久々にFGOして、項羽様格好いいと思ったところから筆を取った作品。所々ガバガバかも知れないけど、細かいところは項羽様が破壊しました。
我がカルデアには虞美人だけは来てるのになあ……
ーー中国、会稽
「こ、これは……」
2052年、会稽において大規模な秦時代の遺構が発見された。ある出来事を発端とした動乱期における混乱でそれを知る者は当時の国の幹部でもほんの一握り。そして、そこに古代からの贈り物が眠っているとは誰一人として考えもしなかった。
「それでは始める。くれぐれも気をつけてくれ給え」
べっこう色の古ぼけた眼鏡をかけた男は現場にいる者にそう厳命した。
彼らはこの遺構を発掘するために派遣された隊。同時に遺構の状態を確認したり、測量したりする目的も含まれている。
「やはり……ダメだったか……」
男はそれなりにその道では名の知れた考古学者。いくつもの現場を経験してきた彼は時代の流れがとことん悪い方に傾いていることに腹を立て、唾でも吐きたかった。
2030年から表面化してきた寒冷化とそれに関連して発生した三度目の世界大戦。気候の変化で遺跡はその風化を加速させた。それだけならまだある程度痛みを伴うが、対応は出来る。
だが、戦争だ。過去の戦争で国民の総力を尽くさねばならない事は誰もが知っている。しかし、電子兵器だの、ミサイルだのと言っていた時代は過ぎ、過去の人間からすれば冗談としか思えない技術が登場した。
魔法技能師。今までオカルトと思われていた魔法を扱う者たち。20世紀末のアメリカで核兵器を持ち出して来たテロリストを阻止した警察官が使った奇跡。
それに飛びついた国々は魔法に金を使う。金の卵を産むことが確定しているひよこを育てるのに誰が躊躇するだろうか?
カビ臭い遺跡にも一抹の価値はあるとの事でそこそこの金は出資された。無知な者による遺跡の破壊という結果を引っ提げて。
老人は忌まわしき記憶から遺跡や遺物を壊すな、無闇に触るなをいつも厳命している。
何故か?
「興味があったから。」
「うっかりで。」
「わざとでは無かった。」
彼らにとっての常識は他人からすれば常識では無かった。
言い訳の言葉は聞き飽きていたのだ。
「よし、引き上げるか……」
粗方回収はした。しかし、魔法という物は便利だ。以前なら不完全な保存でもそう言った魔法を使うことで大助かり。老人はその点において魔法師の事を豆粒ほどは好ましく思っていた。
「う、うわあ!!!!!教授!!!」
「ん?」
よくよく見れば一人いない。嘆息しながら老人はこう言った。
「ロープとか救助用具を持って来て。数人と私で取り敢えず彼を探そう」
そこにいる全員は呆れたり、嗤ったりしつつ、行動に移っていった。
#####
「教授、ひ、人が埋まってます!!」
「こ、これは……」
若い頃には見る物全てに目を輝かせていたが、こうも心を昂らせるのは久々だ。
明らかに秦の時代のものとは思えない、透明なケースにそれは収納されていた。赤子のように全裸であるが、20歳ほどの見た目をした男性が綺麗に丸まっている。
「教授……何ですか、これは」
「……ワシにも分からん。死ぬほど気に入らんが、オーパーツとしか言えん」
奇妙な事に男の肌の色は土気色ではなく、自分たち生者と同じ血色だ。心臓が脈打ち、胸が小さく上下することから呼吸もしていた。目を背けたかったが、休眠状態で人間型の生物が生きていると信じざるを得ない。二千年以上も休眠状態にある動物なんて聞いたことが無い。餌が少ない時期にエネルギーの消費を避けようと大半の動物は休眠を行う。だが、永すぎる期間を動物では乗り切ることが出来ない。身体にケーブルのような紐か付いていたりするなど、目の前の男は純粋に母親から産まれてきた存在では無く、鉄の子宮から生まれた調整体魔法師に案外近いかもしれないと教授は考察した。
「……とにかく、移すぞ。下手をすれば世界が変わりかねん」
先程まで漂っていた空気はすっかりと冷え切ってしまって、後から来た者も、驚愕と混乱がないまぜになった表情をしていた。
「……会稽、弍式?」
