【悲報】ワイ、転生したら百合の間に挟まる仮面ライダーだった【ゆるして】   作:イナバの書き置き

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自分とは思えない更新スピードだ…

後アンケート作ったので気が向いたら回答して頂けると助かります。


第4話「襲来☆丹羽灯莉」

「それじゃあ、また明日」

「うん、二水ちゃんも夜更かしするなよ」

「はは、誰に言ってるんですか……こう見えて健康管理はしっかりやってるんです!」

「そっか。じゃあ身長ももっと伸びるな!」

「言ってくれますね……!」

 

 会話は軽妙。

 しかし包帯で全身をぐるぐる巻きにされたアルトの見送りを受けながら病室の扉を閉じた二川二水は、深い溜め息を吐いた。

 

「はぁぁ……ごめんなさい、アルトくん……」

 

 あの特型ヒュージとの戦闘からは、既に1週間近くが経過している。

 数多の銃弾を受け倒れたアルトだったが、ゼロワンの装甲が余程頑丈だったのか幸いにも即座に命に関わるような傷は負っていなかった。

 大半は白い肌とその下の肉を軽く抉った程度であり、彼を明確に貫いたと言えるのは脇腹の2発と左手の1発のみだ。

 気絶したのもガトリング弾がゼロワンのマスクに着弾し軽い脳震盪を引き起こしたからであり──端的に言ってしまえば、アルトは()()()()()()()()()()ずっと軽傷だったのだ。

 

 無論それは放って置いても治るとか、そう言う意味では無い。

 二水が背負って運ばなければ間違いなく失血死しているだろうし、そうでなくとも決して楽観視出来るような状態ではなかったのだから、先程のように会話が出来るだけでも何よりありがたいものだ。

 だが────約束は果たせなかった。

 

「グリーンフェア、終わっちゃった……アルトくんと一緒に行く筈だったのに……」

 

 百合ヶ丘女学院主催の地域振興イベント、グリーンフェア。

 今年で12回目となるそれに一柳隊はボランティアとして参加する筈だったが──看板作りや誘導等で精力的に働く彼女達の中に、当然アルトの姿は無かった。

 そして皆、その事を口に出さなかった。

 話題にしてしまえば何かが崩れる、罅が入ってしまう──そんな風に思い込んでいたのだ。

 

『仕方ないよ』

『え?』

『あんな初見殺し、誰だって気付ける訳が無い。だから仕方ないんだ』

 

 ほんの数時間前、傷だらけの少年は撃ち抜かれた左手を眺めながらそう語った。

 確かに彼の言う通りかもしれない。

 只でさえ行動を読めない特型ヒュージが明らかに人類由来のガトリング砲を装備していたのだから、どんな精鋭だって仕損じていた可能性は存在する。

 どれだけヒュージとの戦いに熟達していたとしても、対人戦は経験した事が無いのだから無理なモノは無理──そんな風にアルトは一柳隊を気遣っていた。

 尤も、それをリリィ達が納得出来るかと言われれば話は別だが。

 

「……訓練、行きましょう」

 

 黄昏時を迎え、オレンジ色の陽光が射し込む廊下を二水はゆっくりと歩き出す。

 グリーンフェアの疲れが無いと言えば嘘になるが、やはり訓練は行わねば何かが崩れてしまいそうだった。

 そしてそれは二水だけに限った話では無い。

 梨璃も、夢結も、梅でさえこの時間帯なら恐らく射撃場にいるだろう。

 誰もが闘志に燃え──同時に怒りに燃えていた。

 

「────」

 

 それにしても先ず努力する必要に迫られているのは自分だ、と二水は思い返す。

 だって、特型に最初に狙われたのは二水なのだから。

 

『アイツ、最初に二水ちゃんを狙いやがった』

『私ですか?司令塔の役割を持つ一葉さんや神琳さんではなく?』

『二水ちゃんは「鷹の目」を使ってたろ?()()()視界でヒュージを目視していたなら避けられたと思うけど、あの時は俯瞰視点だったから銃口を()()()に向けられている事にしか気付けなかった。それを特型も知っていたから最初に狙ったんだ』

