羽丘の元囚人   作:火の車

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不器用親子

 午前のプログラムが終了し、お昼休み

 

 俺は校長に命......いや、お願いして

 

 屋上を貸し切りにして、お昼ご飯を食べてる

 

 勿論、いつものメンバーと一緒に

 

環那「はーい、お弁当ですよー。どうぞ、篤臣さん。」

篤臣「俺ァ、介護がいる老人かァ?」

環那「あはは、気にしないでください。まぁ、どうぞ。」

九十九「あたしたちはー?」

人見「お腹がすいているのですが。」

環那「勝手に食べれば?」

九十九「扱いの差ひどくない!?」

 

蘭「あの、あの人たちって......」

リサ「なんか、男の人は環那の恩人らしいよー。女の人たちは、知り合い?」

蘭「環那の交友関係ってバグってますよね。」

リサ「それは否定できない。」

 

 取り合えず、関わりある人は呼んだけど

 

 結構大所帯になったな

 

琴葉「あの、南宮君?なぜ、お父さんたちまで?」

環那「まあまあ!親子水入らずで太陽の下でお弁当を食べる!これもまたいいものだと思うよ!」

人見「そんな柄ではないでしょうに。」

九十九「そーだねー。」

環那「そこの2人。お静かに。」

篤臣「......」

 

 全く、なんでこの2人まで来てるんだ

 

 別に呼んでないのに

 

 ファミレスで食べてきたらいいじゃん

 

環那「というわけで、篤臣さん、琴ちゃん。なんか2人で喋ってください。」

琴葉「いきなり無茶ぶりすぎ!?」

 

 というわけで、俺は2人から離れた

 

 この2人基本的に面倒な性格してるから

 

 周りが無理矢理にでも矯正しないと

 

 “琴葉”

 

琴葉、篤臣「......」

 

 気まずい

 

 ただただ、そう思います

 

 何年もまともに話してないお父さんと2人なんて......

 

 一体、どんな地獄ですか......

 

篤臣「......琴葉ァ。」

琴葉「なんですか。」

 

 お父さんの声、久しぶりに聞きましたね

 

 高校から家を出ましたから、10年ぶりでしょうか

 

 何と言うか、変わりませんね

 

篤臣「学校はァ、どうだァ?」

琴葉「......はい?」

 

 今、なんと?

 

 そんな小学生の子供にするような質問

 

 26の大人相手にすることあります?

 

琴葉「あの、私、教師なんですが......?」

篤臣「......なんか変かァ。」

琴葉(えぇ......?)

 

 いやまぁ、分からなくもないですよ?

 

 教師だから、いるのは基本学校ですし

 

 仕事の調子を聞く文面としてはおかしくはないですけど

 

 聞き方ってものがありませんか......?」

 

琴葉「ま、まぁ、程々です。」

篤臣「......そうかァ。」

 

 え、聞いといてそれだけ?

 

 もっと何かないんですか?

 

 本当にこの人は昔から......

 

篤臣「生徒にはァ、好かれてるみてェだなァ。」

琴葉「えぇまぁ、ありがたいことに。」

篤臣「お前ェはあいつに似てるからなァ。好かれる理由も分かるってもんだァ。」

琴葉「......」

 

 お父さんは少し穏やかな声でそう言いました

 

 あいつとは、お母さんの事でしょう

 

 ......私が小さい頃に事故で亡くなった

 

篤臣「琴葉ァ。」

琴葉「なんでしょうか。」

篤臣「今を、手放すんじゃねェぞォ。」

琴葉「!」

 

 お父さんはそう言って

 

 目の前に置かれたお弁当を食べ始めました

 

 今を手放すな......

 

 これは、どういう意味なんでしょうか......?

 

篤臣「......おい、環那ァ。」

環那「はい、どうしましたか?」

篤臣「これで満足かァ?」

琴葉「?」

 

 お父さんは南宮君にそう尋ねました

 

 その間も彼はいつも通りの余裕の表情

 

 娘の私が言うのもなんですが

 

 お父さんは相当怖い顔をしてるのに、すごいですね

 

環那「えぇ。久しぶりの親子の会話を楽しんでいただけたようなので、満足ですよ。」

篤臣「......茶化してんじゃァねェぞ。」

環那「いえいえ滅相もない。」

 

 この人、なんでお父さんと対等に話してるんでしょう

 

 いや、怖がる理由がないからだと思いますが

 

篤臣「チッ、いつも何か企みやがってェ。可愛げのねェガキだァ。」

環那「あはは、よく言われます。」

篤臣「たくッ。」

 

 お父さんはそう呟いて立ち上がり

 

 出口の方に歩き出しました

 

環那「どこに行かれるんですか?」

篤臣「......タバコだァ。」

環那「吸われないでしょう?」

篤臣「......最近始めたんだァ。長生きしてもロクなことねェからなァ。」

環那「さようですか。では、ごゆっくり。」

篤臣「......アァ。」

 

 そう軽く頷き、お父さんは屋上を出て行きました

 

 南宮君はそれを見送りながらニヤニヤしています

 

 完全に面白がってますね、あの顔は

 

琴葉「今回は何を企んでたんですか?」

環那「ん?やだなぁ、企みなんてないよ?ただ、久しぶりの家族団欒の場をセッティングしただけ。」

琴葉「あれを団欒と呼ぶのですか?少ない会話でしたが。」

環那「いやいや、上出来でしょ。」

 

 彼はそう言ってフッと小さく笑い

 

 私と屋上の出口の方を見比べました

 

 いや、お父さんと、でしょうか?

 

環那「2人とも、不器用だからねぇ。それにしては、上出来じゃない?」

琴葉「誰が不器用ですか!」

環那「琴ちゃんと篤臣さんだよ?2人とも、超が付くほど不器用だからね?」

琴葉「失礼な!」

 

 そこまで不器用じゃありません

 

 ......多少は不器用な面もありますが

 

 流石にあのお父さんほどではないはずです!

 

環那「まっ、良かったんじゃない?意外と喋れたでしょ?」

琴葉「それは......まぁ、思ったよりは。」

環那「篤臣さん、結構喜んでたよ。」

琴葉「そうですかね?無表情に見えましたが。」

環那「いーや。」

琴葉「?」

 

 そう言って南宮君は小さく笑い

 

 こう言いました

 

環那「今頃、嬉しすぎて上がった体温、冷ましてるんじゃない?」

琴葉「そうですかねー?ないと思いますがー。」

環那「そんなことないよ。(ん?)」

 

 “環那”

 

 琴ちゃんと話してる途中

 

 ポケットの携帯が鳴った

 

 相手はまぁ、大体わかるでしょ

 

環那「......くふっ。」

琴葉「今日はよく笑いますね。どうしたんですか?」

環那「なんでもないよ。」

 

 俺は琴ちゃんにそう言い

 

 携帯の画面を確認した

 

 やっぱり、篤臣さんからだ

 

環那(『琴葉を優勝させなかったらタダじゃおかねぇ。』か。)

 

 なんだかんだで娘思いなんだから

 

 そんな美しい愛を見せられたら感動しちゃうなぁ

 

 こんな不器用な愛もあるんだねぇ

 

環那(これは、勝つしかないな。)

 

イヴ「カンナさーん!こっちで一緒に食べましょうー!」

燐子「私のお弁当も、食べてみて......!」

リサ「ほらー!みんな待ってるよー!」

環那「はいはーい。今行くよー。」

 

 これは、勝つしかないな

 

 全く、困った親子だ......

 

 まぁ、今は楽しんでもいいかな

 

 この穏やかで優しい時間を

 

 

 

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