt/vhQw

 その手の話し合いは俺らが立ち入るモンじゃないと思ってたから深くは訊かなかったけど、結構色々喋ってくれてたんすね

 

13:ご機嫌よう名無し様 ID:NVdGAutFc

 まぁ故人についてあれこれほじくり回すモンでも無いし

 アルトくんがイッチに託したならそれを信じるだけよ

 

14:ご機嫌よう名無し様 ID:kQLiVnnc9

 そうね

 それよりイッチ!

 

15:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 はい

 何スか

 

16:ご機嫌よう名無し様 ID:X5TE09Zn5

 おめーまたリリィに執着されてんじゃねーか!

 何回同じ事すれば気が済むんだよこのポンコツ野郎!

 

17:ご機嫌よう名無し様 ID:Vd6MtL25L

 百合の間に挟まるだけじゃ飽き足らずに今度はおねショタハーレム作る気かー!

 

18:ご機嫌よう名無し様 ID:cnzARB3nM

 羨ま……いやマジで羨ましいわ!

 むさいおっさんに囲まれて雑魚寝してる転生者の気持ちを考えろ!

 

19:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 いや俺のせいじゃないし!

 これに関しては間違いなく一文字くんのやらかしだし!

 

20:ご機嫌よう名無し様 ID:kBYD3TGJX

 責任転嫁か百仮面ライダー合

 

21:ご機嫌よう名無し様 ID:QIU8C/yBX

 故人が云々はどうした百仮面ライダー合

 

22:ご機嫌よう名無し様 ID:oSUchw4Ca

 見苦しいぞ

 大人しく塵になってきららアニメに戻せ

 

23:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 いや……ホント、ふざけてるように見えるだろうけど今回はマジで洒落にならないんだって

 責任云々以前に頭可笑しくなりそうだ

 

24:ご機嫌よう名無し様 ID:xktsQE3uH

 うん?

 

25:ご機嫌よう名無し様 ID:jrec7/pO2

 嫌味か?

 

26:ご機嫌よう名無し様 ID:mvRlbRehW

 イッチの頭が可笑しいのはいつもの事やろ

 

27:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 千香瑠様が妙にねっとりした……何かヤバめな目線を送ってくるんだよ

 喰われるって言うか何て言うか……言葉に出来ないけどさぁ

 怖い

 

28:ご機嫌よう名無し様 ID:Ppf7+bnCX

 それは全然ええやろ

 寧ろ俺も年上の女性にウェットな目線で見て欲しいわ

 

29:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 しかも「甲州に帰りましょう?」とか他の誰にも聞こえない位小声で言ってくるし

 明らかにヘルヴォルと俺が絡むのを止めようとしてるし

 もうどうすりゃ良いんだ……

 

30:ご機嫌よう名無し様 ID:PqmeG7XrK

 えぇ……(困惑)

 

31:ご機嫌よう名無し様 ID:tOBYcc4qc

 はい?

 

32:ご機嫌よう名無し様 ID:h7YY4qB91

 これもう分かんねぇな

 

33:ご機嫌よう名無し様 ID:deDpIrKAy

 状況が上手く掴めないけど、どうもかなり深刻みたいですね

 

34:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 それだけじゃなくてさぁ

 多分俺が一文字アルトじゃないのバレてる

 

35:ご機嫌よう名無し様 ID:bXzY8Tp7W

 ファッ!?

 

36:ご機嫌よう名無し様 ID:aw/1KnAUw

 それマジ?

 

37:ご機嫌よう名無し様 ID:4KY8dsboP

 出会ってまだ一時間も経ってないのにバレる要素あった……?

 

38:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 無かったはず

 しかも千香瑠様の言ってる事を要約すると「アルトくんじゃないのはなんとなく分かるけど人体実験の末に記憶喪失とか苦しかったよね後は私が引き継ぐからもう戦うの止めて地元に帰ろう?」だから尚更どうしようもない

 これ俺をアルトくんじゃないと認めた上でガチ目に保護しようとしてる

 

39:ご機嫌よう名無し様 ID:xZ/RdJCOj

 アカン

 

40:ご機嫌よう名無し様 ID:xiu/ijj3X

 あー……

 

41:ご機嫌よう名無し様 ID:UyPjbSNWi

 そう来たか……

 

42:ご機嫌よう名無し様 ID:OzYJLGQEc

 で、イッチは千香瑠様の言うこと聞くんか?

