やはり俺がVtuberになるのはまちがっている。   作:人生変化論

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遅くなりました。


八幡は黒歴史を暴露する

「はぁ...」

 

 

俺は、生まれてから何度目か分からない溜息を漏らした。

 

 

「なんでこんなことに...」

 

 

さっきから何故こんなことを言っているのかというと_______

 

 

「なんで学校にテロリストが来る!?」

 

 

第一話、転生。

 

 

それは、刹那の出来事だった。

俺が通う学校に、テロリスト集団が来た。

 

 

「これは本物の銃だ!ゆっくり壁に寄れ、でなければ撃つ!」

 

俺たち生徒は直ぐに壁に寄ったが、一人だけその場から動けない奴がいたのだ。

 

____幼なじみ、だ。

 

そう思った時には既に、俺の体は動いていた。

テロリストが銃を構えた。

走る、走る、走る。

 

その時間は、まるで永遠にも感じられた。

テロリストの一人の銃弾が幼なじみに当たる寸前、ギリギリのところで飛び込む。

 

プツリ、と意識が途切れる。

 

次に目を覚ました時は、真っ白な空間にいた。

 

 

「ここは...病院、じゃないよな...」

 

 

先程あったことをぼんやりと思い出しながら、そう呟く。

 

 

『やあ、やっと目が覚めたね』

 

「うわっ!?」

 

『そうビビらないでおくれ』

 

 

声で言うと...小学生くらいか?

 

 

『こんにちは、僕は...そうだな、シワコアトルとでも名乗ろうか』

 

それって、アステカ神話の地母神の名前だろうか。

 

 

『じゃあ、君にはアーレースもといアレスとして、異世界に行ってもらうよ』

 

 

それはギリシャ神話の戦を司る神の名前...ってかどういうことだ。

待て待て待て待て。

 

 

『良い異世界ライフを!いってらっしゃーい』

 

 

・・・

 

 

第三話、旅立ち

 

 

「もう、今日もアレスは剣術をやっていたのですわね」

 

「あ、クソガ、じゃなかった姫様」

 

この女の子はこの国の姫、メアル。

国を象徴する金色の髪をはためかせた、大人になればそれはもう美女になるだろうという美少女だ。

 

俺と稽古をしていた父が言う。

 

 

「おぉメアル様。息子になにか御用でしょうか」

 

「いえ、アレスを見に来ただけですわ」

 

「はっはっは、二人とも、もう結婚してしまってはどうです?」

 

「え!?私とアレスが、〜などそれはもう...!」

 

姫は頬を赤らめながら言った。

しかし俺の心の中は、たったひとつの事でいっぱいだったのだ。

それは二日後、旅に出ることである。

せっかく異世界に来たのだから、沢山のことを見てみたい。

 

二日後。

俺は見つからないように城の門まで抜け出してきた。

鞄には多めの金貨、武器、服が入っている。

 

 

「ようやく始まるぞ、俺の異世界ライフが!」

 

 

・・・

 

 

第四十九話、親子

 

 

俺と父は、王宮で武器を片手に睨み合っていた。

何故こうなったか、それは少し前に遡る。

 

俺が実家に帰って、父と会った時のことだ。

 

 

「姫がさらわれた」

 

「姫が...何故!?」

 

「さあな...だが、何も言わずに旅に出たバカ息子には、お灸をすえてやらないとな」

 

 

父が言うには、俺がいれば姫が攫われることは無かったらしい。

理由は分からないが、使命がある。

魔人大陸に行って、戦争を経験して。

死ぬ間際まで戦った。

何もしていない旅ではなかった。

 

一度、父とは話をつけなければならないだろう。

 

 

「それでは...始め!」

今、俺と父の戦いが始まる。

 

 

・・・

 

 

第百話、落ちこぼれ魔術師

 

 

「よし、行くぞ...」

 

 

俺の体に、魔力を集める。

...よし、段々と高まってきた。今だ。

 

「世界を治めし真実の神よ。異界から呼ばれし我らを呼び戻せ。我が力、我が魔力全てをその身に捧げる。故に、異界の扉は開かれる!」

 

