【悲報】ワイ、転生したら百合の間に挟まる仮面ライダーだった【ゆるして】   作:イナバの書き置き

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超お久し振りです。
力尽きてる間に舞台勢が来てるし舞台も凄いしビックリだ…


番外編「古き青空より祈りを込めて Ⅱ」

 最初に結論から述べてしまうならば、この1件に関しては全てが偶然であり、また同時に全てが必然でもある。

 誰1人として()()が起こった理由等知る由も無いが、起こるべくして起こった事件。

 取るべくして取った行動。

 何もかもが──運命に仕組まれたかのように、1つの結末へと収束していく。

 例を挙げるとするなら、そう。

 

『事実上崩壊した私立ルドビコ女学院から脱走したと思われる無数の実験体ヒュージが、突然として一斉に西進を始めた』

 

 これは親G.E.H.E.N.A.派の総本山であるシエルリント女学薗が意図的に引き起こした事件であり、その目的は制御可能な実験体の再収容と手の付けようが無くなった個体の処分だが──勿論そんな事を二川アルト達が知る筈が無い。

 そして今、鎌倉府へと向かう電車に佐々木藍、飯島恋花、初鹿野瑶のエレンスゲ女学園生3名が乗車しているのも全くの偶然だった。

 

「一葉と千香瑠、これなくてざんねんだね」

「一葉は教導官に呼び出されたって言ってたから多分説教されてるんだと思うけど、千香瑠は?」

「検査。最近調子良いから精神安定剤を止めるかどうか相談するんだってさ」

 

 事の始まりは、二水からの連絡にあった。

 彼女の実家は本屋併設のパン屋だが、変わり種の新商品として鯛焼きを販売しようとしているらしく試食相手を探していた。

 そこで白羽の矢が立ったのが藍である。

 鯛焼きを大の好物とし、隙あらば千香瑠にねだったり買いに行ったりしているのであれば相当舌も肥えているに違いない、との見立てによって鎌倉府に招待されたのだ。

 そしてその小柄な見た目通りに幼い性格をしている藍を1人で行かせる事に対する心配半分、年頃の少女が持つ美味しい食べ物への興味半分で付いてきたのが恋花と瑶と言う訳だった。

 

 ──尤も、2人はもう1つ事情を抱えているが。

 

「……大丈夫かな、アルト」

「いやー、ダメでしょアレは。しかも当人が気付いてないのが1番ダメ」

「……?あるとがどうかしたの?」

「……最近様子がおかしいから、千香瑠も心配だって」

 

 二川アルトは、控え目に言って限界を迎えそうになっていた。

 G.E.H.E.N.A.のラボから帰還して以来、戦闘の合間に時折エレンスゲ女学園にやって来た彼は何をするでもなくぼんやりとするか仮眠を取るばかりで以前は見られた快活さが嘘のように消え去っていたのである。

 しかも百合ヶ丘では無意識の内に平静を装っているらしく、二水達はその事実について全く知らないときた。

 流石に──これを見過ごしたらリリィとして失格だった。

 

「流石にこればっかりは電話越しじゃあ良くないからね」

「直接、話さないと」

「んー……」

 

 実際の所、3人と少年の交流は乏しい。

 エレンスゲに来た時は話さないでもないが、彼から積極的に話し掛けるのは専ら千香瑠か一葉だ。

 しかし強化リリィが多いエレンスゲの学生としては実験によって精神的に追い込まれた仲間に関しては放っておく訳にはいかない。

 それはただヒュージを倒すだけがリリィではない──蔓延る過剰な実力主義を改革せんとするヘルヴォルの一員としても。

 

「たい焼きたべたら、きっとすぐ元気になるよ」

「あはは、ホント藍は気楽だなー!」

「でも、それ位が丁度良い」

 

 姦しく騒ぐ少女達を乗せて、電車は進む。

 向かう先が地獄だと、知りすらせずに。

 

 

 

■■■

 

 

 

850:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???

 百合ヶ丘から脱出を図った筈なのにふと気付いたら鶴紗さんと結梨ちゃんに捕まっていたんだが???

 

851:ご機嫌よう名無し様 ID:fTIFNt8Tn

 草

 

852:ご機嫌よう名無し様 ID:qf6bzE7uX

 でしょうね

 

853:ご機嫌よう名無し様 ID:3XS65mjDq

 百合ヶ丘からは逃れられない!