 

43:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 いや、二水ちゃん達を置いて戦い止めるとか絶対無理だし、仮面ライダーはアルトくんの夢だから今はまだ止まれない

 でもそれを千香瑠様に伝えた所で何も変わらないんだよなぁ……

 

44:ご機嫌よう名無し様 ID:xkTLWRM+o

 誰も悪くないのがまた絶妙に酷い

 

45:ご機嫌よう名無し様 ID:E0iZViAip

 どうして女の子が苦しい思いをするんですか?(画像略)

 

46:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 あの、俺の心配は……?

 

47:ご機嫌よう名無し様 ID:8Q4IanRa0

 してるにはしてる

 ただどうにもならなすぎて何も言えねぇ

 

48:ご機嫌よう名無し様 ID:oAXoTa3TZ

 突然クソ重い話ぶちこまれて思考停止してた

 

49:ご機嫌よう名無し様 ID:dcbnfJR6Y

 割とマジで解決策が思い付かん

 

50:ご機嫌よう名無し様 ID:tKWv/ebuZ

 ここまで来ると何言っても地雷になりそう

 

51:ご機嫌よう名無し様 ID:PS9qIZaf/

 もう迫真マインスイーパー部作るか?(ヤケクソ)

 

52:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 取り敢えず……取り敢えず先送りするわ

 特型探しに行ってる間はこれ以上何も言えないと思うし、どっちにしろ今考えたってロクな事にならん

 

53:ご機嫌よう名無し様 ID:YY6L0KNa0

 何かこう、一葉さんとかに助けて貰えないんか?

 ヘルヴォルのリーダーなんだし、どうにか諌めてもらったりすれば……

 

54:ご機嫌よう名無し様 ID:IQ/Ib1Kam

 確かに一葉さんならキッチリ仕切ってくれそうな感じはあるが……

 

55:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 今相談してるけど、一葉さんもめっちゃ困惑してる

 こんなんよりヒュージ相手してる時の方がよっぽど楽だわ

 

56:ご機嫌よう名無し様 ID:FljYQ01HO

 控えめに言って地獄

 

57:ご機嫌よう名無し様 ID:L4s3dgs5n

 しかし……あれだな

 二水ちゃんの件もあるし、何かアークの標的になりそうだな

 

58:ご機嫌よう名無し様 ID:MGXRP4ZP0

 二水ちゃんが変身したのはエデンだけだから、まだルシファーが残ってるしなぁ

 

59:ご機嫌よう名無し様 ID:FbOWMQS8k

 アークスコーピオンは除くとして此処までアークワン、アークゼロワン、エデンと悪い意味で順調だから絶対に来る(確信)

 

60:ご機嫌よう名無し様 ID:qjcGs4ESE

 生半可な武器じゃ壊せないからゼロツー使うんだっけ?

 

61:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 いや、対エデン専用のプログライズキーを作ってるから完成次第それでぶっ壊す予定

 〔添付:銀色に輝く大型キーの画像〕

 

62:ご機嫌よう名無し様 ID:CbfcM8RR7

 メタルクラスタホッパー!?

 

63:ご機嫌よう名無し様 ID:fU0iRUBKk

 確かにエデン相手には有効だったけど、この世界ではそう言う役回りになるのか……

 

64:ご機嫌よう名無し様 ID:il3VSezeG

 兎に角、キーそのものがいきなり千香瑠様の所にすっ飛んでったりはしないだろうけどアーク的に格好の獲物だからちゃんと見といた方が良いと思う

 

65:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 ん、おかのした(投げやり)

 

 

 

■■■

{ 第  話 }

 

降 臨 、 満 を 持 し て

The HUGE advent in forest

 

 

それは天使か悪魔か

──×──

"The strongest wings bearing the fire of hell."

