【悲報】ワイ、転生したら百合の間に挟まる仮面ライダーだった【ゆるして】   作:イナバの書き置き

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 アサルトリリィBOUQUETが見事最終回を迎えました。
 詳しくは控えますが、とても素晴らしかったです。
 その上で一言言わせて下さい。










 本当にあの尊さに男挟まなくちゃいけないんですか?


「>>2」/「移り変わらぬ気持ち」

400:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 えっ

 ちょっと──ちょっと待てよ

 

401:ご機嫌よう名無し様 ID:ZI33eN5Si

 何?

 

403:ご機嫌よう名無し様 ID:UPbikRfF/

 どしたんこんな朝っぱらから

 

405:ご機嫌よう名無し様 ID:V5iyh3sat

 また何かあったんか?

 

406:ご機嫌よう名無し様 ID:EvjozdVCG

 コイツいつもやらかしてんな

 

408:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 いや、そんな、冗談キツイって

 何かの間違いだろ……?

 

411:ご機嫌よう名無し様 ID:wAAlG2Lq2

 なんだ?

 

412:ご機嫌よう名無し様 ID:vS9yCcwFc

 何しでかしたんだ一体

 

413:ご機嫌よう名無し様 ID:0CWiStd/F

 ひょっとして誰か死んだのか?

 

414:ご機嫌よう名無し様 ID:BowVPaMqJ

 縁起でもない事言うなよ

 

416:ご機嫌よう名無し様 ID:SqmNIGYTp

 確か最近はヒュージも来てないんだろ

 だったら違う筈

 

419:ご機嫌よう名無し様 ID:ox3N/Ky5J

 でもイッチがこんなに動揺してるのはなぁ……

 

420:ご機嫌よう名無し様 ID:acrYMZuEu

 前は二水ちゃんの時だったか

 とするとやっぱり洒落にならない事があったんじゃ

 

463:ご機嫌よう名無し様 ID:nyuMFbMtP

 イッチ何も言わねぇな

 

464:ご機嫌よう名無し様 ID:NIoRfUEJH

 さっき誰か死んだかもって言われてたけどまさか……

 

465:ご機嫌よう名無し様 ID:3wZGmO45L

 それは無いやろ流石に

 

466:ご機嫌よう名無し様 ID:oBYV0dQIm

 昨日まで皆元気だったろ

 

468:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 俺はどうすれば良いんだ

 何が悪かった……?

 

469:ご機嫌よう名無し様 ID:J8+LVcZ0j

 イッチ!

 

470:ご機嫌よう名無し様 ID:He3KZPz1F

 落ち着け

 

471:ご機嫌よう名無し様 ID:HERpgjFnx

 どうした

 

472:ご機嫌よう名無し様 ID:5HxBI6/ai

 やっぱり何かあったんか

 

473:ご機嫌よう名無し様 ID:5XXrPWZE8

 先ずは深呼吸だ

 

474:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 色々ありすぎて頭がおかしくなりそうだ

 取り敢えず整理しながら話してくけどいいか?

 

475:ご機嫌よう名無し様 ID:TF3YynFx7

 いいよ

 

476:ご機嫌よう名無し様 ID:QiMvno1Xb

 おかのした

 

477:ご機嫌よう名無し様 ID:dY8eo+yM2

 話してくれんとこっちも何も言えんからな

 頼むわ

 

478:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 ありがとう

 んじゃ先ず最初になんだけど

 ワイは人間じゃないらしい

 

479:ご機嫌よう名無し様 ID:PzmS6hVnR

 知ってた

 

480:ご機嫌よう名無し様 ID:Uk4l3IQ1g

 だろうね

 

481:ご機嫌よう名無し様 ID:6Bm16TIJG

 アークワンに変身出来るヤツが普通の人間な訳ない

 

482:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 何か、その……ゲヘナとかいうマッドサイエンティスト軍団に改造された元一般人らしいんだわ

 

483:ご機嫌よう名無し様 ID:rbhuHFRvA

 改造人間か

 仮面ライダーの伝統やな

 