 

854:ご機嫌よう名無し様 ID:9Ok0lvQDs

 寧ろ百仮面ライダー合は百合ヶ丘から逃げるな

 

855:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???

 両腕ホールドされてるから逃げられないんだが?????

 

856:ご機嫌よう名無し様 ID:GrJQqS4Du

 お前ー!

 

857:ご機嫌よう名無し様 ID:RSF5lsoQc

 まーた百合の間に挟まってるよこの偽ショタ……

 

858:ご機嫌よう名無し様 ID:TTqahvhar

 両手に花じゃん

 良かったな死ねクソが!!!!!

 

859:ご機嫌よう名無し様 ID:dCLS+HAMM

 まぁ胸無いから興奮はしないんじゃないの?

 

860:ご機嫌よう名無し様 ID:MaeVzLWw+

 そう言う問題じゃないんだよなぁ

 

861:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???

 あーっ!あーっ!

 ヤバいヤバいヤバい!

 

862:ご機嫌よう名無し様 ID:yF/T6G159

 お?

 

863:ご機嫌よう名無し様 ID:VxazupSPM

 何?

 どした?

 

864:ご機嫌よう名無し様 ID:Lx+BvFPsk

 どうせ良い匂いがするとか言い出すんだろうなぁ

 

865:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???

 超良い匂いする!!!!!!!!!

 

866:ご機嫌よう名無し様 ID:QMXzrG4FM

 草草の草

 

867:ご機嫌よう名無し様 ID:nzwowBgG3

 そりゃするでしょうよ

 

868:ご機嫌よう名無し様 ID:jYtsLbvwh

 ファッションに無頓着で二水ちゃんがいないと休日すら制服着てるイッチとはレベルが違うからな

 まぁ二水ちゃんのセンスもアレだけど

 

869:ご機嫌よう名無し様 ID:N3pH86fy6

「身嗜みはちゃんとしないと!」って言って文字T持ち出してくるのは流石に想定外なんよ

 笑えたけど

 

870:ご機嫌よう名無し様 ID:W9jiDjOrF

 で、どんな匂いすんの?

 

871:ご機嫌よう名無し様 ID:reZ/5yAsI

 それ訊いちゃうのか……

 

872:ご機嫌よう名無し様 ID:/pToKM5dg

 気になるは気になるけどこのタイミングで訊くんか……

 

873:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???

 何か柑橘系の良い匂い!!!!!

 

874:ご機嫌よう名無し様 ID:vHdjpsdo7

 こっちはこっちで語彙力死滅してるし……

 

875:ご機嫌よう名無し様 ID:ejTPVxQrH

 役立たずやんけ!

 

876:ご機嫌よう名無し様 ID:ZWS/lBoD3

 百仮面ライダー合が役立たずなのはいつもの事だし何も問題は無いな!

 

877:ご機嫌よう名無し様 ID:5TPonnxlk

 橘さんの類義語だからな……

 

878:ご機嫌よう名無し様 ID:GBzSfWXn2

 てかこんなハイテンションな百仮面ライダー合初めて見たんだけど何これ?

 

879:ご機嫌よう名無し様 ID:kE0WmdALb

 何やろなぁ……美少女にお持ち帰りされたら誰だって喜ぶだろうけどコイツの場合明らかに方向性違うしなぁ……

 

880:ご機嫌よう名無し様 ID:/vN90nAO4

 様々なストレスが変な形で爆発してる感ある

 

881:ご機嫌よう名無し様 ID:tlgnl3UG2

 確かに

 最近クソ程忙しくて死にそうだったのに美少女問題まで入ってきたせいで頭パンクしてるんじゃね?

