やはり俺がVtuberになるのはまちがっている。   作:人生変化論

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八幡は大型企画に挑む

 

 

【わんちーむ公式チャンネル】Vtuberベストパートナー選手権開幕!!!

 

 

・待機

・待機

・わくわく

・うおおおおおお

・ついに来たか

・伝説の企画になるぞこれ

・楽しみや

・メンツ豪華すぎな

・三期生全員集合はやばい、いつぶりだ?

・最初の三期生コラボ以降集まってない

・花蓮ちゃんのとこ大丈夫かこれw

・順当にいけば麗華様のとこかルカひなかな?

・大穴のカレナナ

・犯罪臭すらするパートナーな

・花咲って誰?男なん

・最近アリスちゃんとコラボしてる人だよ

・おい!!アリのぞは至高だぞ!!!

・男女アレルギーのやつ多すぎだろ

 

 

「すごいわね、同接」

 

「ああ。俺の配信とは桁が違う」

 

「私だってそうよ」

 

 

視界の端に置かれたPCから流れるコメント。普段の個人配信とは比べ物にならない速度と、配信開始前の枠に集まる多くのリスナーたち。

本配信が開始する前の僅かな時間、雛壇に座った俺とアリスは企画の規模に驚いていた。

 

 

一ノ瀬花蓮からの死刑宣告を受けた後。

参加するVtuberが全員集まり、各々がスタジオ内のセットに座ることとなった。

雛壇の下段には、車椅子Vtuberの北条麗華と橘のペア、一ノ瀬カレンと神楽ルナナのペアが座っている。上段には俺とアリス、王子ルカと姫宮ひなの、比較的常識人(?)が座ることとなった。

セットの一部でもある机には、一人一台のPCと、ペアで共用のタブレット端末が置いてあった。前者でコメントを読みつつ顔の動きをトレースし、後者でクイズなどの回答を行う予定だ。

 

 

「……やっぱ俺、アウェーだな」

 

 

多くの人気Vtuberが集まる企画だからこそ、視聴者の数も相応に多い。

アリスの知名度があれど、俺という存在を認知している人は限られてしまう。実際にコメント欄でも、『花咲望って誰?』や『誰だこの男』なんて、どこか棘のある内容がちらほら散見される。

 

当然と言えば当然、か。

登録者数万人の男性Vtuber。知名度に関してはアリスややさいじゅーすさんに頼り切り。女性限定の箱、男女の関係に忌避感を覚える者も多いこの界隈、環境の中であれば、難しい立ち位置であることは明白だ。

 

真剣にやっている。この世界に正面からぶつかっているからこそ、先人たちの背中が途方もなく遠く感じた。

 

 

「なーに弱気になってんのよ、らしくないわね」

 

 

べしっ。

アリスのちいさな手のひらが、俺の背中を強く叩いた。

 

 

「あんたは実力あるVtuberだわ。魔界の皇女たる私が認めるんだもの、胸を張りなさい」

 

「随分な自信だな」

 

「ふん、自信なんて陳腐なもんじゃないわ。確信よ、確信。それにほら、よく見なさい」

 

 

・花咲最高だから、舐めんな

・おい!!眷属はみんな花咲の味方だぞ!!!お嬢を頼んだ!!

・お前がここまででっかくなって感動だよ

・冷笑系に見えてアツい男

・アリのぞのてぇてぇさを知らないだろう、弱いな

・花咲なら大丈夫

・愛人はちゃんと見てるぞ。がんばれ

 

 

爆速で流れるコメントの中でも、確かに輝くヤツらがいた。

俺を面白いと、がんばれと応援してくれるリスナーたち。何者でもない男子高校生を、何者かに押し上げてくれた味方たち。

たった半年。活動を始めてから半年だ、Vtuber業界全体で見たらそう多くも無い数字。それでも、誰よりも濃い半年で。積み上げてきたものは確かに在るのだと、胸を張って言えるから。

 

___だよな。

こんなとこでひとりだと勘違いして、弱気になって。情けなく蹲る、そんなのらしくないだろう?