484:ご機嫌よう名無し様 ID:jMbJ0T5pc

 まぁこの手の転生者にはありがちな話だ

 

485:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 んで憑依前のワイはゲヘナの施設をアークワンで破壊した後1年位行方を眩ましてたらしく、今になって連中は返還を要求してきたと

 ゲヘナは政府とか国連とかとグルだから百合ヶ丘は逆らえないみたい

 

486:ご機嫌よう名無し様 ID:40kTNSQ3F

 イッチの体が欲しいとかホモじゃん

 

487:ご機嫌よう名無し様 ID:neXjx4iZ1

 イッチ人間扱いされてねぇなさては

 

488:ご機嫌よう名無し様 ID:3WpNTMfFp

 んじゃアルトくん(本人)が脱出したちょっと後にイッチが憑依したんだな

 

489:ご機嫌よう名無し様 ID:cDUrelBif

 百合ヶ丘も中々難儀してるんすねぇ

 

490:ご機嫌よう名無し様 ID:zXo83FyXU

 まぁ誰だって研究所送りは嫌だわな

 

491:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 >>490

 いや、本題はそこじゃないんだ。

 ワイが研究所送りになるのはもうしゃーない

 それこそ百合の間に挟まった報いやろ

 でもさぁ……

 

492:ご機嫌よう名無し様 ID:HXb6Ai9Kr

 え、まだ何かあんの?

 

493:ご機嫌よう名無し様 ID:xAnDn3PYX

 十分辛いと思うが

 

494:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 その返還要求な

 

 結梨ちゃんも対象らしい

 

495:ご機嫌よう名無し様 ID:3EOFcnhEM

 は?

 

496:ご機嫌よう名無し様 ID:gAcvsFEOW

 あ ほ く さ

 

497:ご機嫌よう名無し様 ID:S6taJugHJ

 マジで言ってんのかよそれ

 

498:ご機嫌よう名無し様 ID:RpvQOi0RS

 ふざけてんのか

 

499:ご機嫌よう名無し様 ID:GDq2Ukli5

 それはいかんでしょ

 

500:ご機嫌よう名無し様 ID:mUIIh7cQS

 人間の屑がこの野郎……(憤怒)

 

501:ご機嫌よう名無し様 ID:zf7cspmED

 いや何でさ

 結梨ちゃんはどう見ても人間じゃん

 

502:ご機嫌よう名無し様 ID:ZTnv8XtUi

 この世界も上が腐ってんのかよ……

 

503:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 >>501

 正直話の半分もよく分からなかったけどな

 纏めると結梨ちゃんはヒュージの細胞を変異させて作った人造リリィ……らしい

 記憶喪失じゃなくて、初めから無かったって事だ

 

504:ご機嫌よう名無し様 ID:1p1C5gKeD

 じゃあ実質赤ちゃんじゃん

 そんな生まれたばっかの赤子をゲヘナとかいうクソの所に送れってか?

 冗談キツイぜ……

 

505:ご機嫌よう名無し様 ID:ABHcetdc1

 ゲヘナ許せねぇな……

 

506:ご機嫌よう名無し様 ID:s/IAaeDur

 百合の間に男挟むのはダメだけど政治挟むのはもっとダメでしょ

 

507:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 幸いにも結梨ちゃんは捕まる前に梨璃ちゃんが連れ出してくれたみたいだし、理事長代行も政府を説得しようと頑張ってるらしい

 

508:ご機嫌よう名無し様 ID:sz/eokSFD

 梨璃ちゃんナイスゥ!

 

509:ご機嫌よう名無し様 ID:aGXC1VBHT

 そりゃあこんなあほくさい要求呑めるワケないわな

 

510:ご機嫌よう名無し様 ID:AOVXHOFVD

 これならどうにかなりそうやな

 

511:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 ただ、梨璃ちゃんと結梨ちゃんを拘束する為に百合ヶ丘のほぼ全リリィが動員されてるっぽくて

 いつまで逃げられるか……

 

512:ご機嫌よう名無し様 ID:AOVXHOFVD

 どうにかならなそうやんけ

 

513:ご機嫌よう名無し様 ID:kEjhUx0vL

 説得前に捕まったら全部パァだ

 

514:ご機嫌よう名無し様 ID:UhRGPJKen

 いやキッツいわ

 昨日まであんなに幸せそうだったのにどうしてこんな事になっちゃったんだ

 

515:ご機嫌よう名無し様 ID:N2vXRfPL/

 てかさ、ひょっとしてイッチもう捕まってんの?

