私のステータスプレートがオカシイ   作:お試し匿名

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私のステータスプレートがオカシイ

 ――『運』っていうのは意外と馬鹿にならない。

それは大したことが無いと『偶然(偶々)』と呼ばれ、度が過ぎていれば『奇跡(運命)』と呼ばれる程。

ただ、その運にも良し悪しというのもがあって……一人の少女はその日、どうやら最悪(ファンブル)を叩きだしたらしい。

 

「………ハァ」

 

 その手にあるのは一枚の紙きれだが、その紙きれこそ少女にとって青春を左右する大切なものだった。

内容は、要約すると『推薦取り消し』という学校からのお知らせ。

 

「……………仕方ない、うん」

 

 もうまともに動かせない両脚を擦りながら、彼女は自分に言い聞かせた。

よくある交通事故、命が助かっただけ儲けものだと……そう考えなければやってられなかった。

 中学生活もあと一年はある。この期間の間にやれるだけのことはやるのだ。

受験の為に勉強をして、水泳が出来なくなった分、何か好きになれる事を探そう。

 

 そして一年後、彼女は()()()()()の影響を受け、受験先をとある方法で行った。

 

「ダイス、ロール……!」

 

 コロコロと転がる一つのサイコロ。

そして手元の紙には1~6の数字を割り当てられた、高校の名前。

 

「出目6……ん」

 

 学校へ提出する受験希望を書くプリントへ本当に記入していく。

 この一年で少女は――ダイスロールの虜になっていた。

何かあればロール、たとえ無理だと言われようが無理やり強行。

迷えばコロコロ、難題が立ちはだかろうと挑戦する。

判断全てを出目に任せ、それを遂行し、時に成功し、失敗する。

 

 彼女を知る文芸部の一員は、そんな彼女のことをこう呼んでいた。

 

――《ダイス狂》

 

 本人がそれを気に入ってる辺り、相当重病だと言えるだろう。

今日も今日とて、彼女は歩行補助の杖と違い、完全な趣味としてダイスを持ち歩き登校する。

それは高校生活でも変わることは無く、そんなことを続けていたのが良かったのか悪かったのかは分からないが、確実に影響を及ぼした。

 

「あ、おはよ~南雲くん」

「ぇ、あ、あぁおはよ……?」

 

 高校生活にも慣れたもので、クラスメイトの少年に挨拶して……困惑される始末。

当然だろう、だって――衣服がやけに汚れているのだから。

 

「えっと、今日は何したの?」

「1D6で結果が5だったから、ちょっと遠回りで登校したんだけど……自然公園でちょっとね」

 

 そう言って見せたのは、携帯に写った可愛らしい猫たちの写真。

彼らと戯れて居たら遅れたらしい。勿論、戯れるかどうかもロールしていた。

 

「それでこんな遅刻ギリギリに……」

「南雲君はなにしてたの?」

「あー、ゲームとか」

「ゲーム…!ねぇ、TRPGとか興味あったりしないかな?」

 

 文芸部に入った彼女は、部活では勿論クラスでもTRPG……ダイスを扱うテーブルゲームを広めようとしていた。

最近ようやく部活内で広まり始まったので、手始めに彼に布教しようとしているのだ。

 

「TRPGか……」

 

 彼は興味があるらしく、少し考えるそぶりを見せてくれた。

これはいけるのでは?そう考えた彼女は、興味があるなら放課後文芸部に来てね、と一言誘っておく。

最近文芸部はTRPGしかしていないため、部室に来れば二人でもできるゲームもあるから、と説得を続ける。

基本物静かな少女だが、TRPG、ダイスが絡むとよく喋る。

 と、そんなこんな話しながらだと教室に辿り着くのはチャイムギリギリになってしまった。

 

「話に付き合わせちゃったね」

「別にいいよ、TRPGは知識あまりないけど、興味はあったし」

「ありがと~」

 

 杖が必要な彼女に合わせてくれた彼に一言感謝を告げながら、教室の扉を開ける。

すると、教室の一人が反応した。

 

