【悲報】ワイ、転生したら百合の間に挟まる仮面ライダーだった【ゆるして】 作:イナバの書き置き
555:ご機嫌よう名無し様 ID:Tbtqsz+Ix
む、無傷……?
556:ご機嫌よう名無し様 ID:eCoNUvF3G
これだけやって無傷なのか……
557:ご機嫌よう名無し様 ID:Ir3qVwPBQ
いや……流石に冗談だろ
あれだけ撃ち込んで何も無しって普通有り得ないじゃん
558:ご機嫌よう名無し様 ID:DwVXTe6AL
でも見た感じ跳ねた土位しか付いてないし……
559:ご機嫌よう名無し様 ID:8U4weE1Bo
そうだね……
560:ご機嫌よう名無し様 ID:GGUgM5+oJ
イッチの視覚=アークワンのセンサーで見て何もないって事はマジで何もないんだろうな……
561:ご機嫌よう名無し様 ID:2LxyflqvY
……控え目に言って、これ無理ゲーでは?
562:ご機嫌よう名無し様 ID:34u1tzr58
そうだよ(全面同意)
563:ご機嫌よう名無し様 ID:U3Nu4Sgkc
イッチは調子良さげだけど所詮イッチだし不破さんもアサルトウルフだし……もうどうにもならんね
564:ご機嫌よう名無し様 ID:PVPMMNNUH
ローンウルフ出せなんて高望みはしないけどせめて不破さんがランペイジかオルトロスだったらなぁ
565:ご機嫌よう名無し様 ID:qeLUUSVuh
亡のサポート無しでのオルトロスはガチ自殺なのでNG
566:ご機嫌よう名無し様 ID:T2XMDkwZ8
それはそうだけどランペイジさえあれば最終的に負けるにしたって時間稼ぎ位は出来ただろうに……
567:ご機嫌よう名無し様 ID:/QplksUg8
うーん……ここまで来ると何も解決策思い付かん
568:ご機嫌よう名無し様 ID:760argJRU
誰もイッチに期待してなくて申し訳ないけど草
569:ご機嫌よう名無し様 ID:pAn9+9d9G
いや……だって……イッチだぜ?
570:ご機嫌よう名無し様 ID:i75mV6Rsp
百仮面ライダー合が強いのは捨て身の時だけだから今回はダメ
571:ご機嫌よう名無し様 ID:80qciGkKF
普通に考えればアークドライバーをゼロツーコアに戻せば終了なんだけどハッキリ言ってイッチのゼロツーそんな強そうに見えん
何故か負けてるイメージが浮かび上がってくる
572:ご機嫌よう名無し様 ID:sw1WoMF0W
そもそもアークドライバー自体がアークル化してるから今更戻せないしな
573:ご機嫌よう名無し様 ID:SKAGC9MFP
こんな時或人社長が欲しい
574:ご機嫌よう名無し様 ID:OYD08BpQO
まーじで
社長いればどうにかなりそうなのに
575:ご機嫌よう名無し様 ID:Zim5hduoE
もうこの際試験中のメタクラで良いから助けに来てくんないかな
576:ご機嫌よう名無し様 ID:Phum9/9mR
つかもう刃さんとか1000%とか夢結様とか全員来てくれ
囲んで袋叩きにしないと倒せないわこれ
577:ご機嫌よう名無し様 ID:u712TVEnQ
倒したら倒したで滅亡迅雷の4人戻ってこないんだよなぁ
578:ご機嫌よう名無し様 ID:LXWHK7XSV
つ、詰んでる……
579:ご機嫌よう名無し様 ID:hCZjxYEJw
もうダメだこれ
兎に角二水ちゃん早く戻ってき────
580:ご機嫌よう名無し様 ID:2dYI7214B
あっ
581:ご機嫌よう名無し様 ID:wwmLwbqnB
あっ
582:ご機嫌よう名無し様 ID:5kJ5ysGZV
ふ、不破さーん!?
583:ご機嫌よう名無し様 ID:BKTqN2DzU
ゴリラーッ!
584:ご機嫌よう名無し様 ID:tu2s2hFKs
え、あれ生きてる?
すげぇ勢いでぶん殴られてすげぇ勢いで吹っ飛んでったけど……
585:ご機嫌よう名無し様 ID:tCKFCaYsJ
変身解けてないし気絶してるだけで生きてはいるんじゃない?