■■■

 

 

 

()()()()()其処にいるのは天使を象った偶像のような特型ヒュージと、亜空間通路(ケイブ)より溢れだした無数の小型ヒュージだった。

 それがあるべき流れだ。

 それが自然な姿だ。

 しかし────梨璃と夢結は同時に溜め息を吐いた。

 

「……何、あれ?」

「……何でしょうね?」

 

 木陰に潜む少女達が見詰める先、多少開けた草地にぽっかりと開いたケイブを守護する()()は、ヒュージと呼ぶにはあまりにも歪だった。

 不可解な事に、特型ヒュージ(天使)の両腕が7銃身のガトリング砲と一体になっているのだ。

 しかも無理矢理一体化したのか、接合部から絶えず吹き溢れる体液が地面に青黒い水溜まりを作っている。

 奇怪で、異様で──動くに動けない。

 

「ヒュージが、人間の模倣を……?」

「それにしたって、物騒過ぎじゃないですか……?」

 

 リリィではなく人類の模倣を試みたヒュージ──彼女達が知る限りでは初めて出会う存在だ。

 幸いにもまだ梨璃達には気付いていないようだが、どう仕掛ければ良いのかまるで分からない。

 何せ下手に姿を晒せば蜂の巣にされる事は間違いないのだから。

 

「……一葉さん、どうしましょうか」

「そうですね……あのガトリングが見た目通りの性能を発揮するのならば、正面から挑むのは危険です。側面、或いは背面から奇襲を仕掛けましょう」

 

 まだ気付かれていないなら、奇襲こそが最善策──一葉の言葉は尤もだった。

 そしてまたしても幸いな事に天使はケイブの正面から動く気配が見られず、身を隠しながらであっても側背面に回り込む事は容易い。

 瞬く間にリリィ達が散開し天使の背後に展開するのを確認した一葉は、士気の向上も兼ねて小声で──しかし全員に聞こえる程力強く作戦を反芻する。

 

「先ずは……梅様と夢結様、鶴紗さんに藍が一撃を加えて下さい」

「おう、梅に任せとけ!」

「狙いはあのガトリング……あれさえ無ければ攻略は容易いわね」

「……こんな戦い、さっさと終わらせて帰ろう」

「一葉、はやくたたかわせて」

 

 飄々とした返事を返す4人組に安堵しつつ、特型ヒュージの様子を木陰から窺う。

 が、しかし輪郭だけ真似たような出来の悪い天使像は相も変わらずケイブの正面に陣取ったまま虚空を見詰めており、散開したリリィ達に気付いているとは思えない。

 つまり、今も変わらず先手は人類が握っているのだ。

 

「第1フェイズの成功が確認出来次第私、梨璃さん、結梨さん、ミリアムさんが突撃し皆さんは遊撃に移ります」

「上手く出来るか分からないけど……やってみます」

「大丈夫、私達なら出来るよ」

「特型相手にフェイズトランセンデンスは悪手じゃが……ま、使わんでも何とかなるじゃろ」

 

 出会ったばかりの相手に指揮を任せ、何をしでかすか分からない敵に挑むと言うのに百合ヶ丘の3少女は気合いに満ち溢れている。

 正真正銘仲間を信じ、一丸となってヒュージに立ち向かわんとするリリィの姿が、緊張の最中にも一葉に活力を与える。

 一方で、未だヒュージに動く気配は見られない。

 ただただ、自らの体液で作られた血の池から動く事なく静止している。

 人間がいないならば探して殺す、そんな性質を持つ彼らが「動かない」だけで一葉にはそこはかとなく不気味に感じられた。

 

「最後に、雨嘉さんと千香瑠様のお二人は近接戦には参加せずに狙撃に徹して下さい。万が一の際は、ガトリングに射撃を当てて射線を逸らしてもらう事になるかもしれませんが……」

「えぇ、分かったわ」

「やって、みます」

 

 返事は簡潔。

 言葉に秘められた闘志が静かに燃え盛る──が、一葉は千香瑠が心配でならなかった

 

(千香瑠様……本当に大丈夫なんでしょうか)

 

 つい先刻、二川アルトと顔を会わせたその瞬間から彼女の様子がどうもおかしい。

 聞けば現在も()()()()のアルトとは彼が生まれた時からの関係、つまりは姉代わりだったらしく、死んだと思っていた「弟」に再会した事で感極まってしまったらしいが──本当にそうだろうか。

 根拠など何一つとしてありはしないが、何か「嫌な予感」がする。

 一葉自身も上手く言葉には出来ないが、ヒュージとの戦いよりも粘性で、汚泥のような濁った危険が迫っているような気がするのだ。

 