風化して削れかけた木製のプレートにはそう書かれていた。
__________________________________________
突然だが、俺は前世の記憶がある。と言っても殆ど覚えておらず、神と名乗る何者かが俺をあーだこーだで転生させることになったと言っていた。
「君、転生する事になったから」
「はあ……」
「リアクション薄いなあ。普通な驚いてはしゃぐが、泣き喚くかのどっちかなのに」
神は実に残念!といった顔をした。
「いやぁ……記憶というものが綺麗さっぱりないようでして……」
「……ホントだ」
俺は過去の記憶がどうやら無い。一周回って落ち着いてはいるものの、自分が何者かは思い出せず、何故か神前にくるべくして来たという感覚があった。
「ま、いいか。はい……ガチャガチャを引いてくれや」
神は指を軽く鳴らすと貨幣を入れてレバーを回すことでカプセルトイを一つ吐き出すガチャポンを虚空から取り出した。
「回してくれたらいいから。勿論一回ね」
「さいですか」
ゆっくり回すも引っかかりで出てこない。もう少し力を込めると拍子抜けする程するりと抜けて真っ白い玉が出てきた。
「ええと、項羽(fate)の容姿と力、魔法科高校の劣等生の世界?」
中にある紙にはそれだけが書かれていた。意味が分からない。項羽は知識として知っている。西楚の覇王と呼ばれた中華の歴史でも最強の一角に名乗りを挙げる英雄だ。それくらいの基本的な部分しか知らない。
そちらはまだマシだが、魔法科高校とは何だ?名前から観ると工業科高校とか家政科高校のような、魔法を専門とする学校と解釈出来る。それに劣等生という単語がついて来ているので何か本のタイトルのように思えた。
「あー、中々いいところを引いたね」
神曰く、そこそこ当たりだそうだ。どこが当たりなのか聞こうとしても、のらりくらりとかわされているから教える気は無さそうだ。
「これは何ですか?」
紙切れを摘んでそう言った。
「君みたいなのに与える神からの慈悲だよ。力の方は流石に強すぎるから一律でナーフされるけどね」
「まあ、ありがとう……ございます?」
よく意味が分からないが、良いことなのだろう。お礼くらいは言わねばと思い、口に出しておいた。
「へえ、気に入った。最低限は教えてあげよう」
神というのはいつでも気まぐれ。いつの時代も気に入られるのはロクでも無いことに巻き込まれる事と同義だ。
「?」
これまた俺の頭に疑問符が浮かぶ。神がこちらの頭に手を伸ばしたからだ。
「これは!?」
頭に魔法科高校の劣等生と呼ばれるライトノベルというジャンルの本の基礎的内容を、項羽の力の使い方の情報を流し込まれる。頭が割れそうだ。心臓の鼓動に合わせてドクンドクンと痛覚の波が濁流のように押し寄せる。
「ふう、大丈夫かい?」
「ええ、まあ。しかし、痛いのなら事前に教えてください」
トゲのある口調は仕方ない。痛いものは痛いのだ。
「でも、言えば君は嫌がるからね。仕方ない措置さ」
かなりありがたい情報が脳内へインプットされたので怒ることも出来ず、湧き出た怒りは無理やり喉元に押し込めた。
「もう話すこともないしね。頑張ってくれ、僕の楽しみのために」
「え?」
信じられない一言を聞いた俺は聞き返そうとした。それはごく自然なことで、神の悪戯故に仕方ないことだったが、足元にわざとらしく置かれていたボタンに気づかなかった。
ポチッ
「え、うわあああぁぁぁァァ……」
床はパカリと口を開けて、俺はその部屋から落下した。
「あの、やろう……」
罵ってやろうとしたが、脳の機能は段々と遅くなっていく。そうしている内、俺は気を失った。
__________________________________________
「知らない天井だ」
何故か言わなければならない気がした。自分の体には色々な器具が付いていることにも気づく。おまけに少し肌寒さを感じた。
ドアが開く。乾いた音は密閉空間によく響いた。
「キミは、我々と会話可能かね?」
白衣の女医さんがいたけど、俺が全裸とはどういうことよ?
