羽丘の元囚人   作:火の車

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唐突に思いつきました。


プロローグ

 とある辺境の地の刑務所に似た施設

 

 ここは所謂、少年院だ

 

 どこか厳かな雰囲気を醸し出すその建物

 

 その前に1つ、呑気な少年の影があった

 

?「__なーんだ、もう出所か~。」

警官「おい、分かってると思うが、もう戻って来るなよ?」

?「さぁ?」

警官「は?」

 

 首をかしげる少年に対し

 

 警官は驚いた様子で目を見開いた

 

 少年は続けて話した

 

?「それは、俺が引きこもってる間にどう環境が変わったかによるかな?」

警官(こいつは、本当に野に放って大丈夫なのか......?)

?「まぁ、今までありがとねー。また戻って来ることがあればよろしくー。」

警官「お、おい!」

 

 警官が大声を上げる中

 

 少年は飄々とした態度で歩いて行く

 

 鼻歌を歌いながら穏やかな表情を浮かべ

 

 少年は青い空を見上げた

 

警官(ほ、本当に、だ、大丈夫なのか?)

 

 警官は少年の後姿を見守りつつ

 

 その背中に恐怖を感じていた

__________________

 

 ”友希那”

 

 ピピピっと携帯からアラームが鳴り

 

 私はゆっくりと目を開けた

 

友希那「......もう、朝なのね......」

 

 鬱陶しく思いながらそれを止た

 

 カーテンの隙間から入ってくる光が眩しい

 

 私は眠い目をこすり、体を起こした

 

 寝起きの体のだるさを感じる

 

友希那(今日は、始業式ね。)

 

 そう考え、私はベッドから出た

 

 今日から3年生になる

 

 でも、あまり勉強の事は考えない

 

 私には目標があるから

 

友希那「......準備をしましょうか。」

 

 私は静かにそう呟き

 

 壁にかけてある制服に着替え

 

 鞄を持って部屋を出た

__________________

 

リサ「__あ、おはよう!友希那!」

友希那「えぇ、おはよう、リサ。」

 

 洗面と朝食を済ませ家を出ると

 

 家のまでは幼馴染であるリサが立っていた

 

 私に気付くと元気に挨拶をしてくれて

 

 さっきまでのダルさが軽減される

 

リサ「今日から3年だよ~!早いね~!」

友希那「そうね。」

 

 私は短くそう返す

 

 喋ることは多くないけれど

 

 リサは構わず喋り続ける

 

 一体、どこから話題が出て来るのかしら

 

友希那「学校に行かなくていいの?」

リサ「あ、そうだね!行こっか!」

友希那「えぇ。」

 

 私は長くなりそうな話を遮り

 

 それからは、リサと一緒に学校に向かった

__________________

 

 私達が通う学校は羽丘学園

 

 元は女子高になる予定だったのだけれど

 

 何故か共学になったらしい

 

 別に気にすることはないのだけれど

 

リサ「クラス表はー......」

 

 学校に来ると

 

 リサは張り出されてるクラス表の確認を始めた

 

 私はクラス確認をリサに任せて

 

 人ごみの外でボーっとしている

 

 数多くの生徒が通り過ぎていき

 

 どこか雰囲気が浮足立ってる気がする

 

リサ「友希那ー!あたし達、クラス一緒だよー!」

友希那「そう。じゃあ、行きましょう。」

リサ「うん!」

 

 リサが元気に頷くと

 

 私はつくづくリサと縁があると感じつつ

 

 これから通う教室に向かって行った

__________________

 

 教室に着くと、もう何人かの生徒がいた

 

 どうやら席は決まっていないらしく

 

 私はとりあえず端の方に籍に座り

 

 リサは私の隣に座った

 

友希那(......のどかね。)

 

 窓の外には満開の桜が咲き誇っている

 

 新しい季節の訪れを感じられ

 

 私は静かに目を閉じ、この空気に浸った

 

リサ(友希那、何考えてるんだろ。)

友希那「......」

 

 歌詞のヒントになるとかではない

 

 ただ、こののどかな雰囲気に浸りたい

 

 今はちょうど人も少ない事だし__

 

日菜「__ゆーきなちゃん!」

友希那「っ!?(ひ、日菜......!?)」

リサ「あ、日菜じゃん!」

日菜「おっはよー!2人とも!」

 

 この騒がしい子は氷川日菜

 

 私達のギター、氷川紗夜の双子の妹

 

 と言っても、紗夜と性格は真逆で

 

 日菜は活発で騒がしい自由人

 

 所謂、天才と分類される人間

 

 学校では持ち前のルックスから男女ともに大人気で、今年から生徒会長になるらしい

 

友希那「朝から騒がしいわ。」

日菜「だって、友希那ちゃん変な事してたんだもん!」

友希那「変......?」

日菜「うん!とっても!」

 

 明るい顔で頷く日菜を見て

 

 私は心底心外だと思った

 

 目を閉じる事が変と言うなら

 

 寝ている人間は全員変なのかと

 

日菜「それでなにしてたのー?」

友希那「なんでもないわ。日菜こそ何しに来たの?」

日菜「え?なんとなくだけど?」

友希那(迷惑極まりないわね。)

リサ「あはは~、日菜は相変わらずだね~。」

 

 リサは暢気に笑ってる

 

 日菜は、こんな調子で生徒会長なんて務まるのかしら

 

 絶対に他に適任がいたわ

 

 なんで、よりによって日菜なの?