一層勝ち目なくなったけど
586:ご機嫌よう名無し様 ID:4yzmnZXAx
もう笑うしかねぇ……
587:ご機嫌よう名無し様 ID:REN9Oxnz4
イッチも滅茶苦茶動揺してるやんけ!
588:ご機嫌よう名無し様 ID:N3pFBqmF2
あーもうアカンアカン
マジでアカン
589:ご機嫌よう名無し様 ID:j7ZzHTXAT
ひえっ
滅亡迅雷がコッチ見てる
590:ご機嫌よう名無し様 ID:ohvVa8Edo
こっっっわ
画面越しでもビビるわ
591:ご機嫌よう名無し様 ID:pOMztxfB0
ようこれで怖じ気付かんなイッチ……イッチ?
592:ご機嫌よう名無し様 ID:L9qYh/4uH
おーい?
593:ご機嫌よう名無し様 ID:3qcyCOz6w
……え?
594:ご機嫌よう名無し様 ID:6Secw3xaK
……ん?
595:ご機嫌よう名無し様 ID:X9n1706k4
……ねぇこれひょっとしてさ
596:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???
い、威圧感凄くて動けましぇん……
597:ご機嫌よう名無し様 ID:4455LEfrh
おいいいいいいいい!!!!!
598:ご機嫌よう名無し様 ID:RIId148P6
バッチリ怯んでんじゃねぇよこのお馬鹿ぁぁぁぁぁぁ!!!
599:ご機嫌よう名無し様 ID:ODesdaV37
ちょっと見直そうとした此方も馬鹿みてーじゃねぇかこのド阿呆がー!
600:ご機嫌よう名無し様 ID:AwtmHdTwV
いやもうそんな事どうでも良いから兎に角動けー!
601:ご機嫌よう名無し様 ID:nIxTplaCV
いやああああああああ滅亡迅雷来てるぅぅぅぅぅ!!!
しかもマスブレインインパクトしようとしてるぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!
602:ご機嫌よう名無し様 ID:Uj2hJGyhk
あっよしちょっとずつだけど動いてるぞイッチ!
頑張れ頑張れ兎に角頑張れ!
603:ご機嫌よう名無し様 ID:OAZUeEvE7
殴るでも蹴るでも何でも良いから兎に角反撃だ!
戦え────────!
604:ご機嫌よう名無し様 ID:xdFORf5YH
あっ
し、死んでる……
「普通に生きてるよ……」
ひび割れた地面に大の字になって、少年はぼんやりと空を見上げていた。
変身はマスブレインインパクトの直撃を受けて吹き飛ばされた時にはもう解けていたし、ひょっとしたら骨も何本か折れているかもしれない。
兎にも角にも──二川アルトに、立ち上がる程の気力は既に残されていなかった。
「あー……」
しかし、今の彼はそんな事を気にしている様子は殆ど見られない。
寧ろ何処か吹っ切れたような──諦めたような表情を見せてすらいる。
「綺麗な空だなぁ……」
少年の頭の中にあったのは「あの時」──結梨が梨璃と共に逃走し、自分がG.E.H.E.N.A.に送られる筈だったあの日の空。
ノインヴェルト戦術の模倣という異常な特性を持つギガント級を前に命を捨てる覚悟を決めたあの時見上げた空と、今何ともなしに見上げた空がよく似ている──ような気がして、ゆっくりと歩いてくる滅亡迅雷の存在さえ思わず意識から外してしまったのだ。
「……どうすっかな」
あの時、自分が死ななければ代わりに死んでいたのは結梨だったと少年は確信している。
事実、少年が飛行端末を1個だけ残して墜落した時点で彼女はギガント級の根元まで到達していた訳だし、極短時間の戦闘にも関わらずグングニルのマギクリスタルコアは負担に耐えられず自壊しており──そのままであれば爆発に巻き込まれ跡形も残らず蒸発していたのは間違いない。
つまり、少年は「一柳結梨の生存」と引き換えに死んだのだ。
勿論それについて彼女に恩を着せたり、気を遣わせたりするつもりはないが──今見えているのは、その時と同じ空だった。
「死ねば、皆を救ってくれるだろうが……」
掲示板に曰く。
仮面ライダー滅亡迅雷とは未熟な正義に警鐘を鳴らし、その影に潜む真の悪を殲滅する「悪の敵」であるらしい。