「あ、南雲くん、水面(みなも)ちゃん、おはよう!」

「おはよ~」

「あ、あぁ……おはよう、白崎さん」

 

 白崎香織、この高校で屈指の美少女であり、当たり前にカースト最上位。

ついでに八重樫雫という剣道美少女と共に二大美少女とか呼ばれている。

 

(ん~、後光すら感じる……気のせいだろうけど)

 

 彼女、水面が運動部のままだったらきっとつるんでいただろうが、現在は文芸部。

TRPG優先で生きてきた彼女は身だしなみもあまり気にしておらず、髪もこの一年で大分伸び、所謂メカクレ(・・・・)少女となっていた。

 よく言えば大人しい、悪く言えば根暗、ただしTRPGになると饒舌になる趣味人。

必然と彼女の様な人たちとは、少し距離を置いた関係となっていた。

 

「――!?」

 

 挨拶を交わした直後、教室中の床に光り輝く魔法陣が出現。

そして、その日――クラスが丸々一つ、行方不明となった。

 

 

 

 

 

 光に包まれ、目の前が一度暗くなる。

瞬間、 ノイズ(・・・)が起こったかの様に目の前が乱れた。

 

「ぇ……?」

 

 水面は、白と黒がめちゃくちゃな空間に立ちすくんでいた。

そして目の前には真っ白な、女性のシルエットの何者かがゆっくり歩いてくる。

女性は水面の掌を広げると、何かを握らせる。

ソレが何か知る前に、また目の前が乱れ――見知らぬ場所へ、クラスメイトと共に突っ立っていた。

 

「???」

「ようこそトータスへ、勇者の皆さま」

 

 訳の分からない出来事に呆然としていると、誰かがクラスメイトへ話しかけてきた。

教皇を名乗る老人は、突然のことに混乱しているクラスメイトと担任を連れ、別室で説明を始めた。

 

(ふむふむ……異世界召喚だコレ!)

 

 異世界召喚。もはや小説界隈でテンプレと化しているネタだが、まさか自分達のみに起こるとは思っていなかった。

その事実に興奮するも、しかし老人が語っていくにつれどんどん不安が増していく。

 

 要約すると、『魔物』を操る術を持った『魔人族』の侵攻で『人間族』がピンチ!

困った人間族側の神『エヒト』が、勇者として一クラス丸ごと召喚した。

つまり、自分たちの手に余るから強能力持ちを召喚して戦ってくんない?

あ、ちなみに帰還方法は知らないから。全部終わった後に神様に頼めば?

 

(えぇーヤダァ)

 

 自分たちでどうにも出来ないから、他所の関係ない人を巻き込んで面倒ごとを解決してもらう、と言っているのだ。

しかも全ては神が決めたことだから仕方ない、異世界への干渉など知らず、帰還など人間族の手では出来ない。

身勝手な神を信仰する愚かな人間、そんな分かりやすい図が目の前にあった。

 しかも面倒ごとの内容が()()だ。こっちは喧嘩すらまともに出来ない人が多数の集まりだというのに。

 普通に考えれば断るか、自分たちの安全を第一に行動すべきだろう。

だが、状況的に断るのは不可能だろう。戦力として召喚したのに、応じないのなら自分たちは只の足手纏いだ。

 

(でも戦争とか無理無理)

 

 幾らなんでも人と殺し合いだなんて、想像すらしたくない。

一度事故に遭い、死んだと思った経験をした彼女からすれば当たり前の危機感。

ここは如何にか元の世界に戻るための術を探してもらうか、最悪どうにかして自分たちで探すという方向にもっていくべきだろう。

只の学生には荷が重すぎる。せめて自衛隊とかを呼べばまた違っただろうに……。

 

 そんな彼女の考えは、言葉として発する前に破綻することとなる。

 

「俺は、俺たちは戦おうと思います」

 

(――……はい?)