 

882:ご機嫌よう名無し様 ID:ALWe0H0qt

 授業!訓練!自主練!で大分疲れてたのに先週とか

 

「アルト?今鎌倉府にヒュージが襲来して(来て)使命が入っています。すぐ来れますか?」

 

 の連打で一向に寝れなくて発狂しかかってたなそう言えば

 

883:ご機嫌よう名無し様 ID:lJOLIGdT2

 挙げ句の果てに一昨日は

 

 忙しい! 投稿者:ライダーアルト

 

 でスレ立てしてたしいよいよ怪文書に手を出さなければやっていけないレベルまで追い込まれていたのは想像に難くないよ

 

884:ご機嫌よう名無し様 ID:T4Gxx4r8P

 疲れ過ぎて壊れてるだけでちゃんと寝れば解決しそうだよね正直

 当人は1ミリたりとも自覚してなさそうだけど

 

885:ご機嫌よう名無し様 ID:KlG9E94FS

 前よか他の人に相談するようにはなったけどクソボケなのは相変わらずだしな

 

886:ご機嫌よう名無し様 ID:QKw9hW/7d

 普段通り何も考えず鎌倉から出とくかそうじゃなくても片平さんの所に逃げ込むかしとけば良かったのに……

 

887:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???

 その手が……あったか……!

 

888:ご機嫌よう名無し様 ID:tq3KMrL8L

 説明すれば布団貸してくれそうではあるけど漸く青春を取り戻せそうな片平姉貴を厄介事に巻き込むのは普通に可哀想だから止めて差し上げろ

 

889:ご機嫌よう名無し様 ID:jv2WFMCmu

 七海ちゃんが良い人だからってあまりにもくだらなすぎる騒動に巻き込むのはNG

 

890:ご機嫌よう名無し様 ID:6vFc0CuJX

 サウザー課課長って時点で大分手遅れ感あるけど……

 

891:ご機嫌よう名無し様 ID:DBHuEFLgf

 まぁ、もうさ

 諦めて連行されときなよ

 それで多分全部解決する

 

892:ご機嫌よう名無し様 ID:tr5jprgwd

 そうだな

 よくよく考えればイッチがドナドナされるだけで全部解決するヤツだ

 

893:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???

 えっ

 

894:ご機嫌よう名無し様 ID:75SQhbyiB

 じゃあそういう事で

 

895:ご機嫌よう名無し様 ID:YMwBZrfjA

 終わり!閉廷!以上そんじゃ解散!

 

896:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???

 嘘でしょ……?

 

 

920:一般転生悪意(浄化) ID:aRKs01+???

 は?

 

921:ご機嫌よう名無し様 ID:YlDdAE/Cf

 え?

 

922:ご機嫌よう名無し様 ID:GaF2rD3Av

 ま、またかよ……

 

 

 

 

■■■

    

 

古き青空より祈りを込めて

 

 

異形の花

──×──

"With a soft breeze."

■■■

 

 

 

 燃えていた。

 突如空間を引き裂いて現れた鹿のような異形によって鎌倉府の市街が一方的に蹂躙されていた。

 

 燃えていた。

 物理的な原理を無視して空を飛び回るクリオネのような異形が放つ光弾によって、防衛軍の設備は稼働する機会すら与えられずに沈黙した。

 

 燃えていた。

 つい先程まで2人のリリィと食事をしていたファミレスも、何の前触れもなく始まった無差別攻撃に瓦礫の山と化した。

 

 そして────少年は、降り注ぐ瓦礫から庇ってくれた結果右半身を押し潰された鶴紗を背負って百合ヶ丘へと続く切通を進んでいた。

 

「鶴紗さん!鶴紗さんしっかりしてくれ!」

「ある、と、こそ。私はいいから、はやくにげろ」

「良い訳無いでしょうが!」

「強化リリィだから、直ぐに治る」

「瓦礫が体内に食い込んでるんだから無茶苦茶言わんで下さいよ!」

 

 確かに、鶴紗は強化リリィだ。

 手術によって強力な自己再生のスキルを付与された彼女は生半可な傷で死ぬ事はない。

 例え手足を切断されたとしても時間さえかければ新たに生え変わった四肢に鞭打って戦線に復帰するだろうし、全身の内臓が一遍に破壊されようが戦闘を続行する事が出来るだろう。

 だが、押し潰された際に瓦礫の破片が深く突き刺さってしまった場合はその限りではない。

 リジェネレーターに体内に潜り込んだ異物を排出してくれる気の利いた効果は存在しないのだ。

 故にただ再生しようと考えるだけでも耐え難い激痛に苛まれるのは当然の事だった。

 

「アークワンが自動防御してくれるから放って置いても良かったのに……!」

「かも、な。でも、勝手に体が動いてた」

 

