羽丘の元囚人   作:火の車

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練習

 案の定というかなんというか

 

 琴ちゃんは勝算なんて用意してなかった

 

 ただ、速いやつを優先的に詰め

 

 余ったところにそこまでな奴を適当に当てはめた

 

 まぁ、予想通りなんだけど、なんて杜撰なんだ......

 

環那(はぁ、どうしよ。)

 

 体育祭は各競技の順位順に得られるポイントの総数で決まる

 

 つまり、勝った数が多いほど優勝に近づく

 

 なのに、琴ちゃんは一番大きいリレーだけを真面目に考えて

 

 その他は適当と来た......

 

 なんというか、流石だ

 

環那(別に俺が勝つのは簡単だけど、他の奴らはなぁ......)

 

 ハッキリ言って、あんまり期待してない

 

 陸上部のもいるけど、所詮は補欠止まり

 

 他の運動部も飛びぬけて速いわけじゃない

 

 ......勝ちを計算できるところがなさすぎる

 

リサ「悩んでるね、環那ー。」

環那「そりゃそうでしょ......あんな戦力でどう優勝しろと......?」

リサ「まぁ、他のクラス陸上部のレギュラーとかいるけど、うちはいないもんねー。」

環那「ほんとに......」

 

 勝つ方法がないわけじゃない

 

 それに必要な情報は集めて

 

 何とか、確定する前に順番を入れ替えた

 

 けど、これ以降、順番の入れ替えは使えない

 

環那「どうしようか......」

友希那「あら、本気で勝つ気なのね。あんなに嫌そうだったのに。」

環那「まぁ......」

エマ「当然。お兄ちゃんが勝つことは運命。」

 

 琴ちゃんがあんなに楽しそうだとね

 

 これが惚れた弱みってやつなのか......

 

 変な感じだよ

 

環那「......あの子の笑顔を守るのも、俺の役目かなって。」

 

 俺は溜息をついた

 

 この短期間じゃ、出来る準備もできない

 

 そうなると、出来ることは限られる

 

リサ「じゃあ、初めて体育祭で環那の本気を見れるわけだね!」

環那「大したものじゃないと思うけど。」

 

 別に俺、運動はそんなに好きじゃないし

 

 あんまり人を驚かせる自信ないな

 

環那「まぁ、出来るだけ頑張るよ。そんなに自信ないけど。」

リサ「そうだね!取り合ず、5限目は体育だし、頑張ろうー!」

友希那「そうね。そろそろ着替えに行きましょうか。」

エマ「お兄ちゃん、あとで。」

環那「うん。またね。」

 

 そういって、3人は体操服をもって更衣室に向かい

 

 俺も体操服に着替えに行った

 

 あー、どれぐらい頑張らないといけないかな

_____________________

 

 “リサ”

 

 昼休みには少し自信がなさげだった環那

 

 まぁ、あたしも本気で運動してるの見たことないし

 

 あくまで、一般レベルでのすごい位だと思ってた

 

 ......そう、お昼休みまでは

 

「__南宮君!19秒64!」

 

「ま、マジか......」

「おい、今の200m走の世界記録ってどのくらいだった......?」

「確か、19秒19だったよな?」

「はぁ!?」

 

 環那はすごかった......てか、化け物だった

 

 走ってる速さとか、見ただけで次元が違うって分かったし

 

 何より一番やばいのは......

 

環那「まぁまぁだね。調整程度だし。」

 

 息も一切切らさず、手を抜いて走ってること

 

 小中は意外と同級生と競ってたっていうか

 

 1位は1位だったけど、意外とギリギリだった

 

 けど、今わかった

 

 環那、ずっと意味わかんない位手抜いてたんだ

 

リサ(いやいやいや、かっこよすぎでしょ!?///)

 

 走ってる途中の表情は珍しく真剣だったし

 

 終わった後の佇まいとか、すごいクールだったし

 

 なんでガチな時の環那ってあんなかっこいいわけ!?

 

環那「リサは何してるの?」

友希那「乙女には色々あるのよ。」

環那「な、なるほど。」

エマ(お兄ちゃんのカッコよさに充てられる気持ちはわかる。今井リサ、今ならあなたと分かり合える気がする。)

リサ「......///」

 

 ヤバい、見られてた

 

 めっちゃ恥ずかしいんだけど

 

 どんな顔して皆の方向けばいいの?これ

 

リサ「か、環那ー、すごいねー///あたし、びっくりしちゃったよー///」

環那「そう?喜んでもらえたならよかった。」

エマ(恥ずかしくなって話しかけてきた。)

友希那(顔が真っ赤ね。)

 

 とりあえず、話しかけてみた

 

 恥ずかしすぎて死にそうなんだけど

 

 どの面下げて話しかけたわけ!?