 

力が抜けて、ふっと倒れそうになる。

ふんばれ。

まだだ。

まだ終わってない。

 

歯を食いしばる。

意志を固める。

 

「ラスティング・ゲート!」

 

 

何も考えるな。

ただ、その扉を開くことだけに集中しろ。

 

この世界に来て、落ちこぼれになって。

辛いことも、悲しいことも沢山あった。

でも今では、その全てが大切で。

 

どうしようもなく、愛おしい。

 

でも、お別れだ。

これで、本当に最後。

 

 

「じゃあな異世界、愛してるよ」

 

 

強い、強い光に包まれる。

光が消えた時には既に、俺たち勇者組の姿が見えることはなかった。

 

 

・・・

 

 

その場に残された、俺のステータスカードから『落ちこぼれ』の称号が消えていたのだが、それを知るものは今や誰もいない。

 

 

◇◇◇

 

 

「はははははっ!なんだこれ面白すぎるっ!」

 

 

以前に理紗さんは唯一の常識人だと言ったな、全身全霊をかけて撤回しよう。

この人は出来る美女の皮を被った悪魔だ、鬼だ、人をからかって遊ぶ類いの妖怪だ。

 

 

「...笑われると、もっと恥ずいんすけど」

 

「いやあごめん、でもさひはははは!」

 

 

ツボって戻れなくなっている理紗さんになった原因は、俺が配信のネタとして持ってきたものによることだ。

 

その名を、ノート三冊にも及ぶ『自作小説』と呼ぶ。

世間一般で言うところのいわゆる黒歴史ノートである。

俺が禁断の書物として引き出しに鍵をかけてまで封印していたソレを、遂に解放したのだ。

 

内容はコテコテの異世界転生モノ。

当時の俺のブームがよく分かる。異世界転生とかクラス転生とか大好きだった、今でもだけど。

自作小説を書く分には何も問題ない。しかし内容と文章力が圧倒的に足りていないのだ。

まずお決まりのテロリストから始まる。中学生の妄想するランキング一位の事件ね(俺調べ)

何故か命を犠牲にして幼なじみを助ける。ちなみに、その幼なじみは今後一切登場することはない。

なんでだよ。そこはヒロインになるところだろ中学生の俺。

 

「そもそも、なんで主人公神にこんな詳しいんだよ」

 

「この後詳しい理由なにも言及されないですからね」

 

「なんでだよ、言及したれそこは」

 

 

本当に同感です。

当時の八幡くんは一時間くらいずっと『かっこい神の名前』で検索してたんです許してあげてください。

そしてこれまた問題なのが、肝となる魔法の名前だ。

先程の『ラスティング・ゲート』然り。とりあえず知っている単語で作った感が否めない。

特に酷いときなんぞ、『時空間転移魔法』を『タイムムーブマジック』とか言っていたレベルである。

タイムムーブマジックってなんやねん。テレポートで良いだろそこは。

 

 

「しっかし、よくこんな長く書けたな」

 

「あの、褒めないで貰っていいですか。心にきます」

 

 

更に恐ろしいのが、主人公が転移して転生して転生するという謎のストーリー構成であることだろう。

世界が変わる度にヒロインと能力が変わっている。とんだインフレもあったものだ。

そんな物語が全十四章、百十話続くんだぜ?ワクワクするだろ。

 

 

「いやー、これを配信で晒すとは思い切ったな」

 

「吹っ切れましたからね色々と」

 

「個人的には面白いから賛成なんだが、八幡は大丈夫か?」

 

「大丈夫とは」

 

「ほら、ネットに出す以上広がる危険性もあるだろ?その小説がどう使われるか分かんねーし」

 

「あぁ...それに関しては、心配ないっす」

 

 

俺が今回、小説を配信のネタにすることを決めた理由は主に二つ。

一つはVtuberをする時、ぼっち体験だろうがなんだろうが語ると決めたこと。

そしてもう一つが、小説を晒したとしても悪い形では広められないと確信していたことである。

小学生や、中学生のときの国語の授業。

思い出して見て欲しい。物語を書くという授業があったはずだ。俺はあった。

 