 百合ヶ丘女学院に向かってひた走る少年の背中で揺られながら鶴紗は呟く。

 不器用過ぎる者同士、こう言う時で無ければ心の底からの本音は出せそうになかった。

 

「仲間を見捨てるなんて、私には出来ない。そうする位なら、自分が傷付く方がずっと良い」

「ふざ……ふざっけんなよ鶴紗さん!アンタが自分でダメだって言ってた事じゃんか!」

「……ホント、人の事言ってる場合じゃなかったよ」

 

 血の気の引いた唇を無理矢理に歪めて、鶴紗は笑った。

 中々口には出せないけれど、本当は他人が恋しくて恋しくて仕方がない。

 他人を遠ざけようとしても、自分の殻に閉じ籠ったとしても、「ついうっかり」で要らぬ世話を焼いてしまう。

 結局、そう言う性分なのだ。

 

「……結梨は?」

「先に百合ヶ丘に戻らせましたよ。リリィは直ぐに来るだろうけどそれじゃ鶴紗さんは回収してもらえないから、救護班も呼んでくれって」

「……アルトは、戦うんだな」

「……」

 

 返事は無かった。

 しかしそれが何よりの答えだ。

 二川アルトは鶴紗の安全さえ確保出来たら直ぐにでも戦場に戻るつもりなのだ。

 彼だって多少なりとも怪我は負っているのに。

 CHARMだって瓦礫の下に置いてきてしまったのに。

 乱用すれば自分を死に追い込むアークワンに躊躇いなく変身して、ヒュージを討ち果たすつもりでいる。

 どうしようもない位愚直に少年は生きていた。

 そして鶴紗も、そんな彼の生き様をよく知っていた。

 

「父さんと同じだ」

「……」

「最後の戦いに行く前の父さんも今のアルトと同じ目をしてた」

 

 静岡で玉砕した鶴紗の父と同じだ。

 後戻り出来ないと理解していても自ら地獄に飛び込む者の目を少年はしている。

 鶴紗は、またしても見送る側の人間だった。

 

「……馬鹿よ」

「……ごめんなさい」

「……本当に、馬鹿」

 

 馬鹿、馬鹿と呟きながら少年の首に回した左腕に力を込めれば小さな呻きが返ってくる。

 きっと、止められないのだろう。

 何をしても少年は戦いに向かう。

 例え監禁したとしても、手足の自由を奪ったとしても、這ってでも彼は「正義の味方」である事を止められない。

 止めようともしない。

 だから、鶴紗に取れる選択肢は1つだけ。

 

「……此処で下ろして」

「は……!?何言ってんだ鶴紗さん!俺がアンタを見捨てるとでも思って────」

「……大丈夫。此処なら鎌倉府から来るリリィが通る筈だから。それに、もう歩ける」

「……!」

 

 少しずつ、少年にバレないように本当に少しずつ再生を進めていた右足は、既に元の形を取り戻していた。

 当然、破片は巻き込んだまま。

 歩ける訳がない。

 それでも、鶴紗は強がりを止めようとはしなかった。

 

「何を……何やって……!」

「でも、1つだけ約束して」

 

 苦痛を強制させてしまった己への絶叫を押し殺す少年の顔に、鶴紗は穴だらけになった右手をそっと伸ばす。

 幼い──まだあどけなさの残る彼の目尻に血濡れの指先を差し出し、溢れ出しそうになった涙を拭ってやる。

 そうだ、これ位しか出来ない。

 子供の涙を拭ってやる事しか、()()()()()()事しか、今の鶴紗には出来ない。

 

「危なくなったら、すぐ逃げて」

「……っ!」

「私も無茶はしないから」

「……」

「ルール、1つだけ。守れる、でしょ?」

 

 少年が息を呑む。

 懸命に動かしていた足が、まるで地面に縫い付けられてしまったかのようにピタリと止まるのを朦朧とする意識の中で鶴紗は感じた。

 

「鶴紗、さん」

 

 少年は、低く呻いた。

 戦う理由はある。

 戦闘より退避を優先する理由もある。

 でも、それ以上に約束を優先する理由があった。

 二川アルトが戦う理由の半分は約束だ。

 一文字アルトから引き継いだ願いの為に少年は仮面ライダーであり続ける。

 その事実を鶴紗に知る術は無かったが、何よりも約束を大切にしている事は知っていた。

 