 

516:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 うん

 

517:ご機嫌よう名無し様 ID:dmd2qLskD

 うんじゃねーよ抵抗しろや!

 

518:ご機嫌よう名無し様 ID:W/kDV1rNo

 仮にも仮面ライダーだろうがー!

 

519:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 だってキーは百由様のラボにあるし……

 

520:ご機嫌よう名無し様 ID:xiu8n/QwM

 あっ……

 

521:ご機嫌よう名無し様 ID:unY1NcHmR

 そういやそうじゃん

 

522:ご機嫌よう名無し様 ID:oYzWoCldr

 変身出来ないとただのショタだもんな……

 

523:ご機嫌よう名無し様 ID:RJdUuD3aB

 でもアークゼロ使えるんじゃないの?

 

524:ご機嫌よう名無し様 ID:le5mlUXuW

 使えるには使えるだろうが使ったら今度こそイッチ死ぬだろ

 

525:ご機嫌よう名無し様 ID:T3DzRDH72

 あれヒューマギアの乗っ取りしか考えられてないから生命維持装置とか何も付いてないぞ

 

526:ご機嫌よう名無し様 ID:2liLuz8t1

 何なら負荷で即死まで有り得る

 

527:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 それに祀さん……梨璃ちゃんと一緒に結梨ちゃんの面倒見てた人に泣きそうな顔で頭下げられたら流石に断れんよ……

 

528:ご機嫌よう名無し様 ID:7PIHI84hw

 あーそっか……

 

529:ご機嫌よう名無し様 ID:xLcxUVACi

 そりゃしゃーない

 

530:ご機嫌よう名無し様 ID:Q+YG6yC8y

 流石に女の子泣かせるワケにはいかんしなぁ

 

531:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 しかも「全部私達のせいにして恨んでくれていいから」ってさぁ

 皆良い人だし嫌々やってるの分かるのに恨めるワケないじゃん……

 

532:ご機嫌よう名無し様 ID:4hFGFi6WW

 おつらい……

 

533:ご機嫌よう名無し様 ID:Xm12SYNAE

 世知辛いとかそういうレベルじゃないなコレ

 

534:ご機嫌よう名無し様 ID:Pm2jtDJlP

 仮に変身出来たとしてそれじゃ何も解決しないしなぁ

 

535:ご機嫌よう名無し様 ID:Ue7qPzEYd

 昨日までのやさしいせかいを返して

 

536:ご機嫌よう名無し様 ID:t0YI1dUt7

 こうなったら梨璃ちゃんと髭親爺に全てを賭けるしかないね

 

537:一般転生悪意 ID:aRKs01+02

 そうだな────あ、二水ちゃん

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 リリィの敵はヒュージだけ。

 それが百合ヶ丘に限らず全国のリリィ達の間で共有される鉄則である。

 通常の人間とは一線を画す戦闘能力を持った彼女達が民衆に受け入れられるには、謂れなき中傷や悪意の籠った罵倒にも耐える必要があった。

 ガーデンと言う自治権が認められた組織が存在するのも、ヒュージだけではなく人間の悪意からもリリィを守る為だ。

 例え1度でも人間の悪意にリリィが応えてしまえば、想像を絶する地獄が世界中で展開される事となるのだ。

 それを避ける為にも、リリィはガーデンで「敵を絞る」事を教わる。

 原則を徹底する事で、彼女達は人と融和した。

 

 リリィがリリィにチャームを向ける事は絶対にあってはならない。

 これもまた、リリィ達にとって是が非でも守るべき原則である。

 例え人の悪意から少女達を守る事が出来たとしても、少女自身の悪意だけは誰にも止める事が出来ない。

 彼女達が年端も行かぬ少女である以上、何かしらのトラブルを発端としてリリィ同士の殺し合いが発生する可能性はそれこそ幾らでも存在するのだ。

 それだけは何がなんでも避けなければならない。

 チャームとチャームが火花を散らして激突するなど、訓練の時だけで充分なのだ。

 