『それ、は……』

『その後はヘリオスフィア持ちの千香瑠様、狙撃担当の雨嘉さんを潰して後方に気を取られた皆を掃射すれば終わり。特に梨璃ちゃんなんかは仲間思いだから、真っ先に振り向いて撃ち抜かれるってのがゼロワンの予測結果だったよ……あのクソヒュージ必ず殺してやるからな……

 

 ぼそりと呟かれた最後を除けば淡々と述べられた結論に、二水は打ちのめされた。

 そう、特型が相手にも関わらず後方に待機しているから最初に狙われる事は無いだろうと思い込んでいたのは誰だ。

 これだけ人数が揃っていれば大丈夫だろうと慢心していたのは誰だ。

 アルトがガトリングの暴風に曝されている時、真っ先に動き出したにも関わらずろくに援護出来なかったのは誰なんだ。

 

二水だ

 

 そこまで理解しているのだから、当然これからやるべき事も理解している。

 見直しを。

 体の動かし方を、銃把の握り方を、仲間の特長を、ヒュージの生態を、部隊戦術を、リリィとしての心構えを──1から、全て見直す。

 アルトを守り、共に闘うと誓ったのだから、既に迷いは無い。

 

「さて────」

 

 後悔はした。

 反省もした。

 ならば──後は進むのみ。

 

「────やりますか」

 

 不退転の少女が黄昏に起つ。

 

 

■■■

 

 

 

555:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 何とか生きてるぜ

 

556:ご機嫌よう名無し様 ID:XhymIuqu1

 生きとったんかワレェ!

 

557:ご機嫌よう名無し様 ID:KF8wZwUXf

 何かそのやり取りも久し振りだな……

 

558:ご機嫌よう名無し様 ID:d5jgh6WYJ

 バチクソ負荷が重いアークワンだった頃以来でしょ多分

 

559:ご機嫌よう名無し様 ID:1OLr5LlTo

 変身する度にぐえーして体がおかしくなってたのが懐かしいですね

 

560:ご機嫌よう名無し様 ID:ZhYJ8fhYP

 しっかしあんな撃たれまくってよく無事だったな

 ドレイクだったら死んでたろ

 

561:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 いや、全然無事ではないんだ

 全身包帯ぐるぐる巻きで絶対安静を言い渡されてる

 〔添付:顔以外全身に包帯を巻かれた少年がベッドの上で苦笑いをしている写真〕

 

562:ご機嫌よう名無し様 ID:+0q/K2K1J

 草

 

563:ご機嫌よう名無し様 ID:ychwMgQSn

 照井焼きかな?

 

564:ご機嫌よう名無し様 ID:2tKSj141n

 殆どミイラじゃん

 

565:ご機嫌よう名無し様 ID:afcso0NIW

 全身余す所なく弾ぶちこまれてたからな

 生身だったらミンチになってそう

 

566:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 ホントゼロワン様々ですわ

 顔とか肺とか心臓とか命に関わる部分はアーマーがしっかりガードしてくれてたし、精々脇腹と左手に穴が開いただけで指が千切れたりもしてないからな

 

567:ご機嫌よう名無し様 ID:hLEN2v3W+

 !?

 

568:ご機嫌よう名無し様 ID:h7AET6Gfn

 普通に重傷じゃねーか!