世界観を決めて書く時に、クラスメイトは皆『お菓子の世界』だの『動物の世界』だのにしている中、一人だけ『殺戮が繰り返される、愛を忘れた終末世界』にしている奴がいた。

感想を送り合う授業でも、基本『文字沢山書いててすごい!』か『難しい漢字よく知ってるね!』しか書かれていなかったはずである。ソースは俺。

 

そんなエピソードは、割と共感性が高いと思っている。

アニメだったりラノベだったりが好きな人は、誰もが通る道ではないだろうか。

自分の好きなキャラ達を、自分の好きなように動かし、構成する。

誰もが夢を見て、想像して、創作すると思うのだ。

だからこそ俺は悪い形で広められることは無いだろうと、確信していた。

 

それに、楽観視している訳ではないが、時にはこういう大胆さも必要だろう。

Vtuberたるもの、新鮮味や斬新さを与えるのも大切だ。

コメント欄は阿鼻叫喚しているだろうけれど。

 

 

「ま、八幡がいいならいーけどさ。お前のやりたいことは、我慢せず言えよ?元々そういう契約だったしな」

 

「そう、でしたね」

 

 

理紗さん達は、俺がぼっち系でやって行くと言った時も、否定しないでいてくれた。

案件などは除外するとはいえ、自分からコラボするつもりの無いVtuberなど、企業側は認めてくれないだろう。

しかし二人は、極小からのスタートで不安しか無かっただろうに、許可してくれたのだ。

 

 

「八幡の事は全部私らが責任取るし、何かあったら社長が土下座する。だから、存分に暴れてこい」

 

「...うっす」

 

 

理紗さんは俺の隣まで来て、いつものように笑いながら俺の頭をわしゃわしゃとした。

甘い煙草の匂いと、微かに香る香水の匂...いじゃないなこれワインだよな。

 

 

「理紗さん、昨日いつまで飲んでたんすか」

「...いやー、気付くと朝だったというか」

 

 

今日初めて知ったこと。

理紗さんはやはり飲兵衛らしい。

 

 

◇◇◇

 

 

先日配信を予告していた20時になる前に、俺は配信の枠を作った。

枠というのは、配信の始まっていない状態の動画のことである。

生配信の枠は『待機場所』と呼ばれ、そこでは視聴者がコメントをしたりすることができる。

枠を作った方が、より多くの視聴者に配信がある事を知ってもらえるので、配信者側は配信の前に枠を作っておく、というのがセオリーだ。

 

配信者の多くが枠を事前に作っておくのは、この効果がある為である。

俺も例に漏れず、配信開始の1時間前には枠を作った。

 

が、待機している人は皆無である。

そもそもの話だが、配信が始まる一時間前に待機し始める人がいるだろうか。

1時間もあればなんでも出来るだろう。コンビニに買い出しに行けるし、ご飯も食べられる。アニメだって二話分は見れるだろう。

あとは...えっと、ま、マッ缶飲むとかね!完璧だね!

 

つまり何が言いたいかというと、待機場所に人が増えるのは配信十分前くらいからということだ。

 

 

「うっし...できたな」

 

 

初配信に比べれば幾らかスムーズに枠を作ることが出来た。慣れって素晴らしい。

無事枠も作り終わり、トイレへと出勤するため立ち上がる。

マッ缶はいくら甘かろうがコーヒーである。結局のところ利尿作用があるため、配信中にトイレへ行かなくても良いようにする必要がある。

 

その時だった。

画面の待機場所にいる人数が、一人に増えたのだ。

 

 

「いや怖ぇよ」

 

 

どれだけ待とうが、その一人は頑なに待機場所から移動しない。

これで小町とかだったら面白いよなとか思っていると、突如その一人からコメントを投げられた。。

 

 

・ヤサイジュース:いちこめ!

