羽丘の元囚人   作:火の車

112 / 200
解放

 お昼休みが終わる直前、俺はブラブラと校内を散歩してる

 

 なぜか午後からは生徒会長様に開放してもらえたので

 

 ルンルン気分で歩き回ってる

 

環那(さーて、どうするかなー。)

 

 俺は団体競技に出るつもりはないし

 

 午後はもう、リレーだけなんだよね

 

 結構時間あるし、暇だなぁ

 

「おい!もっと早く走り出せよ!」

「ご、ごめん!もう一回いい?」

「本番までもう少しだ!ちょっとでも速くなって、あいつの事見返してやろうぜ!」

「南宮のお陰で勝ったとか、絶対言わせない!」

「絶対に1位でバトン渡してやる。」

 

環那(おっ。)

 

 ちょうど校舎裏辺りに来た頃だろうか

 

 そんな声が下から聞こえてきた

 

 窓からのぞいてみると、あの5人がリレーの練習をしていた

 

 徹底的なバトンパスの練習だ

 

環那(おー、関心関心。)

 

 俺は窓からその様子を眺めた

 

 大分、上手くなってる

 

 最初があまりにもゴミカスだったからかな

 

 この成長に少し喜んでる自分がいる

 

環那(まっ、これなら少なくとも最下位にはならないでしょ。何位になるかは知らないけど。)

 

 そんなことを考えながら

 

 歩いて、その場を離れた

 

 まっ、ちょっとくらいは期待してあげようかな

 

 ほんのちょっとだけど

___________________

 

 そんな光景を見た後、俺は生徒席の方に来た

 

 解放されたら解放されたで暇だ

 

 リレーまで何して過ごそうかな

 

燐子「環那君?」

環那「ん?燐子ちゃん。」

 

 燐子ちゃんは今日も可愛い

 

 見ただけでなんだか癒されるもん

 

 そう言うオーラでも出てるの?

 

燐子「どうしたの?」

環那「日菜ちゃんに視界から解放されてさ。手持無沙汰になってるんだ。」

燐子「そうなんだ?いきなりどうしたんだろうね?」

環那「さぁ......?」

 

 何か裏がある気がするんだよね

 

 どんなに控えめに言っても嫌われてるし

 

 そんな子が何の目的もなく俺を開放するのか?

 

環那(まぁ、そんなにヤバいことはしないでしょ。多分、きっと、おそらく。)

 

 いざとなったら紗夜ちゃんに泣きつこう

 

 ほんとに怖いし

 

燐子「本当に日菜さんが苦手なんだね......」

環那「怖いもん(正直)」

燐子「そうかな?そんな風には思わないけど。」

環那「きっと、俺にだけだよ。あんなに怖いの。」

 

 もはやツンデレなのでは?

 

 あの殺気も好意の裏返し......

 

 いや、こんなこと考えてたら殺されそうだからやめとこ

 

環那「まぁ、いいや。燐子ちゃんは午後からはどんな感じ?」

燐子「私は、綱引きと借り物競争に出たら終わり、かな?」

環那「綱引きとかあるんだ。」

 

 知らなかった

 

 まぁ、出る気もなかったからいいけど

 

燐子「環那君は出ないの?」

環那「んー、どうしようか。」

 

 午後から暇になったんだよねぇ

 

 サボったら琴ちゃん怒りそうだし

 

 負けたら篤臣さんも怒りそうだし

 

 出た方がいいのかなぁ......

 

燐子「環那君がみんなで一緒に頑張るのって、想像つかないね。」

環那「分かる分かる。俺もそんな自分想像できないよ。」

燐子「自分で......!?」

環那「あはは。」

 

 皆と協力して何かする自分......

