環那「はぁ、はぁ......!」
日が傾き始め、少し暗くなった街
その中を全力で走る
足の筋肉が張って、息が切れる
けど、足を止められない
環那(こっちを右で、1㎞真っ直ぐ。)
肺が破裂しそうだ
正直、電車で行った方がいいとは思う
けど、そうじゃない
何となく、走らないといけない気がする
蓮(......らしくないな。この俺が、効率度外視なんて......!)
俺はそう自分自身に悪態をつきながら
イヴちゃんの家に向かって走った
......てか、今、家にいるの?
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“イヴ”
イヴ「__ありがとうございました。」
お仕事が終わって、家に帰ってきました
もう暗いからとマネージャーさんが車で送ってくれて
とっても助かりました
「今日もお疲れさまー。もう気温も下がってきてるし、暖かくして寝てくださいねー。」
イヴ「はい!お疲れ様でした!」
「はーい。それじゃあ、また明日ー。」
そんな会話の後、マネージャーさんの車が発信しました
それを少しだけお見送りして
ふぅ、と私は息をつきました
イヴ(もう、1週間ですか......)
あの日を思い出す度に胸が痛くなります
一度も振り向いてくれませんでした
あの時の様な優しい言葉もかけてくれませんでした
イヴ「......っ」
フラれる事は覚悟の上でした
けれど、そう分かってても、簡単には割り切れません
それくらい、好きだったんです......
イヴ「カンナ、さん......っ、ひぐっ、うう......っ」
ポタポタと地面に涙が落ちました
いつか、忘れられる日が来るとは思います
けれど、忘れるまでは、ずっと辛いです
これが、失恋なんですね......
イヴ「......せめてもう一度、抱きしめて欲しかった、です......」
あと一度だけで良いので
カンナさんの温もりを感じたいです
いや、ダメですよね
そうしたらきっと、諦められなく__
環那「__イヴちゃん、今、帰り......?」
イヴ「っ!!」
そんな言葉を呟くと
背後から、死ぬほど会いたかった
愛しい人の声が聞こえました
イヴ「か、カンナ、さん......?」
環那「うん、俺だよ......」
イヴ「あ、あの、大丈夫ですか......?すごく、息切れしてますが......・」
環那「大丈夫......羽丘から全力で走って来ただけだから。」
イヴ「えぇ......!?」
ここから羽丘まではかなりの距離があります
それこそ、電車が必須と言われるくらい
そんな距離を走って来たんですか?何のために?
環那「悪いけど、少し俺の話聞いてくれない?嫌って言われても勝手に喋るけど。」
イヴ「い、嫌じゃないです。でも、その、取り合えず入ってください。飲み物をお出しするので。」
環那「ありがとう。」
私はそう言って、カンナさんに家に入って貰いました
これから、どんな話をされるんでしょうか......
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カンナさんにお家に入って貰って
私は飲み物を準備して、部屋に行きました
正直、もう心臓が止まりそうです
あの日がフラッシュバックしてしまって......
イヴ「お待たせしました、飲み物です。」
環那「うん、ありがとう。助かるよ。」
そう言って、カンナさんはお茶に口をつけました
やはり、かなり体力を消耗してたようです
環那「__ふぅ、流石に少しばかり死ぬかと思ったよ。」
イヴ「それで、あの、お話とは......?」
環那「っと、そうだったね。」
待ちきれずに私が尋ねると
カンナさんはコップをテーブルに置き
ゆっくりと瞳を閉じました
イヴ(カンナ、さん......)
カンナさんの姿を見ると、心臓の鼓動が激しくなります
この鼓動は決して、怖がっているわけではありません
むしろ逆で
まだ、カンナさんが好きだから、ドキドキしているんです
環那「......俺は、恋愛について何も理解してない。」
イヴ「え?」
環那「俺は人の心にも自分の心にも疎い。けど、今回は理解してなかった半分、眼を背けてた部分もあった。」
イヴ「えっと、どういう事ですか?」
環那「そうだなぁ......」
カンナさんが悩まし気にそう言いました
私に向ける感情、ですか......
それは、好きじゃない、では......?
環那「じゃあ、俺がイヴちゃんに思ってること正直に吐き出すよ。」
イヴ「え?」
環那「じゃあ、行くよ。」
そう言い、すぅっと空気を吸い込みました
え、何をする気なんですか?
