英雄となる執事の物語   作:古地刃海星

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13話

***緑谷

「ふふふ……コンテニューだ……」

 この手だらけ男……この状況がゲームかなんかだと思ってるのか!?

「? それにしてもなんでまだコイツ塵になら……あぁそういうことか……やっぱりアンタはヒーローだなぁ! イレイザァァァァ!」

 相澤先生が個性を消してくれたのか! 相手の個性が分からないまま突っ込んでいったのは良くなかった。拳が痛む。

「ヒーローは強いなぁ……脳無、やれ」

バキッ

 手男が命令した瞬間、脳無と呼ばれた怪人が相澤先生の頭を地面に叩きつける。

「相澤先生!」

「そんなに大切なら他の学生たまご殺せばオールマイト本気出してくれるかなぁ」

 今度は蛙水さんの顔に手を伸ばし……

「やめろぉぉぉぉ!」

「おいおい、目の前でそんなことさせる訳がないだろう?」

「っ! 脳無!」

 オールマイト!?!?

ドパァン ポスッ

 気がついたら隣にオールマイトが……まさか! 一瞬にしてヴィラン達を殴り相澤先生を取り返し、僕達をヴィランから遠ざけてくれたのか!?

「え? オールマイト? いや、でも、さっきまで入口に……え???」

「緑谷少年、相澤くんを頼む。相澤くんここまでよく頑張ってくれた」

「オールマイト……黒い方は複数個性を持ってる、手だらけの方は……触られると……気を……」

 そう言い残すと相澤先生はガクッと力が抜けてしまった。

「生徒を必死に護って更に情報まで……本当に相澤くんはヒーローの鑑だよ」

「…………聴いていた通りだな……パンチ……見えるはずがないと思ってたけど見えた……先生の言ってた衰えてるってのは本当だったんだな! オールマイトォォ!!!」

 どうやら手男は脳無という怪人に守ってもらった事で吹き飛ばされなかったようだ。なら、意識がオールマイトに向いてる内に速く逃げなきゃ! ……ふと授業の最初で相澤先生と13号先生が何か合図で三本指を立てていたシーンが思い出す。あれは教師三人ではなくなったことを言っているのかと思ったけど違う! あれは今のオールマイトの活動限界の三時間が過ぎたことを……!

「オールマイト! その黒い脳みそが剥き出しのやつは僕の100%でも効きませんでした! だから……だから、気をつけて!」

「緑谷ちゃん! 早く!」

 今、ここで僕が言えるのはここまでだ。ここまでしか言えない。言っちゃいけない。僕だけが知っているオールマイトの弱点。

 

***

天照坐皇大御神あまてらしますすめおおみかみ!』

 赤い炎オレが竜巻のように捻れながら"私"を包み込む。次第に"俺"が赤から黄色、黄色から白へと変わる。

『はぁっ!』

 変質し終わり、光を大太刀で斬り裂いて顕現する。これは俺自身を姫の装備として変質させる合体技の一つで俺の個性、天照に限定して能力を引き出す形態だ。ただ去年の猛特訓によって手に入れた力だから5分しか維持できない。

『いざ、勝負!』

 制限時間内で片付けるっ! 背中から炎を噴き出して加速する。

「GAAAAAAAA」

 脳無は両手で防御姿勢を取るが関係ない。両手で大太刀を構えて袈裟斬りする。

ガギィィィィィン

『え、うっそ何コレ硬っ!』

「GULLLLLL……」

 脳無の皮膚が異常に硬い。だがこの大太刀は火焔を圧縮した大太刀、相手は熱の余波で火傷を負う!

『あれ? うっそ……火傷も治ってない!? さっきのは個性じゃないの!??』

 奴が火傷部分を掻きむしったと思えば既にツルツルの皮膚が戻っていた。

『もしかして複数の個性を持ってる……』

 いや、まさか。

『個性の重複発動?』

 個性の中でも2つの要素を併せ持つ個性があることは第2世代の人体実験紛いの事実で判明している。重複発動は確かにメリットだ。しかし身体への負担がデカいのか似た系統の個性でない限り同時発動はかなりキツい。今の俺は再生の個性を使って初めて天照と紫矢の2つ重複を出来る。

『なのに、再生と硬質化、そしてさっきの一瞬で回避出来た個性の三つ……』

 個性を複数持てるのは俺かアイツの関係者……いや、これ以上躊躇っている場合じゃない。

『最大火力で仕留めるよ!』

 これを使うと制限時間が1分になってしまう。その代わり、一時的に4500度もの高火力を扱える。

『神器解放! 黒曜"大鴉"』

 共鳴の利点、それは2つの意識があるということ。

『斬る!』

 再び足から炎を出してブーストを掛け、ヴィランに接近する。

「HRYYYYYY!!!」

 ヴィランがまたしても防御をする。だが無意味だ。

「SHAAAAAAA!」

 先程とは代わり腕を切り落とす。斬られて初めて危険を察知したのか見えない速さで後ろに飛んだ。

「GAAAAAAAAAAAAAAA!?」

『再生持ちだけど止血処理された腕を戻せるほどではないみたいね』

 俺1人が出せる最高火力は0.1秒間で1800度、3秒間だと1500度が限界だ。それ以上は熱が制御外に漏れて周りが大惨事だ。

『翔、刃こぼれしてない? 平気?』

 だが変質して天照のみを全力で制御すれば刀の形をした4500度の炎の制御が可能になる。

『翔?』

 完全に支配された炎で作られた大太刀は斬りながら焼くことが可能でその黒焦げた切り口やモチーフにした名前から黒曜"大鴉"とした。今は使っていないがこの形態は黒炎の翼を出すことも出来「翔!」

 !?

