この光景は何度目なのだろう。
「姫〜まだ〜?」
「もうちょっとだけ本当に後ちょっと!」
「さん、に、いち」
「セーーーフ」
「最近遅くない?」
「アンタのせいなんだけどそれよりも早く行きましょ」
***
「おはよー」
「あ、翔くんおはよう」
「おはよう緑谷くん。早速だけどオールマイトが毎月第一金曜日に収録ラジオ放送している番組オールマイトニッポン、前々回の2月号にてオールマイトが最近ハマっているものを答えてその特徴的な食べ方が話題になったけどそれは?」
「”日本のコンビニによく売っている肉まん、あれ最近好きなんだよね。最近は東日本と西日本が味が違うって聴いたから飛んで移動して食べ比べているよ”。じゃあその時のオールマイトの好みだと言った方は?」
「”気分だけど少しだけ東日本のほうが好きかな。西日本の方は調味料付きで食べるだなんて知らなかったから衝撃的ではあったね”」
なんか急に目の前でデクと姫がガッチリと握手し始めた。
「うちにある第一回目からの文字起こしのやつ今度持ってくるね」
「本当!? ありがと!」
そう言って姫が今度は両手でデクの手を握る。
「ウェフヒィ、い、い、いやーとんでもないよー僕もこうやって話せる人ができてとても嬉しいし」
デクが唐突に顔を赤らめて照れ始めた。こいつ多分顔間近で見た瞬間姫が女子だって思い出しただろ。
「ほら君たちそろそろ予鈴がなるから席に付き給え!」
「でも今座ってないのメガネくんだけだよ」
俺は椅子に座りながら言った。
「む、それは失敬。ぼ、俺が座るべきだったな。あと俺は飯田天哉(いいだてんや)だ、メガネくんではないからよろしく頼む」
そして再び扉が開く。
「おい、お前ら席につ、いてるか。ならいい」
相澤先生がクリップボードで肩を叩きながら入ってきた。
「今日は昨日連絡したとおり午前中は座学を行い、午後からは届いたコスチュームを使用してのヒーロー基礎学Ⅰの授業があるからランチラッシュの昼飯を食べすぎないように。そして重要なお知らせがある。二人共入ってきてくれ」
扉が再び開くと黒髪ロングの細身な男子と金髪低身長で丸めな女子が入ってきた。
「昨日は諸事情によってこられなかったが今日からお前らの級友となる二人だ。後は適当に挨拶してろ。終わり」
そう言い残して先生はさっさと教室から出ていってしまった。
「じゃあ、自分から」
左手の男子が軽く手を上げて喋り始める。
「森中中から来ました夜闇新(よやみあらた)です。こいつが警察にしょっぴかれたため昨日いけませんでした」
(どういうことだ?)
「エリー・ミオファです。夜闇と同じ森中中から来ました。エリーは名字なんですが名前っぽいので親しくエリーでお願いします。あと昨日警察にしょっぴかれたのは仕方ないことだから気にしないでください」
「あの警察ってどういうこと?」
クラス全員が困惑している中、上鳴くん(金髪にメッシュの入った彼)が質問してくれた。
「「実は!」」
ハモったことが気に食わないのか二人で睨みだした。
「あの、話が続かないから夜闇くん説明してもらってもいい?」
デクナイス!