この世界に出現した滅亡迅雷が同じ原理の元に活動しているのかはまるで分からないが──もしそれが本当なら、滅亡迅雷は確実に
都内に出現したアークゼロ軍団も、あちこちに潜んでいたらしいヒュージの群れも、シンクネットや何を考えているのかよく分からないG.E.H.E.N.A.でさえ少年なんぞより遥かに効率的に殲滅してくれる筈だ。
何せ彼らは「悪の敵」なのだから。
『
「だろうな」
そして彼らの殲滅対象には当然ながら
一歩一歩踏み締めるようにして此方に進んでくる彼らの言葉も已む無しだ。
それを誰よりもよく理解しているから──炎の中を無言で進み来る滅亡迅雷を一瞥したボロ雑巾同然の少年は、己の「不要さ」を力なく自嘲する。
「殺さない理由、無いもんなぁ」
そう、二川アルトが「二川アルト」としてこの世界に転生した瞬間から今こうして滅亡迅雷に敗れるまでに重ね続けた消えない罪は、償おうとして償えるモノではない。
少年が死ぬべき理由は彼が生きるべき理由に比べてあまりにも多すぎた。
そもそもからして、男が転生さえしなければこの世界に仮面ライダーは存在しなかった。
ゼロワン計画によって翻弄された人々なんていないし、シンクネットだとかアバドンだとか言った醜悪な輩が現れる事もなかった。
一文字アルトも真っ当に生きていただろう。
例えリリィになれないのだとしても、人体実験に参加する事もなく防衛軍の一員として彼女らを支える戦士になっていたのではないかと少年は以前から考えていた。
アークワンにしたって同じだ。
男がいなければ、この世界に転生さえしなければ「悪意」が
「……また死ぬ、か?」
だから、少年は死なねばならない。
それも蘇生する可能性を潰した上で、確実に。
一柳結梨の命を守ったというただ1つの功績を胸に抱いて滅亡迅雷の拳に斃れ、彼らに後を託すのが今の彼に示された唯一の「正しい」運命だった──他ならぬ少年自身がどう思うかは別として。
「なんか、やだな」
当然だ。
1度完全な死を経験した上でまた死にたいなんて思える人間など、世界中の何処を探したって──いや、数えるのも面倒な位大量にいる転生者にだっていやしないのだ。
だって、戦った末の「死」は苦しいのだから。
満足して死ぬ?
冗談ではない。
少年の心には今も己の肉体が蒸発する瞬間の、言葉にするのすら躊躇われる苦痛がハッキリと刻まれている。
思い出すまいと無意識の内に封印しているから気付けないだけで、やはり彼は「死」を恐れているのだ。
──疲労でもう1ミリだって動かせない筈の指先が、僅かに反応した。
「いや、変だな。今まであんなに死にそうな事ばっかしてきたのに……」
時折自殺行為と勘違いされかねない程に無茶な事をしていたのもこれが原因だ。
苦痛に満ちた「死」をどうにかして少女達から遠ざける為に、大切な仲間に何がどうあっても死んでほしくなくて、少年は当人すら気付かぬ内に全てを背負い込もうとしていた。
それに、「死にたくない理由」なら他にもある。
──僅かに反応するだけだった手は、いつしか拳の形へと変わっていた。
「皆を泣かせるのも嫌だな……」
自分が死んでしまったら、二水達は泣くだろう。
幾ら自己評価が最低なアルトでも、いい加減それ位は分かるようになっていた。
そしてそれは少年にとって何より避けたい事態でもある。
だって、誰かが泣いている所は想像するだけでも苦手だから。
無理にとは言わないけれど、出来れば大切な人達には笑っていて欲しいと思っているから。
死んでしまったら、それはもう2度と叶わない。
──ただ握っただけの拳に、いつしか皮膚を突き破ってしまいそうな程に力が籠っていた。
「一文字くんから託された夢は、どうなる……?」
最後にもう1つ。
少年の中には、「彼」から託された夢がある。
世界で1番のヒーローになるという男と男が交わした約束が、今この瞬間だって「諦めるな」と叫んでいるのだ。
これをどうして無視して、封じ込めていられようか。
「どうなるんだよ、なぁ……!」
だから──まだ終わり
堅苦しい「終わるべきではない」ではなく「終わりたくない」と、燃え滾る約束と同じように少年の心が声を枯らさんばかりに叫んでいる。
それなのに、お前は死ぬのか?
