***???
起動完了
「オイ! 大丈夫か! おい、想起!」
誰かに声をかけられて目を覚まします。
「いたたた......」
「平気なの...か...え?」
轟くんが私の胸をガン見してきます。
「ヘンタイ......」
「!?!? いや、その、わ、わりぃ」
そう言って顔を背けてくれましたが見たことは事実であり......
「後でビンタしますね」
そう告げてエリーちゃんの元に加勢しに行きました。
「エリーちゃん! だい......じょうぶそうですね」
そこには背中を踏み、腕の関節をキメているエリーちゃんの姿がありました。
「貴女が想起くんの言ってた別の人格の?」
「そうです。ちょっと個性使いすぎたみたいで。あ、こっちも捕まえました」
「なら後は時間を待つだけね」
そう言いながら瀬呂くんが持っていた捕縛テープで手足を縛っています。
「水色ってことは凍獄? 大丈夫? 逃げられたりとかしない?」
「凍獄はエネルギーを奪う個性なので常に使っていれば融かそうとしても融ける温度まで行きません」
「そっか......」
会話の間に三回ほどちら見してきたのは見逃しました。でもじっと見るのはあまり良くありません。
「そんなに見られると恥ずかしいです」
「え、あ、ああ! ごめんごめん、ちょっとあまりに大きいから......」
エリーちゃんには言われたくないですね。
どうやら試合が終わったようですね
『ヒーローチーム続行不可と見なし、ヴィランチームの勝利』
そろそろ平気そうですね。
「ではエリーちゃん」
「何?」
「あとよろしくおねがいしますね」
そろそろ疲れました。
「ちょっと、え、想起? 想起!?」
***
「知らない天井だ」
「あ、翔! 目が覚めた?」
隣のベッドで姫が横になっている。
「あれ? 訓練は?」
確か轟くんを凍獄で捕獲した後......何も覚えてない。
「あの個性が発動しかけてたから止めたのよ」
「あぁ、なるほど。てかそっちはなんで寝てるの?」
「建物を覆うように血糸を展開して倒れただけよ」
血糸は姫の血から武器を作る装血で作ったものだったはずだ。だとすると。
「血いる?」
「ありがたく貰っておくわ」
気付いたときにはこちらのベッドに侵入された後だった。床ドン状態で首元に口を近づけてくる。噛まれ......
「想起くん大丈夫!?」
「翔くん平気?」
「想起、さっきは悪かった」
「血城さん想起さん大丈夫ですの?」
突如として保健室のドアが開き、麗日さん、デク、エリーさん、メガネ「メガネではなく飯田天哉だ!」、轟くんに八百万さんなどほぼクラス全員が来た。
「「「「「「あっ」」」」」」
......クラス全員に床ドンされる瞬間を見られた。
「ッッッッッッッッッッ!!!!!」
あ、不意打ちだからか顔がものすっごく真っ赤になった。
「忘れなさいッ!!」
後日、涙目で恥ずかしがる姿にキュンとしたと言われまた赤くなることになった。
***
「そっか、もう終わったのか」
デクから戦闘訓練の結果を聴く。結果としてDグループはヴィラン側の夜闇と姫の攻撃が強くかなり優勢だったのに最後の最後で葉隠さんが尾白くんを囮に逃げ出して核を保護しヒーローが勝利、Eグループは口田くんが動物たちに索敵してもらい芦戸さんが外壁を溶かしつつ登り、核を確保。ヒーローチームの勝利。Fは......青山くんの名誉のためにも言わないでおこう。端的に言えば茶の間では流せない映像が流れることになった。
デクは精密検査を受けた後無理を言って直ぐに会場に戻ってきたらしいが、授業が終わった後で結果を聴きに行くことになりついでに俺の様子を見に来てくれたそうだ。他のみんなはそれに着いてきた感じなのだろう。
「訓練での腕の壊れ方を見る限り、昨日治してよかったってつくづく思うよ」
「あははは......なんかごめんね」
「いいんだよ別に。デクが頑張ってるとこっちまで頑張ろうってなるし」
昨日運動能力テスト後の事。
〜〜〜***
「緑谷君。君の指、というか全身ヤバいです」
「あの、これって?」
ベッドに緑谷くんを拘束しながら続ける。
「いいかい? 君の体はボロボロなんだ。今までロクに運動してなかったのに一年ぐらいで体を鍛えただろ」
「ウッ......」
「しかも君のダメージの蓄積を見る限り、恐らくプロに見てもらいながら鍛えていたのにそれを無視して鍛えてただろ」
「ギクゥ」
「その結果、君の体はボロボロ! しかもここ一ヶ月前に四肢全部壊し、今日に至っては指の内出血と骨折のダブルパンチだろ! そんなので体が耐えられるはずがないだろ!」