 

569:ご機嫌よう名無し様 ID:pM3rxrWIL

 手に穴が開くとか普通に入院からのリハビリ案件じゃないすかね……知らんけど……

 

570:ご機嫌よう名無し様 ID:2w1Sb9y4i

 それで精々とかお前頭可笑しいんじゃねえの?(罵倒)

 

571:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 ……言われてみれば全然精々じゃないな、どうかしてるわ俺

 

572:ご機嫌よう名無し様 ID:XV1XaWFed

 おいおいおいホントに大丈夫かよ

 そんな調子だとまた二水ちゃん泣かせるぞ

 

573:ご機嫌よう名無し様 ID:nJWSkdTo3

 それだけならまだしも千香瑠様も泣かせる──いや多分既に泣いてるわこれ

 

574:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 うーん、何て言うか……勿論死にたくはないんだけどなまじガチ死亡を経験してるから「無事」のハードルがかなり低くなってるのかもしれんな

 

575:ご機嫌よう名無し様 ID:YibofntuN

 そりゃ全身から噴血したまま戦ったり肉体丸ごと蒸発したりすればそうなるだろうけどさぁ

 

576:ご機嫌よう名無し様 ID:hUGWEInSB

 なるほど?

 

577:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 しかも何て言うか、相手のやり口がかなり現実的で……今回ばかりはマジで死ぬかもと思ったから生きてるだけラッキーじゃん?

 って考えてた訳よ

 

578:ご機嫌よう名無し様 ID:VcspNYZKP

(唖然)

 

579:ご機嫌よう名無し様 ID:gmzk8Ti/d

 イッチさぁ……

 

580:ご機嫌よう名無し様 ID:c3zoqRThp

 一柳隊の皆と千香瑠様を泣かせない為にももう少し正常な生死観に戻ってもろて……

 

581:ご機嫌よう名無し様 ID:YSEU13D/R

 転生して生死観が麻痺する転生者はたまに見かけるけどこれは幾らなんでもヤバいわよ!

 

582:ご機嫌よう名無し様 ID:brtUQ24T7

 仲間の為なら命を捨てられる(有言実行)はちょっと……

 

583:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 いや、うん……流石に可笑しかったわ俺……

 

584:ご機嫌よう名無し様 ID:yNMjqCzkk

 まぁ新たな姉なる者の出現だったり何故かヒュージにプログライズキーが埋まってたりでパニックになるのは分かるけどね

 

585:ご機嫌よう名無し様 ID:yPQ2GR/2z

 そう言えば特型はどうしたん?

 すごい勢いでぶっ飛んでったのを皆が追撃してるのは見たけど

 

586:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 逃げられたらしい

 何でも第二形態みたいのに変化してノインヴェルトの邪魔もしてきたんだと

 

587:ご機嫌よう名無し様 ID:VhZjdGg1W

 ヒュージの癖して無駄に小賢しいですね……

 

588:ご機嫌よう名無し様 ID:+3WfjsE9r

 第二形態とかゲームみたいな事しやがってよぉ

 

589:ご機嫌よう名無し様 ID:5KkDgSR3u

 それはしゃーない

 あの特型初見殺し要素が多すぎる

 プログライズキー刺さってるとか誰が予想出来んよ

 

590:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 ヘルヴォルの人達は東京に帰ったらしいけど……千香瑠様が心配だな

 ちょっと精神にキテた感じある

 

591:ご機嫌よう名無し様 ID:L6lw0IYqg

 あぁ何かダメそうだったもんな……

 

592:ご機嫌よう名無し様 ID:N42SeEEa8

 >>590

 お前のちょっとおかしくないか?

 

593:ご機嫌よう名無し様 ID:u+uog+br/

 いやあれはかなりダメじゃない?

 大切な弟分がガトリングで撃たれまくった挙げ句に血がぶっかかるとか誰でも発狂するよ?

 

594:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 まぁ今となっては一葉さんに任せるしかないが……

 

595:ご機嫌よう名無し様 ID:8i+qL/Uwr

 それもそうね

 

596:ご機嫌よう名無し様 ID:fUXSh2rSA

 一葉さんはイケメンだし口説いてくれるよきっと(投げやり)

 

597:ご機嫌よう名無し様 ID:hDSyj99QO

 此処で愚痴った所でこればっかりはどうにもならんしな

 それより今後はどうなるん?

