【悲報】ワイ、転生したら百合の間に挟まる仮面ライダーだった【ゆるして】   作:イナバの書き置き

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最終話ってありますけど単に章の区切りなんでまだまだ続きます。


最終話「ユリ」

「く、そが……」

『────』

 

 べしゃりと背中から力なく地面に落下したバルカンと違って、滅亡迅雷は必殺のライダーキックを受けたにも関わらずその両足でしっかりと着地していた。

 勝敗は一目瞭然、滅亡迅雷の勝利だ。

 リリィと仮面ライダーが、その全力を結集しても機巧戦士に膝を突かせる事すら叶わなかったのだ。

 

『────』

 

 だが──滅亡迅雷は、着地した姿勢からそのまま動こうとしなかった。

 変身が解けて眼前でぐったりと倒れている不破に止めを刺す事も、勢いあまって顔から地面に突っ込んだ結梨を追撃する事も、武器の片方を失った少年に肉薄する事も容易い筈なのに、指1本動かさずに静止している。

 そうしなければいけない理由が、あった。

 

「罅……?」

 

 困惑した様子でCHARMを構える二水が、ポツリと呟く。

 そう、罅。

 僅かに1cm未満の、本当に取るに足らない大きさの罅が滅亡迅雷のバイザーに刻まれていた。

 間違いなく、バルカンが捨て身で放ったマグネティックストームブラストフィーバーが付けた傷だ。

 

『────?』

 

 滅亡迅雷には、その存在が理解出来なかった。

 本来ならば、アサルトウルフの攻撃程度で彼らのボディが傷付く筈がないのだ。

 それは装甲の材質が強固だと言うのもあるが──本質は、滅亡迅雷が「正義」だからである。

 正しいから死なない。

 正しいから傷付かない。

 防御機能ではなく、道理も何も無視した信念が彼らにはある。

 故に、アークの化身(二川アルト)と彼を守ろうとする者に相対する限り滅亡迅雷は──否、彼らを操るマスブレインシステムは絶対的に無敵でなければならないのだ。

 それが、崩れた。

 曇りなき正義に、絶対無敵の装甲に綻びが生まれた事によって滅亡迅雷は己の正義を問い直す必要に迫られていた。

 

「──ねぇ!」

『────!』

 

 そんな彼らに──油断なくショットライザーを構える刃唯阿に護衛された七海が歩み寄る。

 

「守ってくれて、ありがとう。貴方がいなかったら私は彼処で死んでいたと思う」

『────』

 

 何の前触れもない、感謝の言葉。

 しかし滅亡迅雷が反応する事はない。

 仮面を少女に向けたまま、ぴくりともせずに静止している。

 

「……でも、貴方のやり方は間違ってると思う。私を守ろうとしてくれたのは分かるけど、まだあの子は何か悪い事をした訳じゃない」

『────』

 

 

 だが、七海は別にそれでも構わなかった。

 元より自己満足、届いて欲しいとは想っているが届かなかったとしても大人しく受け入れる。

 そう、自分に決めていた。

 だから────理不尽な正義を振りかざすのは、もう終わり。

 

「だからもう、『止まって』。私の──私だけの正義の味方」

『────』

 

 滅亡迅雷は、七海にとって正義の味方だ。

 正確には、七海の願いによって生まれた七海だけの正義の味方だ。

 七海を守り、脅威を排除するのが彼らの使命なのだ。

 そう言う意味では、彼らは己の目的を忠実に果たそうとしただけとも言える。

 

「貴方はもう十分過ぎる位に、頑張ったよ」

『────』

 

 ただ──必死に人々を守ろうとしている少年を殺そうとするのは決して正義ではない。

 自分を守ろうとしてくれた彼らが、非道を行うのを見たくはない。

 正義の味方は正義のままに──それが、彼女の望みだった。

 

 とは言え、所詮はただの願い。

 拘束力など無く、彼らが拒否するならそこまでの話でありすぐさまどちらかが滅ぶまで戦い続ける地獄絵図が再開されるだろう。

 しかし。

 それでも七海は希望を捨てず、返答を待って。

 

 

『────Accepted』

 

 

 命令、受諾。

 その時滅亡迅雷が何を思ったかは定かではない。

 誰も、当人ですら知らない。

 ただ──四肢の指先からボロボロと崩れ落ちていくその最中にも、彼らの無機質な仮面が何らかの表情を見せる事は無かった。

 それで、終わり。

 あまりにも突発的に発生した総力戦は、その始まりと同じように何の前触れもなく終結したのだ。

 