 

環那「まだまだ本気じゃないんだけどね。」

リサ「知ってる。けど、かっこよかったよ......///」

環那「ははっ、ありがと。」

リサ(むぅー......///)

 

 環那、やっぱり余裕そう

 

 あたしはこんなに恥ずかしいのに

 

 好きだけど、ちょっとムカつく......

 

「南宮ー、リレーの練習始まるぞー。」

環那「おっと、もうそんな時間か。行ってくるよ。」

リサ「うん!行ってらっしゃい!」

友希那「楽しみにしているわ。」

エマ「お兄ちゃんの雄姿はこのカメラに......!」

環那(どこから出したの?)

 

 環那はリレーのメンバーが集まってる場所の方に歩いて行った

 

 正直、まだドキドキしてるけど

 

 環那が走るとこ、見守っとかないと

_____________________

 

 “環那”

 

 さて、リレーだ

 

 俺の問題はこっちだよ

 

 全く他の奴の力が把握できてないし

 

 勝てる見込みがあるかないかもわからない

 

 琴ちゃんのためにも、勝ちたいんだけどね

 

環那(でも、このメンバーじゃなー......)

 

 他のクラスのメンバーは把握してるけど

 

 流石に劣ってるという他ない

 

 俺が頑張るのにも限度があるんだけど......

 

「おっ!南宮が来たぞ!」

「これはもう貰ったも同然だよな~。」

「あんなに足速いんだし、南宮君にさえ回せば!」

 

 こいつら、俺に頼る気満々だ

 

 まぁ、そうだろうね

 

 便利なものがあれば使いたくなるし

 

環那「それでいいんじゃない。」

「だよねー!頼りにしてるよ!」

環那「俺、君たちに一切期待してないから。」

リレーメンバー「え?」

 

 俺がそういうと、5人が硬直した

 

 あれ、まさか、期待してると思われてた?

 

 心外だなぁ......

 

環那「まぁ、せいぜい、1周遅れにならなかったら上出来かな。」

「な、なんだと!?」

「私たちを見下してんの......!?」

環那「正当な評価だよ。このクラスの戦力は他に比べて劣ってるっていうね。」

「......!」

 

 やる気のある奴は好きだよ?

 

 でも、やる気だけで考えてない奴は嫌いだ

 

 自分の実力を考えず、闇雲に突っ込むなんて馬鹿以外の何者でもない

 

「ば、馬鹿にしやがって......!」

環那「そこまで言うなら結果出せば?もし、今日、一着で俺にバトン渡せたら、この場で土下座してやるから。」

「言ったな?皆も聞いたよな!?」

「あぁ!絶対に土下座させてやる!」

「写真撮って学校中にばらまいてやるから!」

環那「あっそ。精々がんばれ~。」

 

 そんな会話をしてるうちに他のクラスの準備も整った

 

 体育教師に呼ばれ、第一走者がスタートラインに立ち

 

 いよいよ、リレーの練習が始まる

 

「位置について!よーい!......ドン!」

 

 審判役の生徒の合図で一斉にスタートした

 

環那(さてさて、お手並み拝見だ。)

 

 このリレーは3走目まで女子、4走目からは男子だ

 

 まぁ、最初はそこまで差はない

 

 細かく順位が変わって、今は3位くらいだ

 

環那「おー、結構頑張ってるねー。」

「おいおい、これなら1位なんて余裕だろ。」

「南宮くぅーん?土下座の準備は出来まちたかー?」

環那「ん?君たちは何を見てるの?」

「は?」

 

 そんな会話をしてるうちに、2走目にバトンが渡った

 

 一走目はそこまで差はなかったな

 

 まぁ、その理由はわかってるんだけどね

 

 今は他のメンバーが楽しそうだし、放っておこ

 

「よ~し、ここで1人くらい追い抜けば......」

環那「追い抜けないよ。」

「は?何言ってんだよ。2位の背中はすぐ......そ、こ......?」

 

 さぁ、差が出始めてきた

 

 第二走者の女子は1人、2人と追い抜かれていく

 

 それに伴って、前のチームとさらに差が開いていく

 

環那「......これは、一周遅れどころじゃ済まないかも。」

 

 まさかここまでとは......