 

 

「……ありがとな、アリス」

 

「今に見てなさい。誰だ誰だってほざいているヤツらに、あんたの存在を知らしめてやるんだから。アリのぞがどれだけ最高なのかをねっ!」

 

 

隣で闘志をたぎらせるちいさなライバルが、心から頼もしかった。

 

 

・・・

 

 

「そーれーでーはー!まずは自己紹介をするメロ!じゃーあーまずは、アリのぞからいくメロ!我らがわんちーむ三期生、孤高の皇女様っ!アリス・オミソルシル!」

 

「ッ、スー……じめ、まして。……ス・オミソルシルです」

 

 

前言撤回、全然頼りにならんかったわこいつ。

ついに企画が始まり、独特な語尾の司会者からバトンを渡されたアリスだが、か細い声で自己紹介をするに留まっていた。挨拶ができただけ素晴らしいというべきか、さっきまでの威勢はどこへと言うべきか。

 

ちなみに、今回の企画で司会を務めるのは、わんちーむ二期生である「メロルン」という女性……ではなく動物である。ふかふかの白い毛皮に可愛らしい表情、頭に乗った天使の輪が特徴的なVtuber。オンラインでの参加らしくスタジオにはいないが、その声質や口調によってか謎の存在感を発揮していた。

 

 

「あれれ、今日の皇女様はローテンションのようメロ。では!次はそんな皇女様のパートナーメロ!」

 

「……今日も元気に超広大遠距離爆殺魔法。どうも、花咲望っす」

 

・なにその挨拶www

・やっぱ言うんか花咲w

・よく言った!

・独特すぎるだろその挨拶

・アリスちゃんのパートナーもイカれてんのかw

 

 

もはや俺の配信では恒例となった挨拶だが、俺を知らないリスナーも多いこの場では新鮮に映るようだ。その証拠に、他のVtuberたちもくすくすと笑っている声が聞こえる。想像以上に羞恥プレイだなこれ。

耐える俺に対して、挨拶の元凶である皇女様は、嬉しそうな表情でこちらを見上げていた。くそ、そんな顔されたら怒れないだろーが。

 

 

「厨二病には厨二病が惹かれ合う、ってことメロ。その相性を、今回は存分に見せてもらおうかメロー!それではお次、地獄のホストとホス狂いパートナーメロ」

 

「ははっ、このボクが地獄だって?なにを言っているのかなぁメロルン先輩。その美しい瞳に、ボクの輝きが映っていないとでも言うのかい?」

 

「美しい?ねえ王子様、今美しいって言った?美しいのはひなだけだよね、ねぇ?」

 

「うーん地獄メロ」

 

・いつもの

・わんちーむの恒例行事

・三期生は最高だぁ

・個性の押し付け合い

・メロルンが常識枠の貴重な空間

 

 

話題が俺たちから完全に移ったことを確認して、俺はマイクをミュートした。

今回の企画は、素直なリアクションを配信に載せるために、基本は常時音を拾うことが事前に示されている。しかし自己紹介やクイズを出題している間などは、演者自らがミュート操作を行う必要があるのだ。

 

この挨拶を考えやがった皇女様に、文句の一つでも言おうと向き直る。

 

 

「……アリス?」

 

 

文句は喉元まで出かけて、止まった。

顔を僅かに赤らめて、俺を見上げるアリスの姿があったから。

 

 

「使ってくれるのね、その挨拶」

 

「お前との罰ゲームだろーが。知ってるだろ、配信で散々言ってんの。よくコメ欄にいるし」

 

「それはそうだけどっ。……なんでもないわっ」

 

 

照れた表情を隠すように、アリスはそっぽを向いてしまった。

性格に難があるとはいえ、美少女の照れ隠しは絵になる。栄養栄養。

 

アリスが照れた理由は正直わからないが、クソダサい挨拶ひとつで彼女がご機嫌になるなら、まあ良しとしよう。女の子がご機嫌であることの価値なんぞ、小町で痛感しているからな。触らぬ神に祟りなし、と言うヤツである。花咲望チャンネルは、ことわざを勉強する学生たちの味方です。

 

 

「嫌なのじゃあ〜!」

 

 