「終わっ、た……?」

 

 半ば放心状態で夢結が呟く。

 次いで滅亡迅雷が立っていた場所に視線を送るも、其処に残っていたのは先程まで彼らが振るっていた短剣──紅いプログライズキーが装填されたザイアスラッシュライザー、ただそれだけだった。

 一方で、少年はよろめきながらもグングニル・カービンを杖にして立ち上がる。

 

「……まだだ」

「……アルトくん?」

 

 怪訝そうな二水の言葉に返答をしている程余裕は残っていない。

 それでも疲労で霞みつつある瞳が見据えるは、瓦礫の山

 奇しくも滅亡迅雷が荒らし回った事で侵入を防ぐバリケードにもなっている山の反対側に、()()はいる。

 

「リリィの本分はヒュージの殲滅、だろ?取り敢えず刃さん達は不破さんを安全な場所に移してあげて下さい」

 

 その名は、ヒュージ。

 先の防衛戦で掃討しきれなかった、謂わば残党ではあるものの、人類にとって最大の敵をのさばらせておく理由は何一つとしてなかった。

 

「さぁて──」

 

 確かめるように漸く制御出来るようになったマギを流し込めば、マギクリスタルコアが輝き、駆動構造が唸りを上げる。

 成る程、少年は満身創痍だがCHARMの方はまだまだやれるらしい。

 

 

 

「一丁、やりますか」

 

 

 

 ならば問題なし。

 ヘリオスフィアに目覚めた少年が木っ端のヒュージに負けるなど、ある筈がなかった。

 

 

 

■■■

 

 

 

「……はぁ」

 

 無数に積み上げられた人形の山。

 その頂上で相澤一葉は小さく溜め息を吐いた。

 漸く終結の気配を見せ始めた戦場は硝煙の臭いが混じった風を運ぶが、彼女の表情が優れる事はない。

 

「全部機械だった、か……」

 

 何処からともなく現れた無数のアークゼロは一葉達を襲ったが、ハッキリ言ってしまえば大した事はなかった。

 挙動は欠伸が出そうな程に鈍重、走りこそするものの足を引っかけてやれば転ぶレベルで対応力が低い。

 たまに指先から光弾を撃ってきたりするが、それにしたって予備動作が露骨過ぎて見てからでも十分に回避出来る始末。

 何から何まで見かけ倒しの虚仮脅しと言う他なく──だからこそ、一葉は得体の知れない不気味さを感じずにはいられなかった。

 

「しかし一体、どうしてこんな物が……」

 

 何故こんなガラクタが現れたのか。

 山から突き出す無数の手足には千切れた配線コードが見え隠れしている以上、自然発生と言う線は消える。

 つまり、誰かしらが作りヒュージの出現に合わせて送り込んだのだ。

 では、それを行ったのは誰なのか。

 一葉にはまるで心当たりが無かった──と言うより、そもそもからしてアークゼロに関する知識が殆ど無い。

 精々教導官から貰った資料に手ブレの酷い写真が1枚付属していた程度で、それが何であるかすらぼんやりとしか知らないのだ。

 叶星のようにすんなりと割り切れる程器用ではない一葉がスッキリ出来る筈も無かった。

 

(……せめて梨璃さんに事情を訊いておくべきだったなぁ)

 

 梨璃は何かしら知っていた。

 アークゼロの出現に心の底から動揺しているのは一目で分かったし、中身が機械だと判明した瞬間に安堵していたのも一目瞭然。

 取り敢えず戦場だからと後回しにしていたものの、如何な一葉とて「こんな事になるなら時間を割いてもらうべきだった」と内心でぼやかざるを得なかった。

 しかしぼやいた所でもう梨璃達は他の戦域に移動してしまったのだからどうしようもない。

 一葉に出来るのは、ただ自分から買って出た「これら」の監視を続ける事だけ。

 

「……恋花様達、早く来ないかなぁ」

 

 ヘルヴォルの皆がヒュージを蹴散らしながら此方に向かっているのは一葉とて既に承知している。

 それでも──一刻も早く仲間達とこの疑問を分かち合いたいと、思わざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな彼女の後ろ姿を、カメラのレンズが捉えていた。

 

「……フン」

 

 2眼の、どこかレトロな印象を感じさせるトイカメラ。

 首からぶら下げたそれのシャッターを切りながら男は鼻を鳴らす。

 だが、誰も彼には気付かない。

 一葉は勿論、彼の背後で虫の息となっているヒュージの群れでさえ何が起きたのか理解出来ぬままだ。

 尤も、不思議な話ではない。

 何故なら、小洒落たスーツを憎たらしい位に着こなすこの男は他の世界から()()()()()人間──即ち、異世界人なのだから。

 