 だが。

 だが──────

 

 

 

 

 

「落ち着いて二水さん。こんな事をしても何も解決しないわ」

「祀様……!私が出来ないと思いますか!?本当に斬れないと思いますか!?」

 

 その鉄則を、2つ纏めてぶち破ろうとする少女がいた。

 少女の名は二川二水。

 現在百合ヶ丘を揺るがしている問題の中心である、一柳隊のメンバーだ。

 今、彼女は百合ヶ丘が誇る3人の生徒会長の1人──秦祀(はたまつり)に向けて鬼気迫る表情で己のチャームを突き付けていた。

 

「やるでしょうね。だけど────」

「分かっているのなら大人しく言う事を聞いて下さい!」

 

 何事かと集まってきたリリィ達が一様に顔を強張らせる中、未だかつて誰も見た事の無い形相で二水が叫ぶ。

 祀は完全に丸腰だ。

 いや、正確には武装が意味を為さないと言うべきか。

 制服のボタンに仕込まれたフラッシュバンと針状に変形させられるリボンはあるが、今のままでは手を伸ばす前に()()()()

 体術の心得もあるが、そんなもの「兵器」であるチャームを構えた二水の前では児戯に等しい。

 

 よって、猛り狂う二水を祀は言葉で説き伏せなければならない。

 学内での刃傷沙汰は生徒会としての立場からも制止しなければならないのだ。

 ならないのだが────首筋に、鈍く光る銀色の刃を押し当てられる。

 

「────っ、二水さん……!」

「甘く見ないで下さい!私はやります!絶対にやりますよ祀様!」

 

 グングニルをぎらつかせた二水が、ずかずかと祀に詰め寄る。

 普段の明るさを捨て、食って掛からんばかりの勢いで睨め付けるのだ。

 

(────駄目、止められない)

 

 無理だ、と一瞬の内に祀は悟った。

 今の彼女が言葉程度で止まるワケがない。

 我が身を顧みず、リリィとしての矜持を棄ててまで為すべき使命に二川二水は目覚めてしまった。

 命を賭けて守るべき相手を、彼女はもう既に見付けていた。

 

「もう一度だけ言います!」

「────」

「今すぐ──いいえ、今!この場で!アルトくんを解放して下さい!」

 

「……二水ちゃん」

 

 果たして、少年は其処にいた。

 言い争う2人からほんの数メートル程離れた場所で、二川アルトは何をするでもなくただ佇んでいた。

 その両手は近未来的な意匠の手錠で拘束され、彼が学院から何処かに移送されようとしていた事を如実に示している。

 そんな少年を安心させようとしたのか、二水はぎこちなく微笑む。

 

「……だ、大丈夫です。お姉ちゃんに全部任せて下さい!アルトくんをG.E.H.E.N.Aに渡すなんてそんなふざけた事こ、この私が許しませんよ……!」

「二水さん、貴女は────」

「────っ!さぁ、どうするんですか祀様!アルトくんを解放するか、此処で私に斬られるか!」

 

 二水は止めに来た。

 少年が理不尽な悪意の餌食になるのを防ぐため、他の一柳隊メンバーの制止を振り切って飛び出して来たのだ。

 無論、それがどれ程百合ヶ丘の状況を悪くするか理解していないワケではない。

 ただでさえ梨璃の逃走で政府からの心証は良くないのに、そこに()()()が現れたらどうなるか。

 

「……仮に、此処で私が解放したとしましょう。でもこの辺りには既に防衛軍が展開しています。彼らをどうするつもり?」

「それは──────」

 