 

日菜「あっ、それと2人に話があったんだった!」

リサ「話?」

日菜「そうそう!」

友希那(どうせ、碌な話じゃないわね。)

 

 私はそう思いつつ、

 

 一応、日菜の話に耳を傾けた

 

 まぁ、期待はしてないけれど

 

日菜「実はね、今日このクラスに転校生が来るんだよ!」

友希那(やっぱり。)

 

 本当にろくでもない話だった

 

 転校生なんてどうせ関わらないし

 

 聞いても仕方ないわね

 

リサ「へぇ、どんな子なの?」

日菜「聞いた話によるとねー、普通にかっこいいらしい!」

リサ「......え、それだけ?」

日菜「うん!さっき先生に聞いたんだ!」

友希那「......」

 

 全く興味が沸かないわ

 

 2年間で男子とほぼ関わって来なかったのに

 

 今更、誰が来ても一緒だわ

 

日菜「あっ、そろそろ行かないと!じゃあねー!「」

リサ「うん、またねー!」

友希那「......」

 

 日菜が去って行き、私は軽く息をついた

 

 朝から騒がしいことこの上ない

 

 紗夜は毎日大変ね

 

友希那(次のライブの事でも考えましょうか。)

 

 私はそう考えまた目を閉じ

 

 次のライブの構想を練ることにし

 

 少しすると担任が入ってきて

 

 始業式に時間になった

 

 ”日菜”

 

日菜(......あっ、忘れてた。)

 

 講堂に向かう途中

 

 日菜はある事を思い出し足を止め

 

 考えるような仕草を見せた

 

日菜(今日来る転校生、なんでか分からないけど前の学校の情報がなかったんだよね。)

 

 日菜は少し不思議に思った

 

 転校生なのに前の学校の情報がない

 

 これは不自然なことで

 

 日菜ですら異常だと思う

 

日菜(まぁ、いっか!)

 

 日菜は能天気にそう考え

 

 始業式の用意のために講堂に向かって行った

__________________

 

 ”友希那”

 

 少し時間が経って始業式が終わった

 

 式の流れはもう想像通り

 

 日菜が擬音連発で騒いで

 

 横にいる羽沢さんが困った顔をしてた

 

 あんな調子大丈夫なのかしら?

 

 私は心底疑問に思った

 

?「__はーい!注目!」

友希那「?」

 

 教室に帰って来ると

 

 担任である浪平琴葉先生が声を出した

 

 この人は去年、この学校に配属された

 

 茶髪を横で編み込んで眼鏡をかけた

 

 どこか素朴な雰囲気のある女性

 

 優しそうな雰囲気から生徒人気が高く

 

 クラスの生徒は大喜びしてた

 

琴葉「今日は転校生を紹介しますね!入ってきてー!」

?『へいへーい。』

友希那「......?」

 

 浪平先生がそう言うと

 

 転校生と思われる男子の声が聞こえた

 

 その時、私は違和感に襲われた

 

友希那(この声、どこかで......)

 

 私がそんな事を考えるのと同時に

 

 教室の扉はゆっくり開き

 

 声の主である男子が姿を現した

 

友希那「__え......?」

リサ「っ!!」

?「おぉ、生徒多いなー。」

 

 私は転校生の姿を見て絶句した

 

 白い肌、それを強調する黒の髪と瞳

 

 そして、どこか飄々とした雰囲気

 

環那「どもー、この間少年院から出所しました、南宮環那でーす。」

クラスの生徒「え?」

友希那(な、なんで......!)

 

 私は言葉を失った

 

 いるはずのない人間がいる

 

 なんで、今更羽丘に......?

 

 私がそんな事を考える中

 

 転校生、南宮環那は笑みを浮かべ

 

 不気味な様子で困惑するクラスを眺めていた

 

 

 

 




 南宮環那(みなみや かんな)
身長:174cm
体重:60kg
好きなもの:???
嫌いなもの:苦いもの
誕生日:9月7日

本作の主人公。
どこか飄々とした雰囲気を持つ少年。
いつも薄ら笑いを浮かべているが、よく周りのから幸が薄そうな顔と言われる。
外見は決して悪くないがモテない。
本人曰く、興味のないことは何もしない性格。

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