「戻ってくる事になるとは思わなかったが……」

 

 されど、彼が撮る写真に意味は無い。

 彼はありとあらゆる世界から拒絶され放浪する事を余儀無くされた放逐者であり、次元を渡り歩く旅人である。

 故に何処に行っても受け入れられず、写真ですらありのままを撮られまいと実像を歪める程全てに嫌われる運命を背負っているのだ。

 しかし────

 

 

 

「随分大きくなったじゃないか、一葉」

 

 

 

 フィルムに焼き付けられた写像。

 背景も瓦礫も、何もかもが歪む中にあって憂いを見せる少女の姿だけは何物にも侵されず克明に写し出されていた。

 

 

 

■■■

    

 

 

 

ユ リ

 

 

 

purity

──×──

"一途"

■■■

 

 

【朗報】ワイ、アルバイトを始める【脱ニート】

 

1:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???

 なお、時給500円の模様

 

2:ご機嫌よう名無し様 ID:jkqVCHYYt

 は?

 

3:ご機嫌よう名無し様 ID:QSd94ugVc

 いやちょっと待って

 

4:ご機嫌よう名無し様 ID:ghcwXuJ1Z

 最低賃金の半分で労働とか百合ヶ丘から追放されたんか?

 

5:ご機嫌よう名無し様 ID:RCf8uteD8

 てか一週間振りに出てきて先ず言う事がそれかよ

 

6:ご機嫌よう名無し様 ID:z04LUlUQD

 もっと報告すべき事あるだろうがこのハゲ

 

7:ご機嫌よう名無し様 ID:N+SYUHgvn

 七海ちゃんはどうなったの……

 

8:ご機嫌よう名無し様 ID:ePcvS7gOB

 百仮面ライダー合がどうこうよりそっちの方がずっと気になる

 

9:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???

 >>7

 どうあってもマスブレインキーが離れない(他の誰かが預かっても気付いたら七海ちゃんのポケットに戻ってる)のでA.I.M.Sの協力者扱いで政府の保護下に入った

 ただ何の後ろ楯も無いのは流石にマズいからってあれやこれや揉めまくった結果

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨日付けでサウザー課課長に就任しました

 

10:ご機嫌よう名無し様 ID:SYIA1G4No

 草

 

11:ご機嫌よう名無し様 ID:zp7hNfNfp

 えぇ……(困惑)

 

12:ご機嫌よう名無し様 ID:RCx3eURvi

 マスブレインキーもう完全に呪いのアイテムと化してるやんけ

 

13:ご機嫌よう名無し様 ID:PKzHZ05J+

 他人に渡しても戻ってくるとかこわ……オカルトじゃん……

 

14:ご機嫌よう名無し様 ID:vIR5Cbvw6

 サウザー課課長就任もめっちゃ可哀想

 お飾りでも良いからもうちょっとマトモな役職作ってやれよ……

 

15:ご機嫌よう名無し様 ID:/eHrrsygZ

 百仮面ライダー合の世界だと1000%がやりたい放題する為の部署で業務内容ガバガバな上にその1000%がZAIAを首になってるから色々と都合良いのは分かるけどさぁ

 せめて名前位さぁ

 

16:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???

 当人が楽しそうだから良いんじゃない?

 〔添付:天津垓と七海がさうざーを抱えながら握手している画像〕

 

17:ご機嫌よう名無し様 ID:MfY/mDeS9

 お、おぉ……?

 

18:ご機嫌よう名無し様 ID:os87DFMfp

 良いのか……?

 

19:ご機嫌よう名無し様 ID:kwAFG4+Z+

(変人に絡まれて仕方無しに愛想笑い浮かべてるのが)見える見える……

 

20:ご機嫌よう名無し様 ID:g0tFCOirT

 まぁ部署の名前は兎も角、ZAIAが後ろ楯ならゲヘナとかも下手に手は出せんだろうし大丈夫そうだな

 

21:ご機嫌よう名無し様 ID:G58XgWLdW

 不破さんは?

 

22:ご機嫌よう名無し様 ID:k8AGzVvf3

 滅亡迅雷とガチるって死亡条件満たしてるけど……

 

23:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???

