その日はなんだかいつもと違いソワソワと首筋に何かを感じていた。それは予感めいたものだったのか、その日雄英高校から封筒が郵送されてきた。外身に雄英の紋章が刻まれたその封筒の重みは山一つ分でも足りないほどであった。
「母さん、じゃあ、部屋で見てくるから暫く待ってて」
「私の方がドキドキしてきたかも」
母さんの言葉を背中で聞きつつ、自分の部屋の扉を閉める。手が震える。引き出しからペーパーナイフを取り出し、封を切る。
「これは?」
中から出てきたのは一つのホログラムプロジェクターだった。机に置いて再生を始める。
「想起少年! まずは合格おめでとう!」
ナンバーワンヒーローのオールマイトが写っていた。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「早速試験の結果について話していくぞ。筆記試験については後日入学手続きの際に渡されるから省くが」
オールマイトが自分に向けて話しかけてくれている。なんだ、明日死ぬのか?
「実技試験では敵を倒すとその分ヴィランポイントが追加されていく仕組みだが想起少年のヴィランポイントは1p敵が20体、2p敵が5体、3p敵が12体で合計66ヴィランポイントだ!」
そんなに倒したか?
「そしてこれだけでも十分すごいがただ敵を倒すだけがヒーローではない。ヒーローは人助けをしてなんぼだ。その為今回の実技試験では十人のプロヒーローの審査による救助ポイントが存在する」
確か何人かトドメ刺されそうな受験者のロボットは破壊したな。
「君は何人かの受験者を助け、0p敵が出現した際には最も被害の出そうなビルの倒壊に対して他の受験者を助けようとしていたこれはとても素晴らしい。しかし、君はあまりに急いでいた為近くで逃げようとしていた子を押しのけて向かっていった。そのため100点満点中46点だ。だがビルの倒壊現場で助けようとする勇気としっかり助けられたことはとても素晴らしかった。総合して実技試験は110点で合格だ。おめでとう。4月から私も教師するからヨロシクね」
え、オールマイト最後に爆弾落としたままにしないでください。
***
なにはともあれ合格である。他に何が入っているか封筒の中身を再確認すると二枚の紙が入っていた。合格通知書と入学手続きについてだった。そのまま親に言いに行ったところまでは記憶が確かだ。でも
「あの、当主様なんで自分が呼ばれたのでしょうか」
一応着替えた執事服で当主様つまり照叔父さんと対面している。一応非公式的ではあるけど姫の執事兼護衛の任務だけの俺にとって当主様として一対一で話すのはまだこれで三度目だ。
「実は先程雄英高校から姫宛に封筒が届いたんだ。君も届いたのだろう。結果はどうだったんだ?」
「無事に合格できました」
「そうか、実はその封筒を持って自室に入ったきり出てきていないんだ」
九時頃には封筒が届いていたからもうすでに五時間ぐらい過ぎている。
「私が入ると怒ると思うから君には執事として様子を見てきてほしいんだ」
だいぶ前に姫がまだ親に隠れてオールマイトの生放送を見ていた時代に当主様が途中で入ってきた時に怒ったのをまだ引き摺っているようだ。
「分かりましたけどどうなっても知りませんからね」
ドアノックして声をかける。
「姫様、入ってもよろしいでしょうか」
特に声は聞こえない。少し失礼だが扉に耳を当てて中の様子を探る。
「………k………」
何か声が聞こえるが誰の声なのだろう。
「………k……s…」
男の声のようだ。もしかして手練の誘拐犯がここまで入ってきたのかも知れない。
「お嬢様失礼いたします」
一応性別を変化させて扉を開けて入る。
「………血城少女! 合格おめでとう!」
「カチッ」
「血城少女! 合格おめでとう!」
「カチッ」
「血城少女! 合格おめでとう!」
「カチッ」
「血城少女! 合格おめでとう!」
「姫様……」
「ヒエゥワ!!!!」
そこにいたのは推しのオールマイトが自分の名前を言ってくれるところで再生しては戻して再生しては戻してを繰り返すオタクだった。
「で、合格したんですか?」
カーテンを開けてベットメイクをしながら聞く。どうやら私が起こしに来なかったことで届いたときにはまだ寝ていて当主様から封筒を貰ってそのまま布団で聞こうとしたら突然最推しであるオールマイト様が登場されて自分の名前を言ってくれたことの衝撃が強すぎて一度目の再生後のことは何も覚えていないそうでその後は私が来るまで自分の名前を何度も再生していたみたいだ。
