あれから少しして練習が終わった
最後まで特に何のトラブルもなく進んだ
この分なら当日も問題ないと思う
環那「ふぁ~ぁ......」
今日は慣れないことをしすぎた
本気で走ったのも、体育祭の練習に参加するのも
何もかも、今日が初めてだった
環那(意外と大変なんだ、人間生活。)
毎年、これの似たようなことするんだ
中々、大変だ
そう思ったら、檻の中って快適だったんだなぁ
何もしなくてよかったし
(prrrr)
環那「ん?」
着替えをして1人で更衣室にいると
ロッカーの中においてた携帯が鳴った
画面を見ると、相手はあの人だった
俺は少し周りを確認し、通話ボタンを押した
環那「......はい、もしもし。どうかしましたか?」
篤臣『よォ、環那ァ。』
電話の相手は篤臣さんだ
一応、擬装用の携帯あるんだけどなぁ......
あの人、なぜか使わないんだよね......
篤臣『お前ェ、もうちょっとで体育祭らしいなァ?』
環那「あ、はい。ありますよ。」
篤臣『そうかァ。』
環那「......(あっ。)」
あ、なるほど
これはあれだ
来たいけど自分から言うのが恥ずかしくて
俺から呼んでほしいって感じかな
相変わらず、見た目によらずシャイな人だ......
環那「あー、来ますか?」
篤臣『......いいのかァ?』
環那「もちろん。きっと、琴ちゃんも喜びますよ。」
篤臣『そりゃあねェなァ。』
篤臣さんはそう即答した
まだ琴ちゃんに嫌われてると思ってるんだ、この人
別にそうでもないのに
意外とネガティブだよねぇ
環那「はぁ......」
篤臣『なんだァ、その溜息はァ?』
環那「いえ、なんでも。」
親子仲良くすればいいのに
ここまですれ違うのも珍しいよね
まぁ、お互いの性格のせいなんだけどね
ほんと、娘も父親も面倒くさい
環那「体育祭は一週間後ですので、普通の服で来てくださいね。」
篤臣『わかってらァ。』
環那「それでは、失礼します。」
俺はそう言って電話を切った
そして、ため息をついた
環那「はぁ......世話が焼けるなぁ。」
全く、面倒な2人だ
面倒さって遺伝するのかな?
俺はそういう研究結果は見たことないんだけど
環那「まぁ、いいや......行こ。今日は買い物行かないとだし。」
そう呟いた後、俺は更衣室を出た
今日は八百屋が安売りの日だし、そっち行かないと
_____________________
翌日、俺はいつも通り学校に来て
練習をしてる他の5人を見物してる
けど、今日は様子が違う
あんまり動いてないな
環那(話し合ってる......っぽいかな?)
5人がグラウンドの真ん中で話し合ってるっぽい
輪になって一体何を話し合ってるんだか
環那(負ける理由に気づいた......わけないか。)
だとしたら何だろう
また、ない頭を使ってるのかな?
もう一週間しかないのに、ルーズだねぇ
環那(ねむ......っ)
暇だなぁ
15分くらい喋りっぱなしだし
なーんにもやることがない
「__おい、南宮。」
環那「ん?(話しかけてきた?)」
しばらくボーっと眺めてくると
5人が俺の方に駆け寄ってきてきた
全員、神妙そうな顔をしてる
環那「どうしたのー?」
「......教えろよ。」
環那「なにを?」
「なんで俺たちが、負けるのか。どうすれば、速くなるのか。」
環那「ほう?」
少しだけ感心した
なるほど、そっちの会議だったわけか
ここまで死ぬほど長かったけど
やっと引き際が分かったんだ
「いくら走ってもずっと最下位だし、もう分かんねぇよ......」
環那「だろうね。」
俺はそう言ってグラウンドにおりた
気は乗らないけど仕方ない
本人たちがやる気だし、何より琴ちゃんのためだし、教えてあげようか
環那「君たちが負ける原因はそもそも足の速さだけじゃない。」
「どういうこと......?」
環那「君たち、自分かいつ抜かれてるのが多いのか考えないの?」
これは、言われてみれば当たり前のことだ
何も特別なものじゃない
リレーという競技を理解さえしてれば、最初に浮かぶ答えだ
環那「君たちが抜かれることが多いのはテイクオーバーゾーン。つまり、バトンパスのタイミングで抜かれることが多いんだよ。気づかなかった?」
5人「!!」
そう言うと、5人は驚いた表情をした
あ、マジで気づいてなかったんだ
まぁ、いいや
環那「バトンパスを軽んじない方がいい。日本代表のリレーチームは100m走の決勝に残った選手がいなくても、世界で2番目に速くなった。その理由こそ、バトンパスなんだよ。」
5人「へぇ。」
この5人、マジで勉強不足だなぁ......
なんでこんなことも知らないの?
1人は紛いなりにも陸上部でしょ?
ちゃんとテレビ見たらいいのに
環那「今回、リレーのチームは6人。この間に起きるバトンパスの回数は5回だ。そのたびに減速して、また加速してってするのは大きなロスさ。5回も遅い状態があるわけだからね。」
こんなの基礎の基礎なんだけどね
特に日本ではバトンパス練習に時間さくし
環那「そのロスをなくすためにバトンパスを練習することは必要なんだよ。」
「で、でも、それだけで意味あるの?」
っと、頭の足りない質問をしてきた
ここまで聞いて分からないのか......
いかにエマと喋るのが楽かわかるな
環那「あるよ。むしろ、君たちは浅はかなんだよ。一週間そこらで急激に足が速くなるわけないじゃん。君たちは頭を使わずに努力をしてたんだよ。」
ため息交じりにそう言い
すぐに気を取り直して
また、俺は口を開いた
環那「俺が観察した感じ、他のクラスだって決してバトンパスがうまいわけじゃない。ただ、それでも君たちより優れてるってだけ。端的に言えば、君たちは能力でも技術でも負けてるってこと。だからこそ、1つでも負ける部分を減らす努力が必要なんだよ。そしてそのするべき努力の答えはバトンパスなわけだよ。」
まぁ、こんなものかな
俺は別に陸上の専門家ってわけじゃないし
これ以上言えることはないかな
環那「まっ、君たちはあと1週間、バトンパスで速度落とさない練習でもすればいいんじゃない?1位になれるかは知らないけど、今までみたいな惨敗はなくなるかもね。じゃ、また教室で~。」
さて、そろそろ教室行こ
そう思って、俺は校舎の方に歩きだした
別に何も大したこと言ってないけど
あの5人がどの程度進歩するか
見ものだ