「ウウウウッッッ......仰る通りでございます」
凄いしわっしわな顔で謝ってくる。
「ということで君はここでリカバリーガール立会のもと俺の治療を受けていただきます」
そう伝えると不思議そうな顔をする。
「想起君もしかして他にも個性持ってるの?」
「あぁ......治療ついでに説明してやるよ」
「よ、よろしくおねがいします」
「それじゃあ、ますは今回使う個性から......」
想起 翔
個性『想像』
個性を作り出すことが出来る。尚作った個性は本人が消さない限りはいつでも使える。
作り出した個性
『天照』
温度、色、燃え方、明るさなど全て変更できる炎を使える個性。ただし本来の炎の持つ性質から離れるほどエネルギーが必要になるぞ。
「今回はこれで緑谷くんの疲労を燃やします」
「どういう事? それってもはや火じゃないんじゃ......」
「炎は古代から生命の輝きとか命を表すものだからいける。何なら不死鳥とか炎に巻かれて生き返るし」
「そ、そうなんだ」
『凍獄』
自身から半径10メートル圏内の物体からエネルギーを奪うことが出来る。絶対零度まで下げられるが下げた分のエネルギーは自身に溜まっていくため排熱しないと大変なことになるぞ。
『紫矢』
自身に触れている物体に掛かっている力学ベクトルを変更することが出来るぞ。但し膨大な情報処理が必要となってくるため使ってる間は常に頭痛がするぞ。
『玉操』
地面に関係するものであれば触れることでどのようにでも操作出来る。但し質量は変えられないので伸ばせば硬度は低くなってしまうから注意だ。
『超再生』
致命傷の傷であっても治る。ただ回復速度は常人より少し速いだけだぞ。
『変質』
自らの性別、体付き、筋肉など全て思い通りに変質させることが出来る。ただ性格まで変えることは出来ず、肉体の変化には激痛を伴うぞ。
「こんな感じかな」
「なるほど。でもなんで全部の個性にデメリットがあるの?」
「実はデメリット無く使える個性は作れないんだ」
「え! そうなの!?」
「まあ、そもそも個性のデメリットっていうのは筋肉痛みたいに限界を超えた力を出すと生じるようなものなんだ。個性だって身体機能の一部として後天的に成長していく。だからデメリットではなく身体機能の限界と考えてもらってもいい」
バナナの皮を剥きながらデクの質問に答えていく。
「そして、もぐ、肉体の、もぐ、限界を超えて、ごくん、というよりもリミッターを外すような感じの個性。それが君の個性だと思っている」
本来三歳ごろから個性の定着が始まり、六歳ごろで自分の限界を超えない程度に個性が使えるように成る筈だ。というよりもこんな風にボロボロになったら人体の機能としては不都合が多いはず。
「もしかして今まで個性が発現してなかったからこんなに個性が体にあっていないのか?」
「......実は」
いつの間にか考えていることを口に出していたようだ。言い淀んでいたが何か決意したように話し始める。
「去年まで無個性だったんだ。だけど雄英の出願前に個性があることが分かって......」
そこからデクは自分が無個性だと虐められていたこと、十月頃に個性が発現したがそれは身体能力を限界まで引き出すというものだったこと、このままだと使えないため似たような個性を持ち、命を助けてもらったプロヒーローに見てもらって鍛えたことなど、ポツポツと話してくれた。
「なるほど。まあ、そんな個性であれば体がここまでボロボロになるのも納得だな」
逆にたった三ヶ月程度で使えるようになったデクも凄い。その話が本当であれば彼の個性に対する経験は幼稚園生と変わらない。なら、将来を潰させないためにも。
「じゃあ、疲労を燃やしていくから熱かったら言ってね」
「よ、ヨロシクオネガイシマス」
「天照起動、不死鳥の灰燼」
まずは一番酷い右腕から燃やしていく。
「すごーい色がはいいrあああああああああああああああああああついあついあついあついあつい!!!!」
「マウスピース入れたけど壊さないようにねー」
「いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい!!!!!!!」
「はい、がんばれ、がんばれ」
***
「はい、終わったよ」
十五分程度で燃やし終わり他に疲労がないか軽く炙る。
「うわー燃やされている間は激痛だったのに終わった後はこんなに軽くなるなんて凄いな〜」
軽く腕を回して調子を確かめている。
「ありがとうね、想起くん」
「俺のことは翔でいいって。それよりも今回燃やしたのはあくまで全体の8%だから今後もやるよ二週間に一回ぐらい」