 それは下手をしなくても、防衛軍が「行動」を起こす引き金となる。

 リリィに対して不信感を抱く彼らを動かす動機として「リリィのヘマで捕縛対象が逃げた」と言うのは過剰ですらあるのだ。

 そうなれば、最悪の場合2人は射殺されるだろう──いや、それだけではない。

 今はリリィだけで捜索を行っている梨璃達にも危害が及ぶ可能性がある。

 しかし、そこまで考えた上で二水は此処に来た。

 来てしまった。

 

「────突破します。アルトくんを背負って」

「無理よ、そんなの」

「やってみなければ、分からないでしょう……!」

「いいえ、不可能よ。貴女は自分の我が儘でアルトくんを死なせるつもり?」

「それはっ……!」

 

 だが、祀も引き下がらない──否、是が非でも引き下がる訳にはいかないのだ。

 祀には二水の気持ちが痛い程に分かる。

 彼女はシュッツエンゲルに()()()()()()()相手を、ヒュージの襲撃で亡くしているのだ。

 この世界では特に珍しい話ではない。

 父が、母が、姉が、兄が、妹が、弟が、友達が、嫌いな人が、誰も彼もが理不尽に命を奪われる。

 そんな中で、大切な人を守りたいと思うその気持ちは決して間違っていない。

 

「二水さんの気持ちは良く分かるわ。私だって、本当はこんなの嫌よ……だけどもう、私()にはこれしかないの」

「それは──だ、だけど……!」

「お願い、分かって……彼が生きるにはこれしかないの……!」

「そんな、そんな事って……!」

 

 ──確かに、G.E.H.E.N.Aは非道な組織だ。

 平然と人体実験を行い、「人類の為に」当人達の意思を無視してリリィを強化する。

 当然アルトが生き残れる可能性は限り無くゼロに近い。

 こんな連中に罪の無い少年を引き渡すなど祀だって腸が煮えくり返るような気持ちだったし、本来なら例え命令だとしても拒否していただろう。

 しかし、このまま百合ヶ丘にいても少年には衰弱して死ぬ末路しか存在しないのだ。

 ならば────ならば、大人しく引き渡すしかない。

 例え相手が外道だろうと悪魔だろうと、それが少年の命を繋ぐ唯一の可能性なら賭けるしかない。

 

 今やあらゆる意味に於いて、結梨とは状況が違うのだ。

 「G.E.H.E.N.Aで死ぬか、百合ヶ丘で生きるか」ではなく「G.E.H.E.N.Aで生きるか、百合ヶ丘で死ぬか」。

 少年に迫っているのはそういう局面だった。

 だから、二水の要求を受け入れる事は出来ない。

 誰も悪くないからこそ、どうしようもないのだ。

 

「ダメです……ダメですよぉ……こ、こんなの絶対におかしいです……!」

「……そうね、おかしいの。おかしいけれど、私達に出来る事はもう何も残されていないわ」

「────!」

 

 最早二水に出来るのは、声にならない悲鳴を上げる事だけだった。

 今にも溢れんばかりの涙を湛え、それでもなお震える手でチャームを握り締める少女の果敢さが、ナイフとなって祀の心に突き刺さる。

 誰もが彼女のようにあれたら、誰もが彼女のように優しかったらこんな事にはならなかったのに。

 そう思わずにはいられなかった。

 

 

 

「────二水ちゃん」

「アルトくん……?」

 

 そして今、ありとあらゆる選択肢を奪われた少年が動き出す。

 いつの間にか二水のすぐ隣に立っていた少年は、手錠に拘束された両手でそっと彼女の手を包み込んだ。

 それは労るような、解きほぐすような優しいモノでだからこそ、少年の諦念を意識させる。

 対して少女は、これから放たれる言葉の「重み」を否応なしに想像してしまい──たじろぐ。

 

「二水ちゃん、もう止めよう。そんな事したって誰も笑顔になれない」

「な、何を言ってるんですかアルトくんは!?死んじゃうんですよこのままだと!そんなのダメに決まって────」

「いいんだ、もう」

「────っ!なんで、なんでですか……!?」

 

 少年は諦めている。

 これが自分の人生なのだと、変えることの出来ない運命なのだと、受け入れてしまっている。

 だがそれは彼が転生者だから達観しているだとか、そう言う話ではない。

 