 全身の骨がバキバキになっただけで普通に生きてるよ

 〔添付:全身を包帯でグルグル巻きにされた不破の画像〕

 

24:ご機嫌よう名無し様 ID:eiYpY1Ouy

 照井焼きみたいになってて草

 

25:ご機嫌よう名無し様 ID:K0Mg1MI1Q

 一発ぶん殴られた以外はほぼ何もされてなかったから大丈夫だろうとは思ってたけど

 思ったより重症だわ

 

26:ご機嫌よう名無し様 ID:Jj/H3AQcC

 言うて滅亡迅雷の一発やぞ

 死んでてもおかしくないわ

 

27:ご機嫌よう名無し様 ID:Inq1bjkM9

 まぁ生きてるならOKです

 

28:ご機嫌よう名無し様 ID:00Iku4kpv

 でイッチは?

 何でバイトしてんの?

 

29:ご機嫌よう名無し様 ID:tB3AuwMe3

 やっぱ百合ヶ丘から追い出された?

 

30:ご機嫌よう名無し様 ID:bwl+iDvHA

 遂に百合の間から放逐されたか?

 

31:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???

 >>28 >>29 >>30

 揃いも揃って百合ヶ丘から追い出されるのを前提にするのは止めて下さい(全ギレ)

 

32:ご機嫌よう名無し様 ID:N/8SCRKoP

 いやだってイッチが働く理由があるとするならそれ位じゃん

 

33:ご機嫌よう名無し様 ID:t3fbkyxaL

 一応リリィ扱いされてるからヒュージ討伐の褒賞金だって貰ってる筈だし

 普通に考えたら働く意味が無い

 それも最低賃金の半分で。

 

34:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???

 いやまぁ普通に新宿とその後でやらかし過ぎた罰として百合ヶ丘の売店の手伝い(放課後に2時間、週3回)を言い渡されただけなんですけども

 

35:ご機嫌よう名無し様 ID:bbf8rvixg

 あぁ……そう

 

36:ご機嫌よう名無し様 ID:IxHAhRGSR

 へー

 

37:ご機嫌よう名無し様 ID:6Y9sJlLYA

 何か反応薄くない!?

 

38:ご機嫌よう名無し様 ID:ea1SObLfI

 いや……思ったより真っ当な理由でどう返せば良いのか分からないッス

 

39:ご機嫌よう名無し様 ID:BgE6+WBlY

 やらかし具合に対して罰が軽すぎるとは思うけど聖人髭親爺が理事長代行やってる学校だからなぁ

 

40:ご機嫌よう名無し様 ID:qNbSrM+P4

 ・ゼロツー喪失

 ・アークワン復活

 ・一時行方不明

 

 ……いやこれ普通にぶち殺されても文句言えなくない?

 

41:ご機嫌よう名無し様 ID:iPY/gAS5s

 ゼロツー喪失もかなりヤバいけどアークワン復活は本当にヤバい

 

42:ご機嫌よう名無し様 ID:PR6EFGq5u

 言うて中身が所詮イッチだから簡単に倒せるような気もするが

 

43:ご機嫌よう名無し様 ID:0wtC3DS3t

 何かなぁ

 強い筈なのに強く見えないんだよな

 

44:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???

 あ、後夢結様と話してハグされたよ

 

45:ご機嫌よう名無し様 ID:/WxBMVm0/

 おい待てコラ

 

46:ご機嫌よう名無し様 ID:/gmp6v25/

 そっちの方がお前のバイト事情なんぞよりずっと重要なんだが

 

47:ご機嫌よう名無し様 ID:INJ7m8xi2

 そう言うので良いんだよそう言うので

 血生臭いのよりそっちの方が良いに決まってる

 

48:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???

 そう、かなぁ

 あんまり楽しくはなかった……と思う

 

49:ご機嫌よう名無し様 ID:ZEWLHaCvm

 ……辛いなら別に無理して話さなくても良いよ?

 

50:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+MSZ

 いや……どうだろう

 分かんないな、自分でも

 

51:ご機嫌よう名無し様 ID:7F9iZudj4

 取り敢えずさ、ゆっくり休みなよ

 結果的にやらかしたにせよ頑張ったんだから、ちょっと位ぐーたらしたって誰も怒んないと思うし

 

52:??????? ID:MSZ0703AB

 >>48

 へぇ

 夢結の腕が心地よくなかったって?