 

598:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 一柳隊は特型対策の為にこの前御世話になったグラン・エプレの人達と今日から合同で合宿するらしいよ

 

 

 

 百由様主導で

 

599:ご機嫌よう名無し様 ID:gwdGE/WZ9

 えぇ……(困惑)

 

600:ご機嫌よう名無し様 ID:EsZ5aC48A

 百由様……百由様で大丈夫なんか……?

 もっとこう、祀様とかいるやろ……

 

601:ご機嫌よう名無し様 ID:BMwIB603n

 マッドサイエンティスト気質過ぎてあんまり信用されてないの草

 意外と良識あるし仕事はきっちりこなす人だと思うんだけどなぁ

 

602:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 いや、まぁ、うん……合宿今日から始まるのにサプライズだからって皆には黙ってるみたいだし……

 ワイに話してくれたのも参加出来ないと思ってるからみたいだし……

 うん……

 

603:ご機嫌よう名無し様 ID:LBB5SPfT8

 そっか……

 

604:ご機嫌よう名無し様 ID:JanAIau6y

 百由様さぁ……ちょっと擁護出来ないよ……?

 

605:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 まぁワイも後から飛び入り参加するつもりなんですけどね

 

606:ご機嫌よう名無し様 ID:sU509n7Fq

 は?

 

607:ご機嫌よう名無し様 ID:xfyrPzOZA

 おめぇ安静にしとけって言われてたろハゲ

 

608:ご機嫌よう名無し様 ID:a5p0CFSAf

 今回は二水ちゃん泣かなかったけど次こそ泣くぞ

 

609:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 いやちゃんと治してから行くよ!

 何たって明日には「Z」持ちのリリィが外征から戻ってくるし!

 

610:ご機嫌よう名無し様 ID:zZ60Ah8uW

 Zって何……?

 

611:ご機嫌よう名無し様 ID:lzzozUAQX

 ウルトラマンでしょ

 

612:ご機嫌よう名無し様 ID:RS597lvsx

 ご唱和下さい我の名を!

 

613:ご機嫌よう名無し様 ID:Ec8+h+gPt

 教えて情報ニキ!

 

614:情報ニキ ID:nGM0WRjAT

 >>610

 Z:スキル覚醒者の両手に収まる範囲で時間を巻き戻す事が出来るレアスキル

 致命傷ですら治せる為軍医や医療に携わる人にとって憧れのスキルであり、何ならオーバーヒートしたCHARMの回復だってお手の物

 ただし覚醒する確率が尋常じゃない位低いので目覚めた人は引っ張りだこになるそうな

 

615:ご機嫌よう名無し様 ID:kTazxGsvN

 はやい

 

616:ご機嫌よう名無し様 ID:+7Y5Li7wf

 はえー、情報ニキありがとう

 

617:ご機嫌よう名無し様 ID:7vtgCo8NS

 成る程、イッチはこれで傷を治してもらおうとしてるのか

 

618:ご機嫌よう名無し様 ID:mtZygzL7r

 まぁ参加出来る理由は分かったが、そこまで急ぐ必要あるん?

 

619:ご機嫌よう名無し様 ID:tCd9wAQ5G

 そうね

 最近ボロクソにされてるしちょっと休んだら……?

 

620:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 いや無理あの特型今すぐぶっ殺したい

 ぶっ殺すのは無理でもせめて1発殴りたい

 

621:ご機嫌よう名無し様 ID:PxbHcVqL+

 ヒエッ

 

622:ご機嫌よう名無し様 ID:FQO687/sc

 何か殺意の波動に目覚めてる……こわ……

 

623:ご機嫌よう名無し様 ID:P411BP9nw

 何で?