 

 悪い意味で期待を裏切ってくれるよ

 

 あーあ、これ、相当頑張らないといけなそう

 

「ま、まぁ?まだ挽回できるよな?」

「そ、そうだよ!まだ俺たちで挽回できる!」

「と、とりあえず、あたしで順位上げる!」

環那「ふぁ~ぁ......」

 

 はーい、頑張れー(棒)

 

 と、俺は心にもない応援をしつつ

 

 呑気に自クラスの落ちていく様を見ている

 

 第3走者に回っても、何も変わらない

 

環那「ねぇー、あれ大丈夫なのー?土下座させるんじゃなかったのー?」

「う、うるせぇ!」

「俺らで逆転すんだよ!」

環那(それが出来たら苦労しないんだけどね~。)

 

 俺は心の中で舌を出した

 

 てか、言ってる間に最下位じゃん

 

 まぁ、思ったより1位と距離空いてないし

 

 ちょっとくらい根性見せるかな~

 

「ご、ごめん!」

「任せろ!こっから俺が__えっ?」

環那「クフフ、フフフ、あはははは!」

 

 4走目の男子は目を丸くした

 

 だって、もう前のチームは遥か遠くにいるんだもん

 

 流石に、ここまでは予想してなかったでしょ

 

環那「ほら~、頑張りなよ~。1位ともう半周差はついてるよ~?」

「く、クソッ!」

「わ、悪い!頼む!」

「あ、あぁ!」

環那(おっ。)

 

 第5走者の奴、結構頑張ってる

 

 まぁ、半周差がちょっと縮まってるだけだど

 

環那「さーてと、頭の弱いクラスメイトの尻ぬぐいでもしてあげようか。」

 

 そう言って、俺は1番外のレーンに立った

 

 前の奴は半周差を広げられないことで精いっぱいだ

 

 面倒くさいなぁ......

 

「そのクラスでリレーなんて大変だなー。」

「ほんと、南宮君は速いのに。」

「まぁ、それもリレーだからな。悪いけど、お先。」

「俺も。最後まで腐るなよ、南宮君。」

環那「あはは~。またゴールで会おうね~。」

 

 人って現金だよね

 

 優位な立場なら誰にでも優しく出来るんだから

 

 まぁ、俺は優位でも優しくしないけどね!

 

 っと、そんな冗談言ってるうちに他の皆は行っちゃったじゃん

 

「はぁ、はぁ......!くそっ!!」

環那「もう、遅いよ。」

「うる、せぇ......!」

環那「はいはい。毒はいてる暇ならバトン寄越して、よっ!」

「!!!」

環那(さぁ、行くか。)

 

 俺は5走者からバトンを奪い取り

 

 さっきよりギアを上げて走った

 

 ほんと、面倒くさいよね、尻拭いって

 

環那「__やっほー。」

「え、はぁ!?」

「なん__」

「はやっ__」

 

 取り合えず、前にいた3人を抜いた

 

 あと2人かー

 

 まっ、余裕でしょ

 

環那(甘いねぇ。あまあまだ。)

「なっ!?」

「そんな、馬鹿な!?」

環那「悪いね。俺、あの3人の前で醜態をさらすわけにはいかないんだ。」

 

 と、俺は1,2位の2人も抜き去り

 

 そのまま、用意されてるゴールテープを切った

 

 けど、そこで歓声は上がることなく

 

 誰もが唖然として、声も出せなくなっていた

 

「そ、そんな......」

「最下位から、ごぼう抜き......」

「あんな差を、1人で......」

環那「__言ったでしょ?期待してないって。」

リレーメンバー「っ......!」

 

 俺は半笑いのまま、メンバーに近づいた

 

 全員、歯を食いしばって悔しそうにしてる

 

 まぁ、そうだろうね

 

 土下座させるどころか、尻拭いまでされたんだから

 

「く、クソが......っ」

環那「文句言うのは勝手だけどさー、結果出せよ。」

「ぐっ......!」

 

 文句、言えないよね?

 

 だって、結果的には勝ったんだから

 

 5人はほぼ役に立ってないけど

 

環那「まっ、俺は君たちが勝てない理由を知ってるんだけどね。」

「何......?」

環那「けど君たち、教えたら考えないでしょ?ちょっとは頭使いなよ。じゃあ、がんばれ~。」

 

 俺はそう言って5人に背中を向けた

 

 正直、俺はもう調整は出来たし

 

 あとは、他の奴らの動きでも観察しとこ

 

 

 ......って、次は友希那の障害物競走の練習だ!

 

 こんなどうでもいいことは放っておいて

 

 ちゃんとこの目に焼き付けておかないと!

 

 

 

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