「この9ヶ月間、ずっと楽しかった。百合ヶ丘のリリィは皆良い人達だし、ご飯は美味いし、何も出来ないのに一柳隊に入れてくれたし……まあ何て言うか、一生分の良い思いはしたんじゃないかな」

「────ぃ」

 

 何処まで行っても、少年の心には罪悪感が付き纏っていた。

 彼は自分の事を、リリィ達の楽園に放り込まれた異物としか考えられなかったのだ。

 今すぐに消えるべきだ。

 自殺でも何でもさっさとして、速やかにあるべき形へと戻すべきだ、と。

 

「それで何か出来ないかって、思ってたんだ。何か1つでも返せないかって。でも皆強いから、僕から出来る事は何も無かった。このままずっとお荷物なのかと思ってた」

「────ぃゃ」

 

 そこまで自覚しておきながら、みっともなく生にしがみついた。

 アークワンとして散々迷惑をかけておきながら、少女達の優しさに甘えた。

 それは罪だ。

 鮮やかに咲き誇る百合達の間に割って入ると言う、どうあっても許し難い罪なのだ。

 

「でも、違ったらしい。こんな役立たずな僕でも、百合ヶ丘の──二水ちゃんの為になるみたいなんだ」

「────いやです」

 

 だが、そんな自分でも彼女達の役に立てると言う。

 自分が研究施設送りになれば、それで百合ヶ丘が救われると言う。

 ならば喜んでそうしよう。

 好きなだけ実験して、解体して、物言わぬ死体に変えてしまえば良いのだ。

 

「だから、もし僕が命を捧げるなら()()()()()()

「そんなの、いやですよぅ……!」

 

 少年は笑った。

 少女は泣いた。

 互いを想うが故に、決定的なまでにすれ違っている。

 チャームの切っ先も床に向けられ、最早祀を傷付ける事は出来なくなった。

 

「祀さん」

「何かしら」

 

 もどかしげに首を擦る彼女に向けて、少年が口を開く。

 少年の瞳はやはり決意と気迫に満ち、死にかけとは思えない強さを秘めている。

 

「僕を連行するのに、1つ条件付けてもらえませんか」

「……内容によるわね」

「二水ちゃんが今此処でした事、全部不問にして下さい」

「それくらいなら別に構わないけれど……本当に良いの?」

「いいんです、これで」

 

 そしてこの期に及んでまで、少年は二水の事を最優先していた。

 優しい彼女はきっと悲しむだろう。

 こんな屑野郎が1人いなくなった程度でも、沢山泣いてしまうだろう。

 

「じゃあ、二水ちゃん────」

 

 でも、笑って欲しい。

 一柳隊の皆と、そして自分と同じ位厄介な立場に置かれている結梨にはどうにか笑って欲しい。

 二川アルトは、そう思うのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「────バイバイ」

 

 斯くして、二川二水は取り残された。

 焦点を失った瞳からぼろぼろと涙を溢れさせ、ただその場に立ち尽くすばかりだった。

 

 

 

■■■

 

 

 

 夜の廃校、と言う概念は品行方正な少女達にとって初めて経験する領域であり、それ故好奇心と恐怖心が同時に刺激する。

 怖いもの見たさと言うべきか、夜間に外出する事そのものが「夜遊び」を想起させるのだ。

 

「結梨ちゃん、毛布あったよ」

「ありがとう……」

 

 しかし、今この場所に訪れた2人の少女がそのような事を考えている余裕は無かった。

 彼女達は決して肝試しや娯楽の一環として此処にいるのではない。

 

「百合ヶ丘は、今頃どうなってるのかな……みんな、私を捕まえるために────」

「──大丈夫だよ!きっと、夢結様が何とかしてくれる」

 

 少女達は──一柳梨璃と一柳結梨は、逃亡者である。

 そのあまりにも特異過ぎる出自から身柄を拘束されそうになった結梨を連れ、当ても無ければ終わりも無い逃避行に梨璃は身を投じていた。

 