──そんな訳ないだろう。
「ああもう!やっぱこんな所で死んでたまるかよ!」
最早自問自答の時間は過ぎ去った。
全身は激痛に悲鳴を上げているが、そんなモノは空の彼方に吹き飛ばしてしまう位の気力が少年の奥底から満ち溢れてきたのだ。
ならば、地面に寝っ転がり死を待っている場合ではない。
「────よし、ブッ飛ばす!」
必要なのは反撃だ。
それもトンでもなく強い1発を、あの無茶苦茶極まりない死神の顔面に喰らわせてやるしかあるまい。
そう思いながら、二川アルトは威勢良く跳ね起きて────
もう目の前に立っていた滅亡迅雷の姿に、あまりにも間抜けな悲鳴を上げた。
「──じゃあ、何ですか」
「知らされていなかっただけで、私は人体実験の被害者になる予定で」
「システムに名前だけ登録されているから、あの変なキーが私の元に来るように仕向けられて」
「それで無意識の内に『生きたい』って願ってしまったから、過剰に反応したシステムがあんなモノを生み出したって」
「……そう言うんですか?」
「……そうなるね」
あんまりだ、と事態の経緯を聞いた片平七海は呻いた。
この世の悪意が一辺に降りかかってきたような錯覚すら覚えていた。
「じゃあ……じゃあ!」
だってそうだろう。
これでは何の為に生きてきたのか分からない。
自分の人生が何の為にあったかすら分からなくなってしまう。
「私はただ苦しむ為にこれまで生きてきたって言うんですか!?」
何か高望みをした訳ではない。
ただ普通に生きたかっただけなのに、大切な家族と何気無い日常を過ごしたかっただけなのに、それすら許されない。
何なんだ、この世界は。
些細な幸せすら当然のように奪っていくのか。
この理不尽に満ち溢れる世界に、少女は怨嗟の叫びを上げた。
「そう、かもれない」
そんな少女の悲鳴を迅は否定しない。
他ならぬ迅自身がソルド計画によって肉体を改造された人間なのだから、否定出来る筈もない。
──だが、それでも。
「でも、これからもそうだとは限らない」
「──っ!」
七海は迅をあらん限りの憎悪を籠めて睨み付けた。
だってそれは、あまりにも不確実な希望に満ちた言葉だ。
無責任で無思慮で、ありきたりな励ましだ。
だから当然、絶望の世界に生きる少女には届かない。
「貴方に何が────」
「分かんないよ!」
「ッ!?」
「俺は君じゃない!君がどんな苦しみを体験してきたかなんて当事者じゃないから100%理解出来る訳ないし、代わってあげる事も出来やしない!」
「だったら────!」
「でも今が全てじゃない!」
しかし、それでも迅は「そうとは限らない」を押し通す。
今に絶望しているだけでは何も変わらない、
「例えどれだけ苦しくても、この世界が理不尽に満ちていたとしても誰かを想うその心だけは絶対に嘘じゃない」
「……!」
「君は……君の親御さんが、君の幸福を願っていないって本当に思うのか?」
「それは……」
そう、思う筈がない。
迅は七海の家族については全く知らないが、それでも彼女の受け答えや対話の姿勢、そして理不尽を憎むその意思の強さから真っ当に愛し愛されていた事を見抜いていた。
だからこそ、そんな彼女が「苦しむ為に生まれてきた」と言ってしまう事が許せない。
そう言わせる環境が、苦しみを生み出すヒュージが、何より「家族と共に過ごした自分」すら否定してしまった七海をどうしても許しておく事が出来なかったのだ。
「無理にとは言えないし、所詮は僕の個人的な意見に過ぎない」
「……」
「でも……でも、自分の人生に意味が無いなんて言わないで欲しいんだ」
結局、全てはそれに尽きる。
意味なく生まれてきた人間なんていないし、意味なく死んだ人間もいない。
人は誰かの想いを受け継いで生きていくのだ。
ただそれだけを、
「……クソ、もうこれ以上は滅達が持たないか」
周囲を瞬いていた星々が──否、何に使われているのかも分からない無数のコンピューター群が、徐々にその輝きを増やしていく。
そう、この場に迅しか現れなかったのは決して彼が最もコミュニケーション能力に長けているからではない。
そもそも、説得を試みるなら迅よりも兄貴気質な雷の方が余程適していると言えるだろう。
では何故雷ではなく迅がこの場にいるのか──決まっている。
情報処理に長けた3人が
「あ……!」