 

624:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 あいつ最初に二水ちゃん狙いやがった

 

625:ご機嫌よう名無し様 ID:zzJtKsDgF

 はい有罪

 

626:ご機嫌よう名無し様 ID:w3YgyauI6

 到底許されるべき行為ではない

 

627:ご機嫌よう名無し様 ID:yF1ZeeT0k

 誰狙っても許せないのによりにもよって二水ちゃん狙うとか逆鱗に触れたな

 

628:ご機嫌よう名無し様 ID:aQDBTZhg4

 よーしそうと来たらシャインクリスタの行動パターン見直そうぜ

 まだまだ洗練出来る所はある筈だ

 

 

753:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 何か知らない僕っ子が病室の前で頭抱えてるんだが……

 

754:ご機嫌よう名無し様 ID:wQsaAWlIT

 イッチ!(バシィ

 今真面目な話してる所でしょ!

 

755:一般転生ゼロツー ID:Rider01+02

 ホントなんだって……

 信じてくれよ……

 

 

 

■■■

{ 第  話 }

 

襲 来 ☆ 丹 羽 灯 莉

Trip to garden

 

 

その少女、自由人につき

──×──

"An aqua current that encompasses everything around it."

■■■

 

 

 

 ────丹羽灯莉(たんばあかり)は学生である。

 

 東京地区は荻窪に校舎を構える異端のガーデン「神庭女子藝術高校」絵画学科1年生にしてレギオン「グラン・エプレ」のメンバーである彼女は、この度連携して作戦を遂行する事になった一柳隊との合同合宿の為、電車で約一時間半かけて鎌倉の地を訪れた。

 車窓から広がる一面の大海原に御満悦だった事は特筆すべきだろう。

 

 ────丹羽灯莉はリリィである。

 

 東京のレギオンでは珍しく可変フォーメーションを採用するグラン・エプレで、彼女は狙撃手を担っている。

 その朗らかで無邪気な性格に反して、グランギニョル社謹製のCHARMマルテを用いたロングレンジからミドルレンジにかけての射撃精度は正確無比と呼ぶ他無い。

 

 ────丹羽灯莉は芸術家である。

 

 好奇心と想像力の赴くままに行動する彼女の興味は、専らヒュージ(とユニコーン)に注がれている。

 無論科学者的な興味ではなく「生物でありながら非生物な所が面白い」として絵画の題材にしているとの事だが、普段からかなりふわふわしている彼女が内心何を考えているのかは誰にも分からない。

 不思議ちゃん、変な子、電波系──良くも悪くも色々彼女を例える言葉はあるが、絵画への真摯な姿勢を鑑みるに芸術家と評するのが相応しいと思うだろう。

 

「おー、やっぱ都内と違って百合ヶ丘は広いなー☆」

 

 さて、そんな丹羽灯莉が何をしているのかと言えば──探索だ。

 百合ヶ丘に到着したは良いがどうも集合には早すぎたらしく、応接室で待ちぼうけを食らった彼女はグラン・エプレのリーダーである今叶星に許可を取って敷地内をうろついているのだ。

 

「ユニコーンは、どっこかなー♪」

 

 百合ヶ丘女学院と言う未知なる地は彼女にとって宝の山だった。

 建築物が、森林が、リリィ達が、ありとあらゆる生命の営みが灯莉からすれば絵画の題材な上に、趣味である「ユニコーン探し」も出来ると正に一石二鳥。

 故にこそ意気揚々と散策に乗り出した訳だが──ピタリと足が止まる。

 

「────んん?」

 

 好奇心の赴くまま駆け回る内に灯莉が辿り着いたのは、学院内に設置された病棟の一室であった。

 何の変哲も無い引き戸に釘付けとなってしまったのだ。

 

「二川、アルト?」

 

 ネームプレートに記されているのは、リリィ達の聖域であるガーデンでは殆ど見かけない男の名前だった。

 その名前に灯莉は覚えがある──ような気がするのだ。

 具体的に言うと何週間か前に、防衛省発行を官報を握り締めた友達(定盛)が二川アルトなる人物について何か興奮しながら語っていた記憶がある。

 当時ユニコーン探しに夢中だった灯莉は無慈悲にもスルーしていたが──いざこうしてネームプレートを目撃してしまうと気になってしまう。

 