そう私が困惑してるうちに、カンナさんは口を開きました
環那「正直、イヴちゃんはすっごい可愛い。笑顔を見てるとこっちまで元気になるし、大人っぽい見た目とのギャップもいいと思う。ていうか優しい。俺に優しい人間なんてそういないのに、ただ店の客なだけの俺に優しすぎ。正直、ビジュアルも性格もいいし、良い匂いもするし、すっごい完璧な女の子だと思う。」
イヴ「!?///」
いきなり、褒められました
それで、顔が一気に熱くなってしまいます
けど、なんでいきなり......?
環那「ふぅ......」
イヴ「あ、あの、どういう事ですか......?///」
環那「ん?俺がイヴちゃんに思ってる事だけど。」
イヴ「私に、ですか......?///」
あんな風に、思っていてくれたなんて......
すごく、嬉しいです
でも、ならなぜ、あの日はフられたんでしょうか......
環那「まぁ、こんなこと言っても分からないよね。」
カンナさんはふぅ、と軽く息を付き
私の前で正座をしました
環那「俺は、自分の勝手な事情でイヴちゃんを傷つけた。申し訳ない。」
イヴ「か、カンナさん!?」
カンナさんはいきなり、私の前で頭を下げました
本当にいきなりで驚き過ぎて
カンナさんを止めるのに少しだけ時間が空いてしまいました
環那「俺は無意識のうちに保身に走ってた。好きな人に失望されたくないからと、これ以上誰かを好きになるからを回避しようとしてた。」
イヴ「......え?」
環那「と言っても、気付いたのはさっきなんだけど。」
イヴ「え?今、なんと......?」
好き、そういいましたか?
カンナさんが?誰を?
いや、これは状況的に......
環那「じゃあ、改めて言葉にするよ。俺は、イヴちゃんも好きかもしれない。」
イヴ「......!///」
その言葉に、大きく心臓が跳ねました
かもしれない、とまだ曖昧ですが
カンナさんが、私の事を好きと言いました
環那「俺は人を好きになると言う事を理解しきってない。けど、そう言う感覚があるんだ。」
イヴ「そう、なんですね......///」
環那「リサや燐子ちゃん、琴ちゃんとは違う。けど、全く違うわけじゃない。きっと、核となる部分は一緒なんだ。だから、好きかもしれないって感覚があるんだと思う。」
イヴ「......///」
これは、困りました
嬉しすぎておかしくなってしまいそうです
地獄から天国に昇った気分です
こんなに好き(かもしれない)といってくれるなんて
今、すごく幸せです
環那「自分の気持ちについてはまだ勉強中だからさ、もう少しだけ待っていて欲しいんだ。」
イヴ「は、はい!もちろん、ずっと待ってます!///」
環那「ありがとう。絶対に後悔させないから。どんな形になっても、幸せにする。」
イヴ「分かってます///カンナさんのことを、信じてますから///」
環那「......うん。」
そう言うと、カンナさんは嬉しそうに小さく笑いました
その姿を見て、胸の中が温かくなりました
やっぱり、私はこの人が大好きです
環那「それじゃあ、俺はそろそろ帰るよ。」
イヴ「え、もうですか?」
環那「今日はこの話をしに来ただけだから、あまり長居するつもりはないんだ。」
そう言って、カンナさんは立ち上がり
身だしなみを整えました
環那「......イヴちゃん。」
イヴ「どうかしましたか?」
環那「明日、バイト?」
イヴ「はい!17時からです!」
環那「じゃ、その時間に羽沢珈琲店に行くよ。」
イヴ「え?///」
また、顔が熱くなりました
明日も、カンナさんに会えるんですか?
しかも、カンナさんの方から会いに来てくれるなんて......
環那「じゃあ、帰るね。」
イヴ「は、はい///また、明日......///」
環那「うん。」
そんな会話の後、私はカンナさんをお見送りしました
玄関で最後にカンナさんに頭を撫でて貰って
家に1人になってしばらく、幸せな気持ちで一杯でした
ヒロインはこれ以上増えないです。
あと、このシリーズはオムニバス方式っぽくなります。(100話便乗報告)