途端に響く叫び声。

自己紹介は、いつの間にか神楽ルナナのところまで進んでいたようだ。手元のPCに映された配信画面では、口を大きく開け叫ぶ神楽ルナナと、ケラケラ笑うメロルンがいた。

 

 

「何故わらわがこやつとパートナーなのじゃ!もっと別にいたじゃろう、ほらわらわって結構コラボとかするし!社交的な方だし?!」

 

「普通に三期生であぶれてたメロ。そこの変態と組ませるしかなかったメロな」

 

「辛辣?!てゆーかこの組み合わせにした主犯はお主じゃな!この悪魔め」

 

「先輩に向かっていい度胸メロ。悪魔ではなく天使、天使メロ」

 

 

三期生の不憫枠ってアリスだと思っていたが、意外にも神楽ルナナなんだな。いじりやすいキャラクター性というか、リアクションが大きかったり反発したりすると、タレント的な側面では成功しやすいのかもしれない。

 

 

「それでは、本日最後の参加者メロ!我らが二期生にして、最強最悪の変態!自称清楚JKの、一ノ瀬花蓮メロ」

 

「メロちゃん、変態は余計ですよ」

 

「事実じゃろ」

 

「事実メロ」

 

「失礼な」

 

 

早々にコントを繰り広げるのは、俺の推しでもあり憧れの一ノ瀬花蓮。

ぽれ、嫌われてるんだケド……内なるギャルが暴れるゥ。

 

 

「リスナーの皆様こんにちは、一ノ瀬花蓮です。今日はわたしとルナナちゃんのかった〜い絆を、この世界に見せつけてやりますねっ」

 

「無いじゃろ絆。お主とコラボしたの一回だけだし」

 

「……そう、表ではね。裏では何度も何度も心を通わせる仲です」

 

「妄想が過激メロな。美少女じゃなかったら逮捕されてるメロ」

 

 

現代のルッキズムやめろ、天使がそんなこと言うんじゃねぇ。

一ノ瀬花蓮を始めとして、メロルンといい北条麗華といい、二期生はどこかネジが外れてるな。二期生までのVtuberと、アリスら三期生では、言葉通り通ってきた時代が異なる。コンプラ然りルール然り、先駆者たちは比較的制約が緩い時代だっただろう。そう考えると、王子や姫宮がプレッシャーを感じてしまう理由も、なんとなく理解できる。

 

 

「……こほん。真面目な話をします」

 

 

ふざけてる自覚はあったのかよ。

 

 

「わたしは今日、倒さなければならないヒトがいます」

 

 

あっ終わった。

アリスよ、きみはあのロリコンJKの餌食となっておくれ俺の代わりに。

 

 

「花咲望さんッ!わたしは貴方から、アリスちゃんを取り戻します……!クイズで獲得したポイントでわたしたちが勝てば、アリスちゃんはわたしだけの皇女様になるッ!」

 

・ならねぇよ

・元々花蓮ちゃんのものでもないだろうがw

・なにこの少年漫画みたいな展開

・巻き込まれた花咲

・勝て花咲!ロリコンにお嬢を渡すな!

・おもろすぎるだろwww

 

「私、一ノ瀬先輩と話したことほぼ無いんだケド」

 

 

アリスは良いだろ、ピーチ姫ポジなんだし。問題は明らかに挑戦者側の俺である。これから配管工になって冒険しなきゃいけないのん?

 

 

「勝手に台本にないルール追加しないでほしいメロ。さてさて、挑まれている花咲望。きみはどうするメロ?」

 

「……俺すか」

 

 

急に矛先が向き、慌ててミュートを解除する。

何故に俺が余計なことを気にせにゃならんのだ。アリスお前が戦えよ、そこのロリコンJKは厨二病ロリをご所望なんだから。

面倒さを前面に押し出しながらアリスの方を見るも、期待するような表情でこちらを見上げるだけだった。こいつ今の状況を楽しんでるな。別に学園都市の激アツバトルとかじゃないんだわ。

 

助けを求めて辺りを見渡すも、自分がアウェーであることに気付くのみだった。

姫宮は楽しそうに笑っているし、王子は偉そうに腕を組み、うんうんと頷いていた。お前らみたいなエンタメ集団に認められるのもなんか癪だなおい。

北条麗華は、肘を突きながらも僅かに微笑んでいる。唯一同じ男性の橘さんだけは、俺に心配する視線を送っていた。ありがとう、配信において男というだけでここまで心強く感じるなんて。だからSNSの男女論レスバは無くならないんだ……。

 

 

「……受けて立ちますよ。アリスがいないと、まあ。そこそこ困るんで」

 

 

断る選択肢なんて無かった。これが現代の同調圧力ッ!