「……ごめんな、さい」

「……いいよ」

 

 今、約束が成立した。

 お互いに「無茶はしない」。

 既に片方が破っていたとしても、約束は交わされたのだ。

 もう、少年が無茶な戦いをする事は2度と出来ない。

 そして────

 

 

 

「行ってきます」

 

 

 

 ぼろぼろと涙を溢す少年の足元で、赤黒いヘドロが渦を巻いた。

 

 

 

■■■

 

 

 

「……お前はその結末を選ぶんだな」

「うん。決めた」

 

 いつの間にか隣を歩いていた男の問い掛けに、少年は肯定を返した。

 もう決めた事だ、後悔はしない。

 二川アルトは「無茶せず世界で1番のヒーローになる」のだ。

 

「転生者、だよな?」

「ああ。『門矢士をやらせてもらっている者』だ」

「加勢する気は?」

「無くはない。ただ、お前の選択を見届けてからにしようと思っていた」

「……そっか」

 

 トイカメラをぶら下げた男──門矢士に転生した「誰か」は、何処まで行ってもただの部外者でしかない。

 故に、自分の物語を持たず誰かの物語を渡り歩く彼にとって「主役(人々)」の選択肢を妨げる事は本意ではなった。

 二川アルトには二川アルトの選択があるし、相澤一葉には相澤一葉の選択がある。

 彼に出来るのは選択の手助けをするか、或いは「仮面ライダーディケイド」の役割に従って世界を破壊するか、それだけだ。

 そしてそれを理解しているからこそ、少年も必要以上に迫ったりせずとりとめのない会話をしながら燃え盛る街を歩き続ける。

 

「しかし、お前本当に運が無いな」

「ん?」

「やらかすタイミングが最悪過ぎるんだよ」

 

 マジか、と少年は呟く。

 どうやら彼は自分でも知らない内に何やらとんでもない事をしでかしていたらしい。

 と言っても、実感は湧いて来なかったが。

 二川アルトは世界で1番のヒーローを目指している癖に小市民である自分には大それた事が出来る筈が無いとも思っている、そんな控え目に言ってクソ面倒臭い性格をしていた。

 

「……一応聞きたいんだけど、何時やらかした?」

 

 だが、もし自分が既に何かしらの「選択」をしているのだとしたら、一体何時選んだのだろうか。

 恐らくは鶴紗を百合ヶ丘に通じる切通に置いてきた時が「その時」なのだろうが──どうにも気になって仕方がなかった。

 

「聞きたいか?」

「え、何?そんな深刻な顔して言う事なの?」

 

 しかし、男は非常に微妙な──美男そのものな顔に本当に微妙な表情を浮かべて言葉を濁す。

 どうやら余程珍妙なタイミングで珍妙な決断を下してしまったらしい、と少年は溜め息を吐いて────

 

「……その、お前が自分の悩みを一葉に相談しに行こうと決めた時だ」

「……マジ?」

「ああ」

「マジか……」

 

 あまりの馬鹿らしさに、ガックリと肩を落とした。

 

「え、俺が性に目覚めそうになったらこんな事になんの?」

「現になっているじゃないか」

「いや、まぁ、そうなんだけどさぁ。もうちょっとこう……何かないの」

 

 思い当たる節が無い訳ではない。

 鶴紗が少年を庇ったのは偶々ヒュージの攻撃を受けたファミレスにいたからで、そのファミレスに入ったのは少年を逃がさないようにする為で、逃がさないようにしたのは近頃少年の様子がおかしかったから。

 つまり、二川アルトが妙な事を考えたりしなければ鶴紗は重傷を負わなかった。

 

「そうか……そう、なるのか。そうなっちゃうのか」

「……」

「つくづく、嫌になってくるなぁ」

 

 ずっと、転生者とは話を良い方向に転がす存在だと思っていた。

 無茶苦茶な理不尽をそれ以上の理不尽で強引に引っくり返す、希望の体現者である筈だと願っていた。

 だが──どうやら、二川アルトはその器ではないらしい。

 どれだけ抗っても、もがいても、苦しんでも、未だ理不尽を覆すに至らず、仲間が傷付く要因を作りもする。

 命を懸けて戦っても状況を引っくり返す事すら出来やしない。

 誰がどう見たって、ヒーローからは程遠いだろう。

 