「え゛」
「本当は一気に燃やしたかったんだけどそうすると今までの傷とかも全部治って筋肉が落ちるだろうから今回はここまで」
本当は嘘だ。だがこれ以上壊れても回復するなら危険を顧みないという考えを捨てさせるには必要だ。
「また無茶なトレーニングしたら問答無用で燃やすから」
「もうしないよ! ......多分」
「え?」
掌で不死鳥の灰燼を出す。
「絶対やりません!」
「よろしい。あ、あととりあえずこのバナナとみかん食べて」
「? どうして」
一応皮を剥きながら質問してくる。
「俺がやったのは無理やり疲労を燃やすっていう荒療治だから燃やしている相手にも相当なエネルギーが必要なの。だからそのバナナを食べてエネルギー補給をしてもらわないとなんだ」
「ふーんそうなんだ」
納得したのかバナナを一口食べる。
「あっま、このバナナものすごく甘くない!?」
「それ俺が作った品種改良バナナ。水分量が少ない代わりに糖分の結晶が多いから一本で糖質60グラムも取れる。とりあえず二本をみかんも一緒にゆっくり食べてね」
「もしかしてみかんもなんかある?」
ほう、気付いたか。
「とりあえず食べてみてよ」
恐る恐るみかんを剥いて口にする。
「すっっっっっっっっっっっぱ!!! あ、でもあま......いや、やっぱすっぱ!」
「ヒャハハハハハッそれはなるべく噛み砕かないように食べたほうが効果的だよ」
「これは何をどうしたのさ」
酸っぱさでバナナをまた頬張る。
「みかんは砂じょうの皮を厚くしつつ、クエン酸を多くしたやつです」
「砂じょう?」
「果肉の中のプチプチしてるやつの名前だよ」
そろそろ姫も反省文を書き終わる頃だろう。
「じゃあ、俺は姫のところに戻るから」
「そっか、もう反省文書き終わるだろうからね」
デクが立とうとする。
「あ、あれ? 起きあがれない」
「そりゃあさっきあれだけ体に激痛が走ってたんだからまだ脳が働いていないんだよ。多分あと五分もすれば動けるようになるだろうけど筋肉痛が酷い日みたいになるから気をつけて帰れよ」
「わ、わかった。じゃあ、また明日」
「おう、またな」
〜〜〜***
「ってことが合ったのに......」
「え、でも頑張ってるのを見るとこっちも頑張れるって......」
「それはそれ、これはこれ。じゃ、ここで燃やそっか」
にっこりと満面の笑みで肩を掴む。
「と、言いたいところだけど今バナナ持ってないから明日リカバリーガールに治癒してもらってくれ」
「お、脅かさないでよー」
「ヒャハハハハハッ悪い、悪い。さてと、そろそろ帰るか」
そう言って腰を上げようとすると轟君が話しかけてきた。
「あ、おい、想起」
「なんでしょうか」
「戦闘訓練でのあれは一体何だったんだ」
「気にしなくていいよ。あれは君だけの問題じゃないから。君を攻めたことは謝る」
しばらく頭を下げたままにする。
「あ、あぁこっちこそなんか悪い」
そもそもこのことはイサナ自身が乗り越えるべき問題だったな。
「あとあの姿は何なんだ?」
あの姿というのは女性フォームのことを言っているのだろうか。雄英校内だし多少はいいか。
「あの姿っていうのはこれかしら」
背丈は殆ど変えず、ウエストを細くしてバストとヒップを出す。
「すごい、もしかしてこれが変質?」
「そうだよ。性別も変えられるから姫が風呂に入る時にどうしても守らないといけない状況だったらこの姿になるかな」
先程まで姫と話していたり壁に寄り添っていた奴らまでこっちを見ている。
「そろそろ吸ってもいいかしら」
かなりの間放置していたからか恥を晒すことよりも吸血の方が優先されている。
「いいですよ。はい、来てください」
そう言って腕を広げると抱っこのような状態で抱きついて首を噛んできた。チクリとした痛みの後に軽く吸ったりぺろぺろと舐めたりして血を補給する。
「なんだか赤ん坊に母乳を上げているかのようですわね」
「なんだかかわいいね」
女子勢はそんなような事を言い、男子達は三者三様の反応を見せていた。
「......(目線を逸らすが視界の端に入っているからか目だけちらりと動かすデク)」
「......(持ってきた本を読み始めるメガネ)」
「......(気まずそうに見ている轟)」
なんでお前らは気まずそうにしてるんだよ、と思っていたが原因が分かった。
「姫様、吸血ついでに胸を揉まないでください」
「えぇーだめぇー?」
クッ! 俺の胸に頭を乗せつつ涙目な上目遣いでわがままを言ってきて......
「わかりました、いいですよ」
二日目にして黒歴史が誕生してしまったのであった。