「……どうしよっかな」

 

 しかし、彼女の良心が待ったをかける。

 そうだ、よく考えてみろ。

 此処は病棟だ。

 この二川アルトなる某かが病棟にいると言う事は何らかの病気か怪我を負っていると言う事であり、そんな所に突然入っていったら迷惑になってしまう。

 勇気を固めて侵入すべきか大人しく移動すべきか、灯莉は重要な選択を迫られていた。

 

「うーん、うむむ……!」

 

 灯莉は悩んだ。

 即断即決、思うがままに生きる彼女にしては珍しく頭を抱えてそれはもうウンウンと唸る程に考えた。

 だが、そんな風にして10分も唸り続けるモノだから────

 

 

 

「誰?って言うかそんな所で何してるの……?」

「え、考え事」

「どんな?」

「特に深い理由は無いけどこの病室に入るか入らないか」

「それ僕に言っちゃダメじゃね?」

「そうだね☆」

 

 珍妙な気配に気付いたアルトが、扉の向こうで踞って頭を抱える灯莉を発見してしまうのもまた当然の話であった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、今。

 

「え、じゃあさ。定盛さんはアイドルになりたいワケ?」

「うーん。正確にはアイドルリリィって言ってね、皆に夢と歌を届ける凄いリリィなんだ。ぼくも手伝った事あるよ」

「いいなぁ……おじさんそう言うキラキラした夢持ってる子見かけると浄化されちゃう……」

 

 二川アルトと丹羽灯莉は、アルトが隠し持っていたラムネをちびちびと啜りながら非常に、ひじょーに弛い会話を行っていた。

 元より外面を取り繕わない灯莉は兎も角、少年はキャラ崩壊に両足突っ込んでいるレベルで弛い。

 ゆるゆるの極みだ。

 

「うんうん、大分砕けてきたねー♪」

「そりゃさあ、灯莉に対してカッコ付けたって意味ないだろ……?」

「そういう事。色々隠して喋ってたって詰まんないよー☆」

 

 そう──この少女、少年にカッコ付ける事すら許さない程純真無垢なのだ。

 正に本音と本音のぶつかり合い。

 下手に隠せば一瞬で見抜かれるのだから、転生者としての本音(素の自分)を出すしかなかった。

 

「いやでも、頼むから二水ちゃん達に黙っててくれよ?」

「なんで?」

「男は何かとカッコ付けたがる生き物なんだよ。特に相手が、ほら、その……あれだとさぁ」

「あれって何?」

「……黙秘で」

「なーにー?教えてよー!」

 

 そしてこの少女──好奇心がヤバいのである。

 一体何が楽しいのかは知らないが、アルトの身の上から交友関係まで根掘り葉掘り質問されれば敬語が取れるのも致し方無しと言えるだろう。

 そんな訳ですっかり彼女のペースに呑まれてしまったアルトは、追い出す事も説き伏せる事も出来ずにラムネを分け与える羽目になっていたのだが──

 

「アルトは合宿に行かないんだね」

「──!」

 

 不意に呟かれた言葉が、少年を硬直させた。

 

「……知ってた?」

「ううん、ぼくは()()()どんな人間かなんて全然知らないよ。でもふーみんとはグリーンフェアの時に喋った事があるから、そこから推測しただけ」

「そう、か……」

 

 成る程、二水と交友があるのなら例え彼女が喋らずとも自分の事など知られていて当然だろうと少年は納得した。

 正直なのは美徳だと思うが、二水は思っている事が顔に出過ぎるのだ。

 