 

 

 

 

■■■

    

 

 

 

ユ リ

 

 

 

purity

──×──

"一途"

■■■

 

 

 

 本物の美人は何をしていても様になる。

 故に、海風が白井夢結の艶やかな黒髪を波打たせるだけでも何か神聖な行いであるかのように半歩後ろを歩く少年の目には映った。

 

「そう言えば夢結様と2人だけで外出するのって初めてじゃないですか?」

「……確かに、アルトの言う通りかもしれないわね」

「まぁいつもは梨璃さんとイチャイチャしてますもんね、仕方ないですよ」

「いっ……!?わ、私は梨璃のシュッツエンゲルとして当分の事をしているだけよ。決して貴方が考えているような事は────」

 

 少年がケラケラと笑い、少女が頬を赤く染める。

 そんな2人が何をしているかと問われれば、「散歩」と答えるしかない。

 対ヒュージ戦闘を一変させかねないアークワンをその身に宿す二川アルトは日本にとって首相や大臣に及びかねない程の最重要人物であり、ただ気分をリフレッシュする為に百合ヶ丘の敷地から1歩踏み出すだけでも申請書類を何枚も書かされ、その上リリィの同行が必要とされているのだ。

 なので普段は二水や鶴紗に頼んでいたのだが──何故か、今日に限っては夢結がその役目を買って出ていた。

 

「いやでも、凄いと思ってますってホント。マジでリスペクトしてます」

「からかわれた後な上にそんな適当な物言いで言われても、説得力は無いわよ……」

 

 ちょっと不貞腐れた様子を見せる夢結も中々に可愛らしい。

 そう言う戦場では決して抱けないような感情に浸る事が出来る「今」は、完璧な平和だった。

 2人が歩く防波堤の内に広がる荒廃した街並みを除けば、正に時が止まったと形容出来る程穏やかな午後が鎌倉府に漂っていた。

 

「で」

 

 まぁ、それはそれとして。

 

「何があったんです?」

「気付いていたのね」

 

 空気が冷える。

 微睡みは消え失せ、戦場の鋭い雰囲気が流れ込む。

 

「あのですね。これだけ露骨なのに気付かない訳ないでしょう」

「……そう」

 

 夢結は一瞬驚いた様子を見せたが、少年にとってはそうではない。

 寧ろ夢結が、ただ礼を言っただけで百由に驚愕されたあの白井夢結がかなり無理を言ってまで自分を連れ出そうとしたのだから、のっぴきならない事情があると見るのが当然だった。

 そしてだらこそ、単刀直入。

 夢結は二水に聞かせられない話をぶちまける。

 

「先日のアークゼロ出現、貴方の関与が疑われているわ」

「そう、ですか」

 

 先日の戦いで、ヒュージの出現とほぼ同時に現れた計50体にも及ぶ仮面ライダーアークゼロ。

 捜査の結果、その内部構造に用いられていたのは複数の企業の部品が混在した歪な駆動装置だったと言う。

 通常の生産ラインに「何故か」混ぜられ、「何故か」誰も疑わずに組み立て、「何故か」市街地のあちこちに配達されたそれらが一斉に活動し始めたのが先の騒動となる訳だ。

 

「……心当たりは、あるかしら」

 

 そこで浮上するのが少年の存在──と言うより、飛電製作所を含めて誰もアークドライバーの状態について把握出来ていないので、仕方無しにアークゼロの変身経験がある者を疑わなければならないのが現状だった。

 そして夢結は卓越した実力を理事長代行に見込まれ、事情聴取及び「いざという時」に彼の役目を確保する役目を言い渡されていたのだ。

 

(まぁ、アルトに限ってそんな事はないでしょうけれど)

 

 とは言え、夢結は初めから少年を疑ったりはしていない。

 それどころかありもしない嫌疑で彼に責任を向けようとする政府に対して、侮蔑を露にしてすらいた。

 出来る訳が無いのだ、あれだけ必死になって戦ってきた少年が人類に仇を為すなど。

 が、しかし。

 

「……分かりま、せん」

「え?」

 

 午後の穏やかな陽光を反射して輝く海原に視線を逸らす少年は、自らに向けられた疑いを否定しなかった。

 その上苦虫を噛み潰したような表情を隠せずにいる。

 

()()アークワンの武装はほぼ全て精神に悪影響を及ぼすモノです。だから……」

「貴方自身もアークがどのような進化を遂げているのか分からない?」

「……はい」

 

 成る程、理解出来ない話ではない。

 照射形成機「ビームエクイッパー」等を除く殆ど全ての悪辣な装備が当初のアークワンに想定されていた武装ではない以上、アークドライバーに搭載された人工知能「アーク」はG.E.H.E.N.A.での狂気染みた人体実験を通じて人間の悪意を学習した事はまず間違いないと思われる。