 

「あんたかーい」

 

俺の恐怖を返してくれ。

バリバリ知り合いだったじゃないか。

 

というか、何故やさいじゅーすさんはもう待機場所に居るのだろう。

初配信のときに配信開始時間の告知はしたものの、枠を作る時間は告知していないのだが。

 

まさか、常に俺のチャンネルを監視していたとでもいうのか。

...流石にあのやさいじゅーすさんがそんなことをするわけないだろう。

俺の頭に、やさいじゅーすさんの『自分で言うけど、わたし結構めんどくさいよ?』という言葉がよぎったが、きっと気のせいのはずだ。

きっと、な。

 

 

◇◇◇

 

 

「愛人のみんな、こんのぞ。今日も愛を育んでいこうな」

 

・こんのぞ

・こんのぞw

・初手から笑かせるのやめてw

・ヒェ...こわい

・ひぇぇぇ...

・今日は何を暴露するんですか?

 

「お、その話な。タイトル気になってると思うんだが」

 

 

今日の配信のタイトルは、おどろおどろしいフォントで『おれのくろれきし』とした。

こんなの気にならない訳が無いだろうたぶん。

 

 

「これを見てくれ」

 

 

・なに

・どれを?

 

 

俺はそう言って、配信上に一枚のノートのページを撮った物を映し出した。

グダグダな字で、『落ちこぼれ魔術師の逆転人生』と書かれている。

このタイトルは今日、理紗さんに見せた小説の物だ。

...つまりはそういうことである。

 

 

・あっ...

・まさか...

・黒歴史ってそういうやつか

・ひぃぃぃダメージががが

・俺のトラウマがぁぁ

 

「という訳で、今日は俺の中学校時代の自作小説を読んでいくぞっ」

 

・のぞみんにっこにこで草

・もしかしなくても地獄?

・のぞみんってまさか俺だったりする?

・みんなのトラウマ

 

「ちなみにノート三冊分あるから。何時間かかってでも最後まで読むつもりなんでよろしく」

 

・三冊!?

・三冊もあんのwww

・こいつもう吹っ切れてやがるw

・お父さんお母さんありがとう

・悟ってるやついて草

 

 

「じゃ、容赦なく始めます。『第一章、落ちこぼれ』」

 

・いやだぁぁぁぁ

・やめてぇぇぇぇぇぇ

・ああああああお母さぁぁぁん

・ヒィぃぃぃぃ

 

コメント欄は阿鼻叫喚である。

...なんだか、楽しくなってきちゃった。

 

 

・・・

 

 

「『俺は何度でも言えるだろう。何度死んでも、何度消えても、何度終わっても。君のことが、好きだって』」

 

・うわぁぁぁぁぁぁ!

・ボキャブラリーがwww

・結局同じことしか言ってなくて草

・感動するはずなのに1ミリもしないw

 

 

・・・

 

 

「『好き、好き、好き、好き。貴方のことがどうしようもなく好きで、好きで、好きだから。だから...殺すね?』」

 

・...?

・どゆことw

・まだ出会って一話ぞ?

・もはやヤンデレじゃないなw

 

 

・・・

 

 

「『超広大遠距離爆殺魔法最大火力(エクスプロージョン)!』」

 

・ぎゃぁぁぁぁぁぁ!

・うわぁぁぁぁぁぁぁぁ

・なんだその当て字ぃぃぃぃ

 

 

・・・

 

 

「はぁ...はぁ...。ようやく、終わったぞ...」

 

・地獄だった

・一番長い三時間だったわ

 

 

配信開始から、既に三時間が経過していた。

コメント欄だけでなく、俺自身も満身創痍である。

 

...配信は、実に地獄だった。

何故俺が書いた告白シーンを読み上げなければならないんだ。誰だよこの企画考えたやつ。俺か。

 

主人公が二度目の転生をした時には、もう...ねぇ。

 

「じゃあ...これで終わるぞ...!おつのぞ!」

 

 

・おつのぞ...

・おつのぞ...!

・メンタルボロボロっすわ...