「分かった。昨日実はバスジャックに会ってそこでエリーが個性を使って大暴れし「新だって使ったじゃない」......それで犯人を抑え込んだのはいいんだけど」
「明らかな緊急時での個性使用なのに警察に捕まって尋問まがいの取り調べ受けちゃって」
「でもヴァンプ伯爵が解放してくれたんだ!!! しかもサインまで貰っちゃった!!!」
「だから昨日から誰なのよその人」
「昨日から教えてるじゃん! 様々な業界で大企業の経営をしている血城家の当主であり、元ナンバー2ヒーローでもあるヴァンプ伯爵って人がいるんだよ!」
そっと隣の娘さんに小声でとあることを言う。
「姫、私が貴方の尊敬しているヒーローの子供ですって言えるけど言う?」
「絶対に言わない」
新に二名加わり、雄英高校二日目が始まった。
***
「ランチラッシュのお昼が早くてかつ格安で食べれるなんて雄英はさすがだなぁー」
「デクは何食べるの?」
「カツ丼でも食べようかなー。翔は?」
「俺は量があるやつにしようかな」
「あ、わたしもそうしようかなー」
「お茶子さんも?」
「うん! 血城さんはなににするん?」
何故このメンバーになったのか。話は少し前に遡る。
〜***
あれは基本的なガイダンスやら抜き打ちテストやらを乗り越えたときだった。
「翔、お昼どうする?」
先程出てきた英語の単語がどうしても出てこなかったため調べていると右隣から声がかかる。
「姫の分も作ってないから学食にするけど」
「なら学食に早く行きましょう。早くしないと席が取れなくなるし」
姫は机の上のものをそのままにして行ってしまったので慌ててついていく。
「どうしよう、結構並んでるから先に学食取ってから席を取る?」
「でもそうすると結構時間かかりそうじゃない?」
誰もがランチラッシュの学食を一度は食べてみたいと思っているのだろう。殆どの一年生が食堂に来ており、近くに購買パンの列もあることも合わさってかなりの混み具合だった。
「あれ? 血城さんに翔も二人も学食食べに来......すごく混んでるね」
「デクとメガネくんとえっとごめんなさい名前まだ覚えて無くて」
「メガネくんではなくてぼ、俺は飯田天哉だ」
「あ、全然気にしなくていいよ! まだ昨日会ったばっかりやし。私は麗日お茶子って言いますよろしくね想起くん? 血城さん?」
「合ってるよ、よろしくね」「合ってるわ、よろしく」
「ねぇ折角ここで会ったんだし二人も交流も含めて一緒のところで食べない?」
「勿論」「いいよー」
***〜
「それにしてもなかなか纏まって開いてるところないね」
デクがカツ丼、メガネくんは「メガネじゃない飯田天哉だ! ......誰か俺のことをメガネと言った気が」......オレンジジュースとビーフシチュー(ランチラッシュに「最終的にお米だよね」と言われながら白米をサービスされていた)、麗日さんと俺はデカ盛りβセット、姫はサラダ盛りサラダを買ってうろうろとしていた。
「このままだと急いで食べないといけなくなるしどうしよう」
「なら私達のところに来る?」
俺たちが焦って周りを見渡していた時、後ろから声を掛けられた。
「エリーさん、で合ってますかね」
「そうよ、想起くんだったかしら? それに皆も結構大人数だから座れなかったんでしょ、こっち開いてるから座りましょ。あと敬語は無くていいわ」
「ありがとうエリーさん」
着いていくとそこには夜闇くんがすでにうどんを置いて待っていた。
「あれ、エリーデカ盛りγセット取りに行ったんじゃないの?」
「いや、なんか重すぎるらしいからこっちに運んでくれるらしいの」
「おまたせだよ、デカ盛りγセットの子はどこに座るんだい?」
ランチラッシュがここまで来てくれたことにも驚きなのだが俺はデカ盛りγセットに驚愕した。
「いやーまさか裏メニューのγセットを注文できるような子が来るなんてね。僕もびっくりだよ」
そういいながらランチラッシュが抱えきれるギリギリの丼器の上にとんかつや親子丼の具、すき焼きやカレーありとあらゆる白米に合う具材が乗った丼をワゴンから机に移した。
「じゃ、再三言うけど食べきれなかったら二度と頼めないからまた食べたい場合は頑張って食べきってね」
そういうとワゴンで人を掻き分けながら戻っていった。そして思わず頼んだ張本人に聴いてしまう。
「そんなメニューなかった気がするんだけどなにそれ、てか食い切れるの?」
「これはね雄英の麓の商店街でデカ盛りグルメを何店舗かクリアすると教えてもらえる裏デカ盛りグルメをまたさらに何回かクリアするとようやく頼めるランチラッシュ食堂限定デカ盛りだよ。つまり裏メニューのデカ盛りってことだね」
あまりの大きさにみな呆けていたがエリーさんが食べ始めたことで自分の料理が冷めないうちにと食べ始めたのであった。
「あぁーおいしかった!」
食い切った.........