_______________________________________________
「私は……私は……」
どうやら彼自身には名前という概念は理解していても、名前も持っていないようであった。
「キミには会稽弐式という番号が付けられていたようだが、心当たりは?」
「そうだ、私はそのような名前だった気がする。して、貴君は?」
スイッチを入れかえたように態度が変わった。それを私は気にも留めなかった。
「レイ。そう呼んで」
「了解、レイ。貴君は私に何を求める?」
「求める?キミの事を知りたいけど」
「了解、筆と竹簡……いや、書くことが出来る物を要求したい」
瞬時に自分の状況を理解した彼は時代の差異を考慮して発言した。
「いいわ、待ってて」
彼女は直ぐに鉛筆と紙を持って来た。
「ごめんなさい、貴方に合うのは多分これかしら。鉛筆っていう筆の一種と書かれる物の紙よ」
「理解」
鉛筆を持った彼はそう言ってすらすらと現代の中国語を書き始めた。
「う、ウソ!?」
古代の楚国の言語を使うと思われたが、予想に反して特に違和感もない。
「そこの光る器具とこの部屋から情報をかき集めて推測した」
彼女はこの生き物が自分たちの規格に収まらないことを早々に理解し始めていた。光る器具ーーパソコンの画面には様々な考察がどっさりと書かれており、文字も小さく纏まっている。それを見ただけで書き出すとは到底信じ難い事だった。
__________________________________________
「巫山戯ているのかね?」
滅茶苦茶が書かれていて、いかに心が広い議長と言えど、顔を顰めた。
「いいえ」
サングラスを掛け、スーツを着た男は明確に否定した。
「では、説明をしてもらうか」
「まず、彼ーー会稽の秦代の遺構で発見された会稽弐式と呼称される人造人間は再現不可能です」
「人造人間?そんなバカな」
それなりに科学技術が発展したいまだからこそ調整体魔法師のような生物を製造できるのであって、ましてや紀元前の時代に人間を創るとは考えられない。何より正気を疑う。聞いている彼らも概ね同じ事を考えていた。
「いいえ、彼の体組織の放射線測定により約二千年以上前に製造されたことは確実です」
まさか? 始皇帝の不死探求?
そんな声がちらほらと聞こえる。レイは構わずに続ける。
「彼は通常の人間とは比べ物にならない身体能力を秘めています。映像をご覧ください」
VTRがスタートした。
厚さ五ミリの鉄板と鉄剣が置いてある。弐式はそれを手に取り、軽く振った。
『承知。剣で切断すれば良いのだな」
『ええ』
『終わったぞ』
しばらくしてブツンと大きく鈍い音がした。鉄板は真っ二つで、あまりの速度に見る者の認識が少し遅れた。
『は、早くない?』
「これは、凄まじいな」
全員呆然としている。他にも走力測定、握力、パンチ力と測るが、全て規格外と言う他無かった。
「そして、これが最も特筆すべき能力。演算能力です」
「もういい、必要ない」
どうせアホみたいな演算能力を見せつけるのだろう。魔法の使用も可能なのだそうだ。黒い面を散々見てきた彼らであってもどうしようもない暴力だ。
「彼の肉体の心臓部には特殊な炉が存在しています。現代科学で再現はおろか、ほとんど理解すら不可能なテクノロジーで作成されています。よって、会稽弐式そのものを運用することを私は提案します」
「……」
皆が思考している。使うべきか、使わないべきか。
「決議を……おお、満場一致か……」
珍しく評議で満場一致が出る。彼ならば事の達成が出来るだろうと彼らは判断した。また、同時にこれは試金石でもある。
「では、今を持って会稽弐式の運用を開始、大漢への投入を認証する」
「承りました」
面倒な暴走を起こした大漢を、決して彼らは許さない。
補足
・会稽弐式
項羽こと、会稽零式の後継機。未完成であり、肉体は項羽に及ばず、演算能力は全力で項羽の6〜7割ほどある。念のために書いておくが、彼は人型の躯体である。現時点では大亜細亜連合の所属。
・大亜細亜連合の幹部?
スーツマンと会話していた者たち。大漢政府を疎ましく思っており、遺跡からの思わぬ拾い物にぬか喜びしている。四葉が蠢いている事を確認し、崑崙の研究内容をそれに乗じて奪う事を目的とした隊員を編成、投入している。会稽弐式もこれに含まれる。
・遺跡
今回の調査で会稽弐式を発見した場所。秦時代の遺構であるが、それより過去はとある研究施設があった。しかし、神秘の薄まり方が加速した結果、跡形もなく消え失せている。
大亜連合軍はどれ主体で戦う?
-
ハイパワーライフルなど
-
魔法(古式、現代)
-
魔法(古式のみ)