「ごめん、ボーッとしてた』

『全く……集中しなさいよ。あと45秒よ』

『じゃあもう倒そう』

 刀に天照の全力を注ぐ。

『ったく、もう、さっさと片付けるよ』

「SHAAAAAAAA!!!」

 今度はこちらからだとでも言うように脳無が加速し始める。

 

『無駄だ。お前の能力は既に見切った』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『黒羽抱擁』

 

 脳無の加速は恐らく決めたコースをなぞるようにして移動が出来るというもの。

「GRUUuuu.......」

 だからそのコースを見切ってしまえば動作もない。

『ふぅーつかれたー」」

 気が緩んでしまったからか共鳴が解けて俺は俺に、私は私に戻った。

「翔、また技増やしたの......?」

「あーうん、フヤシタヨ」

 既に共鳴できると分かった日から考えていたなんて言えない……

「gruuu......」

「それよりも! 四肢全部切り落としたけど、復活しても行動できないように拘束しなきゃ」

「......たく、まぁ後で詳細教えなさいよ。血糸"縛"」

 姫の血が手早く脳無の体を包み込む。

「よし、オールマイトを助けに......あれ?」

 戦闘時間はそこまで掛かってないはずなのに倒れてしまった。

「翔!? 平気!? ここに来るまでに再生使ったの?」

「あ、そういえばあいつが来て......」

 完全に忘れてた! 警戒しても気配は感じられない。どうやら周囲にいないようだ。

「さっき赤羽と接敵した」

「!!」

「その時に左足を持ち逃げされた」

「!? 大丈夫なの!?」

 姫がぺたぺたと俺の足を触ってきた。

「あぁ、大量出血で一回・・死んだけど平気だよ」

「ならいいけどまだ完全に使えてない個性なんでしょ? どこで限界が来るのか分からないんだから気を付けなさいよ」

「うん、もちろん気をつける。それよりも今はオールマイトの加勢に行ってあげて」

 頷いてから翼を出して飛び立つ。高速戦闘でセントラル広場から建物が倒壊している方まで来てしまった。まだ少しだけであれば姫が行くまで時間がかかる。

(なら、この間に一瞬でも寝て回復しなければ......)

 

***オールマイト

 この年でまさかこれほど怒れるとは思っていなかった。

(でも体は確実に衰えているなぁ......)

 まだ緑谷少年がワンフォーオールを習得しているとは言えないがある程度は私と同じぐらいのパンチ力を持っているはずだった。それが効かないというのは先程聞いた。

(あの脳みそ剥き出しのやつ......あれは人間、で、あっているよな)

 そうだとしても最初の一撃目の気持ち悪さ。この手応えはパワーを打ち消す個性を持っているのかもしれない。

(緑谷少年達の足止めと確認のためにももう一回......)

「CAROLINA......」

 相手の脳を揺さぶるために顎を狙う。

「SMASH!!!」

 確かに当たったはずの拳はまたしてもスポンジに当てたかのように勢いが吸収されてしまう。

「無駄無駄wwwソイツは"No.1アンタ"の為にわざわざ用意したショック吸収の個性持ちの脳無さ! 全盛期ならまだしもひ弱になったお前のパンチじゃビクともしない!」

「そりゃどうも親切にっっっ!!!」

 攻撃が効かないなら無力化を狙おう。パンチしようと振りかぶる。

「人だもんな! そりゃ無事でも防御は取るよなっ!!!」

 パンチの勢いのまま懐に潜り込んで胴体を掴む。おっっももも!!! コイツの体重、私ぐらいあるんじゃないか!?

「よいしょー」

 これだけ頑丈なんだ! 地面に刺しても死にはしないだろう。

「っっっっっ!!!」

 脇腹に感じるいつもとは違う鋭い痛み。

「そういう感じか!」

 油断した! 地面に刺したはずなのに強い振動を感じない時点で警戒すべきだった!!! 地面に刺そうとした脳無はテレポート系の個性を持った敵によって回避しており、更には逃げられないように古傷に爪を立てて来ている。

(そこは弱いんだよっ!!)

「目にも止まらぬ速さのあなたを拘束するのが脳無の役目」

 力比べで負けたくないが少しづつ少しづつテレポートのゲートになっているであろう黒い靄に引き込まれていく。

「そしてあなたの身体が半端に留まった状態でゲートを閉じつつ引きちぎるのが私の役目」

 拮抗してはいるがより強く引き寄せようとすると脇腹に爪が食い込んでっっっ!!!