Vtuberの歓声と、バシバシと肩を叩かれる感触を無視し、俺は何度目かのため息を吐いた。

 

 

・・・

 

 

「それでは早速、知識や脳トレの問題を中心に出題していくメロ!第一問、ある人が「これは神のような問題だ」と言ったメロ、果たしてどんな問題だったメロか?」

 

・大喜利じゃねーか

・開幕一秒で矛盾してるが

・脳トレでもなんでもないわ

・意味わからんwww

 

 

開始早々大喜利大会になってしまった。台本にないぞこんなの。

 

 

「ここは私に任せなさい!私が書くわっ」

 

「おお凄い威勢」

 

 

アリス、今日は評価の高低差が激しいな。

突如始まった大喜利に、俺たち参加者はガヤガヤと騒ぎながらもなんとか答えを完成させた。

 

 

「出揃ったメロ!では、まずは麗華からお願いするメロ」

 

「整いましたですわー!」

 

 

整ったらそれはもう大喜利なんだよ。

勢いよく声を張り上げた九条麗華。その隣には、苦笑いしながら付き添う橘さんの姿。ああ落ち着く……。

 

 

「神のような問題、即ちわたくしに関する問題に決まっていますわー!なんたって、わたくしはVtuber界の神っ、ゴッドお嬢様なのですから!わたくしについての問題に違いないですわ!」

 

「あの麗華、ちょっと違うかもだね……」

 

「むっ、橘ァ!わたくしが神ではないというのかしら?!」

 

・自己肯定感高杉

・橘さんって不憫枠かもしかして

・そうだよ いつも振り回されてる苦労人

・二期生はそう簡単に止められない

 

 

「自分が好きすぎるのも良くないメロな。冷笑筋ピクピクメロ」

 

 

あんま天使が冷笑とかすんなよ、熱く笑う側だろうが。

現代のSNSに対応する小動物とか嫌すぎる。横転とか使い始めるんだろうか嫌だな。

 

 

「では次、もうひとりのお嬢様と苦労人、アリのぞにお願いするメロ」

 

「誰が苦労人ですって?」

 

「お前のことじゃねえよ」

 

 

苦労人って引っかかるところじゃないだろ。「お嬢様」が悪口になる特殊な環境下で労働をしております。

 

 

「ふん。私の天眼が、この問題の真実を明らかにしたわッ!」

 

「おおー」

 

「メロルン先輩は『神のような問題』と言っていた!この「ような」を、比喩じゃなくって事実として捉えればどうかしら」

 

 

眉間に指を添えながら解説するアリス。蝶ネクタイとメガネが見えるぞ、確かに体格とか似てるし。見た目は子供、頭脳も子供ッ!

 

 

「答えはそう、『神に関する問題』じゃないかしら!大喜利に見せかけたひっかけ問題、それが本質よ!どう?!」

 

「何故俺の方を向く」

 

 

自信満々に答えたアリスは、キラキラとした瞳でこちらを向いた。楽しそうだなおい。普通に可愛いのやめてくれよ。

 

 

「うーん、理屈は良いけど面白くはないメロ。座布団は上げられないメロな、取り上げもしないけど」

 

「え」

 

・存在しない座布団システム

・大喜利かよ結局

・しかも古きよきの方な

・アリスちゃん不憫

・嬉しそうに報告するお嬢、これはアリのぞでしか見れない

・眼福

・不憫かわいい

 

 

知識問題という前提を覆す展開に、コメ欄は大荒れである。

先ほどまでの嬉しそうな態度とは一変し、しょんぼりと肩を落とすアリス。ぶん殴っていいぞこの企画考えたやつを。

 