(……いや、今は止めておこう。話を聞くならこの戦いが終わってからでも遅くない筈──)

 

 そう、こんな所で仲間を疑っている場合ではない。

 仲間への不信、些細な疑念が敗北を呼び込むのだ。

 況してやアルトと千香瑠は同じリリィ。

 リリィがリリィに剣を向けるなどあり得ない、と首を振って────くぐもった機械音声が耳に飛び込む。

 

『SEARCH』

 

「──────え?」

 

 ガトリングの銃口が、一葉達に向けられていた。

 静止したまま、振り向く事も、音を立てる事もせずに想定された関節を全く無視してねじ曲がった両腕が、いつの間にか背後に潜むリリィ達を捉えていたのだ。

 

「────まさか」

 

 夢結も、梨璃も、恋花も、誰1人として動けない。

 完全無欠に不意を討たれ硬直した少女達に向けられた灰色の砲身がキュルキュルと回転を始め──

 

『BURST』

 

「────!?」

 

 つい最近()()()()()()()()()()音声と共に放たれるは、ヒュージの体細胞を変換して作成された弾丸の嵐。

 如何なリリィと言えど、予め撃たれると理解していない限りこれを防ぐ術は存在しない。

 もし千香瑠の「ヘリオスフィア(マギ光帯バリア)」か鶴紗の「ファンタズム(限定的未来予知)」が既に使用されていたならば、例え2門のガトリング砲であっても何ら脅威足り得なかったのだが──現実は違う。

 2つの銃口から各々毎秒約60発の勢いで発射された銃弾は、何の妨げも受ける事なく少女達に殺到する。

 リリィ達に成す術は無い。

 無慈悲に、無惨に、その肉体を引き裂かれるしかない。

 

『ASSAULT CHARGE』

 

 ──そう、リリィならば。

 

「うわああああああああッ!」

「アルトくん!?」

 

 アルトの絶叫と、二水の悲鳴。

 オーソライズバスターを投げ捨て一気に加速したゼロワンは、ガトリング砲の射線にその身を割り込ませる事でリリィ達を銃弾の暴威から守ったのだ──あまりにも大き過ぎる代償と引き換えに。

 

「あ、がっ!?ぐ、ごぉ、ぎぃぃっ!?」

 

120:ご機嫌よう名無し様 ID:NWeuo2fdj

 耐えろ!今だけは何としてでも耐えろ!

 

121:ご機嫌よう名無し様 ID:t40WnXrzx

 頼む堪えてくれ!此処で折れたら二水ちゃん達が皆死ぬんだぞ!?

 

 ゼロワンの装甲は強固だ。

 機関銃等の軽火器では特殊装甲「シャイニングライナー」に傷を付ける事すら叶わず、ヒュージが放つ熱線でも短時間ならば受け止められる程に攻撃からの耐性を持つ。

 しかし、そんなシャイニングアサルトホッパーの装甲を以てしても、ヒュージの外殻を素材として精製された弾丸を防ぎきる事は不可能だった。

 

 ────1秒

 

 ゼロワンの装甲を跳弾の火花が覆い尽くす。

 絶え間無く打ち付ける衝撃に後退りしそうになるが、果敢な少年は耐えていた。

 

 ────2秒

 

 直撃した弾の数は240発を越え、ゼロワンの装甲が砕け始める。

 黄色い装甲片が漸く事態を正しく認識して走り出す二水の頬を掠めて樹木に突き刺さったが、少年は耐えていた。

 

 ────3秒

 

 銃弾は遂に装甲を抉り、アルトの肌を裂くに至る。

 瞬く間に噴き出した血液が足元に血溜まりを作ったが、それでも少年は耐えていた。

 

 ────4秒

 

 樹木が折れ、草が弾ける。

 撒き散らされた血が偶々近くにいた千香瑠の服にべったりと貼り付くが、未だ少年は耐え続けていた。

 

 

 ────5秒

 

「ぁ、が、ぅ────」

 

 耐えきった。

 円状に展開され高速回転するシャインクリスタが盾になり、リリィ達が射線から逃れるまでの5秒間、即ちおよそ600発の弾丸をアルトはその身一つで受け止めたのだ。

 そして半壊したゼロワンがぐらり、とよろめき──前傾姿勢のまま飛び出す。

 