 そしてシンクネットの悪意をも学習したアークがどのような境地に至り、如何なる進化を遂げたかなど誰にも分かりはしない。

 二川アルトは今や人の形をした爆弾と言っても差し支えないのだ。

 

「……それは、分からないとしか謂えないわね」

「……すみません」

「良いのよ、寧ろよく話してくれたわ」

 

 だが、夢結は少年の味方だ。

 同じ一柳隊の仲間として、百合ヶ丘の生徒として、1人の人間として彼を見捨てたり裏切ったりするつもりは欠片も無い。

 そして、所在無さげに佇む少年をどうすれば安心させられるか思考を巡らせた夢結は──かつての記憶のままに、少年を抱き締めていた。

 

「あ……ぇ……」

「……大丈夫。何があっても私達が守るから」

 

 梨璃の誕生日を祝った時のような過ちは犯さない。

 力を入れすぎず、かと言って寄りかかりもせず、ただ不安の原野をさ迷う少年に自分の熱を伝えようとして──

 

 

 

「上出来だ」

 

 

 

 声が、聴こえる。

 

「大事なシルトも可愛い弟分も、不安にさせてはいけない」

 

 いつの間にか少年の背後から此方を覗き込んでいた、少女の姿を視界に捉える。

 

「そうだろう────?」

 

 百合ヶ丘女学院の制服、短く揃えられた白髪、そして挑発的な色を見せる琥珀の瞳。

 それら全てを夢結は知っている──否、知らない筈が無い。

 何故なら。

 

 

 

 

()()シルト」

 

 

 

 

 

 彼女の名は、()()()()

 甲州撤退戦で戦死した筈の、夢結のシュッツエンゲルだった。




◯二川アルト
得意技:からげんきな根性全振り系元百合の間に挟まる仮面ライダー。
今話終了時点でアークドライバーの封印、及び体内からの摘出が検討されている(キーは没収済み)。
ただコイツがおれずにやってこれたのは割と「自分は仮面ライダーなんだ」と思っていたからこその部分があるので変身手段が無くなるとほんの少しだけメンタルが弱くなったり疲労が表面に出やすくなる。
でも百合の間に挟まる限り折れる事は許されないので今後もそのつもりで。

◯片平七海
新サウザー課課長
仕事はマスブレインキーが何か変な事しないか見張る事と滅亡迅雷四人組からファイナルフュージョンの申請が来たらマスブレインキーを起動する事。
ぶっちゃけラスバレでの解決法が最善策なので本作ではまだ寡黙な感じが強めだけれど何れ改善していくと思われる。

◯仮面ライダー滅亡迅雷
不破さんに蹴り飛ばされて我に返った結果ダークヒーロー気取りから勇者系へと華麗な転身を決める。
滅亡迅雷四人組全員からの申請を受けた刃さんが七海ちゃんに連絡する事でファイナルフュージョンが承認されるぞ。
こっそり詫びとしてスラッシュライザーとバーニングファルコンキーを置いてった。

◯白井夢結
ちょっと()不器用な我らがお姉様。
貧乏くじ引かされるわ百仮面ライダー合労らなきゃいけないわイマジナリーお姉様出現するわで苦労が絶えない。

◯川添美鈴
お姉様のお姉様。
既に故人なのでBouquet本編での出番は全て回想かメンタルボロボロの夢結様が見ている幻覚。
が、しかし…?




これにてラスバレメインストーリー1章及び1.5章分は完結となります。
前書きの通りまだまだ続きますが、基本的にはラスバレのストーリーに合わせて話を進めて行く予定なので不穏な空気をばらまきつつ一旦更新停止────





しません。





はい。
しません。
と言うのも以前から「話がライダーに寄りすぎててリリィの影が薄い」という点について悩んでおり、どうにかして解決しなければならないなと思っておりました。
ですので今後はあまり絡みの無いリリィを中心とした番外編を暫くやっていこうと思います。
と言う事であくまでも予定ですが。



   


古き青空より祈りをこめて


正直に言って戦闘無しで考えたら誰との絡みが見たい?(あくまで参考である事をご了承下さい)

  • 二水
  • 結梨&梨璃&夢結
  • ぐろっぴ&百由様
  • 一葉
  • 恋花&瑶
  • 千香瑠&藍
  • 灯莉
  • ひめひめ&灯莉&紅巴
  • 叶星&高嶺
  • その他一柳隊メンバーなど
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