そして不気味な紫色に焼かれた七海の視界は、背を向けて何処かへと立ち去って行く迅の後ろ姿を捉え──思わず、呼び止めてしまった。
「ま、待って!」
「ん?」
光の向こう側で、黒いシルエットと化した男が振り向く。
彼に、何を言いたかったか。
七海は己の気持ちを最後まで理解する事が出来なかった。
しかし──男が「それでも」と言ったように、少女もまた精一杯の「それでも」を絞り出す。
「どうして……!どうして
言って初めて、七海は「助けられた」事に気が付いた。
どんなに無責任でも、どんなに無思慮でも、間違いなく少女は迅の励ましに心を動かされていたのだ。
それを聞いて──光に満たされつつある視界の中で、男はニッとあどけない笑みを浮かべた。
「僕達仮面ライダーは正義の味方、らしいよ」
それなら、仕方ないか。
正義の味方だったら、絶望に沈む子供1人位軽々と救ってみせるに違いない。
遂に真っ白になった世界の中で、少女もまたぎこちなく笑みを浮かべて────青空に戻る。
「あっ、目が覚めたんですね!良かったぁ!」
仰向けになって空を見上げる七海の視界にひょっこりと映り込んだのは、小柄な茶髪の少女。
瞳を潤ませ、ほっと胸を撫で下ろすその仕草からは心の底から安堵しているのが読み取れる。
「えっと、あなたは……?」
「あ、申し遅れました私百合ヶ丘女学院所属の二川二水って言います!」
「リリィ……?」
「そうですリリィです!」
リリィ──そうか、リリィか。
ほんの少し前までは、酷く失望していたその存在。
家族の救出に間に合わなかったから、一時は憎みまでした彼女達。
しかし今は──七海自身にも、どう思っているのかよく分からなかった。
「わっ……とと。いきなり立ち上がって大丈夫ですか!?」
「うん、平気。それより──」
それよりも、先ずはやるべき事がある。
他の誰にも出来ない事で、この世界で七海にだけ出来る事があるのだ。
故に彼女は、咄嗟に肩を支えてくれた二水へと視線を合わせて────
「どうしてもやらなきゃいけない事が、あるの」
力強く、1歩目を踏み出した。
「あれは──アルトくん!?」
今、正に。
漸く立ち上がったばかりの二川アルトに、仮面ライダー滅亡迅雷が無慈悲にも拳を叩きつけるその瞬間に少女は現れた。
隣で悲鳴を上げた二水に肩を支えられ、よろめきながらも何とか辿り着いたのだ。
「────……!」
その努力を無駄にしない為に。
迅の言葉を裏切らない為に。
七海は深く息を吸う。
そして────
一喝。
渾身の叫びを受けた滅亡迅雷が、ほんの一瞬硬直する。
無論これは絶対的な命令ではない。
シンギュラリティに到達し、死に瀕した
「……ん?この音って、まさか……!?」
しかし。
だが。
この一瞬が、全ての命運を分けた。
「百合ヶ丘のガンシップ!?」
戦場の上空を駆け抜けたのは、双胴の航空機──リリィ達を戦場へと運ぶガンシップに他ならず、側面に描かれた百合の紋章はそれが百合ヶ丘女学院に所属する機体である事を如実に示していた。
そして今突如開け放たれたハッチから、銀色に光り輝く「何か」が戦場のド真ん中──即ち、少年と滅亡迅雷目掛けて投下される。
「じゃあ、あれは──グングニル・カービン!?」
二水が叫ぶ。
そう、それは間違いなく真島百由が手掛けたユグドラシル社製CHARM「グングニル」の改造品──構造を簡素化した事でより扱いやすさを向上させた「グングニル・カービン」だった。
「なん──マジで!?」
二水の叫びでその存在に気付いた少年も、ハッと顔を上げる。
そう、救援だ。
絶対に間に合わないと、来ないと思っていた救援が全く想定外の方向から現れたのだ。
しかし、滅亡迅雷も黙ってはいない。
ただ振り下ろすのを中断しただけで、拳は今も少年の眼前にあるのだ。
当然ながらそのまま殴れば、死ぬ。
七海を害する可能性が最も高い存在は、完全に排除される。
故に滅亡迅雷は躊躇なく活動を再開して──拳に当たった銃弾が、軌道を逸らす。
「ギリギリだが、何とか間に合ったな」
「もう2度とアルトはやらせない……!」
下手人は、刃唯阿と白井夢結。
2人はかなり離れた場所から駆け付けた事で息を荒げていたが、それでも射撃の命中精度は百発百中だった。
そして、生まれた隙。
このほんの数秒にも満たぬ間に──少年は己のCHARMを掴み取っていた。