***
昼休みの終了を知らせるチャイムがなった後。
「私がァ! 入り口から普通に入った!!!!」
扉をけたたましく開けて入ってくる大男。彼は全てのヒーローの卵が目指す存在。
「「「「「オールマイト!!?」」」」」
いきなりのナンバーワンヒーローの登場にみな驚く。彼が雄英の教師になったことは試験結果時に知ってはいたがまさかちゃんと授業をするのだとは分からなかった。
「すげー本物だー!」
「私、生で初めてみたかも」
午後一番に始まると聞いていたヒーロ基礎学はオールマイトの登場で幕を開けた。
「色々あると思うがそれじゃあ君達コスチュームに着替えて模擬市街地αに集合だ!」
着替え終わり、トンネルを通っていく。
「なんかうさぎの耳みたいなの付いてるけどなにそれ」
「いやーちょっと前からヒーロースーツ考えてた時に憧れのヒーローの意匠を入れたくて。それでお母さんが作ってくれて」
「へぇー被服控除使わずに手作りなんだな」
「でもなんか地に足ついた感じでいいね」
「翔もなかなか似合ってるわ」
「もったいないお言葉です、姫」
「そういえば想起君は今日届いたばっかりなのに着るのにだいぶ手慣れてたよね」
「確かに一番に着替え終わっていたな」
「それよりもメガネくん達そろそろ出口だよ」
トンネルを抜けるとそこにはオールマイトが立って待っていた。立っているだけでも圧倒的な威圧感のある姿は流石である。
「それじゃあ今からヒーロー基礎学を始める。なにをするか分かるか?」
メガネくんが機械のような挙手をする。
「飯田君!」
「ここは入試でも使った模擬市街地なので何らかのロボットと戦うのではないのでしょうか」
「残念! 今からやるのは将来ヒーローになるのに絶対必要なもの。それは屋内での対人戦闘だ」
突然スケッチブックを出した。
「確かにヴィラン退治は屋外で見られることが多いのだが、ここにある通り統計で行くと屋内のほうが凶悪ヴィランの出現率が高いんだ」
そこには丁寧な字で”ココ多いよ!”とミニオールマイトが指を指している絵があった。
(((かわいい......)))
「監禁、軟禁、裏商売、このヒーロー飽和社会で真に賢いヴィランは屋内で潜み、水面下で物事を進める。このため屋内での戦闘を考慮し屋内戦闘訓練を行う」
スケッチブックを足元に置き、その側にある棒の入った箱を持った。
「君たちにはこれからヴィラン側とヒーロー側に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう」
「基礎訓練は一度もしないのかしら」
確か、蛙吹さん?が質問を投げかける。
「その基礎を知るための実践さ」
「相手がギブアップしたら終わりですか?」
俺の前にいたやつは......瀬呂くんだったかな。今度は彼が質問する。
「いや、相手を負かすのがヒーローの勝利条件なんてなかなかない」
「では勝利条件はどうなるんですか?」
八百万さんが。
「相澤先生みたいに除籍処分とかありますか?」
麗日さんが。
「僕のマントかっこよくない?」
青山くんが。
「あの箱って何が入ってんだろう」
上鳴くん?が。
「2つに分けると言われていましたがどのように分けるのでしょうか」
メガネくん「メガネくんじゃない!」。
「ぶっ飛ばしていいスカ」
爆発君。
「んんん聖徳太子ィ......」
一斉に質問をぶつけられて全て聞き取れなかったのだろう。オールマイトが嘆いてる。
「いいかい!? 君たちには今からここにあるくじを引いてペアを作る。そしてペアごとにヒーロー役とヴィラン役に分かれてもらい、とあるシチュエーションで模擬戦闘を行ってもらう。その状況とはヴィラン側はアジトに核兵器を隠していて核兵器を奪われたくない、ヒーロー側はヴィランが気付いてから対策を練る前までの時間で迅速に最小隊単位で核兵器の無力化を行わなければならないという設定だ。ヒーロー側の目標は制限時間内でのヴィラン側全員の確保若しくは核兵器の回収。今回はヒーロー側が核兵器に触れることで回収したと見做すからね。ヴィラン側は核兵器を回収されないように時間制限一杯耐久してもらう」
オールマイトは喋り終えると一呼吸整えてからくじの入った箱をこちらに差し出した。
「この中には4つ同じ文字が書かれたくじがある。同じ文字は4つだが2つは色が違う。一つは赤色、これはヴィラン役のくじでもう一つが青色、こっちはヒーローだ。さぁ。対人戦闘訓練を始めようじゃないか」
その後オールマイトの指示でくじを引き、同時に対戦相手も決まった。
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Aグループ
ヒーロー 麗日&緑谷
ヴィラン 飯田&爆豪
Bグループ
H 蛙吹&耳郎
V 切島&峰田
Cグループ
H 瀬呂&轟
V エリー&想起
Dグループ
H 尾白&葉隠
V 血城&夜闇
Eグループ
H 芦戸&口田
V 砂糖&八百万
Fグループ
H 青山&障子
V 上鳴&常闇
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「さぁ! まずはAグループからだ!」
今、対人戦闘訓練が始まる。