 

 

半ば勢いで配信を終わらせる。

固まった体をほぐすように、んーっと一つ伸びをした。

 

窓の外を見れば、ぼんやりと電柱の光が輝いている。

20時に配信を始めたというのに、もう夜も遅い。

...いつもの休日なら、何をしていただろう。

寝て起きて、適当に勉強して、適当に飯を食べて。

ゲームをしてラノベを読む、そんな一日だったはずだ。

 

でも今日は、今日からは違う。

会社に行って、ネタを考えて、配信をして。

以前まではあんなにも働くことを嫌がっていたというのに、だ。

今を、過去の自分が見たらどう思うだろう。

自分から社畜になるなんて、と鼻で笑うだろうか。

それとも、Vtuberなんぞどうでもいいと言うだろうか。

でも、今なら間違いなく断言出来る。

うるせえそんなのどうでもいいんだよ、それがVtuberなんだ...ってな。

 

エゴサでもするかと重い腰を上げたそのとき、勢いよく部屋の扉が開かれた。

こら、もっと扉ちゃんを労りなさい!無休で開け閉めしてくれてるのよ!

 

 

「お兄ちゃん!」

 

 

肩を上下させながら、興奮した様子でいるマイシスター小町。

 

「どした、マッ缶が全国発売でもされたか?」

 

「違うよ!チャンネル登録者っ」

 

「どゆこと」

 

「だーかーら、一万人超えてるよ!」

 

 

思わず、ウェッと変な声が出た。

慌てて自分のチャンネルを見ると、確かに『チャンネル登録者一万人』という文字が表示されている。

 

Vtuberの世界では、新人の峠は百人から千人、千人から一万人の繰り上げだと言われている。

やさいじゅーすさんのおかげで初配信後には千人を超えていたが、一万人なんてまだまだ遠い話だと思っていた。

 

「...なにが、こんなにウケてんだろうな」

 

「んー、小町も配信見てたけどわかんないかなー」

 

 

小町が俺の配信を見ていたというのはひとまず置いておこう。

多分恥ずかしくて悶える。

 

 

「でもさ」

 

「ん?」

 

「お兄ちゃんらしいなーって、思ったよ」

 

「俺らしいってなんだよ」

 

「おしえなーい」

 

 

ドヤっとした顔で、小町は自慢げに言った。

そんな小悪魔な小町、いいと思います。

小町には天使と悪魔な二人の人格が存在するからな。ちなみに俺はどっちも好き。当たり前に決まっているだろうが舐めてんのか。

『〜♪』

「電話?お兄ちゃんに電話がかかってくる日が来るなんて...」

 

「業務連絡かもしれんだろ」

 

「そこは友達である希望を持とうよ...」

 

即答した俺に、小町は呆れたように言った。

誰かしらんとスマホの画面を見ると、『やさいじゅーすさん』と表示されていた。

 

 

『もしもし、はーくん?』

 

「疲れ様です、やさいじゅーすさん」

 

『配信お疲れ様。早速だけど、いいかな』

 

「なにをですか」

 

『その...ね。はーくん、小説紹介してたじゃない?』

 

 

やさいじゅーすさんの口から放たれたのは、俺にとって衝撃的な言葉だった。

 

 

『その小説、すっごく感動したからイラスト描いてみたんだけど』

 

「...?」

 

 

な、何を言っているんだ。

俺の小説が感動した...だと。

愛人たちを阿鼻叫喚させたあの小説が?

 

ピロンと音がして、一枚の画像が送られてきた。

おそるおそる見てみると、それは一枚の美麗なイラストだった。

男性が杖を持ち、何かを詠唱している。

周りには真っ赤な魔法陣が渦を巻き、圧倒的な臨場感と迫力に溢れていた。

間違いなく、俺の小説の『超広大遠距離爆殺魔法』の詠唱シーンである。

 

 

『私がイラスト書くから、はーくんの小説を出版するっていうのはどうかな?』

 

「遠慮しときますっ!」

 

 

そう言って電話をぶち切った。

何考えてるんだあの人、

神絵師が俺の小説に労力を使うとはいったい。

 

 

「義理姉ちゃん候補、かな」

 

「何を言っているんだ」

 

 

にやにや笑いながら小町は言った。

皆何を考えているんだ、八幡分からない。

 

 

 




なんで私が八幡の自作小説を書けたか...分かるよ...ね。

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