「普段は自分の中に血や臓物が流れ込んでくるのが嫌でやりませんけど貴方ほどの方であれば喜んで受け入れましょう!」

「そりゃどーも!」

 一か八か! 持ってくれよ私の脇腹!

「オールマイトを」

 

「離せっ!」

 

 緑谷くん! 来ては行けない!!!

 

「無策で突っ込むなんて甘いですね!」

 

「甘いのは

 

てめぇだっ! クソモヤ野郎!!」

 

 爆豪少年がワープの個性を捕まえてくれた! む!? 脳無のパワーが弱まった! これなら! 多少脇腹を強引に縮めて抜け出す。

「今は助かったとだけ言わせてもらおう爆豪少年、轟少年」

「俺もいますよオールマイト!」

 切島くんだったか。……あれ? 君そんなアフロみたいな髪型だったか?

 まぁ、とにかく状況は一変した。轟少年が脳無の半身を凍らせて私を助け出し脳無を拘束、さらに爆豪少年がテレポート持ちを抑えてくれている。子供達に頼るのは私としては情けなさでいっぱいだが、そんなことは言ってられない。

「……ナンバーワンヒーロー、将来有望なヒーロー志望者クソガキ……ガキ一人には逃げられ、出入口は塞がれ、タイムオーバーはすぐそこ......あぁーピンチだ。本当にピンチだ。」

「ハッ! お前が体をモヤ状のワープゲートに出来るのは一部だけで他はそのモヤで隠してただけなんだろ! もしクソモヤ野郎が全身モヤの物理無効人生だったなら『危ない』なんて言わねぇもんなァ!」

「くっ!」

「おぉっと! 動くんじゃねぇ! もし『怪しい動きをした』と俺が判断したらテメェをすぐに爆破させる!」

「ヒーローらしからぬ言動だなw」

 

「攻略された上にオールマイト以外全員ほぼ無傷......はぁ、最近の子供はすごいなぁ......大人の大人数が子供に負けてて恥ずかしいよ、敵連合ヴィランれんごう......おい、脳無あの爆破小僧をやっつけろ。出入口は確保しなきゃ」

パキパキ

「「「!?」」」

「半身が割れてるのに動いてる!?」

 !?

「みんな! 下がりなさい! ショック吸収の個性じゃないのか?」

「おいおい、それ”だけ”だなんてだれが言ったんだ? こいつは超再生の個性さ」

 おいおい、それじゃあまるで!

「この脳無はお前の100%ですら耐えられるように改造された超高性能サンドバック人間さ」

 脳無が動き出! 速い!

「グゥ......ゴホッ......」

 くそ、防御してこの威力か。

「加減がないのか......」

「おいおい、仲間を助ける為さぁ! さっきだってそこのガキどもはお前を助けるために何度か暴力を振るわられそうだったんだぜ? 他の為に振るう暴力は美談なんだろう? オールマイト......俺はな? 怒ってるんだぜ、同じはずの暴力がヒーローとヴィランでカテゴライズされてその善し悪しが決めつけられるこの世界に! 何が平和の象徴だ! お前は決めつけられた悪を抑圧する為の暴力装置! お前を殺すことで暴力は暴力しか生まないということを世界へ知らしめるのさ!」

「ふっ......めちゃくちゃだな。そういう思想犯の眼は静かに燃ゆるもの。だがお前は自分が楽しみたいだけだろ、嘘吐きめ」

「あれ、バレんのはやぁw」

「3対5、こっちが有利だ」

「モヤの弱点もかっちゃんが暴いた!」

「オールマイト、俺らも「ダメだ! 君たちは逃げなさい!」

「でも俺がいなかったらやばかったでしょ」

「それは確かにそうだ。ありがとう轟少年! しかし大丈夫!! 君たちは下がってプロの本気を見ていなさい」

「脳無、黒霧やれ。子供たちは俺が狙う」

 時間はもう二分とない......だが。

 

私は平和の象徴なのだから

 

「っっっ!!!」

 まるでスポンジを叩いているかのように拳の威力が消え去る。

「オールマイトォ! さっき言っただろ! ソイツはショック吸収と再生の個性! どんなに強く殴っても意味は無い!!!」

 確かに拳の威力は皮膚に吸われている気がする。

 

 

「だが、ショック吸収なら吸収出来ないほど殴ればいいだけだ!!!」

 本来、物体は吹き飛ばされることで衝撃を地面に逃がしたり、吹き飛ばされたりしてそのエネルギーを消費する。だがショック吸収ならば本来逃げられるエネルギーは体内に溜まり続ける。

 

 

 

「キミ達にこの学校のいい校訓を教えてあげよう!」

 

 

 くっ! 流石に活動限界ギリギリだから1発が軽くなってしまう!

 

 

「さらに!」

 

 

 持ってくれ!

 

 

「向こうへ!!!」

 

 

 あと少しだけでいい!

 

 

「PLUS ULTRA!!!」

 

バコォォォォォンンン

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