 

「ふっ、甘いねきみたち!神、それは即ち至高の存在であるということ!もう分かるだろう、神とはつまりボクの___」

 

「……王子様?」

 

「……んん、神とは即ち!ひなのことさッ。当然だよね」

 

「王子様っ、好き!」

 

 

姫宮からの無言の圧に負け、恐らく自分を讃えようよしていたであろう言葉を修正した王子。やり遂げた……みたいな表情で満足げにしているが、普通にダサいからなおい。なにパーフェクトコミュニケーションしたったぜ、的な顔をしてこっち見てんだよ、対抗すんな俺に。

 

 

「勝手にいちゃつかないで欲しいメロ」

 

・メロルンが考えた企画だよ

・おまいう

・被害者ヅラすんなw

・このメンツ集めた時点で予想してたでしょw

 

 

発案者あんただったんかい。

企画に誘われて参加しただけにすぎない俺にとって、この配信がどのような経緯で生まれたものなのかは全く知らなかった。まさかこの口悪獣が主催していたとはな。集めたメンバーが終わり散らかしている。俺以外、俺以外!

 

 

「それではラスト、ロリとロリコンにお願いするメロ」

 

「お笑い芸人みたいな名前やめてください」

 

「芸人に失礼じゃろお主」

 

 

事実ではあるけどな。

神楽ルナナと一ノ瀬花蓮、犯罪臭すらするカップリングだが、以外にも相性は良さそうである。そもそも、先輩に辛辣な態度の後輩という構図が、コンテンツとして優れている。実際コメント欄も、他Vtuberが発言した時に比べて盛り上がっているし、計算された二人なのかもしれん。

 

 

「良いですか?言っちゃって良いですか?私の最高の回答を」

 

「もう大体予想できるのじゃ」

 

「アレだったら強制的にミュートするメロ」

 

・あっ(察し

・一択で草

・ロから始まる

・回答する前からわかるのなんだよ

 

 

「神と言えばもう一択でしょう。ロ___」

 

 

一ノ瀬花蓮、爆散。

 

大喜利の結果は、唯一異なる角度から答えたアリスがポイントを獲得することとなった。参加者の大半がナルシストなのなんだよ。これもうVtuber版のイケメンパラダイスだろ。

 

 

・・・

 

 

配信は無事?に進行し、第二部である『ドキドキ♡パートナー度検査!』が始まった。

大喜利から始まり、どうなるのかしらんと不安を覚えた第一部だったが、最初の一問以降は意外にも真面目な質問が続いていた。世界の地名や遺産に関する問題、一般常識に関する問題など、内容こそ中高生レベルではある。しかし脳トレなど、所々で凝っている問題も多く、点取合戦は白熱していた。

 

第一部が終わった時点で、トップを走るのは一ノ瀬花蓮と神楽ルナナ。

大喜利ではボロボロだった彼女らだが、一ノ瀬花蓮が知識問題で無類の強さを発揮し全問正解。優等生の皮を被った変態とよく称されているが、優等生の部分も捨ててはいなかったようだ。

 

次点で俺とアリス、北条麗華と橘さんのパートナーが並ぶ。

俺たちは事前に決めた分担で点を稼ぎ、橘さんらは一般常識の分野で点を稼いでいた。そこそこ正解した気はするのだが、それでも追いつけないトップがいかに点を稼いでいるのかがわかる。

最後尾から追いかけるのは王子ルカと姫宮ひなのパートナー。俺たちを含めた三グループはそこまで得点に差がないため、緊迫した状況になっていた。

 

 

「ふふ、ぶっちぎりの高得点ですか。さすが私、優等生......」

 

「なんかムカつくんじゃが」

 

「ムラつくの間違いではないですかルナナちゃん」

 

「最低のやり取りしないで欲しいメロ」

 

・華蓮ちゃんの数少ない優等生要素

・頭脳だけはいい女

・ムラつくやめろww

・ライン軽く超えるな

 

 

こんな会話を男の俺がしたら間違いなく炎上するし、ムーブとしては面白いから正解なの、か?ネタ枠であるはずのメロルンがツッコミに回っているという時点で、一ノ瀬華蓮のヤバさは透けているけども。