 

 うわぁ、マジで想像つかない

 

 てか、ありえない気すらしてきた

 

環那「まっ、参加するかはその時になったら考えるよ。」

燐子「そっか......でも、参加してみた方がいいと思うよ?」

環那「?」

燐子「環那君は1人でなんでも出来ちゃうけど、皆と何かしてみるのもきっと楽しいよ。」

環那「あはは、そうかもね。」

 

 やっぱり、燐子ちゃんと俺は全然違う

 

 だけど、全く不快に感じない

 

 本来、俺たちは相容れないもの同士になってもおかしくないのに

 

 ここまで共存できるって言うのも、変な話だ

 

環那「兎にも角にも、まずは燐子ちゃんの活躍でも見物しておこうかな。」

燐子「それはちょっとだけ恥ずかしい......///」

環那「応援してるよ。」

燐子「うん......///」

琴葉「__南宮くーん!」

環那、燐子「?」

 

 おっと、にぎやかな子が来た

 

 俺はそんな風に思いながら

 

 声がした方を向いた

 

環那「どうしたの?」

琴葉「氷川さんから南宮君がフリーになったと聞きましたので、クラスの方に呼ぼうかと思いまして。」

環那「別にそんな気使わなくていいよ。」

琴葉「いいじゃないですか!あなたも混ざれば!そんな一匹狼気取ってないで!」

環那「別に気取ってないんだけどね。1人でいた方が都合がいいだけで。」

 

 最近のクラスとの距離感は気持ち悪い

 

 避けながら媚びられるものから気分が悪い

 

 マジであいつらキモイんだよね

 

琴葉「まぁ、そうなりますよね......」

環那「クラスの安定のためには俺はいない方がいい。」

琴葉「そうなんでしょうか......」

環那「そうだよ。俺は周りと調和しないからね。」

琴葉「うーん......」

 

 琴ちゃんは残念そうな顔をしてる

 

 ほんと、お人好しな子だよ

 

 わざわざ俺のためにそんな顔するなんて

 

琴葉「寂しくないですか......?」

環那「別に?俺は身近にいる皆がいれば十分だよ。ね?」

琴葉「!......そうですか。」

燐子「......?」

 

 俺の人間関係は事足りてる

 

 これ以上は必要ない

 

 友達は多ければいいってもんじゃない

 

環那「じゃあ、俺はその辺テキトウに歩いてるから、用があったら声かけてね。」

琴葉「はい......」

燐子(今の......)

環那「燐子ちゃんも、頑張ってね。じゃあ、また後程~。」

琴葉「あ、あの!」

環那「?」

 

 俺がその場を去ろうとすると

 

 琴ちゃんが大声で呼び止めてきた

 

 そんなに大きな声出さなくても聞こえるんだけどね?

 

琴葉「綱引き、参加してくださいね。」

環那「そんなこと?んー、考えとく。」

 

 そう言って、俺はその場を去った

 

 ほんと、人が良すぎるのも悩みものだよ

 

 こんな光があると、余計に悪が際立っちゃうよ

 

 “琴葉”

 

 敵いません

 

 本当に彼だけには敵いません

 

 すごいを通り越して恐ろしいとすら感じます

 

琴葉(......はぁ。)

 

 彼の言葉には逆らえません

 

 今の雰囲気、並の人間なら失神しますよ?

 

 私も一瞬、心臓が握られたと錯覚しました

 

琴葉(意図があるのは分かってるんですから、相談したらいいのに......)

燐子「浪平先生......?どうかしたんですか......?」

琴葉「いえ、なんでもありませんよ。それよりも、白金さんはそろそろ出番では?」

燐子「え?あ、もう集まってる......!?し、失礼します......!」

琴葉「は、はい。お気をつけて。(あ、危なっかしいですね。)」

 

 南宮君とエマちゃんが異常なだけで、普通はあんな感じですよね

 

 最近、私の感覚もマヒしてますよね

 

 2人とも、私よりも大人ですから......

 

琴葉(......戻りましょうか。)

 

 私はそう思い、クラスの方に戻ることにしました

 

 彼が来るかは分かりませんが

 

 取り合えず、今は皆さんを応援しましょう

 

 先のことはその時に考えるということで!

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。