『SHINING STORM IMPACT』

 

「あぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

「■■■■■!?」

 

 それは正しく一撃必殺。

 稲妻を纏う流星と化したゼロワンが、ガトリングを撃ち尽くした天使を蹴り飛ばす。

 青黒い体液を撒き散らし、木々を薙ぎ倒しながら吹っ飛ぶその巨体を見送って──しかしそこまでだった。

 

「──ク、ソ……!」

 

 ガクン、と膝が折れる。

 まだ折れる訳にはいかない。

 あのヒュージの息の根を完全に止めるまでは絶対に動きを止めてはならないのに──気が付けばアルトは倒れていた。

 最早体が着いてこないのだ。

 

「このぉぉぉっ!」

「やってくれたな、ヒュージ風情が……!」

「アルトくん──アルトくん、しっかりして下さい!」

「追撃は我々がやりますから二水さんはアルトくんを連れてエレンスゲの司令部まで後退して下さい、今すぐに──千香瑠様!?」

「ぃ、いや……嘘よ、こんな……どうして……!」

 

 雨とヒュージの体液でぬかるんだ地面に倒れ伏す少年の周囲を、怒声と悲鳴と足音が通過していく。

 そして激痛と失血で薄れつつある意識の中で、二川アルトは──答えを得た。

 

 

 

 

 

 

132:ご機嫌よう名無し様 ID:NWeuo2fdj

 ……ダイナマイティングライオンに、スカウティングパンダ?

 

 

 

 天使の胴体には、半ばめり込むようにして2つのキーが突き刺さっていた。

 

 

 

■■■

 

 

 

「──もし君がこのメッセージを聞いているのなら、私は既にZAIAジャパンの社長を解任されているだろう」

 

「後任は与太垣ウィリアムソンだが……残念な事に、彼は常識的過ぎる。これまでの私の行いを看過してくれたのはありがたいが、社長として考えるならば間違いなくリスクから手を引く筈だ」

 

「つまり、今後のゼロワン計画は飛電製作所と百合ヶ丘女学院に託されたと言う事だ。まぁ、正直に言うなら……残念だな。どうやら人とリリィが手を取り合うには早過ぎたらしい。それも人間側の問題で」

 

「私は一先ず雲隠れする事にしたよ。飛電に合流したいのは山々だが、今の私では1000%重荷にしかならない」

 

「おっと、何故私が解任されたかについてまだ話していなかったな。まぁ、簡単な話だ。どうせ明日には新聞の一面を飾っているだろうが、我々ZAIAジャパンは大規模なハッキングによって情報を流出させた責任を取らなければならない」

 

「飛電の資産については何とか守りきったが、ZAIA製のプログライズキーやショットライザーは完全に流出してしまった──ここまで言えばもう分かるだろう。これは私からの忠告だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()が動き出したぞ」

 




◯二川アルト/仮面ライダーゼロワン
ゼロワンは瞬発力が大事なライダーだから盾とかやるならメタルクラスタホッパーじゃないとダメだよね(無慈悲)
それはそれとしてガトリングで掃射された直後にそのまま蹴り1発入れられる程度にはガッツがある。
新たな姉なる者の出現に頭を抱えているが…

◯芹沢千香瑠
メンタルボロボロだけど常識人なので二水ちゃんみたいに振り切れた行動にはまだ出られない。
それはそれとしてアルトくんの血がぶっかかって発狂している。

◯二川二水
取り敢えずアルトを背負って撤退中。
アルトが散々な目に遭うのは何度も見ているので千香瑠様よりはまだ精神に余裕がある。

◯天津垓
社長を解任された男。
まだZAIA日本支社が倒産(物理)した訳ではないがザイアインテリオンを作ろうとしているので、多分どっかで見たようなアジトで秘書と一緒に居抜きしている。

正直に言って戦闘無しで考えたら誰との絡みが見たい?(あくまで参考である事をご了承下さい)

  • 二水
  • 結梨&梨璃&夢結
  • ぐろっぴ&百由様
  • 一葉
  • 恋花&瑶
  • 千香瑠&藍
  • 灯莉
  • ひめひめ&灯莉&紅巴
  • 叶星&高嶺
  • その他一柳隊メンバーなど
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