 

 

「それでは第一問メロ!まずはベストなパートナーの基本、お互いの誕生日を知っているかどうかメロー!」

 

 

なるほど、パートナー度とは何ぞやと疑問だったが、要するに互いのことをどれだけ知っているのか、的なクイズっぽいな。思えば事前に行われたアンケートでも、それっぽい質問が多かった。

 

誕生日か。別に記念日を重く考えるタイプでは無いが、まあそこはVTuber。記念配信やグッズなどの催し物が行われるわけで、俺とアリスは配信外でもそこそこ雑談をするわけで。

 

 

「アリスの誕生日は12月24日だ」

 

「わかって当然よ、こんな質問。花咲は8月8日生まれね」

 

「おお!アリのぞ、流石のパートナー力メロな〜」

 

 

誕生日の時、アリスはSNSでリプ飛ばしてくれたしな。配信にもスパチャ投げてくれたし、俺も礼儀として誕生日を覚えているのは当然だろう。

 

 

「ふふん、やったわね」

 

「おう」

 

 

こつん、と拳を合わせる。

注目されている中で照れくさいが、VTuberの配信に動作は映らんしな。良しとしよう。

 

 

「ボクが姫の誕生日を忘れるわけないじゃないかぁ。3月3日、雛祭りの日にこの世に生まれてくれたのさ」

 

「王子様は7月7日、七夕だねっ!今年はどーしよっかな〜。まずは痛バ作って、ホテルの部屋飾り付けて、それからそれからっ」

 

 

ホストとホス狂も当然クリア。

続けてお嬢様と幼馴染である執事たち。

 

 

「わたくしと橘の仲ですから、当然知ってるに決まってますわ〜!9月29日!何度お祝いしたことか数えきれませんわ」

 

「麗華、誕生日とかちゃんとお祝いするタイプだもんね。あ、麗華は5月1日だよ」

 

 

長い付き合いらしい二人も勿論クリア。

お嬢様VTuberにここまで仲がいいと認められれば、ユニコーンはそこそこ狂いそうな気もするが、コメ欄はてえてえの言葉で溢れていた。流石は天下のわんちーむ二期生、リスナーの調教は済んでいるらしい。

 

現時点で全員が正解しており、この企画に呼ばれている時点で誕生日くらいわかって当然かと思っていたのだが。

意外なところで挫けたのは、まさかの一ノ瀬華蓮だった。

 

 

「ぐぬぬぬぬ......」

 

「お主、こんだけ言っといてわらわの誕生日知らんのか」

 

「ち、違うんですルナナちゃん。興味がないとかじゃなくて、そのぉ」

 

 

まさかの形勢逆転、ロリコンに迫られていたロリの構図が反転し、神楽ルナナはジト目で見下していた。

知らないのかよ誕生日。世代違うとはいえ同じ箱だろうが。

 

 

「そういうルナナはわかってるメロ?」

 

「ふん。変態といえど一応は先輩じゃからの、礼儀よ礼儀。4月6日じゃな」

 

「正解メロー!流石はベストパートナー選手権の出場者諸君、誕生日くらいはすぐにわかって......あれ、あれれれ?ひとりだけ、誕生日の知らない不届き者がいるメロなぁ!しかも、メロルンの同期とは、あー情けない情けないメロよ〜」

 

「うう......」

 

 

なんだろう、神楽ルナナの方が不思議と年上に見えるぞ。実年齢わからんけど。

この面子の中で、唯一相手の誕生日を知らないのが一ノ瀬華蓮だとは思わなかった。ロリのことは知り尽くしてる勢いなのに。

 

 

「じゃあ、カレナナは得点ならずということメロ」

 

「待ってください!私の、私の愛があればきっと当てられます!計算しろ、計算......風、吹いている。身長、体重、成長度合いを加味すれば」

 

 

いやキモイだろ。

途中工作員と戦ってたのなんなんだよ。こっそりミーム混ぜるな俺みたいなオタクには伝わるから。

 

 

「7月___」

 

「全然2月じゃが」

 

 

一ノ瀬花蓮、秒で敗北。

 

 