ここで1つ、リリィの基礎的な情報について話をしよう。
リリィ達が覚醒するレアスキルは、当人のスキラー数値である程度予測が可能とされている。
例として挙げるならば──「円環の御手」。
通常1人1機とされるCHARMを同時に2機使用可能とするこのレアスキルはスキラー数値85を超えなければ基本的には発現しない。
他にも複合的な能力の上昇を付与する「レジスタ」は最低75は要求されるとするのが定説だ。
勿論これは全てのレアスキルで明確になっている訳ではないし、研究途上である以上この数値が確実と言う訳でもない。
ただ、ある程度の指標にはなる。
それを踏まえた上で──二川アルトのスキラー数値は、果たして幾らだったか。
滅亡迅雷もまた、あまりの異常事態に困惑した。
全く以て、ありとあらゆる情報を解析した上で理解の外にある事象が彼らの身に起こっていた。
『!?』
通らない。
実に59.9トンもの威力を誇るパンチが、ただCHARMを握っているだけの無防備な少年に当たらない。
皮膚へと触れるほんの数センチ手前で、拳が薄く光る壁のようなモノに阻まれ悉く弾き返されてしまう。
「そういやさぁ、今やっとこさ思い出したんだけど」
そして──少年が、ゆっくりと顔を上げる。
二川アルトのスキラー数値は、丁度60。
即ち──芹澤千香瑠と同じ「
◯片平七海
文章量的にはそうでもないけど今回の実質的な主人公なので1番先頭に来る系唯一滅亡迅雷に命令できる一般人。
生きてる世界が世界なのでこれからも別ればかりを繰り返すだろうし、相変わらず家族が死んだ瞬間から心の時間は引き千切れて止まったままだし、第3者から見ればただ苦しんで失う為の人生かもしれない。
けれど「幸せだった時間」まで無意味だと嘆く事はもうない。
◯マスブレインシステム
実はちゃっかりシンギュラリティに到達して「絶対悪にカウンターするマン」へと変貌してたヤツ。
多数決で動くシステムそのものが意思持ってるってこれマジ?な案件ではあるけれどそもそも接続してくれる人がいなかったから今まで大人しくしてたので誰にもバレてなかった。
でもアークが活性化した途端本来真っ先に倒すべき
要約すると「『誰かに必要とされる』正義の味方やりた過ぎて目的と手段が入れ換わってる困ったちゃん」。
その癖「悪」に対するカウンターとしての機能だけは本物という質の悪さを絶賛発揮中。
◯二川アルト
結梨ちゃん生存以外の殆どの事象に関して所謂「混乱の元」だけどうるせーしらねー瞬瞬必生したやべーヤツ。
開き直りと言えば全く以てその通りだけどリリィの皆と触れ合ったら生きたいと思わずにはいられねぇんだ。
実はコイツがヘリオスフィアに覚醒する事だけは最初から決まっていた(一柳隊に保持者無し、かつ防御系なので)
なのでスキラー数値がレアスキル覚醒を最低保証してくれる60なのはかなり昔に軽く触れていたけど多分覚えてる人いないと思う。
一見アークワンとの相性は悪く見えるけど神様的には「固いには固いけど1度装甲抜かれたら大ダメージ確定なんだしこれで自己防衛力高めてね」なんて意図があったりした。
なので56話目にしてやっと覚醒する百仮面ライダー合が悪い。
悪意の権化たるアークワンじゃ滅亡迅雷には絶対に勝てない。
でもリリィとして戦うなら、ひょっとしたりするかもしれない。
◯二川二水
今回はチョイ役。
でもいなきゃ七海が間に合わなかったんでやっぱり重要。
◯ガンシップ
何かいきなり飛んできた百合ヶ丘所属一般輸送機。
誰が乗ってるのかは名言しないけどそもそも「都内で梨璃が戦ってる」って聞いて一柳隊が静観してるか?って話なので後は察して欲しい。
なお、グングニル・カービンを持ってきたのは某猫好きリリィが何となく思い付きでコッソリ持ち込んだからだし、百仮面ライダー合の上を通過出来たのも偶々だったりする。
正直に言って戦闘無しで考えたら誰との絡みが見たい?(あくまで参考である事をご了承下さい)
-
二水
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結梨&梨璃&夢結
-
ぐろっぴ&百由様
-
一葉
-
恋花&瑶
-
千香瑠&藍
-
灯莉
-
ひめひめ&灯莉&紅巴
-
叶星&高嶺
-
その他一柳隊メンバーなど