「ねぇ、梨璃」

「なに?」

「やっぱり、私ヒュージなのかな」

「そんな事無いよ!結梨ちゃんが本当にヒュージだったら、私とお話なんて出来ないもん!」

「──でも、みんな私を捕まえようとしてる」

「それは────」

 

 人の形をして、人の言葉を喋って、人の心を持っている。

 そんな彼女は今、政府によって人類の敵たるヒュージと断定されていた。

 何一つとして、少女に「悪い」所など存在しないのにも関わらずだ。

 ただ生まれて、ただ生きた。

 それを彼女は責められている。

 ()()()()()事すら、結梨には許されなかったのだ。

 表情が沈むのも、至極当然である。

 

「結梨、ちゃん……」

「ごめん梨璃。こんな事言っても、何にもならないよね……」

 

 そして梨璃は、この暗澹とした少女を救うのに適切な言葉を持ち合わせていない。

 どう励ましても、どう諭しても彼女が仲間達(リリィ)と防衛軍に追われている事実は覆らない。

 だが、結梨が暗い顔をしている理由はこれが全てではないのだ。

 

「それよりも、アルトが心配」

「アルトくん?アルトくんが、どうして……」

「アルトは私と同じ記憶喪失で、凄いボロボロ。もしかしたら────」

「結梨ちゃん?」

「ううん、何でも無い。きっと私の思い過ごし」

 

 えへへ、と曖昧な──明らかに作り笑いと分かる笑みを、無理矢理に浮かべる。

 捕まっているかもしれない、と口にするのを結梨はすんでの所で止めてしまった。

 根拠など何一つとして存在しないが、言葉に出してしまえばそれが現実になってしまうような気がしたのだ。

 

(アルトには、元気でいて欲しいな)

 

 思い返せば、初めて出会った時から彼はボロボロだった。

 左目を医療用の質素な眼帯で覆い、味を感じる事の出来ない舌でスープを啜る様は、間違いなく重傷者のそれだ。

 だからひょっとして、経緯が違うだけで自分と()()なのではないかと、結梨は思うのだ。

 だが万が一彼も捕まってしまったとすれば、受難は更に厳しさを増すだろう。

 下手をすれば、生き延びることすらできないかもしれない。

 ()()として、結梨にはどうしてもそれが受け入れられなかった。

 

「アルト……」

 

 枠だけを残して粉々になった窓から、夜空を照らす月を見上げる。

 少年は今、同じ空を見ているのだろうか。

 幼い結梨には、分からなかった。




◯百合の間に挟まる事に対して罪悪感を覚えていた男
 半分死んでいる
 別に自分はどうなっても良いけど結梨ちゃんに手を出すのは違うでしょ、と内心キレている
 けどアークワンにはなれないしなったらなったで多分死ぬ
 なので百合ヶ丘へのせめてもの恩返しとして大人しく捕まっている

◯二川二水
 ガチギレ二水ちゃん
 こんなに曇ってるのは此処だけでbouquetほんへとか小説とか舞台とかではもっと明るいキャラなのでどうか其処を忘れないで欲しい
 それもこれも全部悪意汁垂れ流したヤツが悪い

 ほんへでも真っ先に「結梨ちゃんがヒュージな訳ないじゃないですか!」って言ってたからホントに良い子だと思う

◯祀様
 貧乏くじ引いてる人
 7話だけでも結梨ちゃん溺愛してたのがよく分かるから9話の流れはホントに辛かったのではないかと思う
 実は百仮面ライダー合の尋問にも参加していたので今回は二重に辛い

◯梨璃ちゃん
 主人公にして聖母
 ほんへだとこの辺りから凄い曇ってたので見てて辛かった
 
◯結梨ちゃん
 渦中の人
 生きて…




次回

「お前を止められるのはただ一人」

正直に言って戦闘無しで考えたら誰との絡みが見たい?(あくまで参考である事をご了承下さい)

  • 二水
  • 結梨&梨璃&夢結
  • ぐろっぴ&百由様
  • 一葉
  • 恋花&瑶
  • 千香瑠&藍
  • 灯莉
  • ひめひめ&灯莉&紅巴
  • 叶星&高嶺
  • その他一柳隊メンバーなど
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