・・・

 

 

「次は第一印象を当てる、理解度チェックメロ」

 

「第一印象……わたくしに対しての、ってことですの?」

 

「そうメロ!今回は、男から見た女の第一印象を当ててもらうメロ。解答者は女側、自分がパートナーにどう見られているのかを、如何に客観視できるかがポイントメロよ」

 

 

誕生日クイズに続いて行われるのは、理解度チェックと呼ばれたクイズ。事前に初対面の印象を考えておき、アリス側がその内容を当てる、というのがクイズの内容だった。

 

 

「そんなの決まっていますわ!わたくしと橘の出会いはまだ五歳のとき。忘れもしませんわ、わたくしの美貌に目を輝かせる橘の姿を……!そう、『綺麗な女性!』どうですの、橘っ」

 

「自信家すぎて震えるメロ。さあ橘、答えをぶちかましてやるメロ」

 

「はは……『おてんばでうるさい女』かな」

 

「橘ァ!言葉強すぎますわー?!」

 

 

・女ァ!

・辛辣で草

・やっぱ麗華お嬢様とやってけるんだから常人じゃない

・うるさいは草

・別に今と変わってないな

・女呼びすなww

 

 

「メロルン、私とルナナちゃんだと、どっちが男側なんですか」

 

「花蓮は当然変態おじさん側メロ」

 

「変態は余計です」

 

「おじさんはいいのかおぬし」

 

 

各々がコントを繰り広げつつ、クイズは進んでいく。

理解度チェックの結果は半々で、カレナナは一ノ瀬花蓮の暴走により失敗。ナルシストとガチ恋勢という構図が上手く作用し、ルカひなは見事正解という結果となった。

いよいよ回ってきた俺たちの番。他の組と同じく自信家のこいつには無理だろ、という諦めの視線でアリスを眺めると、意外にも答えに悩んでいる様子だった。

 

 

「ぐぬぬぬぬ」

 

「ほら、アリスの番メロよ」

 

「悩みすぎだろ」

 

 

落ち着かない様子で金髪を撫で付けながら、ぐぬぐぬ唸るアリス。

おかしいな、いつものアリスなら調子に乗ったことでもぬかしそうなのに。

 

 

「……はぁ。今日だけだからね」

 

「……?」

 

「答えは『ヤバいやつ』よ」

 

「お」

 

・自分で言ったw

・自覚あったんか

・初手オフコラボだもんなぁ

・事務所突撃したんだっけ?

・しかも謎の因縁でな

 

 

「意外な答えメロな、正解はどうメロ?」

 

「……『ヤバいやつ』。正解だ」

 

「花咲ィ!」

 

「キレんなよおい」

 

 

なんで正解だったのに怒られなきゃならんのだ。

まあでも、自分がヤバいということをメタ認知できているようで安心だ。初対面で事務所まで突撃してくる女に、ヤバい以外の感想はないですはい。

 

少し離れたスタジオの隅に視線を向けると、白鷺社長が理沙さんに頭を下げていた。大企業の社長に頭を下げさせる、理沙さんがすごいのかアリスが問題児なのか。どう考えても後者だな。

そしてアリス、お前だけは不機嫌な顔すんなよ全ての元凶だからな。一ミリも関わったことない異性のVtuberとオフで会うなんて、炎上しなかったのが奇跡だろ。運だけはSSSランクなのかもしれん。

 

 

・可愛いなアリスちゃん

・実在する人間にキレるお嬢が見れるのはアリのぞだけ

・コミュ障なのもおもろいけど、これはこれで良いんよな

・花咲さんいいね

・おもろい結構

 

 

パートナー度検査のクイズによって、四組の得点はかなり縮まった。

元々第一部よりも点数は高く設定されていたから、連続で不正解のカレナナは一気に不利な状況へ追い込まれている。いける、いけるぞ!優勝が見えてきた!うおおおアリス、俺たちこそベストパートナーだァ!

 

……なんでこの企画やってんだっけ。景品も無いのに。

 

 

 




長すぎたので分割しました。次回で一旦企画は終わりです。

たくさんの感想や評価ありがとうございます!本当に本当に励みになってます!
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