 

 畑山愛子先生がさっきまで教皇に対し、戦争には参加させません、と断固拒否していた筈なのに。

気付けば、一人のクラスメイトが空気を変えてしまっていた。

彼は天之河光輝と言って、クラスでもカースト最上位の顔も頭もいい()の少年だ。

 

「この世界は助けを求めている。俺たちが呼ばれたのも、何か意味があるのかもしれない」

 

 オカシイ、人間族が求め(世界意思ではなく)神が喚んだ(作為がある)と今説明されたばかりなのに。

何故、そんな結論になったのか。

何故、彼はそんなことを堂々と言っているのか。

何故、勝手に私たち(みんな)を数に入れるのか。

 

「お前ならそう言うと思ったぜ、いっちょ暴れてやるか」

「元の世界には帰れないんでしょ?気にくわないけど私もやるわ」

「雫ちゃんがやるなら、私も頑張るよ!」

「天之河たちがやるなら、俺達もやるぜ!」

「白崎さんを危ない目にはあわせられない」

「やるしかないじゃない!」

 

 ――何故、みんなが同意するのか。

 只のクラスメイトとはいえ、放課後偶に買い食いする程度には仲が縮まっていたと思っていた皆が、その日その瞬間、とても遠い存在に感じた。

意味が分からない、何を言っているのだろうか、これはゲームじゃない(どう感じてもリアルだ)というのに。

 

「みんなありがとう、力を合わせてこの世界を救おう!そして、みんなで一緒に帰るんだ!」

 

 どうやら、受験先を選んだあの日のダイス6は、ファンブル(最悪)だったらしい。

 

「……水面さん、大丈夫?顔色悪いけど」

「ア、アハハ……南雲くんこそ」

「そりゃぁ、ね」

 

 唯一この状況に危機感を感じていた彼、南雲ハジメだけが水面と頷き合うことが出来ていた。

 

 

 

 そして、連れられた場所で渡されたのは一枚の金属板。

そこに血を一滴垂らすことで、自分たちのステータスを知ることが出来るのだという。

クラスメイトからの疎外感から、一番近くに居たハジメのステータスが、こう。

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル1

天職「錬成師」

筋力:10 体力:10 耐性:10 敏捷:10 魔力:10 魔耐:10

「技能」

・錬成 ・言語理解

 

 そして、彼女のステータスが……。

 

水面(アカリ) 16歳 女 レベル1

天職「探索者」

STR:9 CON:14 POW:14 DEX:6 APP:15 SIZ:9 INT:11 EDU:14

HP:12 MP:14 SAN:70 アイデア:55 幸運:70 知識:70

職業技能ポイント280(振り分け済み)

趣味技能ポイント110(振り分け済み)

成長ポイント0

ダメージボーナス+-0

「技能」※振り分け済技能のみ表記(初期値+職業P+興味P)

・応急手当   30+20+10(60)

・鍵開け     1+0+10(11)

・聞き耳     25+0+45(70)

・目星      25+20+25(70)

・精神分析   1+30+0(31)

・忍び歩き   10+30+0(40)

・図書館    25+25+10(60)

・水泳      25+50+0(75)

・ナビゲート  10+25+10(45)

・信用      15+35(50)

・説得      15+15(30)

・医学      5+10+0(15)

・オカルト    5+20+0(25)

・クトゥルフ神話1+0+4(5)

 

・その他 初期値

 

(おや……おやおやおや~~~???)

 

 オカシイ、情報量が多い、それ以上にツッコミどころが多い。

確認しようと他の人のステータスを見聞きしようとしたその時、ピタッと全ての動きが静止した。

 

「ぇ?」

 

 そして、何処からか現れる二つのダイス。

同時に脳裏に浮かぶ、一文。

 

―目星もしくは聞き耳を振りますか?―

 

「……スゥー」

 

 唯一自由に動ける口だけを使い、彼女は静止した空間の中で叫んだ。

 

「これ、ゲーム間違えてるよ神様ぁぁぁぁああああああああ!!!!」

 

 ちなみに目星は9、数秒後に行った聞き耳は35だったという。




※ダイスはリアルで振ってます。

脳内にダイスロールを提示してくるネキの名前を決めてみよう

  • 脳内ネキ
  • ナビネキ
  • ダイスネキ
  • お姉ちゃん
  • そこに命名表があるじゃろ?
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