「あの、合否はまだ分かってなくてーもう一度全部ちゃんと聴くのでそこで待ってて貰っても……」
「分かりました。とりあえず服を着替えて椅子に座られて聴いたほうがいいと思います」
着替えを手伝い、椅子に座らせた後紅茶を淹れる。あ、なんとなくタイミングを外したから性別戻してない。どうしよ……ま、いっか。
「血城少女! 合格おめでとう!」
今度は椅子でシャキッとしているかと思いながらポッドを持っていったらまたしても最初に戻しては再生してをしようとしていた。
「血城s「姫様〜?」
「ウヒャァ!!! ま、まだ、戻してないよ! 貴女と一緒に見たかっただけなんだから!」
……少し疑わしいがまあ姫様が言っているならそうなのかもしれない。
「じゃあ、紅茶持ってきたのでゆっくりと飲みながら見ましょう」
「う、うん、じゃあ再生するね」
そういいながらまたオールマイトが喋り始める。
「血城少女! 合格おめでとう!」
今、気付いたけどオールマイトさんもうすでにここで言ってるのになんで合格だって分かんないって……とりあえず紅茶を少し飲む。
「今回筆記試験もさることながら実技試験も素晴らしい成績だった! 私からは実技試験の結果のみ伝えるが後日入学手続き時に筆記試験結果も渡すからそこは心配しなくていいぞ」
姫はすでに食い入るように見ており紅茶を持ったまま固まっている。
「さて、早速試験結果だが今回の実技試験では仮想ではあるがヴィランと戦ってもらいその倒したヴィランの攻略難易度に応じてヴィランポイントが付与される。血城少女は今回、1p敵を16体、2p敵を18体、3p敵を16体で合計100ヴィランポイントだ!」
いきなり10点差まで縮められた。
「これはとてもすごいことだ。だが、それだけではヒーローは務まらない」
「え!?」
「ヒーローたるもの人を救ってなんぼの世界。そのため今回の実技試験では十人のプロヒーローの審査による救助ポイントが存在する」
「えぇぇぇぇぇオールマイト全部見てたの!!!!」
いや、オールマイトが見ていたかは分からないと思うけど。
「そして今回血城少女は36レスキューポイントだ。途中で他の人が襲われていた時に何度も破壊していたことが得点の主な理由だそうだ。よって総合して136ポイントで主席合格だおめでとう! 私も4月からヒーロー科の教師としてやっていくから学校ではヨロシクね」
さぁ、姫様はどんな反応をされるのか!
「キュウ......」
あ、気絶した。
***
「そうか、二人共合格だったんだな。おめでとう」
「これで俺らも気持ちよく現場復帰できるな」
あの後姫を介抱して起き上がった後に報告も兼ねて再び当主様の執務室に来た。
「そうだ。ここから雄英まで毎日行くのはかなりきついだろうから二人の家を買ったからそこから通うようにしなさい」
「「え」」
「同棲だってよ」
「えぇぇぇぇぇぇぇ」
そんな嫌がらなくてもいいじゃん。
「ご、ご命令とあらば俺は私でずっといるので」
「メイドは一人か二人連れて行っていい?」
俺の提案は無視されてしまった。
「いや、二人だけで十分だろう。むしろ他の子が行っても何もすることがないだろうし」
当主様が返答したがさすがの俺でも日中は学校に行っていたらかなり厳しいと思うが平気だろう。
「それかなんだ? 姫ちゃんは恥ずかしいのか?」
「いや、それが恥ずかしいんじゃなくって……その」
「その?」
当主様も親父も黙って姫がなにか言うのを待っている。あ、二人共自分の嫁に耳を引っ張られて後ろの部屋に連れて行かれた。
「その、服とか見られたり洗われたり……するじゃん」
「え、そんなことですか? 平気ですよ。だっていつもやってますし」
「え」
「え?」
ここでのメイドはそれぞれ自分が付いていきたいと思った人に付いてきている人達がやっているのでほとんどが元ヒーローだったり当主様のヒーロー活動を手伝うサイキックだったりするので本職としてメイドしかやらないという人はいないのだ。
「だからそもそも姫の部屋をキレイにしたり服を買ってきたり用意したりしているのは俺ってこと」
「っ!!!\\\……」
全力で顔面を殴られて許されるのか、はたまた照れ隠しなのか……
***
合格してから少し色々あった後俺たちは入学日を迎えていた。