「なぁ」

「ん?」

 

 だから、安い同情と言うべきか。

 同じ転生者の誼と言うべきか。

 帰る世界の無い男は問わずにはいられなかった。

 

「……止めるか?」

「いや、まだ続けるよ」

「……そうか。それなら俺がこれ以上どうこう言う必要もないな」

 

 それでも。

 それでもまだ、終われない。

 この世界にアークワンを持ち込んでしまった責任がある。

 引き継いだ夢がある。

 結んだ約束があるから、戦い続ける。

 腕をもがれても、足を折られても、目を潰されても、耳を切り落とされても、臓物を抉られても、命尽き果てるその瞬間まで二川アルトは()()()()()()()()()()()として己の使命を果たすのだ。

 

「……そろそろ、向こうも気付く頃かな」

「俺にはリリィじゃないからヒュージの習性は分からん。判断はお前に任せる」

 

 で、あればこそ。

 今我が物顔で街を破壊しているヒュージは真っ先に始末しなければならない。

 

「なら、『門矢士さん』。非戦闘員の退避を頼みます」

「分かった、ヒュージは任せるぞ」

 

 

950:ご機嫌よう名無し様 ID:AkgmPhmkE

 あーもう!

 兎に角此方でも手伝えるだけ手伝うから頑張れ!

 

951:ご機嫌よう名無し様 ID:YlDdAE/Cf

 どうしてこう酷い目にばっか遭うかなぁ百仮面ライダー合は!?

 

 

 相も変わらず天地を荒らし回る異形共を睨み付けながら、2人の戦士が構えを取る。

 1人はキーを、1人はカードを。

 漲る戦意を仮面ライダーの象徴に乗せて、寄らんとするヒュージを威圧する。

 そして────

 

 

『■■■■■■!』

『変身』

 

 2人の戦士が幻影に吞み込まれ、瞬く間にその姿を再構成する。

 

────────────

K A M E N R I D E

────────────

KAMENRIDER DECADE

 

 

 無数の戦士の影をその身に束ね、生み出すはマゼンタの超鋼。

 名を仮面ライダーディケイド。

 

 

『 破 壊 』

『 破 滅 』

『 絶 望 』

『 滅 亡 せ よ 』

 

『コンクルージョン・ワン』

 

 

 無数の戦士の影と共に汚泥に沈み、浮上するは白黒の悪鬼。

 名を、仮面ライダーアークワン。

 

 時代も。

 姿形も。

 存在意義さえ何一つ噛み合わないながら。

 ただ1つ、人々の自由を守るという点に於いては合致する2人の戦士が戦禍の鎌倉府を睥睨した。




◯二川アルト/仮面ライダーアークワン
とっても絶好調なのに何故か涙が止まらない無自覚精神ぶっ壊れ系百仮面ライダー合。
ただし精神が壊れると発狂したり廃人になったりするのではなく覚悟スイッチが入ったまま戻らなくなる。
しかも当人は全く壊れたと思ってない上に基本的に普段通りなので寧ろ関係が薄い人がいないと異常に気付けないのが質が悪い。
掲示板で変な事を騒ぎ始めたのも無意識のSOS。
だから、アルバイトさせたり外出制限したりして余計な事を考えないようにさせる必要があったんですね(1敗)
他人の夢を背負ったりするのは凡人には荷が重すぎるのだ。

本編はリリィとして歩き始めたからギリギリどうにかなってるけど、bouquet編から振り替えると滅茶苦茶不安定になってる事を考えると…

◯安藤鶴紗
ぶっきらぼうだけど滲み出す優しさが隠せてない系強化リリィ。
精神が壊れてるのにはまだ気付いてないけど放っておいたら死ぬのは分かってるので呪いをかけて(約束をして)死に急ぎを防ぐスタイル。

◯エレンスゲ3人組
とっっってもキーパーソン。
関係も薄い部外者なのが特に大事。

正直に言って戦闘無しで考えたら誰との絡みが見たい?(あくまで参考である事をご了承下さい)

  • 二水
  • 結梨&梨璃&夢結
  • ぐろっぴ&百由様
  • 一葉
  • 恋花&瑶
  • 千香瑠&藍
  • 灯莉
  • ひめひめ&灯莉&紅巴
  • 叶星&高嶺
  • その他一柳隊メンバーなど
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