「いや、まぁね。特型──ジェミノスって命名されたんだっけ?こてんぱんにやられたよ。流石に広域探知からのガトリングは卑怯だ」

「ふぅん、まぁ特型って言うしそんな事もあるよね☆」

「しかも両腕の稼働範囲が人のそれから完全に逸脱しているから、後ろに回り込むのも得策じゃない。多分、囲んで袋叩きにするのが1番だと思う」

「ヒュージなのに人みたいなことしてて、なのに人の特徴を捨ててるの?変なヒュージだね」

「俺もそう思うよ」

 

 既にプログライズキーも含めた特型ヒュージの情報は一柳隊内で共有されているが、グラン・エプレに関してはその限りでは無いだろうと、特に咎められた訳でもないのに強張った肩を下ろしつつアルトは自分の失敗を告白する。

 対する灯莉はふんふんと鼻を鳴らしつつも話に耳を傾けるのみ。

 天性の聞き上手なのだろう。

 しかし、何と言うかだ。

 

(何なんだこの子……!)

 

 どうにも、灯莉相手ではやり辛く感じる。

 ペースに呑まれるとか洞察力に怯むとかそう言うのではなく、体が勝手に引いてしまうのだ。

 きらきらと目を輝かせる所とか、その語尾に「☆」が付いていそうな話し方とかが特にヤバい。

 最早本能的に苦手意識を抱いているとしか思えないし、これが今日一杯続くのであればアルトはドクターストップを振り切ってでも自室に帰還する覚悟があった。

 が────

 

「あーっ!」

「うわ何だよいきなり」

 

 チラ、と腕時計を見た灯莉が突然けたたましい叫びを上げ慌てふためき始めた。

 即ち、定刻である。

 百由主催で行われる一柳隊とグラン・エプレのサプライズな顔合わせが始まると言う事だ。

 

「もうそろそろ時間だ!ぼくもう行かないと!」

「おー、そうか。叶星さんによろしく伝えといてくれ」

 

 全然嫌いじゃないけど体がダメそうだから帰ってくれ。

 そう言いそうになるのをぐっと堪えつつ少年はひらひらと手を振り────

 

 

 

 

「バイバイ、()()()()

「……はい?」

 

 最後に投下された特大の爆弾に、今度こそ思考を停止させた。

 

 

 

■■■

 

 

 

「ねぇねぇ聞いてよ定盛ー☆」

 

「だから定盛は止めなさいって……それよりアンタ何処行ってたの!あれだけ探し回ったのに全っ然見つからないじゃ──」

 

()()()()、いたよ」

 

「────っは」

 

「探してたんでしょ?合宿が終わったら会いに行こう!」

 

「……ホントに?ホントのホントに、アルトなの?」

 

「うん」

 

「そう、だったら────」

 

 

 

 

 

「あの日の過ちを、清算しないと」




◯二川アルト
ぐえーしてるけどリベンジする気満々の転生者。
転生者としては灯莉ちゃんは「話しててちょっとやり辛い」程度だけど体(つまり一文字アルト)が勝手に怯え出す位には(一文字アルトは)灯莉ちゃんが苦手。

◯丹羽灯莉
すき。
ラスバレで何してても可愛いんだからとても困る。
アルトとは顔見知りでも何でもないけど定盛から聞いた情報だけで一文字アルトだと看破した。
ついでに言えば中身が何か違うな、位には察している。

◯定盛
定盛。
お前は…お前はアイドルリリィの柱になれ。
それはそれとしてアルトと因縁がある模様。
故に、やはり百仮面ライダー合は処罰すべきと考える次第である。

◯二水ちゃん
ちょっとダークに傾きそうになってるけどもう迷わない。
覚悟を決めた少女は強いのだ。

正直に言って戦闘無しで考えたら誰との絡みが見たい?(あくまで参考である事をご了承下さい)

  • 二水
  • 結梨&梨璃&夢結
  • ぐろっぴ&百由様
  • 一葉
  • 恋花&瑶
  • 千香瑠&藍
  • 灯莉
  • ひめひめ&灯莉&紅巴
  • 叶星&高嶺
  • その他一柳隊メンバーなど
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